芸名:キャプテン・アメリカ   作:空飛ぶほうき君

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ギャグです。カレー食べながらご覧ください。


第一章  負けず嫌いなブルックリンのガキ

 時は1942年。第二次世界大戦中のアメリカ、ニューヨーク。

 人々は戦争が与える影響にも関わらず日々逞しく生きていた。

 戦時下の生活の裏。路地で殴られる青年が一人。

 

 顔を腫らす青年の名はスティーブ・ロジャース。

 映画館でごろつき相手にちょっとした正義感を出し、そうして熱い歓迎を受ける羽目に。

 

 スティーブは虚弱である。様々な疾患を小さな身に抱え、喘息、心臓病、猩紅熱、リウマチ熱など一つ患うだけで十分な病を一人で抱えつつ、なんとかかんとか二十四歳の誕生日を迎えた。

 彼を守る家族はすでにいない。父は戦争で。母は結核病棟の勤務中に感染し、帰らぬ人に。

天涯孤独のスティーブが、この歳まで生きてこられたのは幸運だった。

 

 また一発、頬に強いのを貰い地に伏せる。

 満身創痍で足を震わせて立ち上がった。

何度も。

何度も。

 

スティーブは貧弱だ。腕も足も細く、胴にはあばらが浮く。体重は僅か40㎏の小枝で、殴れば木の葉のように飛ぶ。他の人には何でもない風邪に罹るだけで命の危機。流行り病を網羅し、咳と脆弱さは友人だ。

 金も身分も無い孤児に医師を呼ぶ贅沢は許されず、安っぽい缶のスープと、殆ど意味を持たない濡れ布巾をあてがうのみ。そんな劣悪な環境でスティーブは生還し続けた。

 

 スティーブは弱い。学校の同級生や友人みたいだったら、と何度思ったか。普通の人生が欲しいと何度星に願ったか。

 

 脳を揺さぶるパンチに意識が飛びかけるが踏ん張る。

 諦めない。

 

スティーブには欠点が山ほどある。数えたらキリがない。だが、彼にも良いところがあった。

 

悪に立ち向かう高潔さ。

決して諦めない、愛国心溢れる強い心。

他者への思いやり。

 

「いい加減諦めたらどうだ?」

「絶対、諦めない」

 

細すぎる腕から繰り出すひ弱なパンチを男が簡単に受け止め、健康な成人男性が放つパンチの強さに吹き飛ぶ。今度こそ立ち上がれず地べたに這いつくばった。

悔しい。負けたくない。

 

 

 

「弱い者いじめはやめろ!」

 

 

 

 騒ぎに駆けつけた友人が介入し、ごろつきを追い払う。

”弱者”と現実を突き付ける言葉に歯を食いしばり、ゴミ箱を松葉杖代わりに体を持ち上げて打撲傷を負った左目に触れた。服で見えないが体中に痣が点在するのは間違いない。

 

「おまえさぁ。殴られるのが好きなんだろ」

 

痛みに顔を顰め、減らず口を叩く。

 

「一人でも勝てた」

 

被虐嗜好を疑うこの男はジェームズ・ブキャナン・バーンズ。通称バッキー・バーンズ。恵まれた体格と魅力的な笑顔の色男。自分と真逆な人気者が何故気に掛けてくれるのか、スティーブは不思議だった。きっと、大きな体いっぱいに詰まる優しさがそうさせるのかもしれない。

路地に散らばる入隊志願書をバッキーが拾う。

 

五度目の不合格。徴兵検査に落ちるのは五度目だ。出身地を偽ってまで挑んだ検査はすべからく落ちている。理由は、基準値以下の体格と体の弱さ。

スティーブは兵士として国の役に立ちたい。赤い手押し車で屑鉄を集めるなんざ、まっぴらごめんだ。敵から国を守り、悪党を倒す。父のように。

誰も殺したくない。だけど、後ろに隠れて戦わないのは絶対に嫌。

 

不合格の捺印が嘲笑う書面を呆れて見つめ、嘘に苦言を呈するバッキー。そんなバッキーはパリッとした軍服を着こなし、背を真っすぐに伸ばしている。晴れて軍人となった友に憧憬を燃やす。

