〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
アデルに仕込まれていた「闇の種」を見事に打ち払ったキュアスカイこと、ソラ・ハレワタール。
しかし、その代償に虹ヶ丘ましろは凶刃に倒れ、生死の狭間を彷徨うことに。
場所は移り、遠い世界…「四国」。
その世界は園子の居た場所であり、彼女は「行方不明者」として全力で捜索されていた。
そんな中、讃州中学に属する14歳の少年「菱咲 烈火」はいつものごとく、屋上で友人と共にだらけきった生活を送っていた…。
「神に守られし土地」として人類最後の生存地帯と呼ばれた世界。
「四国」。
西暦と呼ばれた時代は突如として現れた天からの異形によって蹂躙され、世界人類の過半数が死滅し、そこで終わりを迎えた。
ー神世紀ー
そう呼ばれた新たな暦…それは、唯一その異形に対抗できる「神に見初められし少女」達が誕生した年。
およそ、300年にも及ぶ長い長い戦いは数多の少女達が流してきた血と涙…そして、途方もない願いがずっと込められてきた。
その悲しくも苦しい戦いは、再び「人」として生きる道を選んだ少女達の手によって終結を迎えた。
「神の消えた世界」。
もう一度、人の時代に戻ったこの場所はこれからが前に進めることになるだろう。
そう…思っていた…「あの時」までは。
………………。
〜讃州中学、屋上〜
「あ〜…かったりぃなぁ…。」
真紅の髪の少年は屋上の落下防止柵に体を預け、今日も何も無い空を見上げていた。
その横で、青髪の少年はタブレットとずっと、にらめっこをしていた。
「まーた、調べ物か?。それともゲーム?。なぁ…「蒼葉」?。」
蒼葉…と呼ばれた少年は真紅の髪の少年に目を向ける。
蒼葉「少し黙ってろ、「烈火」。…むぅ、どの記事も「乃木園子の失踪について」と言った、記事ばかりだ。余程、大事にされてきたお嬢様ってことか。」
烈火と呼ばれる少年は、ハハッと微笑を浮かべる。
烈火「そりゃあ、「大赦」の名家である「乃木家」のお嬢様だぜ?。世の中の騒ぎはデカいだろうさ。」
蒼葉「大赦…か…。」
「大赦」。
それは実質、この世界の権力の全てを握っているとも言える巨大な組織。
その実態はほぼ不明、わかることは信仰組織のような神官や巫女といった、神にまつわる内容を重視した組織…と、一般の間ではそう思われている。
大赦に入れば将来は安泰。
そう言った、言葉もあるほどだ。
しかし、あまりにも謎が深いその組織は同時に危険でもある。
溢れ出す好奇心に、蒼葉はずっと、大赦に関する情報を多方面から探りを入れていたのである。
烈火「ほどほどにしとけよ?。大赦のお偉いさんから目ェ付けられたら面倒くせェぞ?。」
蒼葉「その時はお前の姉に弁明でも頼もうかな。」
烈火「はは、期待すんなよ?。あと、1ヶ月は家に帰ってこねェだろうからさ。」
そう、2人で談笑をしているとそこに…。
「また居たよ、このサボり魔達ッ!!。」
栗色の、ツインテールが特徴な小柄な少女が2人に詰め寄る。
見た目に反して、その強気な性格からか学校の風紀においては一目置かれている。
烈火「ゲッ…三好夏凛…!。」
夏凛「何よ、あんた…人の顔を見るなり目を逸らして。あんた達、そろそろ戻りなさいよ?。授業、始まるわよ。」
烈火「やーなこったッ!。んな退屈な事、してられっかよ。」
「ちゃんと受けないと…テストで赤点取って補習だよ?。」
ひょっこりと、夏凛の隣に現れたのは赤髪の少女「結城友奈」。
その裏表もない性格なのか、クラスではかなりの人気でもある。
実際、何通もラブレターを貰ったとか…。
烈火「補習かぁ…それは嫌だな…でも、授業に出るのも嫌だッ!。なんたって、俺は自由なんだからなッ!。」
夏凛「あんた、自由の意味を履き違えてるわよッ!。」
蒼葉「それに関しては、三好に同意だな。」
烈火「うぐっ…でもさ…自由ってのはいいぜ?。なーんか、知らねェけど「壁」が消し飛んじまってるし…「神樹様」は死んだって聞いたし…だからさ、尚更こう思うんだよな〜。「自由」だなぁって。」
烈火のその言動に、友奈と夏凛は言葉を発さない。
何故なら、その「理由」を一番良く知っているから。
蒼葉「…「外」の世界、気にならないかお前らは?。」
烈火「まーたそれだよ。「外」なんて、西暦時代の残骸ばっか転がってんだろ?。どうせ、大赦のお抱え案件だ。出ようものなら罰則もんだぞ。」
