ただでさえ生きるのが厳しい呪術世界なのにクズ一族に生まれて死相しか見えないんですが 作:楓/雪那
1997年 ☆月〇〇日
なろう系の転生チート主人公ってなんで感覚で自分の力を理解できるんだろう。
ゲーム世界が元の場合はコマンド画面とかを開いて発動しているシーンは割と見るけれど、異世界転生の場合はいきなり魔法ぶっぱして驚いてるよね。
なんでそんなすぐできるんです?(怒り)
主人公補正ですか、そうですか。
しかし生憎私は何となくの感覚でどうにかなるタイプの天才肌ではない。
幸いにも禪院家は呪術界御三家の一つであるため呪術戦に関する資料は豊富、熟練の術師も多数いる。
性格にさえ目をつむれば強くなるにはもってこいの環境だ。
まあ強くなってもこの家の慣習に染まれば死は避けられないんですけどね。
この世に2度目の生を受けてから今日までの6年間、私はとにかく呪力操作を鍛え続けた。
どんなに強力な術式であっても、あるいはどんなにしょぼい術式であっても、呪力操作の精度が足りなければ使いこなすことも、いざという時のごり押し近接戦もできない。
だってゴリラ廻戦だもの、レベルを上げて物理で殴ればどーにかなる。
最初は呪力なんて前世にはなかったエネルギーを自分の身体の中で流動させるどころか、知覚するのも困難だった。
しかし稽古という名の4人の兄上たちによる虐めのおかげで感覚をつかむのは早めにできた。
痛いしムカつくけど、後の楽のためと考えれば耐えられた。
今に覚悟しておけよクソ兄上共、私がお前らをボコした日には踏み躙って煽ってやるからな。
1997年 ※月☆日
もしかしたらもっと前から使えたのかもしれないが、私が初めて直哉が術式を使うのを見たのは今日の5歳上の長男との模擬戦でだ。
今までボコボコにされてきた一番上の兄上に今日は一度も捕まることなく、一方的に、圧倒的な速さで叩き潰していた。
原作、つまり2018年の時には最高速度は亜音速に到達していた直哉だが、さすがに今の段階でその速さには至っておらずまだ私でも目視で追える。
それはすなわちまだ完全に投射呪法を使いこなせてはいないということだ。
しかし父、直毘人も同じ術式を使うためすぐに術式の質を高めるだろう。
ただ私としてはスピードよりも投射呪法の応用である「触れた対象を1秒間フリーズさせる」能力の方が厄介だ。
止まるのはほんの1秒、しかし高速で動き回る術者を相手にその1秒はあまりにも致命的だ。
加速に乗っかった重い一撃に対してカウンターを放とうとしても、このフリーズを食らえばカウンターは失敗し本命の一撃を食らうことになる。
とはいえ今のところ思いつく対策はやはり設置型カウンターだろう。
漏瑚が直毘人にやったように投射呪法の行動の先に攻撃を置いておけば、術者はそこに突っ込むしかできない。
地雷原に踏み込んでみろ、というわけだ。
しかし今の私にはそんなお手軽な置きボムなんてない。
そういう術式があればいいのだが、対直哉を意識しすぎるのもよくないかもしれない、反省。
1997年 ※月×日
えっ……私の術式…使い勝手悪すぎ…?
今日初めて自分の術式内容を把握できた。
できたはいい、できたはいいが……如何せん使い勝手が悪くないか、これ?
