〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
エルの提案で古代遺跡に"マジェスティクルニクルン"を手に入れに行ったメンバー。
そこに、「劇団」入りした蓮が待ち伏せていた。
芽吹は己の敗北を乗り越える為、蓮に私闘を仕掛ける。
そう…これは、壁を乗り越えるための彼女の戦いであった。
古代遺跡に向かった一同を尻目に、蓮は闘志を滾らせる。
何度も対峙したからわかる、芽吹はそれが「快楽」だと感じた。
彼は戦闘狂。それは、擬似勇者になる前から知れ渡っていたことだった。男でなければ、勇者の適性があったかも知れない…だが、完全に私闘のみで戦う彼に世界が担えるとは到底思えない。
そして今、彼は求めていた道筋を進んでいる…このまま放っておけば、彼は争いを生み出す権化と化して周囲に被害をもたらすであろう。
そんな危険人物を放っておく事はできない…ましてや、それが同郷の者であると尚更だ。平和な世に彼のような感性を持った人間は危険極まりない。だからこそ、止めなければいけない。だがそれと同時に、芽吹は越えるべき壁だと認識する。
二度も敗北を味わった悔しさ…これまでの自分の鍛錬が全て意味を成さない程にまで強大な敵。そして、それを越えなければ自分が目指す「勇者像」に辿り着けない。
そう思った芽吹は例えこれが私闘だとしても、引き受けるつもりではあった。元々、一同に付いてきたのはこれが理由だ。因縁の相手を目の前に、引き下がる理由が全く無い。
…世界が大変な目に遭っているのに我儘を通した。だからこそ、結果を残す必要がある。
芽吹の闘志は今まで以上に高揚していて。
そして……激突する。先手を仕掛けたのは芽吹。蓮は嘲り笑うようにその余裕の姿勢を崩さない。
芽吹「お前だけは私の手で…ッ!!。」
二挺の銃剣を握り締め、刃を展開。かつて、選抜試験までの鍛錬として培ってきた双剣術で対峙する。
蓮「性懲りも無くまた接近戦か?この俺相手に無謀だと思うけどな?。」
悲しいかな、芽吹の先手は簡単に防がれる。だがそれも想定済み。
次の一手として、横薙ぎの左足で蹴り飛ばそうと仕掛ける。
蓮「おいおい、マナーがなってないな?。」
左腕を下ろし、その蹴りを防いだ蓮。多少なりとも衝撃はあったがそれはまるで意味を成さなかった。
反撃が来る。芽吹は構えた…しかし、蓮は何もしてこない。
芽吹「…どういうつもり?。なぜ、仕掛けてこない!?。」
蓮「ああ…お前が必死こいて仕掛けて来るのを全て捌いてやろうと思ってな?俺が求めるのは強者との戦いのみ…雑魚に振るう剣は無いよ。」
それを聞いた途端、芽吹に湧き上がるのは憤怒の感情。
芽吹「…私は眼中に無いということ…?。」
蓮「そうだ、例えば…これに対応出来ない…とかな。」
蓮の踏み込みは凄まじく、芽吹は一瞬で距離を詰められた。
歯を食いしばりながら、銃剣を盾にするもその動作よりも早くに喉元に刃が突き付けられる。
蓮「今のでお前は一回、喉を貫かれて死んでいた。わかるか、これが実力差だ…天才と凡人の違い。お前は候補生として期待されていたそうだがその競争に負けたんだろ?そう…三好夏凛にッ!!。」
蓮は容赦無く刀の連撃で芽吹を詰めていく。防ぐしか出来ない芽吹だが、その合間を縫って飛んでくる斬撃に身を削られていく。
蓮「凡人は天才には勝てない…そこがお前の限界だ。だから俺に敵わないと言っている…勝手に壁認定されても困るっての!!。」
銃剣を一挺、弾き飛ばされた。すかさずもう一挺の銃剣で対応しようとする芽吹だが、蓮は横薙ぎの一撃を入れようと刀を振るう。
それは完全に、胴を捉えていた。しかし、直前で峰の方に入れ替えて殴り飛ばす。
芽吹「うっ…がは…ッ…!!。」
それでもその一撃は重かった。息を詰まらせては血を吐き、両膝を付いて呼吸を整えようとする。
俯く自分の首筋に、白刃が立てられた。
