〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。

絶望の未来を否定した選択…樹が生きている世界線…本来、歩むはずだった自分達の未来…。

たった一度だけの「やり直し」のために、未来の分岐点まで戻った蒼葉達。

そして今度こそ……助けてみせる。

そう、決意を込めて少女の儚い願いをーーー。

救おう。


第135話 祈りの歌〜勿忘草・「真実の愛」の章〜

 

未来への分岐点はあの一撃を以て、「選択」された。

絶望の未来か、まだ見ぬ新しい未来。

その未来が正しいかどうかは分からない…世界にとっては、あの絶望の未来が正史の可能性だってある、だがその全てを否定したかった。

 

樹が死んで世界が滅び、"無"によって全てが消えるあの未来を。

 

何が自然の摂理か、何が仕方のない事なのかーー。

自分達は人間だ、そんな小難しい事情を汲んで受け入れられるほどの器なんて無い。だからこそ、感情のままに一つずつ前へと進むのだ。

 

誰かが泣いて、誰かが悲しんで…そして、死んで。そんな事が正しいはずもない。

 

そして、全てを奪う"無"を憎まないわけがない。あんな未来は二度とゴメンだ。そう思って、3人はこの一連の事件に終止符を打つために戦う。

 

蒼葉「………行くぞッッ!!。」

 

暴走状態にあるDMイツキとの再戦を始める。一度、倒した相手だ。そして今度は……時間の余裕がある。

 

トリガーを引いて先手を取る蒼葉の銃撃は見事に直撃。だが、ダメージは通ってもあの頑強さは健在だった。

 

風「相変わらず、タフな奴ね…ッッ!!。」

 

 

蒼葉「だが、再生能力が比べ物にならないほどにまで遅くなってるッ!!。やはり、樹から生命力を奪わなければあの出鱈目な回復速度は出せないらしいッ!!。」

 

 

樹(if)「要するに寄生虫と同じでしょッ!!だったら、細切れにしてやるッッ!!。」

 

敵に馬鹿げた能力が無い今、力での真っ向勝負へと切り替える3人。もう1人の樹が放った攻撃は地面を抉り取るほどにまで強力だった。

 

しかし、それでもDMの"特級個体"だ。一筋縄では攻略は出来ない。その攻撃に対応するかのように自らの身体からも同じような攻撃を放ち、相殺する。

 

そして…"あの攻撃"が来る。

 

DMイツキ「〜〜〜〜!!♪。」

 

澄んだ歌声と共に回避不能の攻撃が炸裂。何度見てもこの攻撃には対応出来ずに直撃を受けてしまう。直後、追撃を掛けるかのように黒いワイヤーが伸びてくる。

 

蒼葉「……ッ……させるか…ッッ!。」

 

受けたダメージから身体が倒れそうになるも踏ん張ってみせ、追撃を弾き飛ばす。そして同じく、風が突撃をかけて近接戦闘に持ち込んでいく。

 

風「あんたを倒せば、あの未来を変えられるって言うんでしょッ!?なら、今度は私達が"負けない"世界線へと繋げてみせるッッ!!。」

 

 

樹(if)「そうだよッッ!いつまでも、あんたらの思い通りには行かないんだからッッ!今度は全てを覆してみせるッッ!!。」

 

風ともう1人の樹のコンビネーションによる攻撃が炸裂し、DMイツキからダウンを取った。

 

風「はぁ……はぁ……どんなもんよ…ッッ!!。」

 

 

樹(if)「まだだッッ!!。」

 

そう叫ぶもう1人の樹。直後、腕が伸びてきて2人の首を掴んで持ち上げた。

 

風「がっ………!!?。」

 

 

樹(if)「ぐぅ…ッ……コイツ……本気を出して来やがった……ッ!!。」

 

こんな能力や一面は無かった。そしてここからが…DMイツキの本領が発揮される事に。

 

DMイツキ「アハハハハハッッ…アハハハハハッ!!。」

 

満面の笑みを向けたと同時に、そのまま膨大なエネルギーを放った。当然、掴まれた2人はモロに受ける。

 

黒煙と共に、ぐったりとした2人が地面に落ちた。

 

蒼葉「2人ともッ!!ぐうううッッ!?!?。」

 

激痛を覚えた蒼葉は、脇腹にワイヤーが突き刺さる。そして、DMイツキは壁際に安置された樹の元へと向かう。

 

蒼葉「ぐぅ…ッ…奴め、そうまでして樹に固執を……させる…がふッッ…!!。」

 

