〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
スカイランドへとやって来ていた東郷と蒼葉。
右も左もわからないこの世界で2人は留まり、そして手にした書物から「プリキュア」に関連する世界の可能性を見出していた。
その頃、同じくスカイランドへとやって来ていた樹はスキアヘッドと対峙。樹の闇の力は「無」に干渉され、彼女は徐々にアデルと同じ存在へと変わっていっていた。
そして王都付近…樹を追う風とトーヤとまた、スカイランドへとやって来ていた…。
風「……………。」
スカイランドへとやって来て3日の時が経った。樹に関する有力な情報は手に入れられず、分かったことは。
「プリキュアに似た存在が闇の力を振り撒いていた」との事。
幸いなのは、彼女の目的が故に他人を傷付けていない事。しかし、闇の力は看過できない…この世界においての闇は絶対悪のようなものだ。
人的被害を出していなくとも、樹の存在そのものがこの世界にとっての害となってしまう。現に、青の護衛隊までもが動く事態…彼らに見つかる前に何とかしなければ、樹はこの世界で完全に敵として認識されてしまう。
当然、ソラシド市にいるソラ達と友奈達は自分たちの居場所が分かっている。きっと、ソラシド市の件が片付けばこちらに来るだろう。
"解散宣言"をしたとしても、きっとその心は折れていないはず…分かっていながらも風は自分の不甲斐無さからそうせざるを得なかった。
もう、これ以上迷惑をかけたくない。
「満開」の後遺症を知った時と同じ感覚に苛まれる。果てしなく続く戦いにきっと、精神がすり減っていたのだろう…冷静な判断を下すことができなかった。ましてや、大切な家族の心に気付かなかった事。それが何より、彼女の中では大きい事だった。
今だって、笑うことが出来ない…眠ることも全然出来ない中、風はただひたすらに樹を止めることしか考えていない。
そんな風を見ていたトーヤも流石に気を使い始めたのか、隣に立つ。
トーヤ「お前の妹の手掛かりは今日も見つかりそうにない。」
風「…そう。だったら、明日また動かなきゃね。」
力無く発言する風。ずっとこんな調子だ、トーヤも気にかける。
トーヤ「その調子だとお前、死ぬぞ?。」
風「樹を止めるまでは死ねないわよ。」
トーヤ「本当は後悔しているのだろう?。勇者部という仲間を見限った事。」
風「見限るなんてとんでもないこと言わないで。私は今でもあの子達が大切よ。だからこそ…身内の問題を背負わせるわけにはいかない。ああでも言わないと、きっと付いてきていた。」
トーヤ「…お前達の強みは個々の強みじゃないと思っていた。師匠が言っていたんだ、お前達は6人で一つの花…その絆が力となっていたと。だが今はどうだ?。お前と妹は散った花弁のようなものだぞ?。無理強いはしないが…妹を止めた後は奴らの元に戻ったらどうだ?。」
風「…それ、あんたなりの心配?。フフ、意外…てっきり口うるさく説教されるのかと思ったわ。」
トーヤ「…俺はただ、知りたいんだ。己が抱いていたこの矜持が果たして正しいのかどうか…俺に憎しみは無い。だが、託されたものはある。」
プリズムに焼かれた村の事を思い出すトーヤ。
あの日の光景を思い浮かべると、どうしても許せない部分はまだある。
悔しさを吐き、無念を残して命を落とした村人。一挙にして全てを奪われたあの瞳…人は死ねば、何も残るものはない。かつてはそう思っていた。だが、あの日に見た瞳は残すものしかなかった。
あの後悔と無念はどこにいくのだろうか…人の無念を背負って戦う事が果たして正しい事なのか?。
トーヤはその答えが知りたいと感じている。そして、消沈しながらも妹の為に奔走する風について行き、自分を見直したいと思っている。全てを捨ててまで、成し遂げたいものは何なのか…風の旅に同行する理由はそれだった。だが、それと同時に心配にもなる。今にも崩れそうになりながらも、彼女はただ一つの踏ん張りを見せている。しかしそれは無理をしているに過ぎない…闇に手を染めたのだ、そう簡単に手元に戻ってはこない。
トーヤ「…俺の話はもういいか…明日の早朝、ここを出て妹の手がかりを探そう。」
風「無理に付き合う必要は無いわよ。ここに来たいから我儘を言ったのもあるけど…あんたまでこんなことに付き合う必要なんて…。」
トーヤ「俺にも意味がある。この剣を握る手が正しいことに振るわれてるのか…救うための戦いをするお前を近くで見たいんだ。気を使うな。」
踵を返して、トーヤは宿の方に戻る。
