〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
樹の元に辿り着いた風とトーヤ、そして他のメンバー。
役者は揃った、ここからは「私闘」が繰り広げられる。
そしてそれは、最も悲しい戦いとなる…。
決意を固めてここに来た蒼葉は、樹を前にしてその視線をズラさない。
そして、両膝を付いて涙の跡が残る風を見て。
蒼葉「烈火、先輩を頼む。」
烈火「おうッ!ついでに、そこにいる奴も回収しとくッ!!。」
烈火は飛び出し、風とスラッシュを担いで後ろに下がる。
風(満開)「…ごめん、みんな。気持ちで負けちゃった…。」
友奈「そんなこと言わないでください。やっと会えたんですから、今度からはあんな真似をしないでくださいね?。」
風(満開)「うん…みんなお願い、樹を止めて!このままだと…!。」
プリズム「任せてください、樹ちゃんの心を取り戻します。」
千景「…虹ヶ丘さん、今の樹さんは…私達が辿り着いていた姿なのかも知れないわね…。」
プリズム「はい。前に闇に堕ちた私と怨嗟に飲まれた千景さん…きっとあのまま行けば、今の樹ちゃんと同じ状態になってたのかも知れない。だからこそ、止めないと…本当の樹ちゃんを取り戻さないといけない。」
樹「…蒼葉さん、待っててくださいね?もうすぐで私たちの理想の世界を作り上げることが出来ますから。」
瞳が光ると同時に、遺跡全体が大きく揺れる。
芽吹「ッ……何…ッ…!?。」
ウイング「ちょ…あれを見てくださいッ!!。」
遺跡群が割れてその中から無数の砲台が現れる。そしてそれは…千景砲と同じ形をしていた。
バタフライ「なっ…何あの砲台はッ!?。」
蒼葉「…千景砲があんなにも…!!。」
樹「そうです。冥土の土産に教えてあげますよ、この遺跡群は可能性世界から転移してきた国なんです。事故でDMごと大昔のスカイランドに転移してきて。」
アグニ「ちょっと待て、時間を超えてきたってのか!?そんなのはあり得ねェだろ!!。」
樹「それがあり得ちゃうんです。この遺跡の地下には時間を越えられるゲートがあります。お馬鹿な人たちですよね、時間を超えて"無"に挑もうとしたんですから…勇者とプリキュアの力を頼らずに。この千景砲は"無"をエネルギー源としてる…そう、私がいれば簡単に発射できちゃうんですよね。」
友奈(if)「……………。」
樹「このたくさんの千景砲を使ってスカイランドの歴史に終止符を打ちます。空の上にある世界なんてすごくロマンチックだと思いませんか?ね、ソラさん?。」
スカイ「させませんッ!私の故郷を滅ぼすことなんて!!。」
スカイは飛び出して樹に殴り掛かる。この悪魔のような兵器群の矛先はまさに王都を指し示していた。
スカイ「そもそも、この砲台は本来はこんな使われ方はしないはずですッ!!。」
芽吹「神への信仰を糧に、その思いのエネルギーを結集してたった1発だけ放てる人類最高峰の反撃兵器…使った当事者だから分かるわ、この力は人に向けていいものじゃない!!。」
スカイと芽吹は樹に仕掛けるが、その圧倒的な力を目の当たりにする。
突然背後からワイヤーが伸びてきては2人の背中を激しく切り裂いた。そう、空間を捻じ曲げて死角からワイヤーを放ったのだ。
夏凛「芽吹ッ!!ソラッ!!ッ…あんた達がこうも簡単に!?。」
樹「…もう、こちらの攻撃の準備に入ってますよ?。この千景砲はまもなく発射される…そうなるといくら足掻いたってこの世界が滅ぶのを見ることしかできない…これで少しは分かると思います。力が無い不甲斐無さとこの力を求めた私の気持ちが!。」
夏凛「ッ…力だけが全てじゃないでしょッッ!いつから変わっちゃったのよ、あんたは!!。」
二振りの刀を手に、速度による連撃で樹に仕掛ける夏凛。だが、張り巡らされたワイヤーがその剣戟を悉く防いでいく。
樹「夏凛さん、私は夏凛さんに憧れてました。バーテックスとの戦いが終わっても鍛錬を欠く事はありませんでしたよね?。その力を求める姿勢…見習いたいと思いましたよ。」
