〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。

"絶望"を乗り越え、これから見ぬ"希望"の未来への道を獲得した一同。

その道を閉ざすも開くも、これからの行動次第…凄惨な未来はやり直され、新たな世界線へと進んでいく。

樹の儚い願いから始まったこの出来事は、収束を終息を迎えた。

そして今…あの戦いから勝利を得た一同は休息を満喫していた…。


第136話 「自由」の起源、烈火の"理由"。

遠い「忘れられた地」での決戦は、"絶望"と"希望"の分岐点に時間を遡った蒼葉と風、そして樹の手によって終息を迎えた。

 

樹は自らの願いが生み出した"無"の使徒をその手で倒し、その"願い"を叶えた。

 

大切な人と添い遂げたい…誰もが抱くその想いは時として、人の思考を狂わせてしまう。だが、それが間違ってるなんて誰も思わない。その儚い想いに漬け込んで、力と化す…"無"のやり方は全てを崩してしまった。

 

絆を壊し、そして想いと願いすらも崩し去る…"無"はまさに崩壊を体現する存在。そんな相手とこれから戦っていくことを考えると苦難は待ち受けている事が明白だろう…だが、それでも"人"は足を止めない。何故なら……。

 

"願い"は罪では無いから。

 

ーーーあの戦いを終えて、樹は帰ってきた。そして、彼女を追って「廃部宣言」をした風も一同の元へと帰って来た。ましろと入れ替わるように居なくなった2人が帰って来た事で、一同は遂にその全てが結集した形となった。

 

そして、数日後……一同は束の間の"日常"を迎えていたのだった。

 

 

〜スカイランド・王都〜

 

烈火「おっかわり〜ッッ!!。」

 

満面の笑みを浮かべ、丼を上げる烈火。積み上げられた数を見ると相当な数を食べているのだろう、その全てがカツ丼だった。

 

夏凛「あんたね、どんだけ食べるのよッッ!。ちょっと寄っただけなのにバカなんじゃないのッ!?。」

 

 

烈火「うるせ〜、まさかこんな所でカツ丼食えるとは思わなかったんだよ!。」

 

 

ソラ「まぁ、私達が地球の文化を持って帰って来た事がありましたからね…そのせいでしょうか、地球でよく見る飲食店が多く並ぶようになりました。」

 

 

あげは「確かに…おかげで、居心地はいいんだけどね〜?それにしてよ、よく入るよ…もう、6杯目でしょ?。あんた、本当にカツ丼好きなんだね?。」

 

おかわりのカツ丼に手を付ける烈火を見て、あげはは苦笑いをする。

 

烈火「まぁな、うどんよりこっちの方が俺は無限に食えるッ!。それに……。」

 

一気に掻き込み、箸を置いて一息つく烈火。

 

烈火「カツ丼は俺にとっちゃ、"思い出の品"なのさ。」

 

 

友奈「思い出の品?。」

 

 

烈火「ん、俺達の父ちゃんと母ちゃんは大赦の関係者だ。そのせいで家を空ける事がかなり多くてな、いっつも俺と姉ちゃんの2人で飯を食ってた。これは初めて、2人で飯を作った時のもんだ。慣れない手付きで見様見真似で作った初めての手料理さ。」

 

 

千景「なっ…そんな古い記憶を…ッ!。」

 

 

ツバサ「と言うことは、美味しく出来たんですね?。」

 

 

烈火「まっさかッ!。クソ不味いったらありゃしねぇ、食えたもんじゃねェよ。姉ちゃんは塩と砂糖を間違えるし、俺は俺で衣がボロッボロのカツにしちまうわでロクなもんじゃなかったよ。」

 

千景は恥ずかしいのか、下を俯く。

 

烈火「でも、スッゲェ楽しかった。不味かったけど、2人で笑ったもんだぜ?な、姉ちゃん?。」

 

 

千景「え…ええ…そうね……お料理は得意じゃないから私としては恥ずかしい過去だけど…でも、烈火がそう言ってくれるならまた作ろうと思うわ、どうかしら?。」

 

 

烈火「やだよ、ぜってぇ不味いのがまた出来上がるに決まってんじゃんか。あれからお互いに料理の腕は上達してねぇだろ?。」

 

 

千景「う……い…言われてみれば…。」

 

 

烈火「でも思い出は色褪せたりはしねぇ、だから俺はカツ丼が好きなんだ。ぶちょーと樹を見てたら分かる、それが俺らの"家族の絆"ってやつさ。」

 

 

千景「……そうね。"焔華"として過ごした記憶は紛れもなく私の記憶そのものよ。ずっと考えていたのだけれど……私は「菱咲焔華」に名前を戻そうと思う。」

 

千景の突然の発言に、全員が言葉を失う。

 

ソラ「な…何を言ってるんですか、千景さん!。」

 

 

千景「落ち着いてソラさん。名前を戻すだけであってそれ以外は何も変わらないわ。あなた達も知ってる通り、「郡千景」は300年前に死んでいるの。例え、転生して今を生きているとはいえ現代でいう人生は「菱咲焔華」としてのもの。だから私は……。」

