〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。

「劇団」の妨害を受けた一同は転移中に分散され、それぞれが違う浮島に辿り着いてしまった。

その中で鷹夜とソラは同じ孤島で目を覚まし、迫り来るコピーキョーボーグの群れに襲われる。
毒が仕込まれた弾丸がソラの身体に掠ってしまい、彼女はその毒に侵されてダウンしてしまう。

一刻を争う状況で、鷹夜は追われながらもソラを守るべく、別の孤島を目指すのであった。


第103話 再会と抱く"想い”。

アグニ「はぁ…はぁ…ッ…!。」

 

あれからどれだけの時間が経ったのだろうか……。

毒の影響で高熱が続くソラを抱えながらも、アグニは追手を振り切っては追いつかれ、撃退するといった流れで対応していた。

当然、そんな戦法がいつまでも通用することなくまるで詰将棋のように幾度となく駒を送り出されては徐々に追い詰められていく。

 

所々に怪我を負っているアグニ。だが、ソラは傷一つ負うことなく何とかここまでやって来た。流石に疲れたのか、アグニは木陰で身体を屈めて休息を取る。

 

変身状態を維持するのだって、それなりの体力を消耗してしまう。常人よりも桁外れの能力を得るがそこに降りかかる負荷も相当なもの。

 

一度、変身を解いてしまうときっと動けない…なら、ずっとこの状態を維持して何とか人気のある浮島を目指そう、出来るだけ早く…。

 

アグニは心の中でそう呟きながらやり過ごしていた。

時折、ソラの様子を見るもやはり苦しみは変わっていないのか頬を赤く染めながら毒と戦っている。

早くこの状況を何とかしてやらないといけない…焦る気持ちと交雑してアグニの感情もまた、不安定となっていた。

 

アグニ(クソ…もう4つは跨いでるぞ…まだ人がいねぇのか!?。このままだとソラが…。)

 

近くに追っ手の気配がする。簡単には諦めてくれない。

 

アグニ(……次の浮島までそう距離は遠くなさそうだ…よし、次に賭けるしかねぇか…もう、夜になっちまう…!。)

 

ソラを抱えてまた飛び出すアグニ。だが運が悪いことに、2体のキョーボーグに捕捉されてしまった。

 

アグニ「しま…ぐおおッ!?。」

 

油断していたアグニは飛び出した所を狙われて叩き落とされた。

寸前で自身を下にしてソラを庇いながら地面に激突。あまりの衝撃に一瞬だけ意識が飛んでしまう。

飛んでくる追撃の気配を察知し、アグニは目を見開いて回避。そのまま身体を起こしては片手でキョーボーグを殴り飛ばしては燃やし尽くす。

 

アグニ「…クソ……邪魔ばっかすんじゃねぇよ…ッ!!。」

 

もう一体のキョーボーグが迫り来る。

アグニは跳躍して踏み台にし、そのまま逃走。次に向かう浮島が目の前にまで迫る。だが、逃さまいと追っ手のキョーボーグは執拗に狙ってくる。歯を食い縛り、アグニはソラを抱えたまま蹴り主体の肉弾戦で圧倒。正直、気力で押し切ったと言ってもいい…満身創痍の中、必死に戦ったアグニはその結果を確認する暇も無くて。

 

そして何とか、追手を振り切って目的の浮島に辿り着いたアグニ。

周囲を見渡し、人の気配を探るアグニ。

 

そしてようやく、小屋の様な建物を発見した。

 

アグニ「…やっと……人のいる場所に……。」

 

安心感から一気に脱力してしまい、そのまま意識を手放したアグニ。

体力の限界が訪れ、変身が一気に解けた。

 

誰かが駆け寄る足音がするも、今は余裕がない。視界は徐々に狭まっていき、眠る様に目を閉じてしまった。

 

………………………………。

 

鷹夜「…うっ………。」

 

窓から降り注ぐ木漏れ日が顔を照らし、鷹夜はゆっくりと眉を開く。

暖かいベッドを感じた鷹夜…未だに痛む身体を気にすることなく、意識がはっきりした途端に一気に身体を起こした。

 

