〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。

"無の力"に支配された樹。
だが、その事実を知ってもなお彼女は力を求めた。

その圧倒的な力の前に3人は窮地に立たされる。

無情にも振り翳された消滅の力を弾いたのは行方を眩ましていたキュアマジェスティ。

対峙する2人は互いにぶつかり合う……。


第106話 運命の子。

マジェスティ「はああああ…ッ!。」

 

 

樹「やぁああああッッ!!。」

 

樹の放つワイヤーとマジェスティの閃光が激しくぶつかり合う。

互いにぶつかり合い、余波があたりに響き渡る。

 

マジェスティ「樹ッ!。貴女の本当の強さは力なんかじゃないッ!!。」

 

回り込んで蹴りを放つが、束ねたワイヤーが壁となって防がれる。

それでもマジェスティは攻撃の手を緩めない。

 

樹「そうじゃないとしても、力がなければ何も出来ないッ!大切なものを守る事もッ!。」

 

切り返すように右手を振り上げた樹。

波打ちながらワイヤーが張られ、その鋭利な糸で木々を細切れにする。

それと同時に左手のワイヤーを放つとそこには"無の力“が内包されていて。

 

マジェスティ「だとしてもその力は違うよ樹ッ!!。」

 

右手を開いてワイヤーを弾く。消滅の力がマジェスティの閃光とぶつかり合って消散した。

 

烈火「どういうこった、なんで樹のとんでもパワーが通じねェ?。」

 

 

プリズム「エルちゃん……。」

 

 

マジェスティ「私は…スカイランドに来て自分に与えられた役目がわかった!!。私達の本当の敵は全ての世界の理を消滅させようとする…"無“!!。」

 

打撃を加えながら、樹を弾き飛ばしたマジェスティは地面に着地する。

 

 

プリズム「…"無"…それこそがまさに…「劇団」の本懐…。」

 

 

マジェスティ「そう…「劇団」というより、アデルそのもの…アデルの真の狙いは全ての世界を"無"によって何もかも無くす事…光も闇も、全ての理を破壊しようとしてる…樹、貴女はその危険な力に吸い込まれ始めてる…今すぐに手放して、じゃないと…「戻って」来れなくなる…ッ!。」

 

必死に訴えかけるマジェスティ。地面に倒れる樹はゆっくりと立ち上がっては睨みを利かした視線で見つめながら。

 

樹「もうどうだっていいよ…世界を救うために戦う?もうそんなの、お役目だけで十分…私は大切な人達を守るためだけに戦いたい…そのためには力が必要なの…そう…もっと…もっと…!!。」

 

渇望。

自分に圧倒的に足りなかった「力」。

それを欲する樹は、更に"無の力"を欲した。

 

その結果、樹の渇望に応えるように自身の周りに異様な力が取り巻いてくる。

 

友奈「あ…あれは…!?。」

 

 

マジェスティ「ッ…ましろの時と違って、自分の意思で危険な力を欲している!。樹…どうしてそこまでして…!!。」

 

これ以上は取り込ませまいと、マジェスティは突撃。

しかし、樹のワイヤーが何処からともなく放たれては右腕を拘束。

そのまま地面に叩きつけた。

 

その勢いで、マジェスティは呼吸が乱れる…肺の中の空気が一気に吐き出された。

 

樹「…こうでもしないと私は強くなれない…そう…私は…「満開」が使えないッ!!。」

 

 

友奈「それは…ッ…!。」

 

 

樹「「意志の華」…自分自身に宿る意志という名前の種が芽吹かないの…私だけ…私だけがずっと芽を出さないッ!。東郷先輩だってきっと、「満開」を使えるようになってるはず…どうして私だけ…どうして私だけェエエエエッッ!!。」

 

叫びと共に無数のワイヤーが無差別に放たれた。

それは切り裂く場所を全て消滅させるほどに。

 

樹「意志の華なんてなくったって、私は強くなれたッ!。この力があれば全てを守れるッ!。これが世界にとって悪い力だとしても、誰かを守れる為に使えるなら本望ッ!!。」

 

 

マジェスティ「違うのよ樹ッ!。"無"は貴女のその想いと願いでさえも消し去ってしまう…その力を使い続ければ貴女が本当に守りたいものでさえも消してしまうッ!。それをわかって!?。」

 

 

樹「伝説の戦士って呼ばれてる人達に言われても私は…納得なんて出来ないッ!!。わかってくれないなら…わからせてあげるッ!!。」

 

空間を突き破って繰り出される無数のワイヤーはマジェスティを捉えた。

 

