〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。

ソラシド市に現れた謎の少女・プリムは防人たちと行動を共にすることにした。

その一方、スカイランドでは、昏睡状態となっていた洸が目を覚ます…。


第141話 消えた記憶、薄れゆく存在。

~スカイランド・病室~

 

園子「…今日もいい天気だね…洸?。」

 

病室に入る園子。その傍のベッドで未だに眠り続ける洸を見つめながら、花を添える。

 

園子「いっつんとね、フーミン先輩が帰って来たんだよ?。それにね、いっつんはアオに想いが通じて恋人同士になったんだって?。えへへ、私達とおんなじだよねー?。」

 

何気なく話す園子。だが、洸は未だに目を覚さない。

 

やっぱりか…。

少し、暗い顔をしながらでもわかっていた事に園子は自分を嘲るように笑う。そこへ、誰かが入ってくる。

 

園子「あ…わっしー。」

 

東郷だ。

 

東郷「…洸君、まだ目を覚さないようね?。」

 

園子「そうだね〜?。全く…とんだお寝坊さんだよ〜。」

 

東郷「…そのっち。無理はしないでね?。辛いなら辛いって言えばいいのよ?。」

 

その言葉に、一瞬ハッとした表情になるもいつものような柔らかな笑みを浮かべて。

 

園子「大丈夫だよ〜。」

 

それだけを言う。そう、いつ聞いてもそうだ…彼女は決して弱音を吐かない。きっと、胸が締め付けられるほどにまで辛いはずなのに、それでも笑って見せる。

 

…本当は、泣きたいくらいにまで心配なはずなのに…。

 

そう思って。

 

園子との付き合いが長い東郷は彼女のそういう所はちゃんと熟知していた。だからだ、あまり追求しない事にした。きっと、何を聞いてもこの笑みで返してくるはず…聞けば聞くほど、この子の心を追い詰めてしまうかもしれないから。

 

園子「…ごめんね〜?。もう次の目的地は決まってるの?。」

 

東郷「いえ…これからよ。"無"の軍勢は世界中で確認されてる。世界間の移動が可能となった今、それぞれの世界にバラけるって案も出てるわ。」

 

園子「え、それって…ソーちゃん達と離れ離れになるってこと?。」

 

東郷「いえ……手分けして、勇者世界とソラシド市に戦力を分断させようって話よ。お互いに連絡を取る手段も必要だろうし…片方の世界にばかり注力を注ぐ事は出来ないからね。」

 

園子「なるほど〜。わかったよ、じゃあ何かあればまた教えてね?。私…もう少し、洸を見ておきたいから。」

 

そう言って、眠る洸の頬に手を当てる園子。

その様子を見た東郷は微笑を浮かべて部屋を後にする。

その外には、腕を組んで話を聞いていた鷹夜が居た。

 

鷹夜「…まだ、本調子じゃねェみてェだな?。」

 

東郷「ええ…普段の感じには戻ってるけど、本心は話してはくれない。気を遣わせたくないのでしょうね、全く……そう言うところは友奈ちゃんにそっくりなんだから…。」

 

隣に立つ東郷は、思い出したかのように鷹夜にある事を聞こうとする。

 

東郷「鷹夜君、貴方の力の事だけど……。」

 

鷹夜「力って…ああ、"キュアスサノオ"の事か?。」

 

東郷「ええ。貴方、その身一つでとてつもない力を手にしたのよ?。その…体に何か変化はないの?。」

 

 

ーキュアスサノオー

それは、鷹夜が決心した「優しい奴が泣かないようにする」為の力。

 

彼の力は、これまでの戦いの中で異種進化してきた。そう…今の彼は「プリキュア」と「勇者」の両方の力を兼ね備えたハイブリッドな戦士。これは、異例中の異例とでも言えるだろう…本来、交わることのない世界の戦士達の力が彼1人に集約したのだ。いくら、「キュアアグニ」が別世界のプリキュアだとしても、この進化は"突然変異"とも言えるだろう。

 

そんな力を手にしたのだ、彼に掛かる普段も相当なはず…東郷はその身を案じて聞いてみた。

 

鷹夜「…いんや、特に。あれから、"キュアスサノオ"になる為の"条件"みてェなものがまるで分からねェ。」

 

東郷「…条件…?。」

 

