〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。

烈火は常に心がけている"自由"について、友奈に語った。

「傷だらけだけど、カッコいい勇者」。

烈火は傷など気にしない、死ぬ事以外は全て小さいと思っているから。

その頃、樹の件を終えてから東郷は"ある事"について考えていた…。


第137話 魂の行方。

三ノ輪銀。

 

それは、もうお別れを済ませた大切な友達。

齢11歳。2年前に彼女は短すぎる人生を終えてしまった。その最期は壮絶だった。身体は貫かれ、片腕は無くなり、たった1人で3体もの怪物を退けた。

 

全ては大切な人たちを守るため。死を恐れずに立ち向かい、その命で大切な友や家族を守り抜いたのだ。まだ、小学生だと言うのにそんな勇ましい最期を遂げた彼女。

 

しかし……天に召されたはずのその魂は…"利用"されていた。

 

……………………………………。

 

鷹夜「よし、こんなもんだな。」

 

ましろと共に、買い出しに出ていた鷹夜。数日前の戦いの傷はそれなりに癒えており、仲間達の中で一番早くに動いていた。

 

ましろもまた、所々に包帯を巻いてはいるがそれなりに動ける様になり買い物に付き添っていた。

 

ましろ「鷹夜君、色々と買い込んでたけど何するの?。」

 

 

鷹夜「何って…樹と先輩が帰ってきたんだ。祝勝会ってほどでもねぇけどおかえりって言ってやりてぇだろ?。だから、ケーキ作るんだ。」

 

 

ましろ「え…た…鷹夜君がケーキッ!?。」

 

意外だ…ー。

そんな顔をするましろ。空いた口が塞がらずに言葉を失った。

 

鷹夜「なんだよ…似合わねェって思ったか?。残念だな、俺はこれでも一人暮らししてる身だぜ?。生活の知恵はそれなりにある、烈火みてぇに何も出来ねェ奴じゃねェのさ。」

 

 

ましろ「それ、烈火君に失礼なんじゃ……。」

 

 

鷹夜「事実だろ?。まぁ、簡単なものしか出来ねェけどせめてもの祝いはしたいと思ってな。蒼葉と結ばれたってのもあるし……何より、少しは楽しいことやっても罰は当たらねェだろ?。」

 

 

ましろ「ふふ、そうだね?。でも、園子ちゃんと洸君の事が気がかりかな…洸君、一命は取り留めたけどまだ目を覚まさないんでしょ?。」

 

 

鷹夜「…大丈夫だ、必ず目を覚ます。アイツはもう誰かが悲しむ顔を見たくねェはずだ。俺達より過酷な経験をしてやがる、だから……ん?。」

 

帰り道の道中、公園のブランコに座る東郷を見かける。何処か、物思いに耽った顔をしていた。

 

ましろ「東郷さん?。何してるのかな…。」

 

 

鷹夜「珍しいな、アイツが友奈と一緒じゃねェって。おーいッ!。」

 

鷹夜の声に気が付いた東郷は2人を見る。ましろは笑みを浮かべて手を振っていた。

 

東郷「鷹夜君にましろさん、どうかしたの?。」

 

 

鷹夜「そりゃこっちのセリフだっての。お前、友奈と一緒じゃねぇのか?。」

 

 

東郷「………友奈ちゃんは烈火君と一緒よ、はぁ………。」

 

ため息を吐くと同時に重い空気が張り詰める。

地雷を踏んだか…鷹夜はそんな顔をしてましろを見るが、ましろはましろで目を逸らしていた。

 

鷹夜「えっと…ま…まぁ…そんな日もあるよなッ!?。まぁ気にすんな!!。」

 

何とか場を変えようと明るく接するが、気まずい空気が漂う。

 

鷹夜(そう言えば、コイツとはあんまり話した事がなかったな……。)

 

荷物を置いて、隣のブランコに座る鷹夜。ましろは正面の柵に腰掛ける。

 

鷹夜「…何を考えてやがる?。」

 

気になった事をダイレクトに伝えた鷹夜。あまりの直球にましろはため息を吐くが、東郷は分かりきった顔をする。

 

東郷「…貴方はすぐに気付くのね、私が1人で考え込んでいたのを見かけて来てくれたんでしょ?。」

 

