〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

133 / 146
前回のあらすじ。

誰かの「物語」を守ること…それが、トーヤの出した答えだった。

その剣でアリスを撃破。2人は樹の元へと向かう。

その頃、当の本人は有り余る無の力を行使し始めた。

愛する人と過ごす「静寂」のために。

スカイランドは"崩壊"へと向かっていく……。


第130話 ホウカイノウタ。

〜スカイランド・古代文明遺跡群〜

 

「……本当に…バカな事を。」

 

1人の女性が双眼鏡を手に、その遺跡群を観察する。

どの世界史にも描かれておらず、文献すら残っていないこの謎の古代遺跡郡はかつて、スカイランドという名前が付く前のこの世界…女王・エルレインが誕生するよりもずっと昔に栄えていたと言われている。

 

だが、一番謎なのは現代のスカイランドではこの古代文明の名残が一切存在しない事。

 

その風習も文化も全てが継承されていない…深まる謎はいつしか、気味の悪い対象とされているのかこの地はスカイランド人の中では「忘れられた地」という名前で通っている。

 

この広大な土地は王都以上でもあり、そしてその王都からは遠く離れた秘境の地に存在している。

 

そこに件の彼女…犬吠埼樹は居た。

 

空には歪みが生じ、そこにいるだけで悪影響を及ぼす「厄災」へと成り果てている。そして、それはまさしく"無"の意思そのものでもある。そう、彼女もまた"無の軍勢"へと変わり果ててしまった。

 

その異界といってもいいほど異様なこの場所で観察する女性は双眼鏡を下す。

 

「……よりにもよって、あのガキを愛しちゃうなんてね…あの気難しい奴をなんて…物好きだよ、「私」。」

 

「もう一つの世界線」の犬吠埼樹。

 

彼女は世界を超えてこの地にやってきていた。そしてその手に持つのは…高天原から回収した「勇者システム」。

 

樹(if)「向こう側のましろさんには無理を言ったからなぁ…戻ったら須美さんにどやされるかな…まぁ、戻れたら…の話だけど。」

 

防塵ゴーグルを付け、その場から飛び降りるもう1人の樹。

 

樹(if)(…その力は人を傷つけるものじゃない…今、全ての世界に対して猛威を払っているあの化け物達に向けるべきだ。もし、もう手遅れになるのなら…私は「私」を殺すよ。人に戻れるように…ね。)

 

 

………………………………。

 

古代遺跡郡の中でも一際大きな古城の地下に樹は居た。

そしてその地下には大きな秘密があった。

 

樹「…これがそっか。時間さえも超えられる門……フフフ、これさえあれば蒼葉さんが向こう側の東郷先輩と会う前の時代に行く事ができる…私があの人を救うの、そうすれば私を見てくれる…そしてその後で向こう側の東郷先輩を殺せばいい…あ、そうなれば向こう側の世界の歴史が変わっちゃうかな?。まぁどうでもいいか…向こう側のソラさんが生きていようが、向こう側の友奈さんが神様になっちゃってみんなが絶望しようが…どうでもいいや。」

 

早速、その門に入ろうとするが見えない力に阻まれる。

わかっていたのか、不敵な笑みを浮かべながら後ずさる。

 

樹「やっぱり入れない…何か原因があるんだろうけど、今はいいか…まずは私の元へとやってくるであろうお姉ちゃん達と…そして、ソラさん達を叩きのめして蒼葉さんを手に入れる。それに東郷先輩を殺した後でも遅くは無い…これが私の元にある限り、私はいつでも時代を変える事が出来る。始めよっか…私達が静かに過ごせる世界にするための"掃除"を。」

 

瞳が怪しく光ると同時に、遺跡群が地響きを起こす。

 

樹「この力を手に入れてから色々と分かっちゃったんだよね…この遺跡はかつての「厄災」で滅んだ文明…それに、ここは…「もう一つの世界線」から転移して来た国…全く、無粋だよね…人より少しだけ頭のいいだけのちっぽけな人間が"無"の力を手に入れようと画策して滅んじゃったんだから…まぁ、その成果はちゃんと使ってあげるよ?。そう…スカイランドは滅んで私と蒼葉さんの世界になるの。私達だけの世界…誰も居ない2人だけの"静寂"な世界へと。」

 

遺跡の一部が超巨大な砲台へと変化する。

それはまるで……かつて、天の神との戦いで防人達が用いた霊的攻撃兵装「千景砲」そのもので。

 