その時、1人の少女の声が聞こえる。

 

「…ボロボロの身体で意識を失ってもなお、ソラさんに傷を負わせなかったなんて…貴方達がここにいる事に一番驚いたのだけれど、それと同時にその精神力にも驚かされたわ。」

 

 

鷹夜「まさかお前…東郷ッ!!?。」

 

 

東郷「ええ、正真正銘のね?お久しぶりと言った方がいいのかしら…それとも、お騒がせしましたと?。」

 

四国で蒼葉と共に行方不明となった東郷が目の前にいた事に驚く鷹夜。

それと同時に、頭が冴えて来た。

 

 

鷹夜「お前、ここに飛ばされてたのかッ!?蒼葉も一緒かッ!?。」

 

 

東郷「ええ、不本意ながらね?ごめんなさい…帰る手立てを探しててずっとここに居たの。知らない世界だから無闇に動かない方がいいのかもって思って。」

 

 

鷹夜「いや…お前らが無事ならそれでよかった…にしても、転移に巻き込まれてスカイランドに辿り着いてたなんて不幸中の幸いと言った所なのかな…いててッ!。」

 

 

東郷「あまり動かないで?貴方、すごい怪我だったのよ?。」

 

 

鷹夜「…俺の事よりソラは…ソラは無事なのかッ!?。」

 

自分と同じ寝室にソラがいない事に慌てる鷹夜。東郷は何も言わずに頭だけを縦に振る。

 

東郷「ええ、無事よ?今は咲良君が解毒薬をもらって来てくれたお陰で眠ってるわ。安心して?致死性の毒じゃないらしく、命に別状は無いって。」

 

その一言に鷹夜は全身の力が一気に抜けて倒れ込む。そして、安心したのかそのまま身体を起こす事なくずっと呟いていた。

 

東郷「…お疲れ様。それにしても…貴方がここにいるということはもしかして…。」

 

 

鷹夜「ああ…お前達が消えてからの事を話すよ。その代わり、お前らの事も話してくれよ?。」

 

鷹夜はこれまでの経緯を説明する。

 

「海祇機関」との戦いを終えて千景と和解した事、ましろを取り戻して両方の世界の時間が再び動き出した事、シン・レオ・スタークラスターとの戦い、そして…樹と風の事。

 

それらの説明を聞いた東郷は表情が暗くなる。多分、自分を責めているのだろう。

 

東郷「…ごめんなさい。そんな大変な時に私達が抜けてしまって…いいお話もあったけど、まさか風先輩と樹ちゃんが…。」

 

 

鷹夜「…樹はお前らを探してここに来ているはずだ。それに、風先輩はその責任を感じて勇者部の解散宣言をしちまった。それを認めなかった園子達が踏ん張ってはいるが…ここでやっと合流出来たんだ。東郷、俺達と行動しよう。この世界に「劇団」がやってきている…恐らく、またロクでもねェ事を企んでるに違いねェ。」

 

 

東郷「ええ、断る理由もないわ。それに、貴方達とここで会えたのなら留まった事が正解だったのかもしれない。そのっち達が頑張ってるなら私も勇者部に戻るわ。もちろん、咲良君と一緒に。」

 

 

鷹夜「…はは、いつの間にか蒼葉との一件も消化したのか?。」

 

それを聞いた途端、東郷の空気が変わる。鷹夜はまるで地雷を踏んだかのような反応をしてしまう。

 

東郷「…それに関しては一向に距離は縮まってはいないわ。ただ…生き抜くためにはそうするしかなかったのよ。今でも、彼に対しては不満しかないわ。いい?間違ってもそれだけは無いから覚えておいて。」

 

 

鷹夜「あ……はい……。」

 

 

東郷「でも…少しは見直したところもあったのよ?今言えることは間違いなく…信用出来るという事。それに……。」

 

 

東郷(散華を繰り返して身体の機能の大部分を持っていかれている…そんな秘密を吐露したのだもの、許せない事だけどそれはきっと…心を許してくれたからだとそう思いたい。)

 