歩兵第107連隊所属のバッキー・バーンズ軍曹は明朝にイングランドへ出征するとのこと。

共に行けたら、無理だと知っていても口から飛び出す嘆願。

 

「僕も行きたい」

 

 行きたい。君が行く戦場へ。そうしたら、背中を守れるだろう。

 最後まで一緒に。

 

 淡い期待は友人の悲しい顔に砕かれ、汚染で曇った曇天に吸い込まれ消えた。

スティーブは役立たずのまま、親友は戦地へ。

バッキーは遠い地で国のため血濡れで戦うのだ。

 

「最後の夜だ。シャワー浴びてこい」

「どこ行くんだよ」

 

 肩を組んで路地から歩き出す途中、新聞を手に押し込まれた。

 

『万国博覧会』

 

「未来さ」

 

最後の夜を過ごす相手に選ばれた栄誉に胸が温まる。

 それに万国博覧会は楽しそうだ、と悲しみを飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 万博はあまり楽しくなかった。

 派手で目を引く展示品や色とりどりの花火、空中を疾走する交通機関、ハワード・スタークによる空飛ぶ車の発表など胸躍る未来技術の祭典だ。喜びに目を輝かせぬ者がいようか。

 

 ここにいる。

 

 スティーブは気まずそうに身を竦ませた。バッキーが呼んだ女子二人に徹底的に無視を決め込まれ、三人の後ろをトボトボ歩く。当たり前だ。女の子二人はバッキーと楽しみに来たのだ。ひょろひょろ野郎に会いに来たんじゃない。バッキーがスティーブについてどんな説明をしたにしろ不毛である。何故なら、女の子は”イケてない男”に興味がないからだ。

 ダブルデートらしいが、これではデートを邪魔するお邪魔虫。非常に居心地が悪かった。

 

ここ一時間で起きた目ぼしい会話は「そう」「やめて」のみ。霞みたいな応答でも、スティーブは女の子との会話に緊張した。バッキーが女の子と引き合わせたのはこれが初めてではない。ちなみに、いずれも大失敗で終わった。

居たたまれないスティーブが場を離れたのを誰が責められようか。

 

 ここにいる。

 バッキーだ。

 

 万博に設置された陸軍入隊所へコソコソ忍び寄り、徴兵検査を受けようとしていたスティーブを捕まえる。高性能スティーブ追跡装置を備えたバッキーは、消えたチビを追跡し、確実に見つけるはた迷惑な能力を所持していた。

 

「志願する気か?今度はオハイオ出身?本当に受かったらどうする?」

 

「重要な仕事は他にもあるだろう!」

 

 捕らえたネズミへ猫軍曹が抗議の声を上げる。危険から遠ざけたいバッキーと国のため戦いたいスティーブ。二人の意見はいつも通り衝突し、交わらず。

女の子に呼ばれ、今回も落ちるだろうと諦めたバッキーは別れの言葉と抱擁を交わし立ち去った。友人の姿を見送り、スティーブは受付へ進む。

 

 そして、この検査がスティーブ・ロジャースの人生を180度変え、いや、きりもみ回転して天元突破させる。

 

 

 

 

 

 謎めいた博士の謎めいたテストを合格したスティーブは、晴れて兵士へ。

 戦略化学予備軍(SSR)主導の「スーパーソルジャー」を生み出す血清実験の被験者候補生として入隊。監督官のエージェント・カーターと訓練教官の過酷な訓練、意地悪な候補生、偽の手榴弾によるテストを越え、被験者に選ばれた。

 

血清実験前夜。興奮して眠れぬ読書中のスティーブへ、謎めいた博士、エイブラハム・アースキン博士が訪れ雑談に興じる。被験者に選ばれてからずっと選考理由が気になっていたスティーブは、これ幸いとアースキン博士に訪ね、答えを得た。

 

「血清は内にあるものを全て増幅する。善人はより善人に。悪人はより悪人に。だから、君を選んだ」

 

