退院して監督官の用意した車に乗る
「あの…退院したてで本当に申し訳ないんですが…」
「仕事か?」
「はい…すみません…」
「任務の概要を教えてくれ」
「はい…8月8日 午後 19時37分頃 窓により呪霊を多数報告
後に3級術師が現場に向かいますが低級の呪霊を数体祓ったところで
2級以上と推定される呪霊が出現したため撤退
その場所には警察の協力で道を封鎖してもらっています」
「それで俺に回ってきたわけか…わかったすぐにその場所へ移動だ」
「わかりました!」
到着した途端に感じた異常なほどの寒気
「こいつは…かなり強そうだな…」
「如何されました?なにか御用ですかな?」
気づくと後ろに初老の男が立っていた
「いやぁ…道に迷ってしまってねっ!」
矢車は素早く刃を抜くと初老の男に振りかざす
「おっとっと…なにをしなさる」
「はは…この近くの人はもう避難してここはもう封鎖されてんだよ!」
「おや…はっはっは!うっかりしておったわい」
矢車の刀をするりと避けた男は大笑いする
「ふむ…その刀…だだの刀ではないな?」
「そこまで分かるのかよ…」
「まぁどちらにせよ当たらなければどうということはない!」
男は姿を変え筋骨隆々の大男へとなり矢車はと突進する
「悪いな…その動きは既に視た!」
矢車の振るう刀は男の首の部分を捉え頭を斬り飛ばす
「ば…馬鹿…な……」
「動きは速いがその動きを先に視ちまえば幾らでも対応できる」
「敵ながら…見事なり……」
「ふぅ体は思ったより鈍ってないな」
刀を鞘へもどし監督官の元へと戻る
「へっ?!もう戻ってきたんですか…?」
「おう…強かったが相手が悪かった」
「じゃあ…高専に戻ります…?」
「ああ頼む」
高専へ着き校舎をぶらついていると廊下にて夜蛾と会った
「おっ夜蛾じゃねぇか」
「矢車か…すまないな退院したてだというのに任務を回して」
「いいんだよ気にすんな。五条達は?」
「庭の方にいるはずだ」
「ありがとよ」
小走りで庭へと向かう矢車
悟は最強に成った…任務も全て1人でこなす
硝子は元々危険な任務で外に出ることはない
必然的に私も1人になることが増えた…
「よう夏油」
「矢車さん…退院したんですね…」
「お前顔色悪いぞ…大丈夫か?」
「ただの夏バテですよ…平気です」
「なんかあったら相談してくれよ?」
「はい…」
矢車さんは悟たちの方へと声をかけて離れる…
その夏はとても忙しかった
昨年頻発した災害の影響もあったのだろう…蛆のように呪霊が湧いた
祓う
取り込む
この繰り返し
祓う取り込む…
皆は知らない呪霊の味…吐瀉物を処理した雑巾を丸飲みしているような
誰のために…?あの日から自分に言い聞かせている私が見たものは何も珍しくない周知の醜悪…知った上で私は術師として人々を救う選択をしてきたはずだ……ブレるな術師としての責任を果たせ…
「猿め…」
夏油と入れ違いでシャワーへと入る
「よう、また会ったな」
「矢車さん…」
「退院したてだっていうのに任務を振り分けられちまってな高専行く前に祓ってきたんだ」
「そう…ですか…」
「チャチャッと浴びてきちまうから外で待ってろ」
「どうして…」
「少し話をしようぜ」
シャワーで汗を洗い流して外に出るそこには灰原と夏油がいた
「おっ灰原もいるな」
「矢車さん!」
「相変わらず元気そうだな」
わしわしと頭を撫でる
「ははっ矢車さんも退院おめでとうございます!」
「ありがとよ、ところでなんの話しをしてたんだ?」
「術師を続けられそうかって話です!」
「やっぱり悩んでたんだな」
「…はい」
夏油の横に座り話を聞く
「俺がいない間なにがあった」
「あの後…盤星教の本拠地に行って…悟とあの男がいたんです…」
「禪院甚爾か…」
「もう男の方は死んでて…その後盤星教の奴らが出てきたんです…」
夏油はあの時の光景を思い出す…
『この役立たずめ!』
『高い金を払ったのに!!!!!!』
『小娘1人殺せないとは!!』
「盤星教の奴らは…理子ちゃんを…本気で殺しに来てて…その男が失敗すると今度はその男に文句を垂れる……私はもう…自分がなんのために術師をしているのかが分かりません…」
「相手は非術師だがそいつらは自分たちを殺しにくる…なのに俺たちはそいつらを護らなくてはならないその矛盾を悩んでるわけか」
「はい…」
「そんなに悩んでたんですか夏油先輩!」
「灰原…なるほどな、そいつは…「やぁ!」おい…」
「君が夏油くんだね?どんな女がタイプかな?ん?」
「自分はいっぱい食べる子が好きです!!」
「ほう…」
「灰原…」
「大丈夫ですよ悪い人じゃないです!人を見る目には自信があります!」
「私の隣に座っておいてか…?」
「…? はい!」
「アッハッハッハッハッ!君、今のは皮肉って言うんだよ」
