あの後、千束に問い詰められた吉松が、全部吐いた。
というか、嘘を吐こうものなら私が分かる限り横から都度訂正したため、最後の方では吉松も諦めたみたいに素直にペラペラと真実をぶちまけた。
そうして “救世主さま” の本当の姿を知った千束は案外、冷静なもので。
傷付いた様子ではありながらも、吉松自身も認めるその才能で、容赦なく彼を縛り上げ、拘束した。
原作よりも、“救世主さま” を目指して憧れていた期間が短かった、という影響が大きいかもしれない。
それから、しばらくもしない内に千束から連絡を受けたミカ先生がやって来て。
先生は、無残にも拘束されている吉松を見て驚いたようだったけど、全てに納得したような表情でもあった。
それで結局吉松は、あることないこと、十二単くらいに罪状を着せられて、警察に届けられることとなり。
『外患誘致罪』とまではいかないだろうけど、恐らく二度と刑務所を出ることは叶わない、くらいの塩梅らしい。
そのあたりは、DAの中でも色々と詳しい人がやってくれた。
その人は最後に一つだけ、彼と契約を交わすのも手伝ってくれた。
その間のミカ先生の様子とか、他にも語るべきことはあるだろうけどとりあえず、吉松の話はここまで。
次は、私の話だ。
私と千束の話。
私は “電波塔のヒーロー” という肩書(原作通り、電波塔は崩れなかったらしい)を楯に、司令に直談判に行った。
都内の何処かで喫茶店開くから、そこをDA支部という扱いにしろと。めちゃくちゃ自由にやらせてもらうけど、黙認しろと。あと千束も連れて行くからと。
驚くべきことに、これがほとんど無条件で通った。
何やら私に負い目があるらしい。吉松の言っていた、“上からの圧力” に屈した云々という話だろうか。
まあでも、それでこうして話が通しやすくなったのだから、私としてはもう別にどうでもいいことだ。
私はこれでチャラ、と司令に言った。司令は納得がいかない様子だった。どっちにかは知らないけど。
それで、DAを全力で抜けようとしていたミズキさんと、何だか疲れた様子のミカ先生、それにもちろん千束を誘って、『喫茶リコリコ』を開業した。
ミズキさんがDAを抜けようとしていたのは、『梓のデータが流出したことに気が付いてたのに、梓への情報を規制した』のと、『単純に組織の仕組みが気に食わない』から、らしい。
そんなことがあったとは知らなかった。
やっぱりDAはクソである。チャラにする、というのは取り消しだ。
ミカ先生が疲れた様子だったのは……うん。
でも吉松のやったこと、やろうとしていたことを考えると、こうするしかなかったと思う。
時間が先生を癒やしてくれることを祈ろう。
それから、千束。
千束はミカ先生とは反対に、驚くほど元気である。
労基の関係から、ミカ先生の実子扱い(無理がある)で私たち二人とも喫茶店で働いているのだけど、私などよりもよほど元気なのだ。
事あるごとに目を輝かせては
“救世主さま” についてダメージはないのか、それとなく聞いてみれば、『梓の身体を壊したことは許せないけど、私の命はどう取り繕っても吉松さんにもらったものだから』と。
つまり、彼に与えられた人生である以上千束からは何も言うことができないし、それを表に出すこともない、ということだろう。
齢7つにして、凄まじい割り切りである。
私はそれ以来、気にするのをやめた。
吉松とした、最後の契約について話そう。
『十年後、アラン機関が千束に新しい人工心臓を無条件に提供するよう取り計らう』
千束の人工心臓は、あと十年程度しか保たないこと。
それを知っていた私から持ち掛けた契約だった。
吉松がこの契約を受け入れたのは千束の才能が惜しかったのか、それとも……、と。
それは、私が考えて分かることではないのだろう。
きっと、ミカ先生と吉松にしか分からないことだ。
……こんなところだろうか。
ミカ先生の淹れるコーヒーはまだあんまり美味しくないし、店の和スイーツ作りだって私とかミズキさん頼りだけど。
千束?
千束は良いの、看板娘だから。
あとは、千束がどっかから犬を拾ってきて『リキ』と名付けたとか、色々あるけど―――。
「―――いらっしゃいませ!」
ドアの鈴が鳴る音と、千束の元気な声が響いてきた。
私も接客に出なくては。
そう、まとめるなら……『喫茶リコリコ』は “それなりに” 上手く行っている、ということになる。
お疲れさまでした。
お読みいただき、ありがとうございました。
原作開始後については、書けるならダイジェスト的に書きたいと考えています。
原作は吉松がいなければ大部分が成立しなくなるため恐らく、前話で布団の中に千束がいなかった世界、吉松が元気に動いているIF的な世界に移行することになると思うので、お読みになる際はご注意下さい。