〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。

「ソラシド市防衛戦」。

シン・レオ・スタークラスターの襲来による未曾有の大災害は死力を尽くしたプリキュアと勇者達によって食い止められ、難を逃れたのであった。

その頃、勇者世界でシン・バーテックスの世界に閉じ込められた東郷と蒼葉は開いたゲートの先にある世界に脱出していた。

そこは「スカイランド」。
しかし、王都から最も離れた辺境の地だった…。


第99話 天空の世界。

 

蒼葉「…俺は…身体の大部分が散華によって機能が失われている…。」

 

………………………。

 

閉じ込められた先の世界で、蒼葉から語られた彼の秘密。

当然、東郷は怒りを露わにしていた。

 

いくら、恩があるとはいえ自分を守ろうとした人間のために供物の請け合いを担っていたなんて到底、許される行為ではない…ましてや、反対を押し切ってまで強行したのだ。

 

何のために、自分が守られていたのか…それを理解していない。

小さなその気遣いが逆に大きな事になることを、東郷は理解して欲しかった。あの世界での極限状態で語られたことだ…精神状態がまともじゃない時に聞いたその話には当然、怒りが先に出てしまう。

 

だけど、彼のその思いを汲めば一方的に怒れることではない…自分も人のことを言えない立場だ。

 

彼もまた、「満開」と「散華」によって人生を狂わされた人間の1人…最も、その影響で暴走行為に走ってしまった自分が彼が選択したその行為に高圧的にはなれなかった。だから、今までの感情を水に流して「生き残る為の道」を探す事にした。

 

今は生きて戻らないといけない…数少ない仲間だ。互いに信頼しなければきっと帰ることができない。自分1人ではなく、2人で帰ろう。

 

東郷はその考えのもと、彼と行動を共にする事にした。

そして先日…いや、どれほどの時が経っているかもわからない。

帰り道を探している道中、偶然開いたゲートに飛び込む事にした。

 

どんな世界に辿り着くかは賭けだった。だが、こんな場所にいるよりかは遥かにマシだ。

 

決死の覚悟で飛び出したその先は、「スカイランド」だった。だが、スカイランドを知らない2人にとってはそこは未知の場所…とりあえず、人気さえあれば何とでもなるだろう…東郷は過去に読んだ旧日本軍のサバイバル知識を元に、生き延びる術を見出すための行動を取っていた。

 

そして、今。親切な人に拾われた2人は小屋の一つを借りて生活をしていた。

 

湯浴びを終え、小屋に戻ってきた東郷は本を読む蒼葉に声をかける。

 

東郷「咲良君、お風呂空いたわよ?。」

 

 

蒼葉「ああ、わかった。だが、この本を読み終えてから入る事にする。面白い本なんだ。」

 

そう言って、読んでいた本を見せる蒼葉。

スカイランドの文字が書かれたそれは、勉強しなければ読めるものではない…蒼葉はわずか2日でスカイランドの文字を理解したのだ。

 

東郷「…何の本なの…?。」

 

 

蒼葉「ああ、この世界における騎士道のイロハが書かれたものだ。異世界の書物は興味深い…その世界の文化を知れるきっかけにもなる。」

 

 

東郷「そう…確かに、文化を知ることは大事なことね。郷に入っては郷に従え…私達は別の世界の人間。この世界で行動するなら、知っておかなければいけないこと。スカイランド…聞いたことのない世界だわ。貴方は?。」

 

 

蒼葉「俺も無いな。王都に行けば、何とかなるかもしれないが…。」

 

 

東郷「その王都に行くにも距離が遠すぎるわ。何とかして、元の世界に帰らないと…向こうではきっと私たちの行方を探してるはず…「海祇機関」との戦いの最中でやらかしてしまったわ。」

 

 

蒼葉「…その点については、すまない。俺がお前を怒らせた結果だ。」

 

 

東郷「もういいわよ…いつまでも根に持ってるわけじゃないもの。」

 

 

蒼葉(…本当か?。その点については…否定したい…。)

 

 

東郷「…何か言った?。」

 

 

蒼葉「…いや…何も。」

 

本を閉じて立ち上がる蒼葉。端末を置いて浴場に向かった。

東郷は他の本棚に置いてある本を見る。

 

多少、スカイランドの文字が読めるようにはなっていた。ペラペラと、ページを捲っていくとある絵柄に目が付いた。

 

それは、空に輝く星の中にいる1人の少女…読める部分のみ、解読するとこう書いてあった。

 

————————————

 

その少女、闇を祓う者なり。

その少女、天空の国に光をもたらす存在なり。

その少女、希望の"一番星"。

 