樹「さて…王都までは流石にまだ届かないだろうから手始めに近くの浮島一つを消し飛ばしちゃおう。"お掃除"はちゃんとやらないと…ね…?。」

 

手をかざして目を閉じる樹。

その様子はもう1人の樹も目の当たりにしていた。

 

…………………………………。

 

樹(if)「…まさか…ッ…やめろぉおおおおおお!!。」

 

…………………………………。

 

樹「発射。」

 

不敵な笑みと共に放たれた"無"のエネルギーはその射線上全てを「消滅」させていく。

 

そして…着弾。

そこに住まう人々は痛みも何も感じる事なくただ「消滅」するのみ。

 

樹「アッハハハハ!!すごい、すごいよこれッ!!。これさえあれば掃除は楽になるッ!!。さぁ、もう一撃を……。」

 

第二射を発射しようとしたが、巨大砲台は機能不全を起こす。

 

樹「あれれ…もう、使えないな…連射できない仕様なのかな?まぁいいや、何百年ぶりに起動したからガタが来てたんだね。しばらくすればまた撃てる…か。いや、遺跡は"まだある"。幸い、この世界に神様は居ないから信仰心なんてものは必要ないし…これはまだ使えるよね。」

 

視線の先に広がる広大な遺跡群。

それを見た樹の目は狂乱に満ちていた。

 

樹「さて、居場所はちゃんと教えてあげたんだから迷わずにここに来てよ?。お姉ちゃんに…みんな?。」

 

………………………………。

 

風「い、今の砲撃は…!?。」

 

樹の放った砲撃の軌跡を見た風とトーヤはその射線上にあった山が消えてなくなっていることに戦慄を覚える。

 

トーヤ「…お前の妹の仕業だろう。方角がわかりやすいようにわざわざこちらの付近を射線上に捉えていた。」

 

 

風「ッ…早く行かないとまた…!!。」

 

 

トーヤ「ああ、お前の言う通りだ。犠牲者が出なくする為には1秒でも早く、お前の妹を止めねばなるまい。今からじゃ避難誘導は間に合わない上にどんな兵器を使って来たかも皆目見当がつかない…猶予は長くないな…。」

 

 

風(樹…!!。)

 

…………………………。

 

あの砲撃は、風達よりも遠く離れた場所に居る烈火達も確認出来ていた。しかし、浮島が消えたことなんてまだ分からない。ただ、思うのは確実に「ヤバい」と言うだけだ。

 

ソラ「…すごい光でしたね…あれ、なんだったんでしょうか…?。」

 

 

ましろ「分からないけど、でもあれはきっと良くないものだと思う。」

 

流石に、消滅させるほどのエネルギーは無かったのかあの砲撃はこの位置では残り滓のようなものであり空高くに伸びていたので被害などまるで無かった。だが、蒼葉と芽吹は表情を曇らせる。

 

蒼葉「楠、お前は気付いているようだな?。」

 

 

芽吹「ええ…あの光は"見覚え"がある。」

 

 

夏凛「見覚えって…あんた、さっきの光のことを知ってるの…?。」

 

 

芽吹「…あまり、意気消沈させたくないから気が引けるのだけれど…あれは砲撃。しかも、私達の世界にあったものと同じものよ。」

 

 

東郷「砲撃ですって!?一体、誰が!?。それにどこを狙ったというのッ!?。」

 

 

芽吹「仕掛けて来た奴が誰かだなんて分からないけど、あれは霊的攻撃兵装「千景砲」よ。」

 

 

烈火「せ…せんけ…せんけいほう?。」

 

 

あげは「霊的攻撃兵装って…あんた達の世界のものだって言うのなら大赦の攻撃兵器でしょ!?それがなんだって、スカイランドにッ!?。」

 

 

蒼葉「それは分からんが、千景砲だというのなら神が関わっているはずだ。この世界に神の信仰は?。」

 

 

ツバサ「えっと…そう言った風習はありませんね…スカイランドは神様といった概念はそもそも存在しませんから…伝説が信仰されている、と言った方が正しいでしょうか。」

 

 

ソラ「確かにそうですね。大昔の女王様がまさしくそうだと思います。」

 

 

