〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
シン・バーテックスとDM…通称"無の軍勢"。
そして、ナイアル率いる「劇団」とアンダーグ帝国。
未来を賭けた戦いが今、始まりを迎える……。
"無の軍勢"との戦いから数日後……。
立て続けに大きな戦いを経た一同はその疲労を癒していた。
ここ数日は、特に襲撃もない…不気味さを感じるがそれでもその束の間かもしれないその静寂は一同にとっても助かる。
特に、致命傷を負った洸は未だに目を覚さない。
その隣にずっと付いてる園子も、かつての親友の魂が"無"によって利用されているそのショックによりいつもの元気さがまるで無い。
王宮の一室……そのテラスに出たましろは風に吹かれながらジッと、無限に続く雲を見ていた。
友奈「ましろちゃん、大丈夫?。」
何も言わずに真剣な眼差しのましろを心配してか、友奈が駆け寄る。
ましろ「大丈夫だよ、ちょっと考え事をしてただけ。それよりも、東郷さんは大丈夫?。」
友奈「少しは落ち着いたみたい。でも、そのちゃんが……。」
ましろ「…仕方ないよ。大切なお友達と洸君があんなことになってるんだから…今はそっとしておいた方がいいかも。」
友奈「…うん……。」
しばらく続く沈黙。
ましろはそのまま先を見据えたまま、口を開いた。
ましろ「…きっと、大丈夫。」
友奈「え…?。」
ましろ「ここ最近、友奈ちゃん達にばかり良くないことが起きてる。でも、私達が付いてるから安心して?。私は、みんなに迷惑をかけた。だからね、人一倍に頑張らないといけない。私を諦めなかったみんなに報いる為に…。」
友奈「そんなこと…。」
ましろ「私自身の決着がまだ付いてないの。仮にも、私は「劇団」に居た身…本来なら、ナイアルから受けたあの傷によって助かってなかったらしいの。思い出したんだ、私…本当は死んじゃってたって。」
友奈「でもましろちゃんは紛れもなくここに…!。」
ましろ「うん。ちゃんとここにいるよ?私は私…みんなの知る虹ヶ丘ましろ。だけど、「劇団」とのことは私がちゃんと決着をつけなきゃいけない。元は私が引き起こしたことなんだから。」
そう言うましろの表情はとても凛としていて、ソラと鷹夜に似た力強さを感じさせる。
ましろ「マジェスティクルニクルンを手に入れても、エルちゃんが言った通り、それだけじゃきっと全てを守ることなんて到底出来ないと思う。けど…絆の力ってやつならきっと大丈夫。敵のことも勿論気にしなきゃだけどまずは当初の目的の風さんと樹ちゃんの捜索を始めよう?。その為にここに来たんだ。」
それを聞いた友奈の表情は明るくなり、目一杯の笑顔を見せて。
友奈「うんッッ!!。」
いつもの明るい表情をした。
友奈(そうだよね…これから迫り来る事に立ち向かうにはみんなが一緒にならなければならない…誰1人として欠けちゃいけないんだ…それが…「わたしたちの未来」ッッ!!。)
……………………。
その一方で、風とトーヤは王都からかなり離れた位置の浮島に辿り着いていた。
王都での出来事は勿論、この遠い場所にも届いていた。
それを守り抜いたのはプリキュア達と勇者達。この世界にも、少しずつだが勇者の存在が認知されていた。
あの大軍勢を退いた…以前と比べて強くなった一同のその姿に風は少しだけ嬉しくなっていた。だが、それと同時に複雑な気持ちも込み上げてくる。
生きるか死ぬかの瀬戸際でずっと戦っている仲間達。本来ならば、一緒にその場で死地を乗り越えていくべきなのに自分は何をしているのか…。
「廃部宣言」までして、妹を追いかけてここに来たのにいまだにその目的が達成されていない。
それどころか、まだその姿すら発見出来ない。
他のみんなとは比べて自分は何も出来ていない…その気持ちが込み上げて来ていたのだ。
2人は今、地元の喫茶店で休憩していた。頼んだ飲み物が進んでいないことに、トーヤは気付いていて。
