〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
犯した罪を償う為に――
みんなで過ごす明日を守るために――
俺(私)は…何度だって、立ち上がって見せる――
第143話 閃光の剣。
スキアヘッド「終わりだ……!。」
迫り来る闇の一撃。
禍々しく輝くその刃は、命を確実に刈り取るもの。
避ける事は間に合わない。最早、選択の余地は無い…生き延びる為にできる事は……。
アグニ「受けきる…だろ……!?。」
これが最善の選択。
アグニは炎を纏った両腕を交差させて盾状に形成し、アンダーグエナジーの刃を受け止める。
だがその重みは凄まじく、どんどん押されていく。
後ろに目をやるアグニ。
そこには、額から血を流したプリズムが。
今、ここで押し負けたらプリズムまでもこの刃に切り裂かれてしまう。
そう思うと、「負けてられない」という気持ちが込みあげてくる。しかし、気合だけではどうにもならないのが現実だ。スキアヘッドの力は以前よりも増している。恐らくだが、この世界の現状が彼のアンダーグエナジーをより強化しているのだと思う。
プリズム「私も……!。」
援護しようと、立ち上がろうとするプリズム。
だが、右足に激痛が走った。
プリズム「あぐッ……こ……これは………!?。」
……吹き飛ばされたせいで、地面に転がっていた瓦礫から飛び出していた鉄筋が深く、右足首に刺さり込んでいた。
知った瞬間に、冷や汗が出るほどの痛みが思い出したかのように彼女に襲い掛かる。
少しずつ、血が地面に伝っていく……この何もない世界での怪我は致命に繋がってしまう。
彼女の悲痛な叫びを聞いたアグニもその状況を把握した。
アグニ(まずい…プリズムの足が……!。)
一瞬だけ、力が弱まったアグニ。
その隙を逃さないスキアヘッドの攻撃はさらに彼を追い詰めて。
スキアヘッド「ククク……状況は好転しないな?理解したか、これが貴様達の限界なのだ。」
アグニ「くッ……勝手に……決めんなよ……ッ!。」
スキアヘッド「決めているのではない…"決まって"いるのだよ。ここまで良く足搔いたものだ、しかし現実を見ろ。この世界の状態こそ、お前達の末路なのだ。」
――周囲に広がるのは永遠とも思える静寂。
命の息吹すら感じない、ただただの静寂。
ここで生きている人はいるのか?人が築いてきた文明は全て壊され、空も太陽が見えないほどにまで暗い雲に覆われている。唯一、あるとすれば風だけが吹いている……しかし、それ以外は本当に"何もない"。
まるで、死の世界。
これが、自分達が敗けた世界の姿。
スキアヘッドの言う通り、自分達では限界がある。あの無限にも等しい"無の軍勢"だけではなく、このスキアヘッドがいる"アンダーグ帝国"。そして、ナイアルが率いる"劇団"。
それに相対するのは、自分達だけという現実。
――流石に、限界がある。自分達が敗北するのは、必然なのかもしれない――。
――
――――――――――
――――――――――――――――――――
――否。
そうじゃないだろう。
確かに、敵は強大だ。この世界の現状こそが、自分達の辿る結末なのかもしれない。
だけど、まだこの身体が動く。足が動く、手が動く。そして……心臓が動いている。
――危なかった。
今、完全に諦めそうになっていた。圧倒的な強者を前に、竦む者のように全てを受け入れそうになっていた。
気合を入れろ。
コイツ等に屈服するのだけは、なんとしてもあってはならない。
自分達が諦めてしまえば、ここに居るものたちの未来まで閉ざすことになる。
ソラが、友奈が、烈火が……そして、これまで出会ってきた全ての人たちが。今、共に戦っている大切な仲間達が。
アグニ「――最期まで諦めない限り、俺達は……何度だって立ち上がれるッ!!。」
その瞬間。
もう受けるだけで精一杯なはずなのに、僅かに押し戻し始める。
底力というか…半分は意地のようなものだ。「負けたくねェ」という、ただの意地。
