〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。

遂に、アデルを倒したアグニ。
因縁の相手を打ち倒し、「劇団」との戦いに一区切りがついた。

その一方で、ナイアルの耳にもアデルの訃報が入る。

しかし、彼が感じたのは……滾る創作意欲。

「劇団」の実権を握ったナイアルが取った行動は…王都を焼くことだった。


第111話 剣聖、地に墜つ。

〜スカイランド・辺境〜

 

ナイアル「報告は以上だ。アデルはキュアアグニに敗北し、死んだ。」

 

アデルの持っていたトランプから映像が浮かび上がる。

そこには、残りのメンバーであるアリスと蓮が。

 

ナイアルの手には、遺跡に転がった焦げたアデルの仮面。

それを見て、アデルが敗れた事実を確信した。

 

アリス(…これで、「劇団」もおしまいね。「閉幕」の準備でも…。)

 

それを聞いたナイアルは、不適な笑みを浮かべた。

それも…不気味なほどにまで"何か"を企んでいるような。

 

ナイアル「何を言っている?。アデル亡き今、「劇団」の実権はこの僕にある。「閉幕」なんてしないさ…知っての通り、僕達はアデルと「契約」を交わしている。」

 

腕の甲に記された道化師のタトゥー。以前、シャロがこれによって存在を消されそうになっていたものだ。

 

しかし、アデルが消えてからそのタトゥーが薄れていっている。

 

ナイアル「これは一種の「呪縛」だ。まぁ、シャロ以外はこの事実を理解した上で何も思わなかったが…彼の傀儡という意味では、僕達も下等だったのだろう。まぁそれも、理解済みだ。」

 

 

蓮(そうだなぁ…別に、アデルの旦那に忠誠を誓ってるだけでシャロとかいう小娘のように恐れなんてもんも抱いてなかった。ま、好き勝手出来ないのは癪だったが…それよりも、実権はあんたにあるって?。)

 

気に食わない表情で蓮はナイアルに問いかけた。

 

ナイアル「その通りだとも、実力共に君たち二人よりも僕の方が優れている。これは事実だ、反抗しても良いよ。その時は…容赦無く死んでもらうだけだ。」

 

 

蓮(…おっかないね…いいよ。あんたの好きにすればいい、今度はあんたに忠誠を誓えってことだろ?。)

 

 

アリス(なら早速、アデルの仇でも?。)

 

仇……。

それを聞いたナイアルは小馬鹿にしたかのように笑い始める。

そう…まるで、"この瞬間を待っていた"かのように。

 

ナイアル「バカな事を言わないでくれよ…この僕が?。アデルのために敵討ち?アッハハハハ……ようやく目障りな存在が消えたんだ…"無の勢力"とかいう枠組みから外れたんだぞ?ここからは僕の理想がダイレクトに反映される組織へと変わる…そう、僕の描く「演出」が優先されるのだッッ!!。」

 

狂気。

 

一言で言うとそうだ。ナイアルはこの瞬間を待っていた。

ずっと、アデルの描く「舞台」の演出を考えていた…原本から作るのではなく、ただの修正と脚本通りの「演出」を行う立場。

 

当然、他者との美学には違いが必ず存在する。その違い故に、納得のいかない部分はあった。

 

だが、アデルの消滅で「劇団」と呼ばれるこの組織は彼の自由が反映される組織へと変わっていく。

それに心躍るナイアル…こんなに楽しいと思った事は一度たりともなかった。

 

敷かれたレールの上から脱し、自分の思い描くレールを作る事が出来る…そう、ナイアル自身の目的はアデルを出し抜いてこの組織を手に入れる事。そして、妄想癖の強い自分の理想を現実のものとする。

 

これが、彼の思い描いた「舞台」だった。

 

ナイアル「…まぁ…"世界を救う究極の力"については、彼の遺志を継ごう。当然、消滅などさせない…鍵と場所は分かっている。プリンセス・エルを奪い、あの遺跡の承認を得る。そしてその先にある"世界を救う究極の力"を手にする…勇者もプリキュアも…そして、"無の勢力"も一掃して思い描く「物語」を作り上げるッ!!。君達も自由にすると良い、だが…僕の邪魔だけはしてくれるなよ?。」

 

 

アリス(………了解。なら、貴方の描くストーリーを教えてちょうだい。)

 

 

ナイアル「ククク、真面目で助かる。そうだな…君はプリンセス・エルを捕らえて来て欲しい。そして、蓮…君は今から送る古代遺跡の座標を頼りにそこへ向かってくれ。」

 

 

蓮(おいおい、俺は辺鄙な場所に左遷されるのか?。)

 

 

ナイアル「安心すると良い、あの遺跡の重要度は彼らも熟知している…何名かはそこにくるはずだ。君は戦いたいのだろう?。なら、その「演出」を用意しようじゃないか。」

 

それを聞いた蓮は、まるで餌に喰らいつく猛獣のように不敵な笑みを浮かべた。

 