————————————

 

他にも重要なことが書いてあったのだろう、しかしそこは読めなかった。そして、そのイラストはまるで……。

 

東郷(まるでプリキュアのようね…それにこれ…エルちゃんに似ている…?。)

 

その本から、東郷はある仮説を立てた。

 

東郷(スカイランドと呼ばれるこの世界はもしかして、プリキュアが精通している世界?。なら…ソラさん達の事を知っている人がいれば…。)

 

窓の外を見る東郷。雨が降り出し、徐々に本降りとなってくる。

 

東郷(…不吉な予感がする…スカイランド…ここに辿り着いたのには理由がありそうね…。)

 

………………………。

 

〜スカイランド、無人の浮島〜

 

スキアヘッド「…ふむ…。」

 

顎に指を添え、キョーボーグと戦っている戦士を見る。

その正体は、樹。まるで楽しむかのように、ワイヤーでキョーボーグをズタズタに引き裂いていた。

 

自ら「心の闇」の力に手を染めた樹はましろのように第二人格に支配されることなどなく、純粋な彼女の心のままにその残虐性に忠実だった。

 

細切れにされたキョーボーグの残骸がいくつも落ちる中、樹はスキアヘッドに向かって歩き出す。

 

樹「…邪魔しないでくださいよ。私、貴方達と戦うつもりなんてないんです。」

 

そうは言うものの、殺気が凄まじくスキアヘッドは顔色ひとつ変えない。まるで、その闇の量を分析するかのように歩み寄る樹を観察する。

 

スキアヘッド「愚かだな。何のためにその力に手を染めた?。」

 

 

樹「大切な人を探しにきたんですよ。前の私のままじゃ、きっと行動に移せないから…だって、世界中で大きな戦いがたくさん起きてるでしょう?生き残るためには強くならなくちゃいけない…時間がなかったから、手っ取り早いやり方で手にしただけです。」

 

人差し指を向けた途端、スキアヘッドの頬に傷が入る。

 

樹「…すごいなぁ。確実に首を狙ったんだけど…。」

 

 

スキアヘッド「フン、貴様の放つ殺気が荒すぎる。故に、わかりやすい。」

 

 

樹「…私が弱いと言うことですか…?。」

 

 

スキアヘッド「強くもなければ弱くもない。何もないのだ…先程の戦いを観察してよく分かった。貴様…光と闇の力にも属さないその力の正体は「無」だ。最も愚かで危険な力を手にしたものだな、吐き気がするくらいに。」

 

「無」の力。

 

それは、光にも闇にも属さない双方の天敵とも言える巨大な力。

 

スキアヘッドの言う通り最も愚かな力だが、最も危険とも言える力だ。

樹が手にした力は、どちらかと言うとその力に近いものだった。

 

スキアヘッド「「劇団」の連中が「無」の使者ということは理解した。心の闇の力は、直にその力に昇華する。」

 

第二人格のましろが最終的に行き着く先はその「無」だったのだ。

 

だが樹はその力の一端を手にしてしまっている…自らが望んで手にした「心の闇の力」。それが「無」につけ込まれ、知らずの内に樹は「無」に蝕まれていたのだ。

 

だが、そんなことを聞いたところで樹は止まらない。

 

樹「それであの人を助けられるなら別にいいよ?。光とか闇とか…無とか分からない事を述べられても私の目的に変わりはない…そして、気持ちを伝えて幸せになるんだ?。強くなった私を見てくれたらきっと…あの人はもっと褒めてくれる。」

 

 

スキアヘッド「…歪んでいるな。知らずのうちに「無」に心を奪われているぞ?。だが…貴様の存在は危険因子となりうる、ここで葬っておくのも得策か…。」

 

そう言って、スキアヘッドはアンダーグエナジーの衝撃波を放つ。

対する樹はワイヤーを束ねて壁を作り、難なく防ぎ切る。

 

樹「戦う気はないって言ったのに…貴方は死にたいんだね?。だったら、叶えてあげますよ?。そして私はもっと…強くなる。」

 

まるで引っ掻くように、ワイヤーを操作する樹。

スキアヘッドは無表情のままに避け続けていく。

しかし、いつまでも避けられるはずがなく僅かながらに身体が削られていた。

 

だが、顔色ひとつ変えない…なぜなら、彼は「虚無」だからだ。

 

目的のためには感情など必要ない…元々、無の感情を持っているスキアヘッドにとっては樹の纏う「無の力」には何ら問題はなかった。

 

あるとすれば、彼の崇拝する皇帝のため。

 

