〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。

自身の罪に心を壊されながらも、それを償おうとするましろ。

そして、その心の傷に気付いた鷹夜は彼女を止める為に動く。

…もう、アイツが苦しむ必要なんてない。

その拳に炎を宿し、少年は少女の心を救う為に……戦う。


第126話 断ち切れ、悲しみの連鎖。

気を失ったましろは医者のまともな治療を受ける為に、スカイランドの診療所に運ばれた。

 

外傷は見た通りのものであり、最も深刻だったのは彼女の精神状態だった。

 

鷹夜の言った通り、ましろは相当な無茶を繰り返していた。たった1人で"無の軍勢"がスカイランドにやってくるゲートを制していた事。しかし、その傷を見るに苛烈さは増しているのだろう。そして、それがもう通用しないところまで来ている。

 

戻ってきてから、覚悟は決めていたがその罪にいつも苦しんでいたのだろう。命も奪ってきたのかもしれない…世界を混乱の渦に陥れたのは紛れもなく自分だということに押しつぶされそうになっていたのだろう。

 

何度も壊れそうになる心を繋ぎ止めていたのは、自分の覚悟だったのだろう…このままいけばきっと、死ぬまで償おうとしていたのかもしれない。

 

ベッドで静かに眠るましろの側についているソラ達は、その苦しみに気付いてあげられなかったことに心を痛めていた。

 

ソラ「ましろさん、いつも笑っていましたが本当は心が壊れそうになるくらいにまで追い詰められていたんですね…私、失格です。友達として寄り添えてなかった。」

 

 

あげは「それは違うよソラちゃん。ましろんはね、こう見えて結構そう言うところがあるのよ。自分が悪い事はとことんまで自分を追い詰めてしまう…本当は苦しいのに、苦しいなんて言わない。きっと、その悪い癖が今回で出ちゃったんだよね。」

 

 

ツバサ「…ましろさんを理解していなかったのは、僕達なのかもしれませんね…。」

 

その時、扉がゆっくりと開く。

 

友奈「ましろちゃん、大丈夫?。」

 

 

ソラ「友奈さん…はい。傷は多いものの、心配はないそうです。ただ…精神状態が不安定だと言う事が唯一の心配だと言いましょうか……鷹夜さんは飛び出していきましたし、私達はましろさんが目を覚ました時に無茶をしないように側についててないといけません。」

 

 

千景「彼、どこに向かったの?。」

 

 

あげは「分からないよ、ただ…さっき蒼葉から聞いたけど多分、ましろんの代わりに"無の軍勢"のゲートを観に行ったんだと思う。」

 

 

蒼葉「…お前達には申し訳ないが、俺は虹ヶ丘の行動を知っていた。すまない、彼女に口止めをされていてな…あの眼を見て、何も言い返せなかった。」

 

 

ソラ「蒼葉さんが謝る事はありません、これはましろさんの無茶…勝手にそう思い込んで、相談もしないで1人で抱えて……もっと悪いのは私達ですよ。側にいながらもその苦しみに気付いてなくて…でも、挫けてはいられませんね。鷹夜さんが動きました、お願いがあるんです…あの人を追いかけてください。」

 

ソラのその言葉を待っていたのか、友奈は笑みを浮かべながら。

 

 

友奈「分かってる、でも先に行った人がいるからちょっとは安心できるかも。」

 

 

ツバサ「先に行った人?。」

 

 

友奈「うん。多分、一番に鷹夜君を理解してる人じゃないかな?。彼が飛び出して行った瞬間、食べてたアイスを咥えながら追いかけて行ったよ?。」

 

 

夏凛「あの馬鹿はそう言うところはすぐに気付くんだから。私たちもすぐに向かうわ、ましろの事…頼んだわよ?。」

 

 

ソラ「わかりました!!。」

 

 

ソラ(すみません、鷹夜さんを頼みました…烈火さん!。)

 

…………………………。

 

「ちょい、そこの兄さん。俺をパーティに雇う気はないかい?。」

 

森の中を歩くアグニを呼び止めたのは変身した烈火。木にもたれながらメイスを地面に突き刺す。

 

アグニ「……お前、まさか追いかけてきたのか?。」

 

 

烈火「深刻な顔して屋根を飛び回ってる奴なんてそうそう居ねェだろ?。しかも、変身してるし…お陰で食ってたアイスを一気食いする羽目になったよ。あれ、友奈が奢ってくれたんだからな?。」

 

 

アグニ「別に来いなんて言ってねぇけど……ま、お前がいるなら心強いな。雇うぜ、まぁ…報酬は無しだけど。」

 

 

烈火「タダ働きかよ、はぁ〜…人使いが荒ェなぁ……さて、冗談はそこまでにしてっと。」

 

メイスを担ぎ、この先にある異様な気配に眼を細める。

 