 

鷹夜「そんな大層な事じゃねェ。確かに気にはなるが、無理矢理聞くつもりはねぇさ。話したくねェならそれでいい。話題を変えりゃ良い話だからな。」

 

 

東郷「…いえ、話しておこうと思う。その方が…気楽になるから…。」

 

手を震わせる彼女。それを見て、ましろは心配になった。

自分と同じく、無理してるんじゃないか……そう思って。

 

東郷「ついこの間までの樹ちゃんを見てて思った事があるの。彼女は"無"によって知らずのうちに侵食されていった…自分の思いが全部"無"に書き換えられてた事を。それでね、私も思い出したの…シン・バーテックスの王として私たちに立ち塞がってきたあの子……三ノ輪銀。」

 

 

ましろ「あ…それって、東郷さんと園子ちゃんの……。」

 

 

東郷「ええ、友達よ。かけがえのない、大切な……そして、もう二度と会えない大切な友達。」

 

髪を結っているリボンを撫でながら、目を閉じる東郷。悲しみというより、悔しさが滲み出ている…鷹夜はそう感じていた。

 

東郷「彼女はもうこの世にはいない…でも、正直言うと少しだけ揺らいでしまった…あの子を見て。でも、現実はちゃんとわかってる…"本人"なはずが無い…っと。事実、彼女はそのっちを…殺そうとした。」

 

 

ましろ「あ………。」

 

 

東郷「私も、あの言葉に飲まれていたら死んでしまっていたかもしれない。そして、貴方達がマジェスティクルニクルンを手に入れたあの日…頭の中に聞こえてきた女性の声がこう言ったの。「貴女の過去を抉るほどの出来事が起こる」っと。」

 

 

鷹夜「それが……あのシン・バーテックスの王か…。」

 

 

東郷「ええ…銀の魂を利用して、あの子を侵攻の指揮官にしている…頭の中では分かっているのに私は…"迷ってる"…本当に撃てるのかっ…て。」

 

彼女の悩みは、再び銀と対峙した時にその引き金を引けるのか…だった。彼女が本物でないことはちゃんと頭の中で理解はしている、そして彼女はもう死んでいる…それは2年前に受け入れた事実だ。今更、その事実が覆ることはない。だが、それでもあの声がまた聞けた事はうれしかった。

だからこそ、迷う。討たなければならない敵だという事は間違いない、意志があるシン・バーテックスである彼女が居る以上、これまで以上の脅威となる。そしてそれは…人々の犠牲を意味する。

その引き金を引く勇気に全てが掛かっているようなものだ。迷えば世界が滅ぶ。しかし、引けば友の姿をしたものをその手にかける事になる。そして…銀の死を"もう一度"体感する事となる。

その葛藤が、彼女を悩ませる。

 

東郷「樹ちゃんは咲良君達の奮闘もあって、自分を取り戻した。けど、銀の場合は違う。あれはあの子の姿をした別物だという事は理解しているの。分かっているからこそ、こうして迷うのでしょうね…あのそのっちですら、迷いに迷ってその隙を突かれたんだから……でも私は一度、"撃った"。その時は…とても悲しくて涙が止まらなかった…でも今は悔しいと思ってる。死んでもなお、あの子は利用されてしまうのかって。」

 

その思いを吐露し、それを聞いた2人は神妙な面持ちとなる。

その悩みに対する答えが出てこない、そして三ノ輪銀の事は殆ど知らない、この2人がどんな思いでいるのかも全てを理解する事が出来ないからだ。だから、彼女に掛けてやれる最善の言葉が出ない。

一時の沈黙がこだまするーー……先にその沈黙を破ったのは、鷹夜だった。

 

鷹夜「この際、救いたいとかは置いておいたほうがいいんじゃねェのか?。」

 

 

東郷「……えっ…?。」

 

 

鷹夜「少なくとも、アイツは俺達の敵だ。"無"の野郎共がソイツの魂を使って人の形を借りただけの人形……戦った時に俺はそう思った。」

 

 

ましろ「鷹夜君、その言い方はちょっと酷いんじゃ……。」

 

 