鷹夜「ああ、どうやら好き勝手になれるものでもねェらしい。だからか、樹を連れ戻しに行ったあの遺跡では力が発揮出来なかったんだ。まぁ…あれが無くてもやるつもりではいたけどな。」

 

東郷「そう……。」

 

鷹夜「心配すんな。この力は俺の意思…優しい奴が二度と泣かねェ世界にする為の力さ。だから…俺はもっと強くなる。"絶望"を超えて、その先にみんなを連れて行くために。」

 

そう言って、鷹夜は自室へと戻っていった。

その後ろ姿はどこか、人を超えたものになっていて。

 

…………………………。

その夜。

一同の元にある一報が入る。

 

ソラ「え…洸さんが目を覚ましたッ…!?。」

 

ツバサ「はい!。さっき、お医者さんからそのお話を頂いてッ!!。」

 

思いがけない"朗報"に、一同の表情は明るくなる。

特に園子。樹を連れて帰る為の一大作戦にも参加出来なかったほど精神が病んでいただけあって、その報せは彼女にとって何よりも嬉しいことで。

 

そして、その勢いのまま彼の病室へと走っていく園子。

 

烈火「あ、オイ園子ッ!?。」

 

園子(洸…洸ッ!。良かった…本当に…本当に良かった……っ!!。)

 

感情に任せて人目を憚らず走り続ける園子。時折、人とぶつかりそうになるも何も気にすることなくただ一直線に。

そして、当人の病室…ノックをすることなく勢いよく入る。

 

そこには…身体を起こして外を見ていた洸の姿があった。

 

園子「洸…ッ!!。」

 

今にも、泣き出しそうな顔で声を上げる園子。

ここは病院だ、他の患者だっている。

こんなこと、迷惑だって百も承知だ。しかし、抑えられない感情に従ってみるのもたまにはいいだろう。

 

そして、彼は声に反応してこちらを見る。

しかし、口にしたのは…ーー。

 

洸「……どちら様…ですか…?。」

 

不安そうな顔でこちらを見る洸。いつものような少し冷めたような物言いではない。どこか、怯えてそうなその声で。

 

園子「え…な…何を言ってる……の……?。」

 

ましろ「そのちゃん、いきなり走っちゃダメだよ…?。」

 

そんな彼女を追いかけて、他の者も彼の病室を訪れる。

しかし、先ほどと同じような怯えた表情で、洸は全員を見ながら。

 

洸「えっと…貴方達は誰何ですか…俺の…知り合い…何ですか……?。」

 

鷹夜「………お前…まさか……。」

 

園子「っ……!!。」

 

俯きながら、その場から逃げるように園子は病室を後にする。

それに気付いた東郷が彼女の後を追いかけて行った。

 

風「ねェ…これって……。」

 

あげは「………記憶……喪失………。」

 

……………………………………。

 

園子「はぁ…はぁ…はぁ…。」

 

無我夢中で走り込んだ彼女が行き着いた先は、雲海の広がるスカイランドの光景が広がる丘。

もう、何も考えられなかった。

嬉しかったはずなのに、どこか胸がすごく苦しかった。

この感覚は…知っている。

そう……友に"忘れられた時"と同じ感覚だ。

そしてそこへ、彼女を追いかけて1人の少女がやってくる。

 

東郷「そのっち……。」

 

園子「わっしー……。」

 

振り向いた園子の頬には、涙の跡があった。

きっと、走りながら泣いていたのだろう。そんな自分を見られた彼女は必死に頬を拭う。

 

園子「あはは…ごめんねわっしー?。私…ダメだったみたい。耐えられないや…やっぱり。」

 

東郷「っ…!!。」

 

何も言わずに、強く抱きしめる東郷。

一瞬だけ、園子は驚いた表情をするがまたしても、涙が溢れる。

 

園子「辛いよ…"また"誰かに忘れられるなんて……!。」

 

東郷「分かってるッ!。だから目一杯泣いていいのよ!?。泣きたいだけ泣けばいい!辛いことは辛いってはっきり言えばいいッ!。」

 

園子「うぅうう…ぅうううううッッ!!。」

 

…しばらくの間、園子は泣き続けた。

ずっと、心に秘めていた事を吐き出すように。親友のその胸の中でただ子供のように泣き続けた。

 

悲しいことは悲しい。だから、泣きたいと思えば泣いていいんだ。

こんなに辛い宿命を背負っているのだから…泣ける時に泣いておかないと、感情がぐちゃぐちゃになってしまうから…。

 

