ただでさえ生きるのが厳しい呪術世界なのにクズ一族に生まれて死相しか見えないんですが   作:楓/雪那

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だいぶ間が空いて申し訳ないです。

リアルが忙しくて案はいくつか練っていたものの、腕が進みませんでした(言い訳)

夏が終わるまでに高専編は終わるといいなと思ってやっています。


#12 今週の3つ

 

 

 

 

「―――いやさ、これをやらざるを得ない状況にしたのは私だけど、本当にめんどくさいね」

 

 

千葉県某所の廃墟。

禪院袴(わたし)は瓦礫に足を組みながら腰掛け、たった今自分で作り出した光景にため息をついた。

 

 

「私の安寧のため―――あぁ、『呪術師として』とは言わないよ、どうでもいいからね―――呪詛師(あなたたち)は死んでおいた方が良いのだけれど、そのために私が積極的に動き回らないといけないのって本末転倒、というわけではないけどムカつかない?あなたたちだって『今から寝よう』っていうときに耳元で蠅が飛んでたらムカつくでしょう?」

 

 

人間何かを得るには相応の代償を支払わなければならない。

金銭、時間、労力、その他諸々。

御代は必ずしも同じものとは限らず、しかし代償無しに得られないものなどない。

 

私が私の為に時間を使うことは普通のこと。

だが、何と言うべきか。

 

そう、ゲームの素材集め、周回作業に近い。

呪具開発や術式の研究は楽しめる部類だけど、呪詛師や呪霊を狩るのは楽しくない。

殺す感覚が気持ち悪いとかじゃない。

 

存在が不快極まりないのに、それを処理する労力を割かなければいけないのがほんとムカつく。

だから素材として役立ってもらわないと、なんか損した気分になっちゃう。

 

 

「これでもね、私はあなたたちに期待してるんだよ?呪術界において双子は凶兆の象徴とされているけれど、逆に三つ子、というより【3】という数字が大きな意味を持つからね」

 

 

御三家、三貴子、三種の神器、三途、三大怨霊、仏の顔も三度まで

三すくみ、三本の矢、三千世界、三々九度、三羽烏、三銃士

松竹梅、猪鹿蝶、雪月花、天地人、日月星辰、三位一体、黒い三連星(これは違うか)

 

日本人は古来より3という数字に対して安定感のようなものを抱いているようで、あらゆる界隈で三大なんちゃらだの三部作だの三原則だのを作ってる。

元を古代中国の陰陽思想から来るものだとか、『3=みっつ』で『満つ』に変換して縁起がいいだとか色々あるが。

 

何はともかく呪術界にとっても3は吉兆の象徴であるということ。

一卵性双生児が同一人物として見られるせいで、本来一人が持つはずの力が半分になってしまい、互いに半端もので終わってしまう。

一方で三つ子は互いが互いを観測することで、双子のように互いの力を奪い合うことがなくなるどころか、通常よりも安定した出力を維持することができる。

 

今、私が相手している三人の呪詛師も三つ子らしい。

相互協力型の術式、単体では『銃火器類の強化』、『刃物を所持している時に限定される隠密能力』、『防御結界』と良く言えばシンプルで使い勝手のいい、悪く言えば地味で拡張性のない術式。

しかしこの3つの術式は本来の術式の副次的作用で生まれる術式のようだ。

 

恐らく本来の術式は『3人でチームを組んだ時にのみ発動可能な固有の術式の振り分け』。

 

(既に残った3人以外は半殺しにしてしまったが)私がこの場所に来た時には呪詛師は9人いたのだが、3つの術式が3人ずつ重複しており、さらに9人一組の連携ではなく3人一組×3セットの連携で動いていた。

そしてまず3人戦闘不能にさせると、残った6人の術式が一部入れ替わった。

しかし全く初見の術式が飛んでくるのではなく、さっきまで見た術式の使い手が変わったのだ。

 

 

(まさしく【三本の矢】かな。元々はあの3兄弟で協力しあうための術式、その証拠にさっきよりも術式の威力が上昇している。だけど『術式性能を下げる』縛りを設けることで3兄弟がそれぞれチームリーダーとなり、最大3チーム作れるようにしたわけだ)

「でも素人に持たせたところでね」

 

 

ドアを蹴り開けると同時に、廊下の曲がり角から飛び出した呪詛師がアサルトライフルを乱射する。

 

 

『術式順転・宵』

 

 

かの千年の世を生きてきた術師は「術師相手であるならば通常兵器も積極的に取り入れるべきである」と語った。

事実として呪術師にも通常兵器は有効である、どころか時として呪力と術式を使った呪術戦よりも強力に作用する。

認識範囲外からの遠距離狙撃、呪力探知に引っかからない地雷、呪力による防御でも等級次第では術師を消し飛ばす戦略兵器。

 

対呪霊戦において危惧すべきなのが領域展開を始めとする初見殺しの能力と呪力による強度の高さだとすれば、対呪詛師戦において注意しなければならないのは対人戦を意識したなりふり構わない武装だろう。

尤も私相手だとほとんど意味をなさないけど。

 

『宵』の効果は術式で具現化させたフィルムの中に物質を収納し、任意の時にそのフィルムを破ることで取り出すというもの。

死体以外の生物は収納できない代わりに呪力があるものも収納できる優れもので、普段使いの呪具や意表を突くための呪骸(夜蛾先生作)、応急処置のための救急セットや封印の札など様々なものをしまっている。

そしてもちろん対人戦用の兵器も。

 