夏凛「ッ…私は自分のために力を振るったりはしないッ!私をそう思って見てくれてたなら、なんでこんな間違った選択をしてしまったのよッ!!。私達は勇者よ、この力は人に振るうものじゃないってあんたはよくわかってるでしょッ!?もう、人との戦いをやってる場合じゃないんだってッ!!。」
鍛錬を重ねて前よりも卓越した双剣術で攻めていくが、それでも樹の攻防は止められない。だが夏凛は救いたい一心で向き合い続け、身体を削られようがその姿勢を全く崩さない。
樹「あの時以上の地獄が待ってるって言いたいんですよね、わかってます。だけど私は…この世界を手に入れてその地獄に関わりません。他の世界なんて知らないですよ…!。」
夏凛「そんな自分勝手が…通るかぁああああッッ!。」
連撃の合間に蹴りを入れ、樹を弾き飛ばす。そして、満開を発動させて巨大化した剣の峰で意識を刈り取ろうと仕掛ける。しかしそれは簡単にも防がれた上にワイヤーが巻きつき、その力で刀身がボロボロに砕け散った。
夏凛(満開)「なっ…!!。」
樹「今の私は夏凛さんにだって…!!。」
ワイヤーを束ねてドリル状に形成。そのまま突進して身体を貫こうとする。
ウイング「させませんッ!!。」
直前でウイングが超スピードで駆けつけて夏凛に体当たり。吹き飛ぶもその攻撃の難から彼女を救う。そして、対峙。慣れない近接戦闘を仕掛けていく。
樹「邪魔しないで、ツバサ君ッ!。」
ウイング「樹さん!自分の無力さに情けなくなる気持ちは僕にだって分かりますッ!!。」
樹「だったら…!!。」
ウイング「でも、それでも人には役目がありますッ!力だけが全てじゃない、僕にもあるように貴女にもその役目があるんですよッ!!。」
樹「その役目で大事な人を守れるのッ!?。結局は強くなかったら守れるものも守れないじゃないッ!。」
ウイング「守れますよッ!守りたいという気持ちが無力であっても自分を突き動かす原動力になりますッ!風さんは僕にそれを教えてくれました、それに貴女もその役割をちゃんと理解してみんなの為に尽くしてくれてたじゃないですか!!。
バタフライ「その通りッ!!。」
2人の攻撃の合間に入り、シールドを形成して樹を弾く。
樹「あげはさんまで……ッ!。」
バタフライ「樹、あたし達はあんたを救いたいんだッ!!大事な仲間で友達だからッ!!。」
樹「うるさい…うるさいッ!!。」
感情がゴチャゴチャとなり、樹は力を行使する。その攻撃力は凄まじく、大型のバリアを張ったバタフライでも防ぎきれないほどに。ガラスが砕けたような音と共に、2人は弾き飛ばされた。
致命傷は何とか避けたが、鋭利なワイヤーは下手な刃物よりも強力だ。そして何よりも視認しにくい上に消滅のエネルギーを纏ったその一撃のダメージは通常の攻撃よりも威力が桁違いだった。
プリキュアの光の力で消滅は免れているが、受けた部分が満足に動かせない。時間が経てば動けるようにはなるだろうが、その前に樹がトドメを刺しに来る。
その窮地に対応するのは…蒼葉だった。
蒼葉「俺が止めるッ!その為にここにきたッ!結城ッ!烈火ッ!東郷ッ!それに、虹ヶ丘と藍葉、エルッ!。千景砲を止めてくれ、頼むッ!!。」
烈火「お前1人で今の樹とやり合うってかッ!?。無茶だぞ、そもそもお前の戦い方は……。」
蒼葉「頼むッ!これは…俺が向き合わなければならない戦いだッ!!。この数の千景砲が放たれてみろ、王都は消し飛ぶ上にそこで待つ乃木と春日井までもが犠牲になるッ!この戦いにスカイランドの命運が掛かっているんだッ!ハレワタール達の故郷を守ってくれ、頼むッ!!もうこれ以上、樹の手を汚させない為にッッ!。」
今までにない必死な蒼葉は、振り向く事なく声だけで思いを伝える。
樹と対話し、向き合うために。
最初からその覚悟だった、そしてその思いを汲んだのは…友奈だ。
友奈「わかった、じゃあ樹ちゃんは任せたよ?蒼葉君!。」
千景「…胸に秘めておきなさい、犬吠埼さんはもう満身創痍…全ては貴方に掛かっているわ。そして…救われた私からアドバイスよ。拒絶されても諦めないで。心は必ず…そこにあるから。だから、樹さんの"心"をちゃんと見つけなさい?。」
