〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。

ナイアルの凶刃により、リオンは血に沈んだ。

…そう…この日、スカイランド最強と言われた騎士が死んだ。

人を斬らない優しさを持つ騎士…その剣は人のためにあり、そして…"人"であり続ける為の矜持が刻まれていた。

その騎士が……死んだ。

勇者の少女、そして…騎士見習いの少年は……雨の中、ただ立ち尽くすのみ。


第112話 "人“としての強さ。

…信じられない光景が目の前に広がった。

 

地面に突き刺さる剣…絶対に倒れることがなかった騎士が倒れた。

 

斬ったのは、高揚感に満ちる男…その白刃は朱に染まる。

……雨が降り出した。焼かれた街はその豪雨により鎮火する。

その男は雨に打たれながらも、満足げな表情をしていた。震えるほどにまで興奮している。そして、高らかに笑いながらその場を去る。どうやら、街を焼く以上のものを得たらしい。

 

…その騎士は、何も語らない。雨に濡れ、血が流れていく。その雨は…命の炎でさえ小さくして。

 

スラッシュ「…師……匠……?。」

 

少年は弱々しく、覚束ない足取りで地面に横たわる師に向かっていく。

 

そして、少女はこの感覚を知っていた。

そう……"もう無理"だと。

 

リオン「ゴフッ…トー…ヤ……。」

 

この深傷だ、内臓にまで届いている。大量の血を吐き、そして目はうっすらと光を失っていく。

 

スラッシュ「い…今すぐに……だ…誰か…誰か…ッ…!。」

 

普段の凛々しさを失い、まるで迷子になった子供のように。

スラッシュは気が動転し、周囲を見渡す。だが…風以外は誰もいない。

 

スラッシュ「た…助けてくれ…師匠を…助けてくれ…ッ…!!。」

 

弱々しい声で周囲に声をかけるスラッシュ。だが、冷たい雨の勢いはより一層の強まる。まるで、か細い助けを呼ぶその声を消すかのように。

 

リオン「……無理だ…私が1番…よく知って…いる…。」

 

 

スラッシュ「何を言ってるんですかッ!?らしくもないッ…がはっ…!。」

 

声を上げる彼も決して浅くはない。同じく血を吐くと、風が慌てて駆け寄る。

 

風「ちょ…トーヤ…ッ!。」

 

 

リオン「…そのまま…聞いて欲しい。」

 

薄れていく意識の中、リオンは声を振り絞る。終わりの時が来る前に、告げたかったことを語りたいのだ。

 

風「リオンさんッ!ダメです…逝っちゃダメッ…!!。」

 

大粒の涙を流す風。それを見て、スラッシュは雨に濡れながらも首を横に振る。

 

リオン「…良いのだ。結局、私は奴を…弟(ナイアル)を止められなかった……たった1人の弟…共に切磋琢磨し、互いの剣の腕を確かめ合った「親友」のようなものを……狂気の…道から……助けてやれなかった…。」

 

降り頻る雨音が激しいにも関わらず、はっきりとその声が聞き取れる。

視線を落とし、涙を流す風。スラッシュは変身が解け、何が何だか分からない表情をしている。

 

リオン「風…君は…妹を止めたいのだろう…?。」

 

 

風「………はい…。」

 

 

リオン「なら、戸惑うな…闇の力に手を染め…そして、"無"にも手を染めてしまった妹を止めるのは至難の…業だろう…だが、それでも…諦めずに手を引け……そして…私とナイアルのようには……なるな……。」

 

 

風「ああ…あああああ……ッ!!。」

 

 

リオン「トーヤ。」

 

 

トーヤ「な……なんでしょうか……。」

 

 

リオン「お前は…剣を振るう理由を……未だに見出せて…いない……だが、私にはわかる。その直向きさ…理由を探し続ける為に…振るうお前はきっと…その答えを見つけられる…そして…私を超える剣士になれるだろう…お前は迷わない…だが、悩みはある。」

 

グッと、手を握るリオン。

今まで、褒められたこともなかった。トーヤは…戸惑いから握り返せなかった。

 

リオン「悩み続けろ…剣士は…"心"を捨ててはならない……悩み続けたその先に…お前の求める答えがある……。」

 

 

トーヤ「ッ……!!。」

 

 

リオン「…最後に…2人にこれだけは残したい…決して、憎しみに囚われるな…“人"であり続けろ……そうすれば……きっと………。」

 

目を閉じて、手から力が抜けるリオン。

その表情は全てを託したかのように穏やかで。

 

……そして……命の炎を閉ざした…。

 

…………………………。

 

翌朝。

リオンの死は、スカイランド王都全体に広がり、国を挙げて葬儀を行なった。元青の護衛隊の隊長…その凛々しさは憧れるものが多く、そしてその剣に魅入られる者も沢山いた。

ソラシド市に残っているシャララもまた、映像ではあるがその葬儀に参加していた。当然、勇者世界で救われた防人達も一緒に。

 