蓮(話がわかるな?。なるほど、奴らと戦えるなら喜んで向かおう。アリスが成功を収めようが失敗しようが誰かしらそこに来るのなら…退屈はしなさそうだ。だが、あんたはどうするんだ?。)

 

 

ナイアル「僕かい?。ククク…既に、決まっている。僕の目的は……。」

 

 

ー王都の滅亡だー

 

 

〜スカイランド・王都〜

 

樹を探して旅を続けていた風とトーヤ。

2人は最も情報の集まりやすいこの王都に辿り着いていた。

 

風「…まるで、映画の世界ね。ここがスカイランドの王都…。」

 

数日前から現れ始めたDMとの戦いを潜り抜けてここまで来た2人。

最初はひたすらに敵を討伐するだけで、個々での行動でしか動いていなかったが長い時間を共にしたせいか、いつの間にか2人には信頼が築かれていた。

 

…互いに生き残る為に、信頼しなければならない…孤立無援にも近いこの状況だからこそ、背中を任せ合わなければいけない。

 

そう思って。

 

トーヤ「…初めてここに来た…これが、王都か…。」

 

辺境出身のトーヤにとっては全てが新鮮だった。ずっと真面目で、そのストイックさ故に鍛錬しかしてこなかったトーヤが初めて別のものに興味を示した。もちろん、師匠であるリオンの道筋ということもあるのだろうが。

 

風「トーヤ、あんた…少しは羽を伸ばしてもいいんじゃない?初めてなんでしょ?こんな大きな街は。」

 

 

トーヤ「…いや、遊びに来たわけではない。お前の目的の為だろう、でなければこんなところには来ない。」

 

すぐにいつもの調子に戻るトーヤ。相変わらずの真面目っぷりに、風は少し呆れるがそれも彼の個性だとこれ以上は何も言わなかった。

 

…本当は、興味がある癖に。

 

そう思いながらも、強がってみせるトーヤにいつの間にか笑みを浮かべる。

 

風「…ここなら、樹の行方についてもわかるかもしれない。」

 

 

トーヤ「ああ、「青の護衛隊」を訪ねよう。彼らなら……。」

 

その瞬間、王都に「凍りつく気配」が漂う。

凄まじい殺気…それに気付いたトーヤが即座に構える。

ただならぬ雰囲気に、風も触発された。

だが、次の瞬間……街に悲鳴が轟く。

 

風「な……何ッ…!?。」

 

 

ナイアル「無能、無力、無知。フン…何が護衛隊だ。こんな雑魚の寄せ集めで何になる?。」

 

現れたナイアルが引きずっていたのは…「青の護衛隊」の隊員でソラの友である"ベリィベリー”。

 

手に持つ白刃には血がついていた、おそらく彼女を斬ったのだろう。だが、彼女に意識はまだあった。

 

ベリィベリー「ぅうう……ッ。」

 

 

トーヤ「またしても貴様か…ナイアルッ!!。」

 

 

ナイアル「おやおや…また君たちか。フン、ある程度の想定はしていたけどね…何せ、勇者とプリキュアがここを目指して来ているんだ。誰がいてもおかしくはない…だが、君達とはね…これも、因果かな?。」

 

 

風(みんながここに向かって来てるッ!?。ッ…なんで…なんで来たのよ…ッ!!。)

 

 

ナイアル「でもいいさ、今の僕は気分がいい。ソラシド市の事は不問にしてあげよう。何せ…もうアデルの描く「舞台」は見直しとなり、今度はこの僕が描く「ストーリー」が始まりを迎えるのだからッ!!。」

 

高らかに笑うと、街全体に炎が広がる。

ナイアルの背後には、複数の自立型兵器が動いていた。

 

風「まさかあれ…高天原の「人機」ッ!?。」

 

 

ナイアル「そうだとも、向こう側の精霊をコアにした兵器の殆どは僕が接収した。これ、意外にも使えるんだよ。こうやって、破壊する事だけには特化してね…ッ!!。」

 

一斉に動き出した人機達は、装備する火器を放って街を焼き始める。

それに怒ったトーヤと風が変身。

 

ナイアルに向かっていく。

 

スラッシュ「どこまでも腐って…貴様はァァァァッ!!。」

 

 

ナイアル「感情に飲まれやすいな…それじゃあダメだ。剣を振るうには失格だな。」

 

未だに圧倒されるその剣技に、スラッシュの剣は通じない。

 

風「ッ…こんなことばかりして何がしたいのよ、あんたはッ!!。」

 

風は大剣を振り続け、問いかけるようにナイアルに攻めていく。しかし、当の本人はそれを簡単にいなす。やはり、力の差は歴然だ。以前がまぐれだったと思わせるほど、その強さに風は歯を食いしばる。しかも、まだ本気ではないだろう…だが、退く事は出来ない。心は病んでいるが、自分は勇者だ。例え、違う世界でも人を守る義務がある。