その底力にスキアヘッドは、驚いた顔をする。
ほら、奴さんの表情が変わった。
身体はもう砕けそうな勢いであちこちが痛ェが、ここで負けたらこの意地は意味をなさねェ。
腹の底から、声を上げる。こうなれば、気合が入った奴が競り勝つ。論理だのなんだのなんてもどうでもいい。ただただ、俺達を見下してるコイツが気に食わねェ。
そんな俺を見てか、プリズムも立ち上がろうとする。
プリズム「……私も……戦う……ッ!。」
アグニ「お前、足が…!。」
プリズム「それでもッ!!。」
両手から淡い光を放出させ、私はアグニを支える。
少しでも、手助け出来れば………ここで、私達が生き残ることが出来れば何かを変えられそうな気がするから。
挫けてる場合じゃないよね。元はと言うと、私の為にみんなは世界を巡る旅を始めたんだから。
私があの時、アデルに支配されてなかったら…もっと、心が強かったら…――。
――きっと、こんな事にはならなかったのかな。ここまで酷いことにはならなかったのかな。
――少しだけ、ほんの少しだけ、胸が締め付けられそうになる。
でもね…私だって、負けたくないんだ。
ソラちゃんのように勇敢じゃないし、ツバサ君のように夢の為に一生懸命じゃないし、あげはちゃんのように人を惹き付ける何かがあるわけじゃない。どっちかというと、何もない。でも、そんな私を助ける為に一生懸命になってくれたみんなの為に。これまで私が傷付けてきた多くの人の為に。そして……最期まで諦めなかった鷹夜君の為に。
――もう、泣かないよ。弱気にならないよ。
今度こそ私は……彼の隣に立てるように。
――"強くなる"。
スキアヘッド「…なんだ、この力は……どこからそんな力が湧いてくるッ!?。」
意味が分からない。こんな力、どう証明しろと。
スキアヘッドの思考が、乱れ始める。
プリズム「―――はあああああッ!!。」
真っ白な光がこの暗い世界に広がっていく。
そして、プリズムの背中から4枚の天使の翼が顕現した。
アグニ「お前…その力は…!?。」
プリズム「…分かんない。けど……君に触発されたのかな。「負けたくない」って思ったら、力がどんどん湧いてくる。」
その姿…「キュアプリズム・ラファエルモード」。
優しさと慈愛に満ち溢れ、勇気と心の強さが彼女に新たな力をもたらした。
もう、「闇」に呑まれない。
その意志の強さが、この"奇蹟"を引き起こした。
スキアヘッド「いくら、足搔いた所で結末を変える事など…!。」
アグニ「出来る!。テメエらの好きにさせるかよ!!。」
スキアヘッド「分からぬか!?。貴様達に待ち受けているものは"無限"だぞ!。ありとあらゆる生命体が決して抗う事の出来ない摂理そのものだ!。」
プリズムRF『だからこそ、抗うんだよ!?。』
スキアヘッドのアンダーグエナジーが、徐々に消滅し始める。
プリズムRF『みんなで笑って過ごせる明日が欲しいから、何度だって立ち上がるの!!。』
アグニ「無限でも何でも、それをぶち壊して良い筈なんて無ェんだ!。俺達は生きる!お前らがどれだけ強かろうと絶対に負けねェッ!。」
手を繋ぐ二人。
その瞬間、天に届くほどの大きな光の剣が姿を現した。
『『プリキュア!。コズミック・セイバー!!。』』
世界を照らし、天に伸びた巨大な剣がアンダーグエナジーを一瞬にして消し去る。
これを受ければ命はない…そう思ったスキアヘッドは回避行動に移る。しかし、その剣はあまりにも巨大過ぎた。
スキアヘッド「ぬううううううッッ!!?。」
避け切れないスキアヘッドは、その光の中に飲み込まれていった。
――そして、やがて光の剣が消えると荒廃した大地に一直線の爪痕が残る。
アグニ「はあ…はあ……やったか……!?。」
光の中に飲み込まれたスキアヘッドを確かに見た。
だが………。
スキアヘッド「…………。」
プリズムRF『ッ……避けられた!?。』
スキアヘッド「……いや。」
よく目を凝らすと、彼の片腕が無くなっていた。
アグニ(ちッ……それでも片腕一本かよ…!。)