風「……今の私を見ても得るものなんて……樹…。」
…………………………。
ナイアル「…久方ぶりに戻ったが……やはりここの空気は不味くて仕方ない。」
スカイランドへと戻ってきていたナイアル。その目的とは……。
ナイアル(…「世界を救う究極の力」…スカイランドに突如として現れた謎の古代遺跡…関連性があるのは違いなさそうだが…アデルでさえその遺跡の場所までは掴まないでいる。まるで、我々から逃げるように…。)
スカイランドに現れた謎の古代遺跡。
先にその情報を掴んでいたナイアルは、その調査のために故郷に戻ってきていた。手掛かりはそれしか無い…遺跡の在処は掴めない。
そしてこの遺跡が次なる激突を生むことはナイアルはおろか、誰も知らない。
ナイアル(…仕方あるまい、王都の方にまで向かうとするか…王族に吐かせるのも一つの手…プリキュア共に僕の「演出」を汚されたんだ…焼くくらいは問題なかろう。)
刀を手に、ナイアルの瞳の奥にあるものは…憎悪だった。
…………………………。
翌朝…。
髪を結って、準備を整えた風。
今日こそ、見つけて見せる…。
そんな思いが滲み出ていた。だがその瞬間、建物が崩れる音が町中に響き渡る。
トーヤ「何事だ…!?。」
慌てて窓を開けて状況確認するトーヤ。
建物が刃物で切り裂かれたように、斜め一線に崩れていく。
それが何なのか、トーヤはすぐにわかった。
トーヤ「…まさか…ッ…!!。」
風「ちょ…どこに行くのあんたッ!?。」
慌てて宿を出るトーヤ。風は困惑した表情を隠せず、トーヤを追いかける。
現場は割と近い…駆けつけたトーヤはそこにいる人物に怒声をあげる。
トーヤ「貴様…ナイアルッッ!!。」
ナイアル「…誰かと思えば…兄さんが可愛がっている小物か。」
風「あんたは「劇団」の…ッ!。」
ナイアル「犬吠埼風…なるほど、勇者がバラバラになったという話は本当だったか。フン、新任の小僧が言っていた通りだったな。お前、ここで何をしている?。」
風「そんなの、あんたには関係ないでしょッ!。それよりも何、この状況は!?。」
ナイアル「見ての通り、街の破壊さ。騒ぎを立てれば、青の護衛隊が出てくるだろう?奴らの1人を捕まえれば王族が応えるはずだ、聞きたい事があるのさ…そうだ、お前達は知らないか?。「世界を救う究極の力」の在処を。」
風「世界を救う究極の力…?。」
トーヤ「そんなものは知らんッ!それよりも…ッ!。」
鬼の形相で突撃するトーヤはキュアスラッシュに変身。剣を振り翳すも、ナイアルは冷静に受け止める。
ナイアル「見事な太刀筋だ、さすが兄さんの剣技…だが、感情が込もりすぎているな?。」
刀を振り抜いてスラッシュを弾き飛ばすナイアル。風は変身してスラッシュを受け止めた。
ナイアル「知らないなら良い。だが…お前達は邪魔だな…ここで消えてもらうのも一つの手か…何故、ここにいるのかは知らないが…。」
足音一つも無く、接近するナイアル。その白刃は風の懐を捉えていた。
風「!!!。」
ナイアル「まずは一つ…!。」
スラッシュ「させるかッ!!。」
2人の間に刃を入れ、ナイアルの斬撃を受け止めたスラッシュ。鈍い金属音と共に、火花が散る。
ナイアル「ほう…?。」
スラッシュ「やはり狂っている…その太刀筋から分かるぞ…ッ!。」
ナイアル「だから何だと言うんだい?。」
スラッシュ「青の護衛隊を引き摺り出す為に街一つを簡単に潰せるその狂気さだッ!。なんの関係も無い者を巻き込んで…ッ!。」
ナイアル「それは君の正義感だろう?迷惑だ、振り翳さないで欲しいな。」
スラッシュ「お前だけは止めないといけないッ!師匠のためにッ!!。」
ナイアル「兄さんのためだと?フン…あんな堅物の下で修行を積んでいるなんて可哀想なものだな?。」
技量の差からか、スラッシュは少しずつ身を削られる。その差は埋まり切らず、ナイアルはまるで本気を出していない。
風「トーヤ…ッ!。」
トーヤを助ける為に風が介入。ナイアルの反応速度は凄まじく、風の太刀筋も見切っては簡単に避ける。
ナイアル「遅いんだよ…全てが。」
刀を振るうと、巨大な斬撃の竜巻を巻き起こす。
風とスラッシュはそれに巻き込まれ、体の各所が切り裂かれてしまう。
いくつかの刀傷を負い、力無く横たわる2人。ナイアルの瞳は戦慄するほどにまで冷徹で、まるで氷のように冷たい空気を纏う。
その時、スラッシュは感じた。
これが、格の違いだと…。
剣士なら交えた時に分かる。剣を通して感じる格の違い。
悔しいが、ナイアルの剣術は常軌を逸している。その圧倒的な力の差が埋まる事は今の段階では殆ど無い。