 

鷹夜「東郷?。」

 

 

東郷「いえ、なんでもないわ。とりあえず、身体を休めておいて?ソラさんが回復次第、ここを出ましょう。後で咲良君には私から言っておくから。」

 

 

鷹夜「ああ、すまねぇ。恩に切るぜ?。」

 

そう言って、部屋を後にした東郷。鷹夜は窓の外を見る。

体を起こそうにも、軋むほどに全身が痛い。

 

…よく、生きていられたな。

 

そう思いながら、鷹夜は頭を枕に落とす。

 

鷹夜(…飛ばされたことは不幸中の幸いかもな…こうして、逸れちまった仲間とまた会えたんだ。巡り合わせと信じたいが…俺ももっと、強くならないといけねェ。もう誰も…失わねェように。)

 

グッと、拳に力を入れる鷹夜。ソラを守りきれたことは良かった。でも、もっと上手くやれたはずだ。

 

そう思いながらも、今回の事を反省する。

 

そしてその夜、寝ている鷹夜の部屋の扉がゆっくりと開いた。

 

その正体はソラ。蒼葉が調合した薬の影響で毒は解消され、動けるまでには体力が回復していた。

 

眠っている鷹夜の身体を見て、ソラの視線は下を向く。

 

頭に巻かれた包帯と、負傷箇所にあてがわれたガーゼの数。

顔だけしか見えないがきっと、身体中にも同じような傷跡がたくさんあるのだろう。

 

そう思うと、ソラは申し訳なさと自分の不甲斐なさに泣きそうになる。

そして何より…自覚してしまった自分の「想い」に押しつぶされそうになって。

 

そしてとうとう…声を殺しながら大粒の涙を床に落としてしまう。

気付かれないように、声を殺して泣く姿はいつもの強い彼女ではない…か弱い1人の少女。

 

こんなに苦しい思いをしたことはない…痛いことには慣れているし、辛い思いにだってなんとか立ち直れてきた。しかし、これだけは…この“気持ち“だけは胸が強く締め付けられる感覚に苛まれる。

 

鷹夜を見れば見るほど、辛くなってくる…誰か助けて欲しい…遂にはそんな感情さえも垣間見えて。

 

それに気付いたのか、鷹夜はゆっくりと眉を開けて一言。彼女の名前を呼ぶ。

 

鷹夜「…ソラ?。」

 

 

ソラ「ああ…あああ……。」

 

必死に、涙を拭ってはその場から逃げるように去ろうとするソラ。しかし、鷹夜はそれを呼び止めた。

 

鷹夜「…泣いていた…のか…?。」

 

 

ソラ「そ…そんなことは…ッ…!。」

 

強がって見せるソラ。だが、声色で分かる。しかし鷹夜がそれを言及することは無かった。

 

鷹夜「…よかった、無事で何よりだ。」

 

 

ソラ「…いえ…ご迷惑をおかけしました…あの程度の攻撃で鷹夜さんのお手を煩わせてしまったなんて…。」

 

 

鷹夜「はは…誰と話してんだよお前。俺、偉い人間でもなんでもねェぞ?。」

 

 

ソラ「…違うんです。私…どうかしてるのかもしれません…貴方が傷つくのが耐えられなくて…それが私のせいだって思うと…なんだか…哀しくなって…ッ…。」

 

振り向くことなく、ソラは泣き顔を見せまいと声を振るわせながらそう言う。

 

鷹夜「…お前は頑張りすぎだ。だって、そうだろ?。ましろを失った時、俺はあいつを殴れなかった。あげは姉やツバサだって、頭ん中が真っ白になって動けなかった。でもお前は違った、泣きながらでもいつか取り戻す気持ちで逃げる選択肢を取ったんだ。本当は一緒に苦しみを分かち合うべきだったのに…全部お前1人でそれを背負い込んで俺たちに気を遣った。そして何より…ソラシド市までの戦いではお前が常に俺達を引っ張ってくれた。」

 

 

ソラ「そんな事、言わないで…ッ…私はただ…ッ…!。」

 

 