動こうとした直後、大量の血を吐き出してしまう。こんな時に、「散華」の影響が現れてしまった。

 

蒼葉(クソ…こんな時にッッ!!。持って行かれた「心臓の機能」が……ッッ!。)

 

気を失う樹に向けて、光の蔦を放って繋がりを得ようとする。

 

また"振り出し"に戻る…しかも今度は"やり直し"が効かない。再び立ちあがろうと奮い立たせるが、それでも敵の方が速かった。

 

だが………。

 

「ヒーローガールッッ!プリズムショットッッ!!。」

 

光の弾が直撃。DMイツキを吹き飛ばしていった。

 

風「ああ……ましろッッ!!。」

 

思わず、涙を落とす風。ホント、今日はよく涙が出るや…そう思って。

 

プリズム「ゴメンナサイ、3人ともッッ!!。向こうはソラちゃん達に任せてきたッッ!私は私のやりたいことをするッッ!!。」

 

樹の前に立つプリズムは、両手にエネルギーを込める。

 

蒼葉(…タイミングよく虹ヶ丘が来てくれたッ!?あの窮地に持ち場を離れられる余裕があるッ!?。もしかして…あの"未来"もちゃんと書き換えられたのか!?。)

 

 

プリズム「樹ちゃん、今のあなたは私が"戻れなかった"世界線の姿なのかもしれない…でもね、私は…守るよ。私は大切な仲間とお友達を……そして、あなたを守ってみせる…ッッ!。」

 

力強い眼差しと共に、プリズムの背中から「天使の翼」が現れたように見える。そして、そのまま両手を全面に突き出すと。

 

プリズム「プリズムバスターッッ!!。」

 

一瞬にして、高密度にまで圧縮された光のエネルギーを瞬時に放った。そしてそのエネルギーは樹を手に入れようとするDMイツキの身体を飲み込んでその場から吹き飛ばした。

 

その瞬間、樹が"目覚めた"。

 

樹「ぁ………ぅ……?。」

 

 

風「!!!。樹ッ!樹ッ!!。」

 

思わず抱き締める風。そして、顔を見る。

 

風「樹、お姉ちゃんよッ!?わかるッ!?。」

 

 

樹「…うん…わかるよ…ちゃんとわかる…大好きなお姉ちゃん…。」

 

…ようやく、戻った愛しき妹。長かった…本当に長かった。永遠にも思えるほどの地獄からようやく、光が見えた…そしてその先にちゃんと樹がいて、今度こそ…。

 

−その手を取る事ができた-

 

風「よかった…本当に良かったッッ!!諦めないで良かった…信じて良かった…何度、崩れそうになったか…それでも……。」

 

人目に憚らず、大量の涙を落とす。

 

風「あなたは…帰ってきてくれた。おかえり…樹…ッ。」

 

 

樹「…ただいま、お姉ちゃん?。」

 

 

DMイツキ「アアアアアアアッッ!!。」

 

もはや、異形と化したDMイツキが現れる。渇望…まさしくそれを体現するかの如く、醜い姿で暴れ回る。そして、それはこの姉妹を狙って。

 

「…プリキュア、ストーリーズ・ガーディアン…ッッ!。」

 

今度は、少年の声。ずっとここまで支えてきてくれた、剣士の少年。

 

それは、この姉妹の「物語」を守った。

 

風「トーヤ……ッ!!。」

 

 

スラッシュ「見させてもらったぞ、お前達の「色」を。家族と言う「色」を。もう心配するな、俺が守り通してやる、この剣でお前達のこの「物語」を。」

 

 

風(守ってくれた…私達を…ましろが…トーヤが……あんな未来とは違う結末…これが…私達の「選択」……やり遂げた…本当に……ッ。)

 

 

スラッシュ(……これが…"家族"…か……少しだけ、羨ましく思う…俺が得られなかったもの…二度と手に入らないもの………生きていて良かった、やっと……見る事が出来た…。)

 

 

樹「……あ……。」

 

樹は自分の端末を見る。その画面は真っ暗となっており、それは「勇者システム」の剥奪を意味する。かつての千景と同じく、人類を守護するその力を利用して人を傷つけてしまったのだ。当然、"見放され"てもおかしくは無い。神樹は消えたとはいえ、勇者の力は神の力だ。

 

だが、それがわかっていたかのようにもう1人の樹が歩み寄る。

 