風達も参加していたが、気付かれないようにひっそりとその葬儀を見届けた。

 

そして………。

 

風「…ここにいたのね。」

 

スカイランド式の喪服に身を包み、王都の外にいたトーヤの元にやってくる。

 

トーヤ「……もうすぐだ。」

 

 

風「……えっ?。」

 

そういうと、一隻の小さな船が虹を伝って遥か彼方に飛び去っていく。

 

トーヤ「…「空葬(くうそう)」と言ってな、スカイランド式の死者を送る儀式だ。スカイランド人は空の民…死したその身を空の彼方に旅立たせ、いつかまた戻って来れるようにと願いを込めたものだ。」

 

紙飛行機を使ったトーヤは、その船を追うように投げる。

 

トーヤ「師匠は果てなき空に旅立った。スカイランドの伝説はまた一つ、終わってしまったんだ。さぁ……お前の妹を探す途中だったな?再開しよう、本懐はまだ成し遂げられてない。」

 

立ち上がり、喪服のネクタイを解いたトーヤは風を横切る。

だがその時、風がトーヤを抱き締めた。

 

風「馬鹿ッ!痩せ我慢してんじゃないわよッ!!。今、1番悲しいのはあんたでしょッ!?。心が壊れそうになってるの…わかってんのよッ!!。」

 

それを聞いたトーヤは驚いた顔をする。だが、目を閉じて静かに聴く。

 

 

風「泣きたい時は泣いたっていいじゃないッ!!。あんたはプリキュアの力を持ってる前に1人の人間でしょッ!?。親同然のあの人が目の前で殺されて…泣きたいはずなのに葬儀の時もジッと見つめるだけ見つめてて…我慢しなくていいのッ!!。悲しんだって誰もあんたを責めやしないわよッ!!。」

 

 

トーヤ「お前………それでも俺は…悲しんだり泣いている場合ではないんだ。」

 

 

風「なんでッ!?。」

 

 

トーヤ「託されたから。」

 

 

風「え………。」

 

 

トーヤ「俺は…師匠に託されたから。いつか、自分を超える剣士になれる…それが約束だ。だから俺は…剣を振るい続ける理由に悩み続ける。それが晴れればきっと…俺は師匠との約束を果たせるから。」

 

腰にあるのはリオンの剣。恐れ多くて抜くことなんて出来ないが、その悩みを突破した後ならきっと…約束を果たせるから。

 

だからその時は…この剣を受け継いで振るんだ。

 

トーヤはそう決意していた。

 

それを聞いた風は、並ならぬトーヤの決心に何も言えなかった。

 

言えるはずもない…何故なら…リオンに負けないほどの凛々しさがそこにあったから。

 

トーヤ「気を遣ってくれて感謝する。元はと言うと、お前の妹を探す為の旅だ。これはただの寄り道……すまないな、時間をとらせてしまった。」

 

そう言って、先を歩くトーヤ。

 

風「……それでも……やっぱり、1番悲しいのはあんたでしょ……約束を果たす為に我慢して…目標にしていた人が居なくなって…あんたの道標は消えちゃったのに…どうしてそこまで…強くいられるの…?。」

 

あくまで"剣士"として生きるトーヤ。

自分は"勇者"だ。

 

その信念は似ているのかもしれない…けど、トーヤの行く道が険しすぎて。だが、それでも突き進むのだろう…リオンに託されたのは何も、彼だけじゃない…自分もだ。

 

"人"であり続けろ。

 

そう…託されたのだから。

 

それから数時間後、いつもの服装に戻して2人は街に出る。

焼かれた街の状態は酷く、復興はまだまだ先になるのかもしれない。

 

何か出来ることがあれば手伝いたい…勇者部として活動していた風はそう思って、街の復興に手を貸していた。

 

トーヤ「…何をしている?。復興は王都の人間の仕事だ、お前はお前の目的を果たす為に動け。」

 

 

風「それでも、こんなのほっとけないでしょ?。ほら、あんたも手伝いなさい?男手が必要なのよ。」

 

 

トーヤ「……俺は…。」

 

 

風「つべこべ言わずに働くのッ!。そうすればきっと、あんたの悩みの解決にも繋がるはずだから…果たすんでしょ?リオンさんとの約束。」

 

 

トーヤ「それはそうかもしれんが…何故、俺の悩みのために手を貸す?。俺は案内人だ、お前は自分の目的を優先すればいい。」

 

 

風「…あんたが私の目的のために動くなら私はあんたの悩みのために動くわ。持ちつ持たれつ、助け合い…でしょ?。だからほら、あんたも手伝って。」

 

 

トーヤ「むぅ………わかった。」

 

納得のいった顔をしないトーヤは渋々、街の復興に手を貸す。

だが、それが意外にも一生懸命だった。誰よりも瓦礫と化した家屋の撤去を行い、休む事なくひたすら復興に手を貸している。

 