そしてそれは、風も感じていた。
これまで「劇団」のメンバーと戦いはしたが、このナイアルだけはいまだに傷が付いた所を見た事が無い。
最強の敵。
まさしく、それだった。
ナイアル「…虹ヶ丘ましろを奪還された挙句に丹精込めて育て上げた闇の大樹まで消えてしまい、僕のフラストレーションは溜まる一方だ。どうしてくれる、全てが順調だったのにお前達のせいで僕は戻りたくもなかった故郷の地に戻る羽目となった。もう死んでくれないか、そうすれば許してやる。どうだ、今なら苦しむ事なく一撃で首を刎ねて終わりにしてあげるよ。」
白刃の切先を向けるナイアル。その凶刃が怪しく煌めいた。
だが、それを否定したのは…風だった。
風「…ふざけるんじゃないわよ…何が、お前達のせいですって?。こちとら、日常をぶっ壊されて違う世界を渡り歩く羽目になり、挙げ句の果てに妹は闇の力に手を染めてしまった…ましろだってそう…優しい子なのに、あんた達のせいで"大罪"という烙印まで押されてしまってッ!。」
スラッシュ「!!!。」
風「ああいう子はね、うちの友奈と同じでなんでも自分で抱え込んでしまうのよッ!。きっと、ましろは今が一番辛いはず…やりたくもなかったことを強引にやらされ、やっと元に戻ったらみんなから敵意を向けられるッ!!。それでもあの子は、自分が犯した罪と向き合う為に必死に戦おうとしてるッ!。あんた達がくだらない「舞台」なんてものを披露するから世界が大迷惑してるんでしょ!!。」
ナイアル「もう…喋るな。」
冷酷な声と共に突き出された凶刃。しかし、金属音がその場に鳴り響く。それを阻むはスラッシュの剣。淡い光が刀身を包み込んでいた。
スラッシュ「…そうだ…全ての罪は貴様達「劇団」にある!。虹ヶ丘ましろが焼いた村は元はというと、貴様達の仕業ッ!!。彼女に罪なんて無かった…全ては裏で糸を引いていた貴様達だ…ッ!。」
横薙ぎに振り抜いたその剣の軌道は、ナイアルを初めて弾き飛ばした。
あまりの衝撃に、顔色が悪くなるナイアル。ようやく、この最強の敵に顔色を変えさせた瞬間だった。
スラッシュ「その無念の矛先は貴様達で償ってもらうッ!!。俺の敵は貴様達「劇団」だッ!!。セブンスラッシュッッ!!。」
目にも止まらぬスピードの剣戟の嵐が、ナイアルを後退させていく。
ナイアル(この僕がこんな小物に押されているだと!?兄の剣が僕の剣を上回るッ!?そんなバカな…こんなこと、許されて良いはずがないッ!。)
歯を食いしばりながら、防戦一方となるナイアル。背後に気配を感じると、そこには大剣を掲げた風がいた。
風「ナイアルッ!。やっと後ろをとったわよッ!!でりゃああああッッ!!。」
勢いよく地面に叩きつけ、その衝撃が地面を割りながら突き進む。
背面を取られたナイアルはスラッシュの斬撃を防ぐか風の衝撃波を避けるかの二択を迫られる事に。だが、ナイアルがとった行動は…。
ナイアル「はああッッ!!。」
なんとナイアルは身体を捩らせ、衝撃波と斬撃の嵐の二つから瞬時に抜け出して見せたのだ。一部の斬撃がナイアルの服に掠り、切り跡を残すのみとなった。しかし、それだけで十分だった。自身が傷付くよりも、プライドが傷付けられたのだ。完封出来ると思い込んでいたナイアルの誤算…それが、彼のプライドに傷をつける事に。
ナイアル「…こんな屈辱、初めてだよ。計画も握り潰された挙句にこの僕に傷をつけたなんて…フフフ、少しばかり楽しくなってきたな。今日のところはここまでにしておこう。だが、覚えておいたまえ。このスカイランドを舞台に大きな戦いが起こる…そう、この僕がここにいる限りはね。それまでに、君達が「世界を救う究極の力」の在処に辿り着く事を願っているよ。その時に奪いに来る、これは僕なりの…宣戦布告だ。」
そう言って、去っていくナイアル。
2人は体力を使い果たしたのか、その場に座り込む。
ー「世界を救う究極の力」ー
このワードが、このスカイランドにおいて大混乱を起こす事になる……。
…………………end。
ナイアルと対峙した風とトーヤ。
風の力強い反論と、自身が遂げる本懐に気がついたトーヤによってこの最強の敵であるナイアルを退ける事に成功した。
「世界を救う究極の力」とスカイランドに浮上した謎の古代遺跡。
それらを巡る戦いがすぐそこにまで迫っていた。
そして、ソラシド市にいる一同はようやく安定化した次元のおかげで転移が可能となった。
風をおうべく、一同もスカイランドに向かう事に…。
次回
<第3部・天空の絆編 最終話>
第101話 スカイランドへ…次なる戦いの舞台。