鷹夜「いや…東郷が現実を理解してるからこそ、ちゃんと向き合わなければならねェ。樹のことで分かったがアイツらは人の思いや心情に揺さぶりを掛けてその隙を突いて来やがる。巧妙な野郎共だ、本能行動とか言いながらやってることはタチが悪い。だからこそ、割り切る必要があるのさ…それは俺たちだって例外じゃねェはずだ。」

 

 

ましろ「……そう…だね……。」

 

 

鷹夜「もし、それでもお前が撃てねェっていうなら…俺が奴をぶん殴ってやる。お前が泣く必要は無ェんだ、悪いのは全部"無"の野郎なんだからな。」

 

 

東郷「鷹夜君…。」

 

 

鷹夜「迷って当然さ、何せ昔のダチの姿で現れやがったんだ。シン・バーテックスは先に勇者から潰そうと考えてやがるのかもしれねェ。仮にもバーテックスだ、お前らの事は天敵だと思ってるだろうからな。ソイツの相手は俺に任せとけ、俺なら…問題無ェ。」

 

拳をグッと握る鷹夜。新たな力を手にしてから、彼は変わった。迷いが全く無いその眼差し…優しい奴が泣かなくても良いようにする、その為ならどれだけ叩き潰されようが拳を握り締める事が出来るから。

 

"プリキュア"でありながら"勇者"の特性を併せ持つ彼の力は異質だ、旅の最中で自身の心情と共に変化していった。それはまるで、鷹夜自身が"人を超えた"かのように。

 

全ての"業"を背負う気だ…ましろはそう思った。

 

ましろ「鷹夜君、それはッ……!ーーー。」

 

 

鷹夜「…どうなんだ、東郷。お前は…それを俺に"任せられる"のか?。」

 

その問いかけに、東郷はハッとした目を向ける。鷹夜はコクリと頷き、彼女がどう答えるかを待つ。

 

そして、目を閉じて過去を思い返す。園子と3人で過ごした日々、戦いの辛さから逃げ出したくもなったが、3人一緒なら必ず成し遂げられると信じたあの日々。そして……"別れ"。

 

その記憶はとても大切で、悲しくて、それでも……"守りたい"。

 

そして……。

 

ー須美ッ!ーーー………………。

 

……ゆっくりと瞳を開けた東郷は、スカイランドの街を見ながら。

 

東郷「…ううん、大丈夫。もう…大丈夫。」

 

ブランコから降り、自分の手を見つめる。

 

東郷「私が撃つわ。銀との思い出を守るために…彼女を"送る"為に。」

 

その瞳に迷いは消えた。全ては…友の魂を在るべき所に送る為に。

 

その弾丸は"葬送"の為に。

 

それを聞いた鷹夜は目を閉じながら微笑を浮かべる。

 

鷹夜「分かった、ならその道は作ってやる。あとは任せるぞ。」

 

 

東郷「……ええ、頼むわね。」

 

 

ましろ「フフ、東郷さん!。お菓子作りが得意なんでしょ、手伝って?。鷹夜君がケーキ作るらしいの!。」

 

 

東郷「え…ええッ!?。鷹夜君、出来るのッ!?それに私、洋菓子は……。」

 

 

ましろ「良いから良いからッ!早く行こッ!?これ、樹ちゃんと風さんが帰ってきたお祝いのケーキなんだってッ!!。」

 

ましろは東郷の手を引っ張って走り出す。戸惑う彼女だが、何処か楽しそうだった。

 

鷹夜はその様子を見て、買い物袋を手に空を見る。

 

そして、自分の拳を見つめると淡い光が溢れ出した。

 

鷹夜「……へッ…。」

 

笑みを浮かべながらそれを握り締めて胸に強くその拳を当てて深呼吸をする。そして、何かを決心したかのように2人の後を追って歩き始めた。

 

そして一言……。

 

ー頑張れよ?ー

 

そう思いながら、帰路に着くのであった。

 

………………………end。




東郷は悩みを打ち切り、友の魂を送る為にその引き金を引く決意を込めた。

そしてその夜…風と樹の帰りを祝う小さなパーティーを開くことに。

おかえり。

この言葉は……長い時を経て出来た溝を埋める魔法の言葉。

次回
第138話 おかえり〜絆の歌〜
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