 アースキン博士の過去。未完成の血清実験がもたらした悪。人の善悪を増幅する危険性。

 博士が語る内容が内容なだけに明日への心配を大きくするが、それを凌駕する決意で固く心に誓う。

 実験を必ず成功させると。

 

「明日を前に一つ約束してほしい。君のままでいてくれ」

 

「完璧な兵士ではないが、ずっと、善良な、人間のまま」

 

 スティーブの心臓へ二度指を指し、博士は言葉を締めくくる。お祝いに持ち込んだ酒を振舞おうとして、明日実験なのを思い出したアースキン博士がグラスを没収。茶目っ気たっぷりに二人分を飲み干す博士にスティーブは笑った。

 

 

 

 

 

 どうしてこうなったのだろう。

 チープなピチピチタイツを纏うスティーブは思う。

 

 実験は大成功であった。代償はあまりに大きかったが。

 

 実験場へ向かう車中で話したエージェント・カーターとの会話で、母以外の女性と話した会話最長記録を更新。少しウキウキな気分で迎えた実験は鉄の棺桶の中で行われた。小さな薄い体へ、全七本のうち六本もの血清を注入、膨大な電力を使い放射線を投射。凄まじい光と痛みを根性で制し、スーパーソルジャーは完成を果たす。

 

 峰のように盛り上がった筋肉、聳え立つ長身。

 旧スティーブを小指で殲滅可能な巨体。

夢にまで見た理想の体がここに。

 

 成功に喜ぶ人々、何気なく胸筋タッチを決めたエージェント・カーターを見て、スティーブは安堵する。

 

 それからは早かった。

 

 潜入していたドイツのスパイが実験場を爆破、血清を奪い、アースキン博士へ弾を射出。崩れ落ちた博士に縋りつき、泣きそうな巨体へ博士は声なき声を指に籠める。

 

『君のままでいてくれ』

 

 あの時と同じ回数胸を指さし、博士は天へ旅立つ。

 

 怒りと正義に突き動かされたスティーブは生身で逃走犯を追跡。潜水艦に乗り込んだスパイを力任せに引っ掴み放り出すが、スパイは「頭を切り落としても、そこに二つまた生えてくる。ハイルヒドラ!」という謎の言葉を残し自決。

最後の血清は乱闘で破壊された。

 

 アースキン博士と血清が失われ実験は凍結。スーパーソルジャーはスティーブただ一人となり、最強の軍隊を望むSSR指揮官のフィリップス大佐は、一人じゃ無用の長物と放逐。戦えないなら、僕はどうなる。研究対象か?と意気消沈のスーパーソルジャーへ声を掛けたのはブラント上院議員。

 スティーブのスパイ追跡劇がアメリカ国民の注目を集め、入隊志願者が押し寄せたらしい。今やスティーブはモルモットじゃなくヒーローだと。最も重要な戦地で国のために仕えられると。

 

 スティーブはすぐさま承諾した。

 国の役に立てる。

喜んだものだ。

 

 

 

 ”重要な戦地”はプロパガンダショーだと知り、落胆するまで。

 

 

 

 窮屈なタイツがミチミチ軋む。

 舞台セリフをおもちゃの盾に貼り付け、覗き見ながら読み上げた。

 

「君らが買う戦時国債が、戦地で戦っている大切な人の銃弾になるんだ!」

 

 全身に星条旗を纏う舞台衣装。

立派な筋肉を見世物に、美しいコーラスガールを侍らせプロバガンダを行う。

大衆の人気は爆発。すぐに子供達の夢へ。女性人気だって出た。今までスティーブを見向きもしなかった美人が黄色い声を上げる。

 

 写真撮影会、映画、漫画、ショー。

 

 あらゆる場所、媒体に「キャプテン・アメリカ」は現れた。

 ショーでは見覚えある鉤十字を付けたちょび髭を殴り、赤ん坊を抱き、映画で兵士と銃を乱射する。

 

 悪い気はしない。

 映画の中で活躍する姿に少しの満足感。

 戦う兵士の娯楽や希望になれるならいくらでも見世物になろう。

 

遠い地の兵士へ思いを馳せてスティーブは無念を飲み込む。

実際の戦場で戦えずとも、自分ができる最高を。

 