 

 

烈火「まったそんなくだらねェ事を。気にしすぎなんだよ、姉ちゃんは。」

 

 

千景「で…でも……。」

 

 

烈火「姉ちゃんの名前がなんであっても"姉ちゃん"には変わらねェだろうが。俺がそんな小せェ事を一々気にすると思うか?一度も呼んだ事ねぇだろ、どっちの名前もさ。」

 

 

ツバサ「えぇ…それはそれでどうかと…。」

 

 

烈火「とりま、菱咲焔華もだし郡千景も俺の"姉ちゃん"ってことさ。ありのままでいいのさ、そんじゃ俺は先に帰るぜ〜?。」

 

テーブルの上にジャラジャラと小銭を置いて先に店を出た烈火。その自由奔放な姿に全員は呆気に取られる。ただ1人、夏凛を除いて……。

 

夏凛「なッ…なッ…なッ……なんなのよあいつはぁあああッッ!!。」

 

 

ツバサ「お…落ち着いてください夏凛さんッ!!。」

 

 

ソラ「行っちゃいました……先日の戦いが嘘のように思えます…改めて見れば本当に自由な方ですね…あ、お金……んなッ!?。全然足りてませんよこれッッ!!。」

 

 

あげは「まーまー、後でしっかり取り立てればいいじゃん?。今は休む時、これでようやく全員集合したんだからさ?。」

 

 

千景「ええ、そうね……。」

 

 

友奈(自由……か………。)

 

のんびりと街を歩いて小さくなっていく烈火を見て、彼の言う「自由」について考える。

 

…………………………。

 

その夜……風呂上がりの友奈は夜風に吹かれるために部屋の外に出る。するとそこには、身体を伸ばした烈火が居た。

 

友奈「あれ、先客がいた…おーい、何してるの烈火君?。」

 

 

烈火「おお、友奈か。いや…風呂上がりなもんで夜風に吹かれようと思ってさ。ここの風、気持ちいーんだよなぁ。」

 

 

友奈「へへ、それ分かるなぁ…私も同じ。はいこれ、東郷さんを誘おうと思ってたんだけど、烈火君にあげるよ。これ飲みながら少し話そ?。」

 

そう言って、烈火に飲み物を投げ渡す友奈。目を輝かせながら手に取る烈火は早速開けてグビグビと飲み始めた。

 

烈火「いちごミルクかッ!!。」

 

 

友奈「そうだよ?スカイランドのいちごミルクって美味しいんだ〜。これ、ソラちゃんのおすすめなんだよ。」

 

そう言って、一口飲む友奈は一息付いて話を振る。

 

友奈「…良かったね、樹ちゃん。蒼葉君に気持ちが伝わって。両思いだって。」

 

 

烈火「そうだなぁ。蒼葉といい洸といい、みんな青春してんねぇ…俺と鷹夜が置いてけぼりだわ。」

 

 

友奈「烈火君からそんなこと聞けるなんて…意外だ……。」

 

 

烈火「そうか?あ〜…確かに、俺はそういうのとは無縁だからなぁ……ま、親友の幸せ事なら俺も嬉しいよ。しっかりと応援してやんなきゃな?。お前もそう言うのは割とあるだろうが、何通も手紙貰ったことあんだろ?。」

 

 

友奈「ええ、なんで知ってるのッ!?。」

 

 

烈火「なんでい、知らなかったのかよ……そりゃクラスの男どもは青春真っ盛りだからな。浮いた話の一つや二つぐらいは聞くさ。お前、かなりの人気者だぞ?東郷さんと…後、夏凛もだな…夏凛の場合は「怒られたい」とか歪んだ野郎が多かったけど…。」

 

 

友奈「そ……そうなんだ……烈火君、意外と人の話を聴いてたんだね…いっつも寝てたのに…。」

 

 

烈火「あ〜…ギャーギャー騒ぐもんで耳によく入ったんだよ。後は、俺が勇者部に入れられてからは特にな。色々と言われたよ、「何が目的だ」って。」

 

 

友奈「え…そんなこと言われてたの?。えっと…なんかごめんなさい…擬似勇者だからその…。」

 

 

烈火「わかってるよ、大赦が絡んでんだ。お前らが俺の事を引き込んだのもわかってる、周りに知られねぇようにするためだろ?。周りの事は気にしてねェから大丈夫だ。一々聞いてられねェからな。」

 

 

友奈「それだけじゃないんだ。烈火君、いつも屋上でサボってたから学校が楽しくないのかなって…だから、何か楽しい思い出が出来ればいいなって。」

 

友奈は続ける。

 

友奈「えっと……そのさ、全部が終わったら烈火君は…勇者部を「辞めちゃう」の?。」

 

その質問に烈火は……。

 

烈火「おう、辞めるぜ?。」

 

即答。

あまりにもあっさりと言うものだから悲しい気持ちも何もなかった。それよりも、感情が追いつかない。友奈は思わず目を丸くした。

 

友奈「えっと…即答、なんだ…?。」

 

 