スキアヘッド「…想定外だ。こうまで、やられるとは……。」
アグニ「なら、今度こそ……!。」
スキアヘッド「いや、ここは退こう。認識を改める必要性がある。」
そう言って、残ったアンダーグエナジーで「ゲート」を形成する。
アグニ「テメェ…逃げる気か!?。」
スキアヘッド「貴様達のこの"勝利"が、この結末を変えられるに値しないと判断した。それに、私の想定を遥かに超える力を発揮した貴様らとの戦闘はこれ以上、無意味だ。この片腕一本、冥途の土産に持って行くと良い。」
消えた右腕を見ながら、表情一つ変えないその佇まいは不気味さを感じさせるほどに。それとも、"まだ"余裕があるのか……アグニは歯を食い縛る。
スキアヘッド「だが、覚えておくといい。お前達が元の時代に戻らない限り、この結末を変えることなど不可能だ。その意味を理解するのだな、お前達は……"追い詰められている"。」
それだけを言い残し、消えていった。
――戦闘を終えて、二人は変身状態を解く。
彼女の負った怪我は深刻だ。鷹夜は自分の上着の一部を破り、傷をきつく縛る。
鷹夜「…どうだ?。」
ましろ「…ッ……うん…痛むけど、少しはマシかな……。」
鷹夜「とりあえず、病院の跡地を目指す。」
そう言って、鷹夜はましろをおぶる。
空港"だった"場所をゆっくりと歩き、滑走路にあたる部分から病院の跡地を目指す。
現代と位置が変わっていなければ、おおよその見当は付く。そう思って、目的地を目指す。
ましろ「……ごめんね。また、迷惑を掛けちゃった。」
鷹夜「気にすんな。アイツを追い払えたのはお前のおかげだ。」
――事実、ましろが先ほどの力を発揮しなければ、あの場でやられていただろう。
ここに来て何故か、「キュアスサノオ」の力が顕現しない。恐らくだが、あの力を発動させるには何らかの"条件"が必要なのだと思う。そして、ましろが顕現させたあの力があったからこそ、スキアヘッドを退けることが出来た。
鷹夜(…あの技の大部分はましろの力だ。消耗が一番激しいのはコイツだ、動くことすらままならないのに……それでも気遣えるか。)
ましろ「…鷹夜君。」
鷹夜「何だ?。」
ましろ「…スキアヘッドがここに現れたという事は、多分だけど……元の時代に戻れる手段があるのだと思う。」
鷹夜「…んな事言っても、アイツはアンダーグエナジーで……。」
ましろ「うん。それを使って「ゲート」を無理矢理開いたんだと思う。私、分かるんだ……。」
自分の胸に手を当てるましろ。
戻って来てから、彼女はどこか不思議な感覚を宿していた。他のメンバーには伝えていないが、「闇」に関する力の奔流を感覚で感じ取れる超感覚が身に付いていたのだ。
特に、この未来の世界は「闇」が多く渦巻いている。彼女は、その流れを何となくだが少しずつ掴んでいた。
鷹夜「…まさかお前……。」
ましろ「アンダーグエナジーを逆に利用するのはどうかな。」
鷹夜「危険すぎるぞ、あんな得体が知れないもの!。」
ましろ「分かってる。だけど…さっきのあの力があれば私はもう「闇」に飲まれないよ。この結末を変えるには、私達が元の時代に帰る事。そうしなきゃ、きっとこの未来は変えられない。」
――理屈は分かる。
けど、それが最善の方法で絶対条件だ。ただ、アンダーグエナジーを利用するのだけは賛同出来なかった。
それはつまり……再び、彼女を「闇」に触れさせるという事だからだ。
鷹夜「…お前の言い分は分かったよ。でも今は、その怪我をどうにかしよう。それから考える。他のみんながどうなったかも気になるしな。」
ましろ「…うん、そうだね。」
――この"未来"を変える為に、二人の旅が始まる。
だが、二人のこの行動が……"全て"を変えることに―――。
……………………end。
たった二人で崩壊した未来を旅することに。
生まれ育ったこの地が10年でこうまで変貌した事。
滅んだ未来でも、二人は最後まで希望を捨てない―――。
次回
第144話 希望の象徴。