烈火「何があったかは後で聞いてやるけど…今はこの先にある嫌な気配をどうにかするか。」

 

 

アグニ「ああ、その為にここまで来た。」

 

少し進むと、森の中心地に巨大なクレーターが形成されておりそしてその中心部は視認出来るほど次元が歪んでいた。

 

ドス黒く澱んだ空気…それは今にも飛び出しそうでその周りには結界のようなものが張り巡らされていて。

 

恐らく、ましろが毎日ここに通って拵えたバリアなのだろう。だがそれももう限界に近いと言う事がわかるほどに。

 

…こんなやばい代物がスカイランドにあったのか…そして、ましろはたった1人でそれを抑え込んでいた…それも、毎日。

 

そう思うと、その無茶の度合いがどれほどのものだったのか身に染みて分かった。

 

烈火「これ…何なんだ?。」

 

 

アグニ「…"無の軍勢"がこっちに来るためのゲートだそうだ。これがある限り、無限に沸いてきやがる…しかもこれ…来るな…?。」

 

そう言った途端、結界に亀裂が走る。そして、そこから手のようなもの伸びてきて結界を引き裂かんとばかりに周囲の次元を歪めながらその身を乗り出してきた。

 

その存在は今までとは違う……腕が6本ある巨大な異形…どの世界の生物にも属さないまさに「異形」。

 

目がギョロリと動き、こちらを見つめてくる。2人は無意識に身体が硬直した。蛇に睨まれた蛙とはまさにこのことか。

 

直後、その異形が襲いかかって来る。

 

アグニ「クソ…何だコイツは!?。DMか!?それともシン・バーテックス!?。」

 

その腕はまるで人の腕のように器用で、周囲の木々を薙ぎ払っては舞い上がった瓦礫を投げてくる。

 

烈火「そのどちらでも無いとしたらッ!!?。」

 

 

アグニ「ッ……新たな"無の軍勢"!?。」

 

身体が出てくるたびにその周囲の次元が捻じ曲がる。

本能的にわかる…コイツは出してはいけない存在だと。

 

烈火「ッ…このぉおおおお!!。」

 

伸びてきた腕をメイスで打ち砕いた烈火。異形は雄叫びを上げながら身を引っ込めた。

 

アグニ「攻撃は通じる…けどなんだ、この嫌悪感は!?。」

 

 

烈火「分からねェッ!だけど、本能的に分かるぜッ!?コイツは俺たちの…いや、生きとし生けるもの達の"天敵"だって事がなッ!!。」

 

戦意を高揚させた烈火は突っ込む。異形の多種多様な攻撃を悉く弾き続け、その距離を詰めていった。

 

烈火「雷鳴裂破ッッ!!。」

 

逆手で持ったメイスを身体ごと振り抜き、その余波で異形を弾き飛ばした烈火。しかし、その直後に伸ばしてきた腕に身体を掴まれた。

 

烈火「ぐうッ!?コイツ…ッ…!。」

 

 

アグニ「烈火ッ!!。この…ッ!!。」

 

地面を蹴って飛び出したアグニは腕に蹴りを入れるも、その力は弱まらない。

 

そして異形は手に力を込め、烈火を握りつぶそうとする。

ミシミシと、嫌な音を立てる烈火の身体。歯を食いしばり、その痛みに耐える。

 

烈火(ヤベェ…身体が潰されちまう…ッ…!!。)

 

あまりの握力に、身体の中が圧迫され始めた烈火は血を吐く。

 

だがその時……。

 

「勇者…パァァァァアンチッッ!!。」

 

鈍い打撃音と少女の声。異形の顔面が打ち抜かれた。

 

奇妙な声をあげて倒れ込む異形。手から解放された烈火は地面に落ちてその攻撃の主を見つめる。

 

烈火「へへ…助かったぜ、友奈ッ!!。」

 

 

友奈「間に合ってよかったッ!大丈夫ッ!?。」

 

 

夏凛「全く、ましろはソラ達に任せてあるわッ!感情をむき出す前に私たちに相談しなさいよね、バカ鷹夜ッ!。」

 

 

アグニ「すまねぇな、でも来てくれたんだな!?。」

 

 

蒼葉「"無の軍勢"がこちら側に来る為の回廊なんて代物、黙認なんて出来るはずがないだろう?。」

 

 

アグニ「何…お前、知ってたのか?。」

 

 

蒼葉「ああ、虹ヶ丘に口止めはされていたがな。しかし、コイツは…。」

 

 

東郷「…"怨念"…のようなものを感じるわね…。」

 

ライフルの銃口を向け、スコープに目を通してその異形を見つめる東郷。「巫女」の性質を併せ持つ彼女はその"嫌悪感"をダイレクトに感じていた。当然、そんな事を感じない一同にとっては本能が指し示す「危機感」へと捉えていて。