しかし……。

 

烈火「どっせェエエエエいッ!!。」

 

地面を叩きつけて隆起させ、岩盤の壁がマジェスティを守った。

 

マジェスティ「烈火ッ!!。」

 

 

烈火「この馬鹿野郎がッ!。せっかくましろが戻って来たってのに今度は俺達がバラバラになっちまったら意味ねェだろうがッ!!。」

 

 

樹「何を…ッ!!。」

 

 

烈火「端っから世界のために戦ってるんじゃねぇよッ!俺達は…自分達が楽しく生きる未来のために戦ってんだろうがッ!その中で降りかかってくる困難に押しつぶされてんじゃねぇよッ!。立ちはだかる壁なんてぶち抜きゃいい話だろうがッ!!。」

 

メイスを突きつけ、ゆっくりと歩み寄る。

 

何故か樹はその圧に押される。

 

烈火「正義のヒーローなんてもんはやりたい奴がやりゃいい、俺はそういうのはパスだッ!!。そんな大層な人間でもなんでもねぇ、俺はただ自由を満喫したいだけの人間さッ!!樹、大切なものを守りたいなら出していいものと悪いものがあんだろうがッ!。そんな訳のわかんねェ力で助け出されてもあいつらは喜ばねェぞッ!。そしたら今度はお前が…苦しんじまうだろうがッ!。」

 

 

樹「私と貴方を一緒にしないでくださいッ!。私は貴方のように前を向けない…ッ!。」

 

攻撃を仕掛けるが、烈火の脇を通り抜けていくだけで何故か直撃しない。

 

樹「な…何で当たらないの…!?。」

 

 

マジェスティ「…無意識に烈火を攻撃したくないって思ってるの。樹、貴女の本当の強さは力なんかじゃない…その「思いやり」なの。」

 

 

樹「思い…やり…?。」

 

 

マジェスティ「うん…私、ずっとみんなと旅をしててわかったの。友奈達の強さ…私達以上に辛い思いをしてるはずなのに、ただ一つ…未来のために戦って来た貴女達のその強さを。」

 

マジェスティの身体が光輝く。それはとても神々しくて、そして…優しい光だった。

 

マジェスティ「本来、私たちは出会うことの無い存在同士…私達が出会う事はきっと良く無い事…けど、こんな大変な状況にあるからこそ私達は出会えた…樹、私が泣きじゃくってたときによく子守唄を歌ってくれたよね?。」

 

キュアマジェスティとして、可能性世界に合流したエル。

しかしその精神はまだ幼子そのもの…当然、普通の赤ん坊同様に気に入らない事や悲しいことに関しては感情が制御出来ない。どれだけ疲れていても、みんなが自分を構ってくれた。

 

その中でも樹は特に自分をよく見てくれた…あの優しい歌声で泣き止むまで歌ってくれた。そしてそれは何より、エルにとっては心に残ることだった。

 

マジェスティ「私、樹の歌が大好きなの。また歌って欲しい…きっと、自分が大きくなるまでに迷惑を掛けちゃうかもしれない…駄々を捏ねてみんなが困ってしまうかもしれない…けど、私は少しずつでも成長していきたい…私、樹のように思いやりのある人間になりたい…私に歌を教えて欲しい…だからね、もうやめよう?。」

 

力を解いて手を伸ばすマジェスティ。

 

一瞬、戸惑う樹だがその手を取る事は…無かった。

 

樹「…ごめんね、エルちゃん…それでも私は…大切な人達を助けたい、力になりたい。だから…みんなと同じ道を歩くことが出来ない。」

 

 

マジェスティ「樹……ッ!。」

 

 

樹「でも、約束するよ。役目を果たしたらきっと帰ってくるから…だから今は構わないで欲しい。私はみんなを…殺したくない。」

 

それだけを告げると、樹はその場から消え去っていく。

 

……止められなかった。

 

マジェスティの心の中はそんな思いでいっぱいだった。しかし…泣く事は無かった。

 

泣けばきっと…樹と分かり合えない気がしたから。だから今は我慢をしよう…そして、その心と分かり合えたなら今度こそは…と、そう思って。

 

プリズム「…エルちゃん……。」

 

 

マジェスティ「…あ〜あ、止められなかったなぁ……そのためにここに来たのに……。」

 

ワナワナと、拳を震わせるマジェスティ。つい、心の声を漏らしてしまう。気にかける3人にこれ以上の気を使わせたくないと感じたのか、感情に整理をつけて見せた。

 