蒼葉「ならば、そのエネルギー源が全く違うものに置き換えられているだろう。そもそも、こっちの世界の兵器が何故スカイランドにあるのかが1番の謎だ。それに、千景砲は一度の砲撃で大破してしまった。あれを復元したと言うのなら、関わっているのは間違いなく「劇団」か"無の軍勢"。それも……犬吠埼だ。」

 

 

友奈「そ…そんなッ!!なんで樹ちゃんがそんなことをッ!?。」

 

 

蒼葉「…アイツは"無"によって支配されている。その行動原理も"無の軍勢"と同じものになってしまった。いわば、アデルと同じ状況下にある。最も恐れていたことだ、犬吠埼はもう…第二のアデルになってしまっている。」

 

 

烈火「だったらなんだ、お前は諦めんのか?。」

 

 

蒼葉「話を最後まで聞け、馬鹿野郎。無論、そんなつもりはない。俺はアイツと直接対峙して今度こそ、その心を取り戻すつもりだ。まともに話ができる状況じゃないのは明白だ、確実に衝突するだろう。そして東郷、お前は後方に控えてくれ。今の犬吠埼の矛先はお前にある。それに、お前は三ノ輪銀の事も…。」

 

 

東郷「せっかくだけど、その辺の心配は不要よ。でも、樹ちゃんの事は貴方に任せるわ。そしてそこには恐らく、風先輩も来るはず…。」

 

 

鷹夜「よし、なら決まりだな?。チマチマしてても仕方ねェ、変身して一気に向かうぞ?。」

 

鷹夜は拳を鳴らして、端末を取り出す。キュアスサノオのアイコンは消灯してしまっていた。

 

鷹夜(…あの力は自由には使えねェか…でもそれがいい、俺達は樹を取り戻しに行くんだ、倒すわけじゃねェ。)

 

 

ましろ「今の樹ちゃんは私が自分を取り戻せなかった時の可能性と同じなんだよね…。」

 

 

ソラ「ましろさん…。」

 

 

ましろ「大丈夫だよ、ソラちゃん。だからこそ、呼びかけるんだ。友奈ちゃんが私にしてくれた時と同じように…アデルの呪いは完全に消し去らないといけない。」

 

その瞳は間違いなく本物。少し前に抱いていた迷いも全て断ち切った表情だった。

 

どんな罪を背負っても、仲間達が一緒に居てくれる。

 

それだけで十分だった、ましろはもう1人じゃないことに気付いた。

そして今、闇に堕とされていた時の自分の末路を体現してしまった樹を取り戻す為に、1人の人間として戦う決意を秘めている。

 

なら、やることは一つ。自分はプリキュアだ、その責務を果たす為に大切な仲間に光を取り戻す。

 

ましろの目にはかつての光が戻っていたのだ。

 

ましろ「この先にきっと、私達がここに来た本当の理由がそこにある。そして、みんなで帰ろう…これからの為に。」

 

その言葉に、全員が納得の意を示す。

そして、一同は変身する。

 

「「「「「スカイトーン・コネクトッッ!!。」」」」」

 

ソラ達はプリキュアへと、そして友奈達は勇者へと。

 

友奈(if)「今回は私も一緒に戦うよ。」

 

 

千景「ええ、かけがえのない仲間のために。」

 

 

烈火「おっしゃあああッ!!やってやるぜぇえええッッ!!。」

 

 

蒼葉(犬吠埼…"答え"を持ってそこへ行く。だから…待ってろ。)

 

かつての勇者達は人が作りし"勇者"へと。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

そこに並び立つ小さな希望達。目指す先は樹が待つあの古代遺跡郡。

この戦いはそれだけの意味がある。スカイランドに来たのは最初からその為だ、他のことはついででしかない。

 

帰りを待つ園子達のために、そして…深まった絆の溝を埋めるために。

 

プリキュアと勇者部は「私闘」へと臨む。

 

 

行こう、大切な仲間を取り戻す為に…そして、また手を繋ぐために。

 

そして……儚いその想いに応える為に。

 

…………………………………end。




樹が起動させた「もう一つの世界線」の文明が作り出したもう一つの霊的攻撃兵装「千景砲」。

その光は希望と絶望といった概念ではなく、ただ全てを"無"に変えるための崩壊の光だった。

そして、風とトーヤは樹の元へとひと足先に辿り着いていた。

対峙する姉妹。
姉は家族の為…妹は愛する人の為。

命を賭してでも、姉はその炎を燃やす。

次回
第131話 カゾクノウタ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。