 

芽吹「ならあれは、霊的なもの…?。」

 

 

東郷「分からない。けど、あれも恐らく"無の軍勢"の一部…私の推測になるけど、"無の軍勢"は「消滅させようとする意思」そのもの…だから、あれは間違いなくこの世に出しちゃいけないものだと思うわ。」

 

 

烈火「クソ…怪物の次は悪霊ってか?。文字通り、コイツらは無限ってわけかよ…ッ!!。」

 

 

アグニ「無限でも何でも良い…コイツらが滅ぼしに掛かるってんなら俺は真っ向から立ち向かうッ!!。そして、もう誰も悲しまない世界にしなくちゃいけねぇんだッ!!。」

 

 

友奈「鷹夜君…。」

 

 

アグニ「ましろはずっと自分を責め続けてる…だから、こんなヤバいのを出さねェ為に無茶をしたんだろう。元はと言えば、コイツらが動き出したからだ。アデルの野郎もコイツらの一部だってんなら、元々の元凶はコイツらから始まってるッ!!。そして、お前達がまた戦う羽目になったのもコイツらのせいだ…何が「消滅させようとする意思」だ…仁義も何もあったもんじゃねぇ、こんなのはただの…"外道"だッ…!!。」

 

目の前の「理不尽」に対して怒りの炎を燃やすアグニ。

相手は無限…そして、人智を超えた高位生命体…すなわち"神"にも匹敵するほどの銀河規模の天災。

 

光と闇の戦いを超えた異次元の戦い…その戦いへと突入した一同に降りかかってくるのは常識が通じない理不尽の数々。

 

たった1人の女の子がその理不尽に巻き込まれ、そして心を摩耗させていっている…こんなこと、許されるはずがない。

 

心の内の闇を利用されて、世界を暗雲に染めるためにその手を穢され、そして今度は…もうどうにもならないほどの大きすぎる「悪意」によって、彼女は苦しめられている。

 

なんで、ましろなんだ?。何であいつがいつまでもこんな苦悩を抱えなければいけない?。あんな疲れ切った顔をするような奴じゃない…今にも崩れそうな、儚い笑顔をするような奴じゃない…優しい心に闇を落として、そしてその責に追われて、当然、太刀打ち出来ないようなこの世のものじゃないものと向き合わなければいけない。

 

ふざけんじゃねぇ、全てはお前達が関わってきたことだ……あいつの本当の光を…その笑顔を"返しやがれ"!。

 

そう思った瞬間、アグニは金色の光を纏って無意識に異形を殴り飛ばしていた。

 

他の一同は何が起きたか分かっていない…気がついたらアグニが動き出していて、そして見たこともないその金色の光に身を包ませて拳を固めていた。

 

その異形は禍々しい雄叫びを上げながら倒れ込む。

 

夏凛「な…何が起きたのッ!?。」

 

 

烈火「鷹夜…お前……。」

 

地面に着地したアグニは拳に力を込める。その手に宿すのは炎ではなく…"光"。

 

アグニ「…テメェらは無意識かもしれねェがな……もう帰ってこねェ大事なダチの魂を利用して、その姿で園子と東郷の心を抉ったッッ!!。挙句に、洸は助かるかもわからねぇほどの重傷で……。」

 

思い浮かべたのは、スカイランドの医療施設でずっと眠っている洸。そして、いつもならおちゃらけた表情の園子がずっと暗い顔をしている光景。

 

そして、銀の姿をしたシン・バーテックスに引き金を引いた東郷の表情。泣きながらでも、気持ちを押し殺して戦った彼女。

 

アグニ「俺たちの大事な仲間を…傷付けたッッ!!。」

 

ぼんやりと、背中に光輪が現れる。

いつか見たその姿…しかし、今度ははっきりと見える。その姿はまるで……"闘神"。

 

光と炎を混ぜ合わせ、キュアアグニは…"進化"する。

 

アグニ「キュアエヴォリューションッ!…モード「スサノオ」ッッ!!。」

 

眩い光が辺りを照らす…"勇者"と"プリキュア"の力を併せ持った唯一無二の存在…"藍葉鷹夜"という1人の少年のみが発現させた戦士…その名を……。

 

キュアスサノオ……世界に蔓延る悲しみの連鎖を断ち切らんとする"闘神"の名を持つプリキュア……。

 

ここに、見参。

 

 

…………………………end。




"無"によって、ましろ、園子、東郷の心を抉った事に怒りを露わにするアグニ。

仲間を守る為に、そしてその心に光を取り戻す為に悲しみの連鎖を断ち切るべく、度々その姿を垣間見せていた力を完全に解放した。

キュアスサノオ。

神の力をその手に宿し、少年は"無限"に立ち向かう…。

次回
第127話 見参、"闘神"と呼ばれたプリキュア。
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