マジェスティ「…悲しいけど、私は泣かないよ?泣けばきっと…樹が気にするかもしれないから…それに、私はみんなに伝えたいことがあってここに来たのもある。もう少しだけ、キュアマジェスティのまま居させてほしい…元に戻ればきっと、伝えられないはずだから。」

 

 

友奈「そうだ…スカイランドに来てわかったことがあるって言ってたけど…それは何のことなの?。」

 

友奈のその質問に、マジェスティは深呼吸する。

 

マジェスティ「…一つは先ほどの樹が纏っていた"無の力"の事。その力が今、全ての世界に手を伸ばしつつある事がわかったの。」

 

 

プリズム「…どうやって…?。」

 

 

マジェスティ「…それはわからない。けど…ここに飛ばされてから私に語りかけてくる優しい声がそう言っていたの。そして私は…それを打開するための切り札である事。」

 

 

烈火「お前が"無の力"に対抗するための切り札?。」

 

 

マジェスティ「正確にいうと、そのための「鍵」だという事だね。スカイランドの何処かに"世界を救う究極の力"と呼ばれる強大な力が隠された遺跡があるの。その遺跡こそ…私に関係する事、そしてそれを開く事が出来るのが…私なの。」

 

"世界を救う究極の力"。

 

それこそまさに、今この世界で起きている事件のきっかけだ。

 

本来は樹と風を連れ戻すために訪れたスカイランド。

しかし、何の因果かそれが世界の存亡に関わる重大な行き先となっていたことも相まっていた。

 

マジェスティ「「劇団」が転移中の私達を妨害して来たのもそのせいでもある…ここに来る事は…全てに繋がることになってたの。」

 

 

烈火「ちょっと待てよ、なら「劇団」もそのことを知ってるってのか!?。」

 

 

マジェスティ「ええ、"無の権化"であるアデルはその力の存在を認知した…だからきっと、彼らもその力を探しているはず…私達がましろを奪還したことで遠回りとなってしまった「舞台」の支障をきたす事になるその力を消滅させるために。」

 

 

友奈「な…なら、彼らよりも速くに辿り着かないと…!。」

 

 

マジェスティ「ええ、これはまさしく争奪戦よ。そしてきっと…彼らは私を狙ってくるはず。遺跡の在処さえ分かれば後は私を連れてそこに行けば辿り着けるはずだから…。」

 

 

烈火「こうしちゃいられねぇ、風先輩と樹の事もあるけどまずはそっちを何とかしねぇと…!。」

 

 

プリズム「うん、エルちゃん…私たちから離れないで。「劇団」が狙ってるなら1人行動なんて危険すぎるよ。」

 

 

マジェスティ「ええ、そうさせてもらうわ。ふふ、私がましろ達と同じ歳なら1人で引きつけたりとか考えてたんだけどな…ごめんなさい、もう…維持出来ないみたい……。」

 

そう言うと、限界が来たマジェスティはエルの姿に戻る。

その疲労故か、浮遊する揺籠の中でエルは眠りに着く。

 

友奈「エルちゃん…無理してたんだね…。」

 

 

烈火「樹を止めるために限界時間をとっくに超えての戦闘だったからな…馬鹿野郎が、お人よしにもほどがあんだろうが。赤ん坊は目一杯甘えてりゃいいんだよ、しんどい事は俺たちに任せてよォ…?。」

 

その話を聞いて、プリズムは少し考え込んでいた。

 

プリズム(…"無の力"が全ての世界に手を伸ばして来ている?。それってもしかして……アデルでさえ、把握してないのかもしれない…。)

 

プリズムは頭の中でその全てを洗い出した。

 

プリズム(……私達の本当の敵を理解したエルちゃん…“世界を救う究極の力"……アデルでさえ把握してない同族の敵……全ての世界に手を伸ばして来ている敵……ただひたすらに、消滅のためだけに動くその力……そうなるともう、一つしかない……エルちゃんが知った真の敵はアデルでもあるけど、それと同じく"無の権化"でもある存在……。)

 

シン・バーテックスとDM……彼らまた"無の権化"でもあり…………

 

ー"真の「無」…星と宇宙を喰らう…存在…ー

 

 

………………………end。




樹との激闘の末、その思いは届かなかった。

マジェスティの口から語られた事実…このスカイランドにある力。

そして……ましろがたどり着いた「真の敵」の存在。
一同の戦いは最早、光と闇に区分されるものでもない。

そう…消滅の意思そのもの……"無"。

そしてそれらを巡る巨大な戦いはすでに…始まりを迎えていた。

次回
第107話 迫り来る消滅の意思。
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