〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
ギガスの襲来を、チームワークで乗り切った一同。
しかし、樹海内に現れた蒼葉の謎が深まったこと。そして、風が戦線離脱を余儀なく強いられるほどの怪我を負ったこと。
黒い星屑の襲来から、異常な出来事が立て続けに起きている事に一種の不安を抱く。
そんな時、大赦から焔華が勇者部の部室に現れて…。
〜讃州中学、勇者部部室〜
烈火「………。」
部室内は、嫌な空気に包まれていた。それは……。
東郷「…なんで、貴方がここにいるのかしら…咲良君…?。」
蒼葉「気にするな、ここは涼しいから利用させてもらっている。俺の事は置物のように捉えてくれて良い。活動の邪魔はしないさ。」
犬猿の仲とも言われるこの2人が部室にいる事。
それが、この何とも言えない空気を生み出していた。
そんな空気を壊すべく、友奈は迷いに迷った挙句…。
友奈「そ…そうだ樹ちゃん!。風先輩は大丈夫だった!?。」
樹「ふぇッッ!?。あ…はい…ただ、肋骨が3本折れちゃってて…少しの間だけ、入院しないといけないんです。」
そう、風は先の戦闘でギガスの攻撃をまともに受けてしまい、精霊バリアありきでも重傷を負ってしまっていた。
もし、バリアがなかったら……なんて、肝が冷える考えがどうしても頭をよぎってしまう。
夏凛「風が居ない間、あんた生活出来んの?。家事の能力は壊滅的でしょ?。」
樹「うっ…そ…それは…。」
蒼葉「大丈夫だ、烈火の奴も同じスキルの持ち主だ。コイツが何とか生きていられるなら、問題は無い。」
烈火「あの〜…さりげなくバカにされた気がしたんですけど…。」
烈火(蒼葉はあの後から、何も語ってくれねェ…コイツが何者かはもちろん気になるが…親友を疑うのもな…。)
相変わらず、タブレットに目を通す蒼葉にいつも通りの雰囲気を感じ取る。
しかしあの時、的確な指示もあった上にギガスの癖を熟知していた蒼葉はまるで別人かのような雰囲気を纏っていた。
それは、全員が感じ取っていた事でもあり、新しく判明した謎でもあった。
でも、本人は何も語らない。
東郷は相変わらず、敵意をむき出しにしているが烈火はそうでもなかった。
親友だ…だから、疑うのはよそう。
そう思って。
そんな中、突如として部室の扉が開く。
やってきたのは…、
焔華「突然、すまないな。勇者の諸君に烈火…む、新しく部員が増えたのか?。」
烈火「あ…姉貴…!?。」
蒼葉は焔華の姿を見て一瞬だけ顔を向けるが、すぐにタブレットに目を通す。
焔華「部長が居ないか…仕方ない…何せ、入院中だ。お前達に頼むしかないか。」
東郷「頼み…ですか?。」
焔華「ああ。大赦の使者として、お前達に任務を任せたい。」
夏凛「…任務ですって?。私たちに、何をやらそうって言うの?。」
焔華「そう噛み付くな、先の事は申し訳なく思っているさ。本題に入ろう…「勇者」の諸君と烈火…お前達に「外」の調査を頼みたい。」
「外」。
その言葉を聞いて全員が驚愕する。
特に、蒼葉はタブレットを思わず落としてしまう。
友奈「そ…「外」って…大橋の先ですよねッッ!?。」
焔華「ああ、知っての通り私達「海祇機関」がその先陣を切っているが…荒れ果てて車両などの通る道が無くて道路環境が劣悪すぎる。だから、調査が難航しているのだ。しかし、この度「勇者」の諸君にも、「外」の調査に対してその認可が下りてね。」
蒼葉「…大赦は「外」の事を知って何をするつもりなんだ?。」
焔華「能力を持たない一般人に教えるわけにはいかん…と、言いたい所だが話を聞かれてしまっては誤魔化しようが無いな。勿論、貴重な西暦時代のまま、「外」の世界は残されていたからその調査と…そして二つ目は人類の「生存圏」拡大だ。」
蒼葉「…生存圏の拡大…やはり、大赦の最終目標は「西暦時代に戻す」事か…?。」
焔華「…お前のその洞察力は、危険すぎるな。気をつけておけ、大赦の機密に関わる事だ。私の頭の中で留めてやる。好奇心については共感するが、余計な詮索は危険を招く事になる。」
焔華の言葉を聞いて、蒼葉は不審な目を一瞬だけ向けるが納得した様子で黙る。
蒼葉(もう一つ、あるだろう…それは「世界の壁」を越える方法を探す事だ。大赦は…「並行世界」の存在を知っている…。)