樹(if)「あんたが正気を取り戻したのなら、私の役目はここで終わりだね?。私は"あの時"の戦いを終えて「勇者」としての責務を果たし、引退した身…あんた、剥奪されたんでしょ?。」

 

 

樹「え…あ…うん…でも、仕方ないかな…私、悪いことを……。」

 

 

樹(if)「しょぼくれた顔しないでよ、せっかく戻れたんだから良い顔で生きるの。あんたには……添い遂げてくれる奴がこんなにもいるんだから。」

 

風が、そしてDMイツキと戦い続ける蒼葉が。自分が愛した人たちが自分を守るためにそばに居てくれる。もう1人の樹はそれを伝えたかった。そして……変身を解除して自分の端末を手渡した。

 

樹(if)「私はお姉ちゃんを守れなかった。でも、あんたにはお姉ちゃんがちゃんとついてる。私が失ったものを、失わずに済んでる。守り守られ、あんたは強くなるんだ。力じゃなくて、その芯の強さで。だから無責任だけどさ…叶えられなかった私の「夢」をあんたに託していいかな?。もう1人の「私」?。」

 

そっと包み込むように、自身の手を重ねてもう1人の樹は優しい笑みを浮かべる。

 

樹「…うん、わかった。託されたよ?あなたからのバトンを。だから、安心してね…その「夢」を背負って私は……強く生きるーー。」

 

立ち上がった樹は歌いながら、蒼葉の元へと向かって歩く。その歌声はとても澄んでいて、自身の「夢」の一歩を踏み出すために作った"あの歌"だった。

 

……………………………。

 

エルレイン「…「未来」は変えられました。いつ見ても素晴らしいものですね…「人の心の光」は。やはり、あの子達はずっと人間であるべきだと思います…神の樹よ、あなたが守っていたもの達はこんなにも素晴らしい未来を作る事ができる…安心してもいいですよ、この心の光を持つ限り、人は……前へと向かっていける。」

 

……………………………。

 

−祈りの歌−。

 

その"夢’"の為に…そして、大切な人達を守る為に。

 

犬吠埼樹は……「勇者」となる。

 

髪が長く伸び、大人のような姿へと変わっていく。纏う勇者装束はとても綺麗な白と青が入り混じった巫女のようなものに。そしてその花は………。

 

ー勿忘草(ワスレナグサ)…花言葉「私を忘れないで」・「真実の愛」ー

 

もう1人の自分の「夢」と自身の「幸せ」を併せ持ったその花…自分だけは「意思の華」が開花しなかった、だけどもう1人の自分の夢を背負って、彼女は"新たな花"を芽吹かせた。

 

そして、蒼葉の隣に立って彼の手を取る。

 

蒼葉「樹……。」

 

 

樹「蒼葉さん、私…すごく幸せです。こんなにも愛されて…それなのに私は間違ってました。ごめんなさい。」

 

 

蒼葉「いいんだ…お前は何も悪くない……だから…。」

 

 

樹「ううん……それでも、間違ったことをした事に仕方がないなんて事はない……ましろさんのように私も自分の過ちを償っていきます。大丈夫…お姉ちゃんが付いてる上に…貴方も添い遂げてくれる。」

 

 

蒼葉「ああ…ずっと一緒だ。」

 

樹と蒼葉は手を重ね、蒼葉の持っているライフルの銃口をDMイツキに向ける。すると、その銃は巨大な弓矢に変化。戦場を明るく照らし始めた。

 

樹「ありがとう…貴方を…愛してます。」

 

矢に膨大なエネルギーが籠り始める。

 

樹(…私が生み出した欲望…叶えたい夢が暴走した姿……あれはわたしの身勝手でもある…だから、貴女も悪くないんだよ?…ちゃんと終わらせるよ。私の思い描いた「想像」を。)

 

2人は矢を放った。その矢は無限にも続くほどの軌跡を描きながら。

 

 

そして………………。

 

 

"絶望"を撃ち抜いた。

 

 

…………………………end。




…………。

"絶望の未来"を書き換え、新たな分岐点を歩み出した一同。

スカイランドは滅亡を逃れ、その分岐点は新たな歴史を歩んでいく事になる。

それが良いか悪いか…それはいつだって、その時代に生きる人達の「選択」と「願い」によって分かれる。

数日後、一同はスカイランド王都にてその傷を癒していた。
樹と蒼葉の事を見届けていた友奈は以前から烈火に問いたい事があった。

彼が大事にしている「自由」。その起源を。

次回
第136話 「自由」の起源、烈火の"理由"。
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