だから、泣こう。今だけは、全てを忘れて悲しいと思ったその気持ちのままに。

 

そして………。

 

園子「……ごめんね、少し…落ち着いた…。」

 

東郷「そう……。」

 

園子「…洸が目を覚ましたんだ。数日もすれば、スカイランドから旅立つんでしょ?。」

 

東郷「………ええ。"無の軍勢"という本当の敵が現れた今、時間が惜しいのが現実…だから、やれることをやらなければいけない。あの存在は…全てを消してしまうから。」

 

園子「…だよね。私も…やれることをやりたいな…。」

 

自分の手のひらを見る園子。

ここにやって来てから、大きな戦いを経てみんなが成長した。

バラバラとなってしまった心はまた一つに…そして、ようやくその全てのパズルのピースが揃った。

 

ましろが帰って来て、樹と風が去ってしまった。

しかし、その全てが再び集まり、今度こそ"自分達"というパズルは完成を遂げた。

でも、ここからなんだ…もっと辛い事になるのは。

だからこそ、全員で乗り越えて行かなければいけない。出会うことのなかった"友達"の為に…そして、この混沌の世界の中で出会えた"大切な人"の為に。

 

もう、泣けるだけ泣いた。でも、泣きっぱなしじゃいられない。

自分の心を抉るような出来事がここではたくさん起きた。もうこれ以上、嫌なことは起きてほしく無い。

 

だとしたら、自分に出来る事は何なのか?。

"友達"のために…"愛する人"の為に、今自分が出来ることは何なのか…。

 

その手のひらを見ながら、浮かぶ"理想"があった。

もう、いなくなってしまった"友達"の魂を天に返してあげること…そして、大切な人を守っていくこと。

 

記憶が無くなったからどうしたんだ?。今、隣にいる親友だって一時は自分のことを忘れてしまっていた。それに加え、彼女が罪を償うためにそう仕向けた事もあるが自分も彼女の事を忘れていた時期もある。

 

でも、その全てを取り戻した。

一度だけではなく、二度も…取り戻せたんだ。

だとすれば、三度目だってやれるはず。

 

そう…私が、"彼"を想い続けてる限り。

 

そう思うと、不思議と力が湧き出た。

そして…いつもの強い瞳へと戻る。

 

園子「…ごめんね、私のスタートが出遅れちゃった。洸の事は何とかするよ。きっと記憶は…戻るはず。」

 

東郷「…貴女だけじゃないわ。みんなも居る。だから…諦めないで行きましょう?。彼の記憶はきっと…戻るはずだから。」

 

園子「……うんっ!!。」

 

……………………………。

それから、数日後。

洸の体調も回復し、この世界を去る時が来た。

あれから、園子は毎日彼の病室を訪れていた。自分のことを知ってもらうために、その中で何か思い出せることがあればいいと思って。

しかし、それは叶わなかった。でも、わかっていたことだ。今はそれでいい。自分が彼を想う心は変わらない。その形がなんであれ、一から出直せばいい。そう思って動くと不思議と悲しみが消える気がしたから…ー。

 

そして今、目の前にゲートが開く。

 

洸は不安そうな顔でそのゲートを見つめていた。もう、何もかもが忘れてしまっているんだ。当然、"フレア"という自分の相棒でさえ。

 

でも、園子は安心させようと彼の手をギュッと握る。そして…温かい笑みを浮かべる。

 

園子「大丈夫、私が付いてるから。だから君は、何も怖がらなくていい。君は…私が守るから。」

 

洸「……う…うん……。」

 

園子「それじゃ、行こっかみんな!!。世界を救う旅にッ!。」

 

…………………………。

……悲しく無いと言えば、嘘になる。

今でも胸は苦しいままだ。敵に利用されたミノさんの魂に、私のことを忘れてしまった洸。

この手から大切なものが2つも溢れてしまった。

でも、もう泣かないよ?。たくさん泣いたし、たくさん悲しんだ。

だから今度は…笑っていたいんだ。嬉しいこともあったから。

 

そして、その大切なものをちゃんと取り戻すために前に進む。

それが…私の"戦う理由"だから…ーーー。

 

 

……………………end。




様々な出来事があったこのスカイランドの旅は一つの終わりを迎えた。

小さな希望達は次なる地へと旅立つ。

その先は……"数年先の未来"。

次回
<第4部・崩壊編 最終話>
第142話 崩壊した"未来"。
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