トーヤ「…やはり、気になるか?。」
まるで、考えていることが分かるかのように問いかける。
風は一瞬、少し驚いた表情をしたが否定せず、そして何も答えない。
トーヤ「…あの大軍勢は世界の存続に関わるほどの規模だった。それを退けるなんて…彼女達がいなければ、今頃王都は滅びスカイランドという世界は無くなっていたかもしれない。俺たちが今、こうして茶を飲んでいられるのは彼女達のおかげなのかもしれないな。」
風「…そうね。流石、あの子達だわ。私が居なくたって、ちゃんとやっていけてる。それに比べて私は……。」
トーヤ「…人には役目がある。焦って手にしようとすると全てを溢してしまう。お前はお前の本懐を成し遂げればいい。その覚悟がちゃんとあるのならな。」
そう言って、トーヤは立ち上がる。
風「どこに行くのよ?。」
トーヤ「さっさと頼んだものを飲め。お前に少し、見せたいものがある。」
風「見せたいもの?。」
訳もわからず、トーヤの言う通りにした風は彼と共に店を後にする。
そして、連れてこられた先は……小さな廃村だった。
風「…廃村?。ここ、もう人の手が加えられてないみたいだけど。」
トーヤ「ああ、ここは……キュアプリズム…虹ヶ丘ましろが「劇団」に居た時に滅ぼした村だ。そしてここから俺の…"理由"が始まった場所でもある。」
無惨に破壊されたその村…そして、枯れ果てた草花が広がっていてその光景はまさに静寂…ここの生き残った村民達は皆、先ほどの街に移り住んでいたのだ。
トーヤ「…あの時、悔しさと無念を吐きながら死んだ村民の事を今でも思い出す。あの時の俺はプリキュアの力を手にしたばかりの時…戦う理由も何もなく、ただ師匠のような騎士になりたいと思っていた頃の俺だ。だが…あの思いを聞いてからは俺にもやるべき事がわかった。それは…悪意あるものをこの世から消し去る事だ。」
風「でもそんな事…。」
トーヤ「ああ、無理だろうな。そんなことは俺のただの正義感にしか過ぎない…だが、それでもやろうと思った。だが、彼女が自分の意思とは全く違う意思によってこの惨状を引き起こしたと聞いた時は考えてしまったんだ。それはきっと、勢いだけで覚悟がなかったのだろう。だから、あの時直接会って確かめた。しかし、彼女はそれでも罪を認めて償う為に命を賭けると俺に告げたんだ。それは嘘ではなく、真実…あの覚悟に満ちた目を見れば分かる。あれが…"本物"なんだと。」
歩きながら話すトーヤ。
そして、辿り着いたその先は……自分が村民を看取った場所だった。
トーヤ「…俺は危うく、自分の正義感だけで剣を振るい、真実と向き合わずに思い込みで人を殺めるところだった。全ての出来事には事情が必ずある…それを見極めてから俺は剣を振ると決めた。その上で悪意あるものをこの世から消し去る事を本懐にしようと改めて決めたんだ。ここの村民には悪いが…彼女に悪意は無かった。しかし…1人では背負いきれないほどの大きな罪と一緒に生きていくとそう告げたんだ。俺はそれを報告したかった。虹ヶ丘ましろは…その受けてしまった怨恨を背負いながらでも生きていくと。だから…もし、その罪が清算されたのなら許してやって欲しい…それをここの村民に伝えに来た。今日だけは俺のわがままでここに来ようと言ったんだ、すまなかったな。」
懐に仕舞った小さな花を取り出してはそこに植えたトーヤ。
そして、手を合わせて心の中で同じ事を告げた。
トーヤ「…だから、お前はお前のわがままを貫き通せばいい。目的を見失うな、そして真実と向き合え。お前の妹が"無の力"に手を染めてしまったその理由…そこに、真実がある。今のままではお前の声はきっと届かない。そして、そうなった先に待ち受けるのは…お前の心が死んでしまう事だ。だからその目的を果たしてお前は居るべき場所に帰るんだ。「勇者部」とやらがお前の居場所…そこにお前の未来があるはずだ。今度はそれを目的にすればいい、そうすればお前は…今の自分に課せられた使命と向き合うことができる。」