そう言い残し、その場には気を失うスラッシュを抱える風と蒼葉、そして…樹のみ。
静寂がその場にこだまする。蒼葉は深呼吸をし、銃を静かに構える。
蒼葉「聞いてくれ、樹。俺は…この間の答えを返しにきた。」
樹「…はい。しっかりと考えてくれたんですね?。」
その場には吹き荒れる風の音、2人は互いに向かい合う。
蒼葉「ああ、考えて考えて…そして、悩んだ。どうすればお前のその気持ちに応えることが出来るのかって。俺には勿体なさすぎる程だ、お前と言う人間は俺のようなものと釣り合っていない、今でもそう思っている。」
樹「…そうですか…やっぱり、ダメ…なんですね…?。」
蒼葉「話を最後まで聞け、確かにそう思っている。でも……。」
瞳を閉じて、蒼葉は自分の胸に手を当てる。
そして…真っ直ぐな目で樹を見つめる。
蒼葉「世界を敵に回してまで、俺を想い続けてくれたのは本当に嬉しい。そして…その想いに俺は…応えようと思う。」
銃を捨て、樹に歩み寄る。
そしてそのまま…抱き締めた。
蒼葉「すまない、不器用故にこんな言い回ししか出来ない。だけど、これは本心だ。お前を救いたい一心でそう言ったんじゃない、ただ純粋なその心の叫びに俺は応えたいと思った。お前は自分を無力だと言ったがそれは違うぞ?俺は…いや、みんなはお前に救われている。」
樹「私…に…?。」
蒼葉「そうだ。向こうの世界に飛ばされた時、お前は真っ直ぐな目で俺を「手伝う」と言ってくれたな。そして、巻き込ませてくれ…と。その気遣いと芯の強さが俺を救ってくれたんだ。そう…お前はすでに俺を救ってくれてたんだよ!俺の"心"をッッ!!。」
滅多に流さない涙を流しながら、蒼葉は樹を強く抱き締めた。
蒼葉「もうやめてくれ…お前がその手を汚す必要なんてないんだ…世界の敵にならないでくれ、俺だけのために全てを捨てないでくれ…頼む…ッ…。」
その決死な思いが樹の心を動かす。
やっと"叶えられた"その想い。ここまで長かった…自分の価値をちゃんと見てくれた蒼葉に樹は惹かれていた。あの「外」の調査の時からずっと。
そして、その想いが結ばれる時が来た。その"告白"に、樹は自分を取り戻し始めた。
………だが……。
樹「ああ…ああああ…うああああああああああッッ!!。」
蒼葉「…樹…?。」
突然、苦しみ出した樹。その身体から"何か"が這い出てくる。
そしてその"瘴気"が遺跡全体を包み込んだ。
稼働準備中の千景砲の全てに莫大なエネルギーがチャージし始める。
「出てきたね…ソイツがこっち側の「私」を蝕んでいた"無"だよ!!。」
声と共に、異変を起こしている樹に最も近い蒼葉の身体にワイヤーが巻き付いては勢いよく引き寄せられた。
そしてその主は…勇者装束に身を包んだもう1人の樹…可能性世界で出会った彼女だった。
風「あ……あんたは!?何でここに…ッ!?。」
樹(if)「そんなことどうだっていいでしょ、それよりも"コレ"が出てきたことが一番厄介なんだよ!。よくもまぁ、ここまでの化け物を育て上げたものだよ全く…恋なんてしない方がいいって言うのに…。」
"ソレ"は樹の身体を媒体にしてその姿を変える。
その姿は……樹そのものだった。
樹(if)「よく見ておきな、DMが"出来上がる"その瞬間をね…そしてコイツらのような"特級個体"は滅茶苦茶強くて……。」
その"特級個体"がゆっくりと目を開けた。
樹(if)「悪趣味だ。」
-ディメンション・モンスター特級個体 TYPE-イツキ- -
上位種を超越した最強個体の"無"。
樹が育て上げた「想いの厄災」。
スカイランドにて…爆誕する。
DMイツキ「〜〜〜〜〜〜〜〜♪。」
…………………………end。
その想いが結ばれようとした。
その想いが叶えられようとした。
ずっと求めていた"幸せ"がすぐそこにあった。
後は手を取るだけだった。
だが…………それは、"厄災"と成り果ててしまった。
次回
第133話 ワスレナグサ〜私を忘れないで〜