鷹夜「がむしゃらだったんだろ?それはわかってたさ…言っちゃあなんだが、友奈達に比べると俺達はまだ未熟さ。あいつらはあの年齢で命のやり取りをずっと繰り広げてきた…世界の命運だって、その小さな背中で背負って戦ってきた。だからあいつらの精神力に比べて俺達はまだ全然及ばねェ。でもお前は…一つ一つの問題と向き合いながら無意識に俺たちをここまで引っ張ってきたんだ。ましろを救う、その気持ちをずっと軸にして。」

 

その言葉を聞いてポロポロと涙を落としながらその場に崩れたソラ。

身体を動かせないのが悔しいが、鷹夜は腕を伸ばしてソラに触れようとする。

 

鷹夜「そして今度は、自分の故郷が「劇団」の毒牙に晒されようとしてる。ソラ…もう、1人で頑張ろうとするな。今の俺たちには頼りになる仲間達がいる…そして、ましろだって帰ってきた。俺達はまた一つのチームに戻れたんだ。そして俺は…お前達を守れるような強い男になる。こんな傷を負って、お前を泣かすような奴にはもうならねェ。だから…。」

 

 

ソラ「違うんです鷹夜さんッ!私は…私は…貴方がいつか、居なくなりそうで怖いんですッ!。今回の事だってそう…下手をすれば死んでいたのかもしれない…私は…貴方を“失う“事が何よりも怖いんですッ!!。」

 

想いの内を吐き出したソラ。胸を抑えながら、息苦しくなるそれを鷹夜に告げる。これ以上は怖くて何も言えない…もし、これ以上踏み込んでしまったら…もう“戻れない“気がして。

 

意外そうな顔をする鷹夜、だが気付かなくても分かることはあった。

 

とても辛い思いをしている……。

 

それだけは理解出来た。

 

泣き崩れるソラに、鷹夜は出来る事をしようと痛みを押して這い上がる。

 

そしてそのまま…優しく涙を指で拭った。

 

ソラ「…ぁ……。」

 

 

鷹夜「…そっか…すまなかったな?お前がそう思ってくれてたなんて素直に嬉しいぜ。だけど、心配すんな?。」

 

両肩に手を置き、痛みで顔を歪めながらも鷹夜は強い眼差しで見つめる。

 

鷹夜「俺は居なくならねェ。約束する、全員で生き残って今度こそ平和を勝ち取るために…俺はお前らを守れるくらいに強くなる。そして…みんなで“日常“に帰るんだ。その為なら俺は…もっと強くなれる。」

 

その言葉を聞いたソラは抱いていた不安が一気に消えた気がした。

こんな傷なんて大したことない…そんな気持ちが伝わってきては鷹夜のその信念が籠った瞳に嘘は無い。

 

そしてソラは…自分が抱くその想いに正直になるために彼のその決意を受け入れようと決めた。

 

廊下の近くで2人のやり取りを聞いていた蒼葉。その後ろには東郷が居た。

 

東郷「盗み聞きだなんて…失礼な人ね全く。」

 

 

蒼葉「…この場で部屋を横切る方が無理があるだろう。俺の寝室は隣の部屋だ…だが、お前の言う通りだな。」

 

 

東郷「…やけに素直ね。まぁいいわ、ここがソラさんの故郷だってわかった事だし…私達のやることも一つしかないわね?。」

 

 

蒼葉「ああ…俺はこの“伝説“が鍵を握っていると見る。」

 

蒼葉が手にしていたのは、東郷が読んでいたこの世界の「伝記」。

 

蒼葉「…“マジェスティクルニクルン“。これが…今回の“鍵“だ。」

 

…………………end。




運良く、東郷と蒼葉に拾われた鷹夜とソラ。

ソラは抱く想いの内を告げ、そして鷹夜は彼女の抱く不安を払拭すべくその決意を告げた。

そして数日後、4人はスカイランドでの旅に赴く。

“マジェスティクルニクルン“

スカイランドでの一大事件を引き起こすものになるとは誰も知らなかった…。

次回
第104話 世界を救う究極の力。
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