 

グッと、柄を握り締めて力の差を理解しながらでも立ち向かう。

 

風(この最強の敵に勝つ事は出来ない…けど、私は勇者だ。後ろには力の無い人たちがいる…これはお役目じゃない…私の…遺志だ…ッ!。)

 

途中で左腕を突き出し、ナイアルの服を掴んだ。

意外そうな顔をするも、ナイアルはまだ余裕がある。でも…これでいい。

 

風「でやぁあああああッッ!。」

 

そのまま力任せにナイアルを投げ飛ばす。これが、攻撃にはならないことは理解していた。でも、それで良い。そう、風の目線の先には…剣を構えるスラッシュがいた。

 

風「今よトーヤッ!!。」

 

 

スラッシュ「…ああ…ッ!。」

 

スラッシュに気付いたナイアルは空中で体勢を立て直し、鋭い眼光で対峙する。既に構えの態勢だ…しかし、攻撃の手はスラッシュの方が速い。

 

スラッシュ「せぇえええいッッ!!。」

 

振り抜いた剣はナイアルを完全に切り裂いた……はずだった。

激痛が走ったスラッシュは、そのまま膝から崩れ落ちた。

 

風「ト…トーヤァアアアアッッ!!。」

 

 

スラッシュ「がふ…ッ…な…なぜ……。」

 

胸をザックリと斬られたスラッシュは何が起きたか全くわからなかった。ナイアルの持つ刀からは鮮血が垂れ落ちる。そう…斬ったのは残像。空中を蹴って凄まじい速度でスラッシュを斬り抜いていたのだ。

 

ナイアル「…何、これが力の差だ…絶望しなくても良い。敵わなかったというだけの話……。」

 

振り向いた矢先、風が吹き荒れる。直後、ナイアルの左眼から血が吹き出た。

 

ナイアル「がああああッッ!?。」

 

たまらず、片膝をつくナイアル。その目線の先には………。

 

ナイアル「…兄さぁぁぁんんん……ッ!!。」

 

恨めしそうに、声を上げるナイアル。剣を構えたリオンがそこにいた。

 

風「リ…リオンさんッ!!。」

 

 

リオン「…ナイアル……そうまでして、お前はこの世界が憎いか…?。」

 

その問いかけに、ナイアルは不敵な笑みを浮かべる。それはまるで狂気…その残虐性を知るリオンは剣を向ける。

 

ナイアル「ククク…当たり前だ。決められたレールの上を走るほど退屈なものはないだろう?兄さん、僕達は力のある人間だ。貴族階級の者や王族を守るための騎士なんてつまらないだろう?。」

 

 

リオン「…快楽の為に剣を振うのではない。思い出せナイアル…私達の剣は人を守る為にあるッ!!。」

 

リオンの踏み込みは凄まじく、それを受けるナイアルも負けじと激しい剣戟戦を繰り広げる。

風は横たわるスラッシュの頭を膝に乗せてその戦いを見守る。

 

リオンが来てくれた。もう大丈夫……そう安心していた風。

だが…その様子がおかしい事にすぐ気づく。

 

リオン「くっ…ナイアル…ッ!!。」

 

ナイアルの猛攻に、リオンが押されていたのだ。当然、ナイアルもタダでは済んでいない…身を斬られながらも攻撃の手を全く緩めない。

 

風「え…嘘…リオンさんが押されてる…!?。」

 

 

ナイアル「ハハハハハッ!兄さん、まさか僕が斬れないのかぁああッッ!?。」

 

流石のナイアルでもリオン相手では無傷で済まない。ダメージはそれなりに受けているが、リオンはどうしても斬ることができなかった。

 

それは……たった1人の弟だからだ。

 

スラッシュ「し……師匠……ッ!?。」

 

 

ナイアル「甘いな兄さんッ!。その甘さがあるから護衛隊を辞めたんだろうッ!?。そう…兄さんは人を斬らないッッ!!。そしてそれは…身内である僕ならなおさらだッ!!。無力化しようと本来の力を発揮出来ていない…そこに隙があるッッ!!。もらったぁああああッッ!!。」

 

剣を弾いたナイアルは狂気に満ちた目をする。歯を食いしばるリオン。そして……。

 

スラッシュ「し……師匠ォオオオオォオオオオッッ!!。」

 

大量に舞う鮮血。そして、兄を斬った高揚感に満ちるナイアル。

 

そう…スカイランド最強と言われた騎士は……。

 

……地に沈んだ。

 

…………………………end。




狂気に満ちたナイアルによって、リオンは斬られ地に伏せた。

弾かれた剣は地面に突き刺さり、無情にも雨が降る。 

あまりにも深いその傷はもう助からない。

最後の時、リオンはトーヤと風に言葉を残した。

「憎しみに囚われず、そして…大切なものを最後まで手放すな。」

リオンの死は…2人に転機をもたらす。

次回
第112話 "人“としての強さ。
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