烈火「勘違いすんなよ、お前らといるのはスゲェ楽しいし周りの目を気にしてとかでもなんでもねぇ。ただ、一つの場所にジッとするのが苦手なんだよ、俺は。」

 

自由……。

 

友奈は昼間に考えていた事を思い出した。そして…聞くことにする。

彼が何故、そこまで「自由」を大切にするのかを。

 

友奈「烈火君、嫌じゃなかったらでいいんだけど一つ、聞かせてほしいの。なんで烈火君は「自由」をそこまで大切にするの?。」

 

友奈の質問に、烈火は嫌な顔一つもせずに答え始めた。

 

烈火「うーん、少し長くなるけど堪忍してくれよ?。なんでって言われたらそりゃ、"環境"がそうさせたのさ。」

 

 

友奈「環境…?。」

 

 

烈火「そ、昼間も言った通り俺の父ちゃんと母ちゃんは大赦の関係者だ。だからその思想も大赦に因んだもんになる。将来は大赦に努めろってうんざりするほど言われちまったのさ。実際に姉ちゃんも大赦に努めたし、安泰を望んでたんだろうな…でも、俺は嫌だった。」

 

烈火は真剣な眼差しで、夜空を見上げる。そして、手を伸ばす。

 

烈火「俺、将来は宇宙飛行士になりてェなってガキの頃に思ってたんだ。見てみろよ、まだ見たこともねェ景色も広がってるし無限に広がる世界がそこにある。それこそまさに「自由」だろ?何にも縛られねェ無限の自由…俺はそれを手にしたい。」

 

「自由」の起源…それは、敷かれたレールの上を進みたくないと言う思いを誰もが抱いてもおかしくない普通の人間の考えだった。でもそれは、子供が抱く夢そのもので純粋な少年の心だった。でも、そのちっぽけな夢でも全力で求める。

 

それが烈火の性格を作り出していた。何事にも縛られない自由な人間。

 

そして……。

 

烈火「だからこそ、自由を奪ってくる奴らが俺は許せねェ。自由ってのは誰にだって平等に与えられるもんだ、誰が何を思おうが関係ねェ。自分の自由も大事だけど人の自由も大事だ、それが俺の"理由"。世界を救う前に、俺は……ダチ達の自由を穢す野郎共を叩き潰す。俺が勇者部を辞める時はそいつらがお前達の自由を奪わねェようになるまでだ。神様でもなんでも、叩き潰す覚悟は出来てる……って…悪ぃ、つい語っちまったわ。ハハハ。」

 

 

友奈「…ううん……それが烈火君の"理由"なんだね?。よく分かったよ、だからね……。」

 

友奈は烈火の手を取る。その手はいつも傷だらけになっているせいでボロボロだった。

 

友奈「私もそのお手伝いをしたい。」

 

 

烈火「はぁ?なんで…。」

 

 

友奈「そのボロボロの手…いつも戦いで私達が傷つかない様に常に前に出て攻撃を引きつけてくれてる…この間の戦いだってそう、蒼葉君達に樹ちゃんを託して烈火君は誰よりも敵を多く倒すために1人で奮闘してた…いつもボロボロなのに一番笑ってて…私、思うよ?烈火君も「勇者」なんだって。」

 

 

烈火「俺が…「勇者」?。」

 

 

友奈「うん、烈火君は<擬似勇者外装>を手にしてから日常が崩れちゃったけど、世界を回って自分のその気持ちのままにここまで戦って来て…そして、みんなの自由を守るためにボロボロになれる。「傷だらけだけどカッコいい勇者」。私は、そう思うな?。」

 

 

烈火「おいおい…勇者が傷だらけってのはカッコ悪ぃんじゃねぇか?。なんか締まらねェ奴みてぇでよ?。」

 

 

友奈「そう?少なくとも、私はカッコいいって思うな。"覚悟"って痛いんだよ、烈火君はみんなの自由のためなら神様とだって戦える覚悟があるって言ってたよね?。烈火君のような「傷だらけの勇者」の姿がその証拠だと思う。その覚悟が本物だから。」

 

 

烈火「そっか…いいなその称号。「傷だらけの勇者・菱咲烈火」ってか!。今度、名乗ってみようかな…鷹夜達みてぇにさ!!。」

 

無邪気に笑う烈火。

 

少し子供っぽいところがあるけど、その子供心が彼の原動力となっている。その覚悟は嘘ではない…絶対に壊れないその心が本物だから。

 

だから、支えなければいけない……真っ直ぐにしか物事が見えない彼を大切だと思うから。

 

友奈はそう思う。

 

……………………………end。




烈火が求める「自由」の起源とその理由。

それは、壮大な夢でもありそして純粋な少年の心そのものだった。
普通の人は笑うだろう…しかし、烈火は本気だった。

「傷だらけだけど、カッコイイ勇者」。
友奈にとって烈火は、絶対に挫けない真っ直ぐで純粋なヒーローに見えていたのだった。

その頃、鷹夜とましろは先の戦いを終えてから思い悩む東郷を見かける。

それは……敵に囚われた「かつての親友の事」だった……。

次回
第137話 魂の行方。
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