圧倒的な実力差を見せつけられた芽吹は、歯を食いしばって蓮を睨む。
蓮「あれで、2回目。そして、これで3回目だ。何回死ぬんだろうな、お前は…そうだ、これだけは言っておいてやろう。確か最終選抜の時にお前は三好夏凛に一本、取ったそうだな?。しかし、選ばれたのはお前じゃなかった…これが意味することが分かってないはずはないだろう?。」
その言葉に、芽吹は拳を握り締める。思い返したくも無かったあの日のこと…何故、自分じゃなかったのか。今でもそう思う。
だが…防人として戦った事には誇りがある。勇者になれなくても、自分の意地を張り続けられた。だからこそ、誰一人欠けること無くあの地獄から生還できた。なら、もう自分は満たされている…過去に縋って生きる必要はない。自分は防人だ…そして、それ相応の生き様を残せればそれでいい。
そう思うと、芽吹は立てられた白刃を握り締める。血が流れ落ちようが関係無い。蓮は鼻で笑いながら、刀を引こうとするが全く動かない。
蓮「………何の真似だお前?。」
少し、苛立ちを覚えながら。
芽吹「……確かに…お前のいう通り、私は最終選抜に落ちた落ちこぼれのようなものよ…武で勝っても、人としては勝る事ができなかった…それがきっと、敗因なのだと思う…私は凡人よ…何処まで行っても凡人。天才と呼ばれるお前や三好夏凛には到底及ばないでしょうね…でも…それでも…ッ!!。」
刃を握ったまま立ち上がり、芽吹は口の端から流れる血を気にする事なくその強い眼差しで訴える。
芽吹「天才に迫るぐらいには努力したッ!他の誰よりも…他人よりも劣っているからこそ、血反吐を吐こうが努力したッ!その結果が今の私だッ!。私はお前を越えなければならないッ!!。防人達はみんな凡人よ…だけど、それだけいつも限界まで一生懸命生きているッ!!。それを馬鹿にするお前は凡人である私が倒さなければならないッ!!。」
立ち上がった芽吹は、蓮の刀の刃をしっかりと握ったまま。
芽吹「だから私はまだ負けられないッ!!。お前のような奴には負けられないのよッ!。」
蓮「勢いだけでやれるほど甘くは無いんだよッ!いい加減に死ねよ…ッ!!。」
芽吹を蹴り飛ばし、再び刀を構えるも銃弾が頬を掠った。
芽吹「はぁ…はぁ…天才…?聞いて呆れる…わ…凡人の攻撃は貰わなかったんじゃない…の…?。」
蓮「…そうだったな。だがお前はどうだ?。」
飛ばされた斬撃により、芽吹の胸部から血が流れ落ちる。それでも、芽吹は諦めない。
芽吹「はああああ…ッ!!。」
ワイヤーを放って落ちているもう一挺の銃剣を手に取る芽吹。そのまま反転して左手に構えた銃剣のトリガーを引く。
不意に放たれたにも関わらず、蓮はその反応速度で回避。しかし、芽吹のそれはフェイントだった。
蓮「な……ッ…!!。」
芽吹「これが命のやり取りをやってきた人間の…底力よ…ッ…!!。」
放ったワイヤーを横薙ぎに払い、蓮はそれに打たれて地面を激しく転がった。
ようやく入ったその一撃。しかし、芽吹がもらった代償はそこそこ大きかった。
芽吹(…これだけやられてたった一撃……割に合わないわね……。)
この一撃を入れるために負ったダメージ。芽吹は痛みに耐えながらも蓮が吹き飛んだ方向を見据える。
この程度では倒れない。
それは分かっていた。だからこそ、油断はしない。ここからがきっと…本番だ。
そう思いながら、銃剣を再び構えては集中力を高める。
その予想は的中…立ち込める砂埃の中から蓮が突進して来る。
蓮「屈辱だよ…余裕をこいていたら一撃をもらうなんてなぁッ!!。」
研ぎ澄まされたその闘気が宿る刀身。それは確実に命を刈り取るための攻撃。しかし、芽吹はその動きが一瞬だけ止まって見えた。
そして、その軌道に銃剣の刃を交差させて激しくぶつかり合う。
この一撃で沈める気だったのだろう、蓮は流石に驚いた。
芽吹「はあああああッ!!。」
力任せに銃剣を振り抜き、蓮を弾き飛ばす芽吹。空中に投げ出された蓮は即座に刀を構えるがそれよりも早く。