呪詛師のライフルの弾をフィルムに収め、代わりに手榴弾を写し取ったフィルムを破り捨て投擲する。

防御結界の術式は術者の身長に設定された正方形の結界であり、天井スレスレで結界を通り抜けた手榴弾が呪詛師たちの後ろで爆発する。

 

結界が解除されると同時に呪力強化で加速し、結界術の男の顎を蹴り飛ばし、ライフルの男の右足を切り捨て、ライフルを奪って残っている足を撃ち抜く。

そして窓の外に『宵』で取り出したスタングレネードを投下。

天理の瞳で残った一人が窓から奇襲を仕掛けてくることは観ていたので、投げた当人である私は目を閉じる。

そして光が収まると同時に窓から飛び降りて、視界が潰されたナイフ使いの手足を切り落とす。

 

「非術師狙いの快楽殺人しかしてなかったらそりゃ今までは楽だったろうね。でも術師慣れしてなかったからこんなにあっさり終わるんだよ」

 

術式自体はまぁまぁ面白くても、精々3人そろって準二級程度。

これが術式効果のある呪具を使ってたら厄介度は跳ね上がるけど、野良の呪詛師なんて基本このレベル。

そもそも五条悟が誕生した時点で以前の狡猾な呪詛師たちは勝ち目がないことを直感して活動を自粛してきた。

今のご時世で積極的に活動する呪詛師はよっぽど危機感がないバカか、呪詛師なり立てほやほやかのどちらかだ。

 

「君たちも哀れだね。五条悟や夏油傑に見つかったならまだ楽に死ねたのに」

 

私に見つかるなんて、生きたまま無機物に加工する変態(組屋鞣造)直行コースだよ。

まぁかわいそうだなんて思わないけど。

死ぬ前に私の手を煩わせたんだから精々死んでからは役に立っておくれよ。

 

「死体なら『宵』でちょちょいと済ませられるんだけど、鞣造は生きたままの方が好みだからな…運ぶのめんどくさ…」

 

 


 

 

「……お前はまた」

「なんですか、夜蛾先生。先輩方と違って私は誰にも迷惑かけてないじゃないですか」

「それはそうなんだが……はぁ」

 

禪院家からお付きの補助監督の送迎車から3つのバッグを取り出しているところを見て夜蛾先生が顔をしかめる。

あの問題児筆頭と比べれば私なんて全然優等生だと思うのだけれど。

任務には忠実に従い、社会の害となる呪詛師を間引き、他の術師の役に立つ呪具に変えている。

これのどこが悪いというのか。

 

呪具を作っている人物に問題あり?それは否定しづらい。

 

「…いや、もう何も言わん。それより袴、お前に任務だ」

「今帰ってきたばっかなんですが。同時並行なら先に連絡くださいよ」

「対呪詛師の任務の後は必ず一度戻ってくるだろうが…」

 

それはそう。瀕死の呪詛師は鮮度が命だからね。

 

「それにこの任務は今日中ではない。現地で他の術師と合流してから向かえとのことだ」

「現地集合の共同任務ですか…私には珍しいですね」

 

東京の高専在学中の術師ならば高専で待ち合わせればいい。

そして特別1級術師の私は基本単独で任務を遂行するため、誰かと組むということがあまりない。

最近は七海や灰原の指南役として同行することはあるが、最強コンビともここ数日は一緒に出たりはしてない。

 

というのも私に振り分けられる任務のほとんどが呪詛師関連だからだ。

特級どころか準1級を越えるラインの呪詛師は極めて少なく、それを呪具に変えるツテがある私に対呪詛師の任務が振り分けられ

逆に呪霊、特に領域などの危険度が高いものは最強コンビ、特に呪霊操術で取り込める夏油のもとに回されがちになっている。

 

そんな私に他の術師と協力して任務に向かえというのは中々ないもののはず。

そうとなるとそれなりに人手のいる任務ということだろうか。

最強コンビは現在二人とも北陸に飛ばされているし。

 

「呪詛師の連合案件とかですか?それとも領域案件?」

「いや、どちらとも違う。……強いて言えば呪詛師寄りだが、資料を見てもらえば分かる」

 

「ん~……『高専術師としてのスカウト』…?なるほど?」




禪院袴

初期の日記の頃と比べるとだいぶキャラが変わっているように思えるが、実際のところ現在のややダウナーな方が素の性格。
初期の頃の方は転生なり術式なりかわいい従妹なりでHappyHappyCat状態だったが、ある程度(少なくとも禪院家ではトップクラス)の実力を身に着けて冷静になってくると、夏油の闇落ちを防がなきゃなぁとか灰原死なせないようにできっかなぁとかあのメロンパン上層部掌握してんだっけとかを考え始めてサワークリーム嗚咽猫になってきた。
基本的に何かを創作したり開発することが好きな研究者気質なため、呪具か料理について考えている時が楽しい。コイツ前世でも割と危険人物だろ。


夜蛾正道

袴に対しての評価は『落ち着きのある良い子』
最強コンビに匹敵する実力もあり、教え方も上手く、理性的であるため問題児三人衆と比べるとあまりにも優等生。
ただモゾモゾ暴れるデカいバッグを引きずる姿は毎度心臓に悪いのでどうにかならないかと悩んでる。
例えるなら普段は静かな猫が虫の死骸を加えて見せに来るようなアレ。
最近はちょっと諦めてきた。


三兄弟の呪詛師

世にも珍しいジョイントタイプの術式の使い手。
呪具なしで非術師を術師に一時的に変えられるインスタント無為転変じみた術式。
サバゲ―のコミュニティを利用してリアル人狩りゲームなる方法で金を稼ぎながら殺人の快感を満たしていたクズ兄弟。
五条悟を知らなかったことが命取り。

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