これからの行動を考えれば、彼女の存在は邪魔となりうる。そう判断した為に戦う選択肢を取った。彼自身が樹を止めたいわけじゃない…全ては皇帝「カイゼリン・アンダーグ」の為。

 

虚無である彼に取ってはそれが行動原理なのだ。

 

樹「どうしたんですか、私を倒したいんでしょう?。」

 

ワイヤーを巧みに操りながら、スキアヘッドに迫る樹。

だが、スキアヘッドは必要最低限の動きのみで避けては合間に反撃を入れる。

 

樹「何でもいいんです…強くなかったから、私は守りたい人も守れなかった。強くないからみんな、私のことを気遣う。私が強くなればみんなの荷物が減る…「無」の力でもなんでもいい、私は昔の私じゃないんだ。」

 

 

スキアヘッド「愚かなり。だから、「無」に蝕まれるのだ…貴様の行動原理は"何も感じない"。私は皇帝のために心を必要としていない…。」

 

 

樹「私は大好きな彼を助ける為…!!。」

 

 

スキアヘッド「それを頼まれたのか?。違うな…貴様の勝手な意思でそう思い込んでいるだけにしか過ぎない。放っておいても、自力で戻ってくるだろう。でなければ、死ぬだけだ。」

 

 

樹「……何が言いたいの…?。」

 

 

スキアヘッド「闇は「無」に取り込まれやすい性質を持つ…闇に手を染めた貴様は「無」にとっては格好の餌なのだ。力が無いからと勝手に思い込んだ貴様はすでに「無」にとってのいい餌場となっている。私は虚無だが、それは必要としていないだけの話…私の行動原理はカイゼリン様のためだ。だが、貴様はどうだ?。その全てが身勝手そのもの…その者にとっては貴様の助けなど必要としていないかもしれない。その証拠に貴様だけ勇者特有の「意志の力」が発現していない…下界では、もう1人の勇者がその力を発現させたぞ?。」

 

 

樹「…うるさい…ッ!。」

 

怒りに震える樹は、ワイヤーを駆使してスキアヘッドを切り裂く。

しかしそれは、幻影だった。

直後、彼は自分の真上に立っており手のひらを広げてアンダーグエナジーを溜め込む。

 

スキアヘッド「力を求める事に否定はしないが…虚無である私に「無」の力を突きつけたところで特に影響は無い。闇につけ込まれ、そしてそれが「無」に食われ始めている…そのうち貴様は「劇団」のアデルとかいう道化師と同じ存在になるだろうな?。まさに滑稽だ、愚かな力である「無」にとっては丁度いい末路だろう。」

 

溜め込まれたアンダーグエナジーを一気に放つスキアヘッド。

直撃を受けた樹の周りは大爆発を起こし、地面に大きな穴を開けていた。その視線の先には横たわる樹…黒煙と共に砂煙が晴れるとスキアヘッドは鼻で笑う。

 

スキアヘッド「貴様は力に固執するあまり、勇者本来の力である「意志の力」から遠ざかっている。せいぜい、足掻く事だな?。現実を受け入れよ、「無」はどこまで行っても「無」なのだ。」

 

ゲートを開いて消えるスキアヘッド。

意識までは刈り取られていない樹は吐き捨てられるように言われた言葉に歯を食いしばり、地面の砂を握り締めて。

 

樹「…うるさい…誰も知らないくせに…私が無力さで苦しんでいたことなんて…誰も理解しなかったくせに…ッ!まだ足りない…もっと力を…もっと…私に力を…ッ!。」

 

そう思った瞬間、樹の身体の周りには"白い力"が纏わり付く。

そして、樹は徐々に感情を奪われていく感覚に苛まれる。

 

樹「…あれ…何だろう…苛立ちが無くなった気がする…あんなこと言われて悔しいはずなのに…おっかしいなぁ…でも…また力が手に入った。そして蒼葉さんを助ける為にまた近付いた気がする…待っててくださいね?私が必ず…助け出して見せますから…!。」

 

高らかに笑いながらその場を去る樹。

 

「無」の力…樹は徐々に「個」を失っていく。

 

そしてそれは「無の力」との戦いを意味していた…スカイランドに立ち込める暗雲…果たしてそれは…?。

 

……………………end。




「無の力」に蝕まれていく樹…感情を食われ始め、彼女はアデルと同じ「無の化身」へと変わってしまうのか…。

そしてその頃、風もまたスカイランドへと辿り着いていた。

トーヤと共に行動する風。

だが、そんな2人の目の前に「劇団」のNo.Ⅱであるナイアルが現れて…。

次回
第100話 戦慄、ナイアルの凶刃。
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