芽吹「もらったぁああああッッ!!。」
銃撃と剣戟を織り交ぜたその攻撃は流石に予測外だった。
蓮は左眼を撃ち抜かれた。
蓮「ぐあああああああッッ!!。」
潰された眼球の痛みに耐えかねず、手で押さえながら悶える蓮。
弾丸が目に当たったのだ、普通なら死んでいる。
蓮「目が…クソ…やってくれたなぁああ…楠芽吹ィイイイッッ!!。」
感情をむき出しにした蓮の攻撃は苛烈さを増す。しかし、芽吹は致命傷を避けるための最適解を取った。
それは、打ち合う事。
悔しいが、彼の剣技は本物だ。避ければその手数の多さに圧倒されて戦況をひっくり返される。戦闘狂はこういう時こそ、無駄に冷静になる。
感情をむき出しにしながらもその精度は確実なものだ。特に、人の壊し方を知っている彼だからこそ明確にその部分を狙って来る。
そこに冷静に対処しながら、機会を伺う。それが例え、数多の傷を負おうとも。
蓮「クソが、そのまま斬られて死ねよォオオオオッ!!。」
袈裟、突き、逆袈裟と縦横無尽な斬撃を悉く防いでいく芽吹。窮地に立たされたからこそ、その力が発揮される。特に、"量産型勇者"とも言われた防人ならではの本領。
誰一人欠けること無く、星屑を始めとしたバーテックスとの戦いを経験した彼女は生き残る術を知っている。
確かに、凡人が天才に勝るのは至難の業だ…努力で埋まるものでも無い。だが、芽吹はその努力と同じくらい「経験」を得てきたのだ。
天才(勇者)を助けるべく、凡人(防人)がその裏で全てを支える。
あの戦いはそれで乗り越えたようなもの…メインステージで踊る天才を輝かせるために、凡人が裏方に徹する。
それで十分だ。その気持ちがあれば、例え本物の勇者でなくても"勇者"になれる。
苦しみ抜いたあの経験が今、この天才を圧倒しようとしている。それが芽吹の「執念」だ。そしてそれこそが……"人"として戦い抜いた強さだった。
芽吹(勝ちたいと願うのは欲望だけど…でも私はそれが間違ってるとは思わない。だってそれが人だもの…三好さんに勝ちたい…コイツに勝ちたいと願う気持ちが私を強くするッ!そして私は…"車輪の下敷きにならない"ように泥臭く生き抜いて見せる…防人の隊長として、誰一人欠ける事なくッッ!!。)
遂に蓮の攻撃を完全に見切った芽吹は振り下ろしと共に蓮の顎を蹴り上げる。
そして……。
芽吹「借りは…返したわよッッ!!。」
二挺の銃剣で蓮を切り裂いた。その一撃は深く、声を上げながら蓮は地面に叩きつけられた。
蓮「バカ…な……俺が……コイツに…負けるなんて…ッッ!!。」
芽吹「はぁ…はぁ…うっ………3度目は…負けないわ…。」
そういう芽吹も満身創痍で膝を付いた。
受けた傷は相当なもの、気を引き締めていないと意識を手放しそうになる。
蓮は敗北に戸惑いながらも意識を手放した。流石に死んではいない…それだけはホッとした芽吹。
身体中の激痛を気にする事なく、芽吹は座り込んでは手を空に翳して握り締めた。
芽吹「……ふふ……情けないものね…勇者を目指した奴が偽物の勇者を相手にこうまでやられる…なんて…でも、今は清々しい。これでまた私は……。」
芽吹(みんなを…生かせられる…。)
満足げな表情を浮かべながら、芽吹は目を閉じて意識を手放した。
例え、泥臭くてもいい…華やかでなくてもいい。
車輪の下敷きにさえならなければ…胸を張って生きていける。
そう、思うのであった……。
………………………………end。
執念と経験、そして努力を以て凡人として戦った芽吹。
それは天才を上回り、因縁の敵である蓮を撃破した。
その一方で、内部へと突入した残りのメンバー。
最深部に辿り着いたその時、祭壇にあったのは石版化した"マジェスティクルニクルン"。
それを手にする為の試練が一同に降り掛かる。
世界を救うための力を手にするのに値するか…。
一同は…試される。
次回
第119話 世界を救う力、マジェスティクルニクルン。