蒼葉「…それでも、気にはなるだろ。西暦時代に何が起こったのか…それを知る唯一の資料だぞ。本で読み聞かされた内容とは全然違う可能性もある。」
烈火「俺はそんなのより、世界は広いんだからただ思いっきり自由を楽しみてェな。……「壁」が無くなっても、ここは鳥籠みてェな場所だ。結局は、檻の中…だから、毎日が退屈なんだよ。」
友奈「あ…あのね、菱咲君!。実は…むぐっ!?。」
夏凛(軽率に話したらダメよ友奈!。彼らは一般人…私達は「勇者」。それに今は、不可解な事ばかり起こってるの。園子の事もあるし…迂闊に話すわけにはいかないわ。)
友奈(わ…わかったよ…。)
烈火「お、チャイム。」
昼休みが終わり、授業開始の予鈴が鳴る。
2人は慌てた表情をするが、烈火と蒼葉は何も感じない。
烈火「行けよお前ら?。「勇者部」の部員が俺らみてェなバカと連んでたら変な噂が立つぞ?。しばらく、ここにいる。自由を謳歌してぇのさ。」
夏凛「…もう、分かったわよ。一応、声はかけといたからね。行こう、友奈?。こんなバカ達は放っておいてさ。」
友奈「う…うん…次はちゃんと出てよ〜?。」
2人は、去っていく。
そして、烈火と蒼葉にはいつもの時間が戻ってくる。
窮屈だな…そう思って。
それから、数時間後の放課後…。
烈火「ふ〜…今日も終わった終わった。さぁて…帰るか〜。」
帰り支度を済ませる烈火。
その時、校内放送が校舎に鳴り響く。
「2年の菱咲烈火君、大赦の方が来賓されてます。至急、職員室まで来てください。」
大赦の人…その単語に全員が烈火を見る。
蒼葉「おいお前、なんかやらかしたのか?。」
烈火「んなバカな!。呼ばれるならお前だろうがッッ!?。なんで俺なんだよッッ!!。」
蒼葉「さぁな、まぁとりあえず行ってこいよ?。いい事でも悪い事でも待たせるのは忍びないだろ?。」
烈火「ああクソッ!。なんで…。」
ぶつくさ言いながら、職員室へ向かう烈火。
気分がすぐれない中嫌々入ると、その意外な人物に目を丸くする。
烈火「あ…姉貴ッッ!?。」
白衣に身を通し、黒髪の女性は席を立って烈火の前に歩いてくる。
菱咲焔華。
烈火の姉であり、大赦の研究機関「海祇機関」の研究主任として、日々「外」の調査を中心に活動している女性。
焔華「3日振りか、烈火。」
烈火「んなアホな、1ヶ月ぶりだよ。んで、何しに来たんだ?。今まで学校までは来なかったじゃねェか。」
焔華「…ここでは、話辛い。場所を移そう。」
そう言う焔華に、烈火はいつもの屋上に案内する。
放課後のここなら、誰も来ない。そう思って。
烈火「そんで、話って?。」
焔華「大赦は今、乃木園子の捜索に躍起になっている。彼女が行方不明になったのは、「神隠し」の仕業と見ている。」
烈火「神隠しぃ?。おいおい、冗談言ってんじゃねぇよ。そんなもん、あるわけねェだろうが。」
焔華「それは、「日常生活」を送っているだけのお前達が感じている事だ。実際には「ある」。「外」の方向を見ろ、少し前までは大きな「壁」が大橋の先に立ち塞がり、出る事ができなかっただろう?。」
大橋…本州を結ぶ巨大な橋の残骸。
名前は遠い昔に忘れ去られ、ここに残る西暦時代の唯一の「遺物」として、認識されている。
烈火「ああ、神樹様が死んで「壁」が消えたって聞いたな。少し前にいきなりだ。お前…なんか知ってんのか?。」
焔華「端的に言うと、知っている。神樹様が死んだ事と、「壁」が消えて「外」の世界が現れた事の顛末をな。そう言う事だ、お前達が非科学的と捉える事もこの世界では存在している。だから、「神隠し」はあると言っているんだ。乃木園子はそれに巻き込まれた。ここで、本題だ。」
夕陽に照らされる中、焔華は瞳を向けてスマホに似た端末を取り出して烈火に手渡す。
焔華「私が開発した<擬似勇者外装>のシステムが入ったこの端末を渡す。そして、「神隠し」に巻き込まれた乃木園子の捜索を頼みたい。」
突然の事に、烈火は頭が追いつかない。
「神隠し」?。<擬似勇者外装>?。乃木園子の捜索?。
いきなりの情報量に、烈火は声を上げる。
烈火「いきなりこんな事言われて納得出来るかッ!。なんで俺なんだよ!?。大赦の連中が使えよッ!。」
焔華「システムの適合者がお前だったのだ。故に、これを起動出来るのはお前しか居ない。最も、試作段階だから私がお前用に組み上げたようなものだがな。」