術式名は不明だが、どうやら私は「5秒先の未来が見える」ようだ。
今までは1度もこんなことが無かったから、五条家の六眼のような特異体質とは違う、術式に由来する体質変化と考えるのが自然だと思う。
未来視と言うのならばかなり強力なように感じるが、現実はそんなに甘くなかった。
というのも今の私の視点と未来の視点が混在して、只管に気持ち悪いからだ。
未来視と自覚してなければ、もう片方の視点が5秒遅れているのかもしれないとも思いかねない。
片目だけ5秒遅れるとかだったらそれはそれでとんでもないクソ術式だけど。
呪術戦において5秒というのは非常に貴重な時間ではある。
しかしそれは呪術戦に慣れた術師が実践で己の戦い方を組み立ててこそ言える話であり、私の未来視の場合では話が違う。
5秒間の未来を見てそれへの対処を組み立てると、私の行動が未来とズレることによってまた未来視の内容も変化する。
つまり他の術師がリアルタイムで戦略を立て直すのを、私はその倍やらなければならないということだ。
似たような術式の使い手では死滅回游に参戦していたシャルル・ベルナールがいたが、彼の場合は「術式を付与した相手の未来を観測する」、つまりはマインドスキャンに近い能力だと今の私は考えている。
「G戦杖を一定数命中させる」、「相手に付与させたコマを視認しないと意味が無い」という欠点こそあれど、本人の基礎的な戦闘能力が高ければあちらの方が有用ではないだろうか。
対して私の未来視は永続かつ強制で見せられるため気持ち悪いったらありゃしない。
そういえば呪力操作の特訓の途中に筒のようなものが手に握られてた。
これも呪力で出たものなら術式関係なのかな。
1997年 #月×日
屋敷の近くにいた低級呪霊相手に術式を使ったら新たな発見。
案外…いや、かなり使えるかもしれない。
1997年 #月◽︎日
長寿郎おじいちゃんに稽古をつけてほしいと頼んだ。
術式に対してもっと研究をしたいけど、低級相手に使い続けても限度は知れてる。
かと言ってあまりにも強い呪霊に挑めば死ぬのは目に見えてる。
それなら家の実力者に鍛えてもらうのが1番だと思った。
禪院家の実力者といえば「炳」のメンバーだが、親父とその弟はロクデナシだし、兄上たちには頼りたくない。
アイツらは模擬戦で公衆の面前でボコしてやりたいからその時まで隠し通す。
そうなると消去法的に長寿郎おじいちゃんしかない。
原作だとセリフは全然なく、ずっと不気味な笑いを浮かべてて正直呪霊より怖いけど、頑張って頼んでみたら思いの外すんなりOKしてくれた。
ぶっちゃけ兄上たちと同じで躯倶留隊相手にやれと言われそうだと思ったし、私が女だから余計にダメそうだと思ったから意外だった。
術式は使われなかったけどボコボコにされた。
1997年 月※日
偶然にも甚爾と出会った。
改めて正面から見ると恐ろしい。
前世では誰かと殺し合うことなんてなかったから出会ってすぐ「コイツは強い」なんて感じるバトル漫画的な感覚は分からなかったけど、ほんとにそう感じさせる人っているんだなぁ。
そんな事を考えながらちょっと…いや、もしかしたらかなり凝視してたのかもしれない。
甚爾から「面白ぇガキだな」って言われ、名前を聞かれた。
素直に答えたらなんか気に入られた。
私のことを鍛えてくれるらしい。
……なんでぇ?
1997年 月@日
長寿郎おじいちゃんとの稽古にほんとに甚爾も混じってきた
死なない程度には手加減すると言ってたけど、すごい痛い
1997年 月*日
今日も稽古、痛い
1997年 月◢日
今日も稽古、痛い
1997年 月♪日
今日も稽古、痛い
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以後数日分、同じ内容が続いている
1998年 月※日
甚爾に鍛えてもらってることが直哉にバレた。
嫉妬からいつもより強めにボコられた。
痛い、ムカつく、いつかボコす。
1998年 月Y日
甚爾から直哉が私より自分を鍛えてくれって頼んできたことを聞いた。
でも興味無いらしい。
私には興味あるのが謎だが、理由は教えてくれない。
付いてこられるのが面倒だからって今日から場所を家の外の山の中に変えた。
でも長寿郎おじいちゃんは付いてこない。
つまり今日からは1日2回別々に稽古をつけられるってこと。
すごい痛い。
(以後しばらく、内容が「稽古の痛み」か「兄弟へのムカつき」しかない)
2001年 7月〇×日
ようやく掴んだ。
私の術式の本懐、核心。
投射相手への勝ち筋も、術式の完成系も拡張方法も、今なら手に取るように分かる。
2001年 12月X日
初めて甚爾相手に明確に一撃入れられた。
今までは当たったとしても向こうの想定の範囲内でカウンターや誘導だったから、本当の意味でちゃんと入れられたのは初めてだった。
尤も甚爾からしたらダメージなんてないだろうけど、こんな子供から1発想定外の一撃を喰らったのは意外そうにしてた。
2002年 1月20日
真希真依姉妹が生まれた。
1度見に行ったけどかわいい。
2002年 3月 日
術式のレベルを目標の段階まで漕ぎ着けた。
調整には苦労したけど、十分だろう。
常々思ってたけど日車ってほんとに天才だったんだな。
2002年 7月 日
明日は直哉との模擬戦。
今度こそ、私の今使える全ての技術を使ってボコす。
甚爾は2年前に結婚してから家には全然寄り付こうとしなかった。
そりゃそうだろう。
それでも私との稽古には律儀に付き合ってくれた。
明日はあのクソみたいな家のヤツらの間抜け顔を拝むために顔を出してくれるらしい。
負けられない理由が増えた。
主人公プロフィール
名前 禪院 袴(ぜんいん はかま)
年齢 2018年時点で26歳(直哉、七海の一個下 五条・夏油・家入の二個下)
術式 未来視 ???
参考程度に、夏油は生かしておく?死んでおく?
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生きているべき、メロンパンは絶望しろ
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死んでおくべき、五条は後悔しろ