風はそんなトーヤを見ながら、少し安心した。

 

これが、少しでも気晴らしになればいい…そして、街の人に寄り添えばきっと……それを理解して、いつになるか分からないがいつかその約束を果たして、泣く事が出来るかもしれない。

 

そう思って。

 

4時間後、あたりは暗くなり始める。結局、1日通して行なった結果、予定よりも作業が進んだ。

 

休むところがなかった2人は、その仕事っぷりから宿を経営している人が一室貸してくれると言う事で、今晩の寝床をゲットした。

 

風「はぁああ…一仕事した後のフカフカのベッドは気持ちいいわねェ?。」

 

湯浴みを済ませた風はベッドに飛び込み、寝転びながらその疲れを癒す。トーヤは椅子に座り、王都の明かりを見つめていた。

 

風「どう?人から感謝されるの、嫌じゃないでしょ?。」

 

 

トーヤ「…ああ、悪くない。それに…お前はなんだか楽しそうだったな。」

 

 

風「まぁね…こういうの嫌いじゃないし、それにみんなと活動していた時の事を……あ……。」

 

勇者部の活動を思い出した風は言葉を紡いでしまう。

樹の事、東郷と蒼葉の行方不明のこと…その全てを自分の責任として拠り所である"勇者部"を廃部にしてしまった事。

 

去り際の残されたみんなの顔を思い出す。

 

あの夏凛が…泣いていた。友奈も必死に堪えて園子も珍しく取り乱していた。烈火は黙ってはいたがきっと納得していない。

 

でも、それでも風は責任を感じていた。樹を止められなかった事…そして、"無の力“と呼ばれる謎の力に手を出してしまっている事。

 

リオンの言葉を思い出す。

「戸惑うな、手を引き続けろ。」

 

その言葉をしっかりと胸に刻んでいる。一歩間違えれば、彼らのように対立してはこう言った悲しい結果になるかもしれない。そしてリオンはそうならないように最後の時まで語ってくれた。

 

これもきっと、託された事なのだろう。そう思う風。だけど、復興のボランティアを終えてそれと同じくらい大切なものを思い出してしまった。

 

思わず、言葉を失って俯く風。それを見かねたトーヤは言葉を口にする。

 

トーヤ「…お前の選択は間違ってはいない。だが…お前こそ我慢しているのではないか?。」

 

 

風「…わかる?。」

 

 

トーヤ「ああ。心の奥底では、お前は仲間の事が気になっている。勇者部とやらを解散した事を…後悔している。」

 

 

風「後悔だなんて…いえ…そうなのかもしれないわね。でも私は……。」

 

 

トーヤ「"人"であり続けろ。」

 

 

風「えっ…?。」

 

 

トーヤ「俺たち2人に向けられたメッセージだ。やはりお前は、自分のことにケリをつけた後、戻るべきだ。妹と一緒にその勇者部とやらに。今日のお前は楽しそうだった、いつもとは違って心が弾んでいた。もちろん、師匠のこともある…だが、それでもお前は師匠を思ってこう言った行動を取ったんじゃないか?。」

 

 

風「……それは……ちょっと待って…じゃあ、あんたがやたらと私の目的を果たそうとするのって…最初から私と樹を勇者部に戻すために……!?。」

 

 

トーヤ「…それは知らん。」

 

そう言って、ベッドに潜り込むトーヤ。だが、そのまま言葉を続けた。

 

トーヤ「…俺達は…自分で自分を縛り付けているだけなのかもしれないな。師匠がそう言った意味…なんとなく、そんな気がする。」

 

 

風「……そうね……結局は、自分の道を険しくしてるだけなのかもしれない…フフ…なんだか私たち、似た物同士ね?。」

 

 

トーヤ「それはないだろう…俺はお前のように……明るくなれない。」

 

 

風「え…何それ、褒めてくれてる…の…?。」

 

問いかけるも何も返って来ない。トーヤはそのまま眠ってしまったようだ。

 

風「何よもう…珍しいこと言ったと思ったら…でも……私はあんたのように強くなれないわ。でも……託されたものは同じだから…リオンさん。」

 

 

ー頑張ってみます。このぶっきらぼうな剣士と一緒に…ー

 

 

………………………end。




リオンの死。

託されたものを理解した2人は、自分達を見つめ直して前へと向かう決心がついた。共に後悔と答えが分からないまま、ただひたすらに動いていただけ…だが、彼が放ったその言葉に2人は触発され、恥じないように生きようと思ったのだ。

その一方、園子と洸、ツバサは王都付近にたどり着いていた。

その矢先、「劇団」のアリスと出会い、エルの所在について問い詰められることに…そしてその傍、囚われたもう1人の友奈がいた。

次回
第113話 猛攻のキュアスレイヤー。
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