バッキーが言っていたように重要な仕事は他にもある。

 

 

 

 

 

 興行が軌道に乗ってから数ヶ月。キャプテン・アメリカは相変わらずショーで引っ張りだこ。

大忙しのとあるショー後、プロデューサー兼マネージャーのアンブローズが「歌を発表しよう」とスティーブに持ちかける。

 コーラスガールの歌ではなく、キャプテン・アメリカ本人が歌う歌。

 

 スティーブは困った。

歌ったのは少年時代の学校行事のみ。しかも酷い有様。最後に歌った時バッキーに封印された、いわくつき。

 

自身はとんでもない音痴で歌なんか無理だ、と説得するもアンブローズは引かず。楽屋外から作詞作曲家に音楽講師、振付師まで連れ戻るプロデューサーを見て、スティーブは運命を受け入れた。

 訓練時代を思い起こす無慈悲な稽古を多忙なスケジュールに押し込み、明朝から深夜まで働き詰める。スーパーソルジャーの超人的な体力と感覚を歌と踊りに注ぐ毎日。日中や夕方はショーと映画の撮影、その合間合間に撮影会を挟み、夜は稽古。寝るのは移動中の車内。

 

 流石に疲れの溜まったスティーブはアンブローズに休みを要請。要求は通り、写真撮影会、映画撮影、ショーを休止。真っ黒な目のクマを抱え、意気揚々とベッドに戻った彼を迎えたのは講師陣。休みという名の稽古が終わったのは夜。

久しぶりにベッドへ体を横たえ、頭が枕に着地する前に気絶した。

 

 稽古は日々続き、そのうち徐々に変化が訪れる。突飛な奇声は正しい音程に。呪文じみた詠唱は歌に。元々完璧な踊りをより完璧に。心の余裕が生まれたスティーブは、表情や手足の運びを精錬する段階へ移行。歌と踊りのレベルを更なる高みへ引き上げた。

 人を引き付ける声の響きや波を取り入れ、蝶が如く重力を感じさせない軽やかさで巨体を舞わせ、魅力的な笑顔の研究のため毎朝鏡と睨めっこ。

 

 

 

 こうして歌って踊れるキャプテン・アメリカが静かに爆誕。

 

 プロバガンダから生まれたマスコットが、アイドルへの道を進む。

 

 

 

 日が月になり、時間の感覚を忘れた頃に完成を迎えた。最後の稽古で「教えることはもう何もない。よくやった。活躍を楽しみにしている」と激励した講師陣に涙でいっぱいの感謝を伝える。喜びの握り拳を空高く掲げ、達成感を味わう

 やった。ついに成し遂げたのだ。

 

 リハーサルを終えたスティーブが向かうはイタリア。兵士達への慰問ショーで歌の発表を行う

 スティーブは胸を膨らませた。

 

 

 

 

 

 スティーブは肩を落す。

 慰問先の兵士に野次を飛ばされたのだ。

 前口上を嘲笑し、トマトを投げつけるなんて。

 

 尻を出し侮辱する兵士。歌えと煽り立て女を戻せと騒ぐ群衆。

 

 うなだれて小さくなったスティーブが踵を返し、進行を阻む誰かが舞台袖から飛び出る。

青赤白の制服……コーラスガールのアンナ。

 

 アンナは、活動始めからずっと傍で歌い踊り続けていた初期メンバーの一人。数多くのコーラスガールを纏め、総括するリーダーだ。彼が落ち込んだ際はいつも慰めてくれた。

 そのアンナが真っ直ぐな視線で語る。

 

「キャプテン・アメリカが諦めるの?」

 

「本当に?スティーブ?」

 

 スティーブは悩む。

今戻っても火に油を注ぐだけ。コーラスガールの皆がいれば丸く収まる。僕は必要とされていないのだから捌けるべきだ、と

 

 そこまで考えてはたと気付く。

 自分は諦めようとしている。人々の怒りから目を背け、逃げ出そうとしている、と。

 

 見つめたまま、彫像が如く不動のアンナと目を合わせた。

 