「それじゃ!失礼します!」
灰原は元気よく挨拶して帰っていく
「九十九…お前ってやつは空気を読まないな!」
「良いじゃないか矢車くん」
「あの…矢車さん…こちらは…」
「特級術師 九十九由基って言えば分かるかな?」
「あの?」
「えっ?!なになに?どの?」
「特級の癖に任務を受けずプラプラしてる変人…」
「私高専ってきらーい」
「これは俺が教えたんだ」
「えー矢車くんさぁ…」
「でも事実だろ?」
「ブーブー!…でも高専と方針が合わないのはホント、ここの人達がやってるのは対症療法私は原因療法がしたいの」
「原因療法…?」
「呪霊を狩るんじゃなくて呪霊の生まれない世界を作ろうよってこと」
「なっ…」
「少し授業をしようかそもそも呪霊とはなにかな?」
「人間から漏出した呪力が澱のように積み重なり形を成したものです」
「エクセレントすると呪霊の生まれない世界を作る方法は2つ
1 この世界から呪力を無くす
2 全人類に呪力のコントロールを可能にさせる
1はね結構いい線いくと思ったんだ。モデルケースもいたしね」
「モデルケース?」
「君もよく知ってる人さ… 禪院甚爾」
「はっ!」
「天与呪縛によって呪力が一般人並みになるケースはいくつか見てきたけど呪力が完全に0なのは世界中探しても彼一人だった…彼の面白い点はそこだけじゃなに禪院甚爾は呪力0にもかかわらず五感で呪霊を認識できた
呪力を完全に捨てる去ることで肉体は一線を画し逆に呪いの耐性を得たんだよ彼は…まさに超人負けたことを恥じなくていい」
「それは俺に言ってんのか?」
「ふふっ話に戻るね彼を研究したかったがフラれてしまってね…惜しい人を亡くしたよ。天与呪縛はサンプルも少ないし私の今の本命は2だね
全人類に呪力のコントロールを可能にさせる…知ってる?術師からは呪霊は生まれないんだよ」
「あっ!!」
「もちろん術師本人が死後呪いに転ずるのを除いてね…術師は呪力の漏出が非術師に比べて極端に少ない術式行使による呪力の消費量やキャパの差もあるけど1番流れだね…術師の呪力は本人の中をよく廻る。大雑把に言ってしまうと全人類術師になれば呪いは生まれない」
「じゃあ…非術師を皆殺しすればいいじゃないですか…」
「夏油くん…」
「あっ…」
「それはアリだ」
「えっいや…」
「というか多分それが一番イージーだ…非術師を間引き続け生存戦略として術師に適応してもらう要は進化を促すの鳥たちが翼を得たように恐怖や危機感を使ってね…だが残念ならが私はそこまでイカれてない」
「夏油…非術師は嫌いか?」
「分かりません…」
「俺が思うにその選択はひとつの道としてはありだろう」
「…」
夏油は矢車の話を静かに聞く
「だがその道は楽じゃない…もちろん俺たちだって止めに入る。
どんなにひどい仕打ちを受けてたとしても虐殺を肯定していい理由にはならないからな」
「矢車くんの言う通りだねまぁどちらを本音にするかは君がこれから選択するんだよ」
「じゃあね!本当は五条くんにも挨拶したかったけど間が悪かったようだ
これからは特級同士3人仲良くしよう!」
「悟には私から言っておきます」
「あ最後に星漿体のことは気にしなくていい、あの時別の星漿体がいたか既に新しい星漿体が生まれたのかどちらにせよ天元は安定しているよ」
「そうですか…」
灰原が死んだ…
「なんてことは無い2級呪霊の討伐任務のはずだったのに…!クッソッ!!!!
産土神信仰…アレは土地神でした1級案件だ…!」
「今はとにかく休め七海…任務は悟が引き継いだ」
「もうあの人1人で良くないですか?」
術師というマラソンゲーム…その果てにあるのが仲間の屍の山だとしたら…?
「は?」
「何度も言わせるな傑が集落の人間を皆殺しに…」
「聞こえてますよ!だからは?って言ったんだ」
「傑の実家はすでにもぬけの殻だった…ただ血痕と残穢から恐らく両親も手に…」
「んなわけねぇだろっ!!!!!!」
「悟…俺も……何が何だか分からんのだ…」
「あ…くっ…」
調査書に目を通す…何度も…何度も…
「そうか…夏油…それがお前の選んだ道か……灰原の葬儀もあって次はこれか…俺の居ない時に全部事が進んじまう…」
着信が入っていることに気づき携帯を手に取る
「俺だ」
《夏油傑を発見したとの報告です。近くに家入硝子がいるとの事なのでそちらの護衛をお願いします》
「わかった…」
監督官に車をまわしてもらい現場へと着く
「硝子…夏油はどこだ」
「もういなくなったよ」
「…そうか」
腰の刀を握る力が強くなる
「お前は車にいけ」
「はーい」
矢車はそこで煙草に火をつけた
本当は闇堕ちしないルートも考えてたんですけど今後の展開のために夏油くんには犠牲になってもらいました…
評価・感想お待ちしてます!