その言葉を聞いた風は自然と涙を流していた。
まさかここに来たのはそれを言いたかったから?自分も悩みの最中にいると言うのに、敢えてわがままを貫くことで改めて自分の使命が間違っていないことを伝えてくれたのか?。
そう思うと、ポロポロと涙が溢れ出てくる。
風「ぁ…ご…ごめん……涙が止まらない…なんでかな…?。」
トーヤ「…妹を取り戻して皆のところに帰る。そう思えたんじゃないか?。俺はただ…後悔したままだと得るものは何もない事を教えたかっただけだ。その…教え方がよく分からんのだ。すまん、回りくどいことしか俺には言うことができない。」
少し困った顔をするトーヤに、風は涙を流しながら笑う。
風「ぐす…あはは…あんたってばなんでそんなに不器用なのかな…でもありがと……少しだけ元気が出た気がする。」
涙を拭った風を見て、トーヤは安心したのか踵を返して歩き出す。
トーヤ「そうか…なら、旅を続けよう。きっと、お前の仲間達が追いかけてくるはずだ。その前にお前が妹を見つけ出して、連れて帰れば安心するだろう。」
風「うん。でもその時はあんたも……!。」
トーヤ「………考えておく。」
小さくそう言うと、トーヤは先を歩く。
風(…トーヤ…あんたは………。)
スカイランドに来てからずっとトーヤと行動を共にして来た風。あまり感情の変化がない彼に少し苦手な意識を持っていた。当初の蒼葉ほどではないが何を考えているかが分からない上に、何故そうまでして人の為に動こうとしていたのか。リオンが死んだ時も泣きもしなかった…それどころが、その思いを胸に秘めてとんでもなく大きな壁をたった1人で登ろうとしている。それも、誰も頼ることなくたった1人で。
トーヤの見据える未来は?一緒に進んでくれる人は?。
冷静だが危なっかしいトーヤを、風は見過ごすことが出来なくなっていた。
だから、この目的を果たしたその時はトーヤを連れてみんなの所に帰る。彼を1人にさせたくない。リオンが居ない今はきっと帰る場所がどこにも無い…それどころか、去ってしまうともう二度と会えない気がする。そう思って。
今この瞬間を以て、そう思っていた。
それから数日が経ったある日……一件の情報がトーヤの元に寄せられた。
それは……樹の目撃情報。それも、ここからかなり近い場所に。
その情報に思わず目を疑ったトーヤは風に伝える。
トーヤ「お前の妹の目撃情報があった。昨日、この近辺で目撃したらしい。」
風「…えっ!?。い…樹がこの近くにッッ!?。」
トーヤ「ああ、何をしていたのかは知らないが…とても危険な気配を漂わせていたと聞いた。幸い、王都の機能が麻痺しているせいでこの情報が青の護衛隊にまで行っていないが…看過はできない、危害を加えたらそれこそこの世界の敵として認知されてしまうぞ?。そうなれば、それを庇う俺たちも犯罪者…状況はもっと悪くなる…ッ!。」
それを聞いた風の目に、力強い眼差しが蘇る。
風「今すぐにその目撃された場所に向かいましょうッ!!。その様子だとかなり危ないかもしれない…ッ!!。」
風(馬鹿…なんでそうまでして力を求めてしまったのよッ!!。待ってなさい…今すぐに行ってあんたに理由を聞いて…そして、首根っこを掴んでまでみんなの所に帰るんだ……ッ!!。)
……………………end。
樹の目撃情報を得た風とトーヤはその現場に急行する。
周囲を探していたその時…待ち伏せをしていたかのように樹がその場に現れる。
"無の力"の侵攻は凄まじく、樹の自我はもう既に支配下に置かれていた。にも関わらず、彼女はそれを自分の意思だと信じて2人に戦いを挑む。
ーお姉ちゃんに勝つことが出来れば、強くなれたと証明できるー
完全に歪んだその思想の元、容赦のない樹の攻撃が2人に襲いかかる…。
次回
<第4部 崩壊編>
第123話 "無"の勇者・犬吠埼樹。