誕生日ワンライで書いたけど誕生日要素は無い
俺は誇り高きホットフィックス隊の一員……なんだけど。今は、少し自信がない。
というかなんなんだ一体この隊。「自分平凡ですよ〜」って顔をしている隊員ですらとっさの時に規格外の身体能力発揮してくる。いや別にとっさではなくても、俺がやっと運ぶような荷物を代わってやすやす運んでくれるような人ばっかり。
優しくて善人で、その上エリート。なんか、俺が誇れるのって食欲だけな感じ。
違うんだよ。幼い頃から訓練生の時まで、身体能力には自信があったんだ。昔からそこら辺は強くて、目標ができてからは体も熱心に鍛えてたし、それに見合った能力は身についているって思ってた。
訓練生の中ではトップだったし、欠員補充で入隊することになっても少しはやっていけると思ってた。
……全然届かない。隊員の平均成績に全く届いていないことを、入隊してから知った。訓練生の頃は、隊員の正確なデータ手に入れられなかったから。
日課のトレーニング、足りないのかなあ。訓練生時代よりも増やしてるし、日頃の業務に支障がないようにってやってるとこれが限界なんだけど。それとも、言い訳してるだけでもっとできるものなのかな、人間って。
日々募る思いは漏れる。先輩と一緒にご飯をとる機会があって、ついぽろりと
「自分の取り柄わかんなくなってきちゃったっていうか……」
と言ってしまった。
先輩は咀嚼しつつきょとんとした顔で俺を見ていたけれど、
「……まあわかるよ、俺も入りたてはそんな感じだった」
ご飯を飲み込んで、そう言ってくれた。
「補欠として入ることってこの隊よくあるけど、大体そんな感じなんだよ。正式に認められても、いやその分、隊長が心折ってくる」
「隊長が、ですか?」
パワハラする隊長を思い浮かべてみて……心の中で首を振る、いやいや絶対有り得ない!
「そ。だってあの人にはどうやったって勝てないでしょ?」
思わず首を縦に振ってしまう。その一方で、ああそこからか、とも思う。遠すぎて競う気にすらならなかった、なんて言えば笑われるだろうか?
「……でも、追いつけると思うから悔しがるんじゃないんですか。俺隊長に追いつける気しないです」
「まあね。追いつける気は俺もしないよ、昔から。でもさ、俺らずっとトップでやり続けてきてたの」
それは俺も同じだけど。
「群を抜いて優れてると思って、でも周りには精一杯優しくやってきた。傲慢さとかも隠してね。で、選ばれて隊に入ったと思ったらアレだ」
ああそうか、俺は選ばれてないんだ……数合わせというのは、最初から分かっていたから。
「だから最初はちょっと自信なくすし、隊長にこっそり反感持ったりね」
「……先輩もそうだったんですか?」
信じられなかった。穏やかな人だという印象があった。隠していたとしても、傲慢が似合う人ではない。
「俺も若かったなあ、とか言ったら枯れすぎかもだけど。逆らったりはしてないよ。上下関係は分かってた」
隊員の中に明確な上下関係は存在しないものの、年功序列的なものはちゃんとある。部活やら訓練生時代やらで、そこら辺は厳しく叩き込まれていて、入ってみたら逆に緩くて困惑したくらいだけど。
「先輩はどうしました? やっぱり強くならないとダメですかね」
そう聞く。こういうのは先達に教わるに限るのだ。
「まあそうだけど、うーん……これだけは覚えといて。人は、限界を知るともっと強くなれる」
それはなんだか矛盾しているように思えて、そうですかねとだけ返す。
「自分はここまでだって思っちゃダメってよく聞くけど、思っちゃダメって思うほど思うもんだし人間。隊長のようになろうって思うと疲れるけど、ここまでを悟ると、じゃあその範囲内でも頑張ろうって思える。それを続けてれば、こっそり限界広がってるもんだよ」
「……よーするに、焦るなってことですか?」
「そうそう。焦りは心を壊すよ。牛のように進んでいこう」
牛のようにというのはどこかで聞いた気がしたが、どこで聞いたのかはさっぱり思い出せなかった。
「……ありがとうございます」
「ああそれとね、君の強み。行動が速い」
えっと、それは早とちりってことでは? 考えなしってことでは? と思いつつ、なんか嬉しい。
「えへへ……」
「自分の中に確固たるものがあるからこそ、決断と実行が早いんだね。その分ミスもあるけど、そこは俺らがフォローできるから……自分の正義を曲げないようにね」
「まあそこは変わりませんよ! ……そうでなきゃ、ここまで頑張れなかったんで!」
「なら安心だ。そこを曲げて悲惨なことになった人を、俺は知ってるから」
そこで話題は切り替わった。悲惨なことになった人についても結局聞けなかった。牛のように……についても思い出せなかったけど、動物つながりかことわざがひとつ出てきた。
井の中の蛙、大海を知らず。そして大海を知ったとしても、海水を泳ぐことは出来ないから結局知らないまま。ただ憧れだけに身を焦がすようになる。
でも俺はカエルじゃない、大海に触れ、泳ぎ始めている。いつか、憧れた正義の味方になりたい。その思いは全然消えてない。焦りだって正直まだある。ただ、日課を変えずに続けていくということも意外と大事かもしれないと分かっただけだ。
何となく自分の考えが極端だってことは知っている、でもだからこそ俺にしか動けない時があるんだと思う。その時に自分でフォローできるようになれたら、それでいい、まずはそこだ。そのために場数を踏まないと話にならないなら踏んでやる。
訓練生時代、俺と同じくらいの成績の人はいた。それでも俺が選ばれたのはきっと、俺にしかできないことがあるからだ。俺は俺なりに頑張ればいい。
誇り高きホットフィックス隊の一員として!