 スティーブは負けず嫌いだ。

悪党が嫌いだ。

理不尽が嫌いだ。

戦争が嫌いだ。

殺しが嫌いだ。

 

 特に、諦めるのが大嫌いだ。

 

 アンナの後ろ。他のコーラスガールの面々にアンブローズ、軍楽隊の不安気な顔が覗く。瞬間、路地裏の記憶がフラッシュバックした。

 

 

 

『いい加減諦めたらどうだ?』

『絶対、諦めない』

 

 

 

 確かに自分はそう言い放ったのだ。

 あのごろつきにも。いじめっ子のクラスメイトにも。バッキーにさえ。

 バッキーは今もなお、銃弾飛び交う戦場で諦めずに戦っている。

 

こんなことで諦めて恥ずかしくないのか?

 間違いに屈するのがスティーブ・ロジャース、いや、キャプテン・アメリカか?

 

 断じて否。

 

「いいや、アンナ。僕は諦めないよ」

 

 答えたスティーブへアンナが満面の笑みを向け、残りのコーラスガールと軍楽隊が舞台上へ出る。彼女、彼らと共に背を伸ばしたキャプテン・アメリカが後に続く。

 

 またも登場したキャプテン・アメリカへブーイングの波が襲う。二度目のトマトが空中を飛び―――おもちゃの盾で跳ね返された。

弾かれたトマトは飛ばした者の顔面にぶち当たり、反射で尻だし男の尻へ衝突。滑稽な叫び声を上げて兵士二人が吹き飛ぶ。

 

 シンと静まり返った陸軍野営地。静まった数百人へキャプテンが吠え歌う。

 

「失礼な人達。君らには行儀がないのか?」

 

 予定していた愛国心溢れる歌詞は消え去り、不満がそのまま歌として口から転がり落ちた。トランス状態で舞台を闊歩。床板を踏み鳴らす。

 

「兵士って規律があると思っていたけど、勘違いだったみたい」

 

 群衆の顎を閉じるため手を打ち鳴らすと、コーラスガールが続く。手拍子とヒールの鋭い靴音が空気を切り裂き、舞台がガタついた。

 勇気ある者達が三度目のトマト砲で爆撃。全てを打ち払い、砲手へ送る。リズミカルな悲鳴が曲に加わり、音楽隊の打ち鳴らす楽器の音が兵士を飲み込む。

 

「ほら、秩序ってやつを見せてやる。踵を鳴らせ!」

 

 舞台を重い靴音が鳴らす。全ての演者が同時に床を打つ。打ち合わせもクソもない即興の演奏。キャプテン・アメリカの迫力に呑まれた、それだけで環境音含め全てが曲に収束する。

 

「さぁお嬢さん方、ご一緒に」

 

 わざと呆れた口調で動かない群衆をたきつけ、お手本に手を打ってから足を鳴らすと、硬直が取れた何人かが同じリズムで返す。今度は演者全員で鳴らすと、数百の兵士が鳴らし返した。

 舞台から飛び降り、群衆へ突撃。兵士の海が割り開かれできた道を、キャプテンとコーラスガールに軍楽隊が邁進。

 

「青、赤、白に星のマーク。翼を付けた人は誰?」

「キャプテン・アメリカ!」

「額のAは?」

「アメリカのA!」

「輝く盾持つ?」

「キャプテン・アメリカ!」

 

 コーラスガールと軍楽隊が吠え、兵士達もつられて何度も名を叫ぶ。誰も彼も笑顔で、先程の顰め面なんざ存在しない。

 広場中央に到達後、演者が散開、踊り狂う。

 

「戦争?上官?今は戦いなんか忘れて。日が沈み夜が明けるまで、皆で大騒ぎだ」

 

 軍楽隊の行進とコーラスガールの合いの手。数百人の兵士が跳ね、頭を振る。M4中戦車上の男達が腕を振り上げ、ジープのタイヤが軋む。

 

 熱に浮かされた群衆。曇天を貫く歓声がいつまでも響き渡る。

 




プロデューサー兼マネージャーのアンブローズと、コーラスガールのキャシー(キャサリン)は生やしたオリキャラ。
息抜きなので不定期更新です。
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