烈火「最初から俺だったってことか!?。いつもそうだなお前は!。まともに絡んでこねェ癖に、こう言う時だけは俺に頼る!!。俺はお前の操り人形なんかじゃねェんだぞッッ!?。」
焔華「文句はいくらでも受け付けよう。しかし、これを使えるのはお前しか居ないのだ。そして、現実を見ろ…ここからは、お前達も看過出来ん「問題」となる。」
次の瞬間、周辺の時が止まる。
そして、あたりの風景が一気に変わり、木々が生い茂った「樹海」のような風景となる。
烈火「な…なんだこれ…!?。」
焔華「「樹海化」だ。小規模だが神樹様の残滓が、まだ影響しているようだ…これが発動すると言うことは…ふむ、ちょうどいい。これが「現実」で大赦が隠していた世界の「真実」だ。」
溢れ来る無数の異形。その名は「星屑」。
天の神が使わせた人類抹殺システムのようなもので、無限に湧いてくる白い怪物。
しかし、今現れている個体は全て黒く染まり、それは神の兵隊というよりかは悪魔そのものだった。
「な…なんで、ここにあんたが!?。」
聞き覚えのある少女の声。
烈火「三好ッ!?。こっちこそ…って、なんだその格好は!?。」
友奈「お待たせ夏凛ちゃん!!。ん…ええッッ!?菱咲君ッッ!?。なんで樹海の中で動けてるの!?。」
烈火「クソ…夢かこれ?。いや…そんなことより、どう言うことだ!?。これが現実で…大赦が隠していた真実って!!。」
焔華「文字通りの意味だ。目の前にあるこの状況こそが、現実となる。そして、彼女達こそ…我々をこの異形から命懸けで守り続けてくれた「勇者」だ。」
勇者…全く、聞き覚えのないそれは烈火を余計に混乱させる。
4人に気付いたのか、黒い星屑達は一斉に向かってくる。
焔華「急げ、でなければ死ぬぞ。その端末のボタンをタップしろ、そうすれば外装を身に纏えるッ!。」
烈火「クソぉ…何が何だか、全然わからねェけどよッ!。とにかく今は従ってやるよッ!!。これでいいんだろッッ!?。」
表示された紋章をタップ。すると、嵐の如く花が辺りに舞っては烈火を包み込む。
そしてその姿を変えていき、友奈と夏凛に似た「勇者」の格好となる。
焔華「<擬似勇者外装>の展開に成功…やはり、適合者は初戦から難なく、戦闘装束を纏えるな。それにしても…。」
焔華は、烈火の<擬似勇者外装>の姿を見る。
焔華(…花のモチーフは「ガーベラ」か…花言葉は「常に前進」または「希望」「辛抱強さ」。まさにこいつを体現しているな…外装のモチーフは纏う者によって、変化する…これは思わぬ収穫だ。)
烈火(勇者外装)「なんだこの姿…いつのまにこんなデカい武器を!?。」
剣の形をしたメイスを手にしていた烈火は、変わった自分のその姿に驚く。
夏凛「擬似勇者外装って何よ…まさか、大赦が開発した新型の「勇者システム」?。」
焔華「いや…神樹様亡き今は、勇者はもう誕生しない。君達が、勇者になれているのは「残滓」の影響だ。<擬似勇者外装>は、君たちの勇者システムと「防人」のシステムを元にして作り出した「神の加護が無い勇者装束」。故に、精霊バリアも何も無い強化装束と言ったところか。」
夏凛「はぁ!?。そんなの、攻撃を受けてしまったら死んでしまうわよ!?。」
焔華「その点は安心していい。」
烈火「あぁッ?。」
超高速で接近してきた黒い星屑の体当たりをまともに受けた烈火。
見ていた友奈と夏凛は思わず口に手を当てて驚く。
普通なら、致命傷か大ダメージ。しかし……。
烈火「…いってぇ…なぁッッ!?。」
ほんの僅か、その場所から吹き飛ばされただけで全くダメージを受けていない。
そして、手に持った剣型メイスを振り翳し、報復の一撃を与えては粉砕する。
友奈「い…一撃でッッ!?。」
烈火「…なんだか、よく分からねェけどいけるなッッ!。来いよ化け物ッ!テメェらがいくら速くても俺は…「常に前進」し続けるだけだッッ!!。」
…………end。
姉の開発した<擬似勇者外装>の適合者としていきなり、戦闘を行う事になった烈火。
勇者システムとは違って、特異な力は発現出来ないがそれでも、持ち前の運動能力を活かして黒い星屑を撃破していく。
「勇者」とは…「大赦」とは…。
烈火は、この世界の真実を知り何を思うのか…。
次回
第11話 一輪の花、「勇者」と「擬似勇者」。