焔華「だが、調査圏内の制限は掛かっている。「本州」入りを果たした後、その圏内は「兵庫」までとする。それ以上は帰って来れなくなる危険性もあるからな。」
烈火「何だその…「兵庫」って…?。」
焔華「西暦時代、この日本は47箇所の地名が存在していた。大橋を超えた先の本州の玄関口が「岡山」…そこから、東に向かっていった場所に「兵庫」という地名が存在していた。300年前の話だ、二度と「外」に出られないと思われていたから風化したのだろう。明日から、動いてもらいたい。」
友奈「具体的には何をしたらいいんですか?。」
焔華「西暦時代に関する情報を持って帰ってきてもらいたい。なんでもいい、当時の雑誌でも機械でも…出来れば、映像フィルムがあれば助かるが…どれもこれもが貴重品だ、何を持ってきても研究対象にはなる。」
烈火「宝探しみてェなもんか。」
焔華「逐一、連絡を入れるように。では、よろしく頼むよ。」
焔華はそのまま部室を後にする。
「外」…天の神を撃退し、神樹が消えたその日に姿を現した本当の世界。
そこに何があるのか、当時の大災害の爪痕はそのままなのか…全ては明日に知る事になる。
そして、翌日…大橋にて。
捜索隊として、一同が集まる。神官達が安全祈願を願って、祈りを捧げる。
烈火「ふわぁあ…痛てッ!。」
夏凛「欠伸しないのッ!。いよいよ、「外」の探索よ…この目でしっかりと見ましょう。バーテックスが現れた「あの日」から時間が止まった世界を。」
東郷「それにしても…何で貴方まで付いてくるの?。」
蒼葉「前から興味があったからな、ようやく「外」に出れる…この目で見たいものがたくさんあるんだ。だから…胸が躍る思いだ。」
烈火「俺はさっさと終わらせてカツ丼食いてェな…。」
友奈「アハハ、なら良い報告ができるように成果を出してから美味しいものを食べよう?。」
一同はそれぞれの戦闘装束を纏い、大橋を抜けて本州入りをする。
まず、目に飛び込んできたのは荒れ果てた世界。
建物は崩れ、民家は朽ちており、雑草が生い茂った道路などまさに人類が消えた後の地球の姿を連想させるものだった。
そして、動物も居ない静寂な世界があたり一面に広がっていた。
街の広場なのだろう、大きな時計の時間は止まっており、日付は「7月30日」と書かれている。
蒼葉「…7.30天災…資料通りだ。街の時刻もその時間で止まっている。」
蒼葉は辺りを散策しながら、歩いていく。
友奈「なんか…とても、寂しい感じだね…。」
夏凛「ええ…もしあの時、バーテックスが現れなければ300年後の今の世界はどうなってたのかしら…。」
蒼葉「文明レベルも西暦時代で止まっているからな。今とそう変わらない技術構成だ。」
烈火は落ちていた本を手に取る。
烈火「…日記…か…。」
7月30日 晴れ。
・今日は海に行く日。うまく泳げると良いな…明日はバーベキュー。みんなで食べるご飯は美味しいからとても楽しみだ。
小学生が書いたのだろう、そんな文面を見て烈火は静かに閉じる。
烈火(…酷ェな…明日が楽しみだったろうな…。)
夏凛「烈火?。」
烈火「いんや、何でもねェ。にしても…本当にこんな環境で生存圏なんて広げられんのかよ?。どこを見ても瓦礫の山とボーボーの草ばっかだぜ?。」
樹「確かに…少なくとも、私たちが大人になる頃でもまだ復旧はしなさそうですね?。」
東郷「…とても、300年後の景色とは思えないわね。まるで、時が止まったかのように、崩れていても保存状態は割と綺麗なままよ?。」
烈火「確かに…日記もまだ読めるし…ん?。」
烈火は、落ちていたカバンを手に取って一枚の紙に目が入る。そこには…。
「四国」に逃げろ、あそこには「勇者様」がいる。
と、書かれていた。
蒼葉「…この言葉は、当時の流行り言葉でもあったらしい。300年前の遠い祖先…「初代勇者」の事だな。」
友奈「初代…勇者…。」
東郷「…文献によると、全部で「4人」。そのうちの1人がそのっちのご先祖様よ。」
蒼葉(いや…正しくは「5人」だ。そのうちの1人は……。)
友奈(高嶋さん…。)
友奈は祟りに侵されていた時のことを思い出す。
「高嶋友奈」。
自分と瓜二つの少女で、「友奈」の名前の由来になった人。
精神世界と言って良いのか、一度だけ出会ったことがある。
蒼葉「初代勇者も、荒廃したこの世界の探索に出たと聞いている。その目的は「諏訪」だったらしいが…。」
烈火「…どこか全然わかんねぇッ!。」
東郷「…咲良君、貴方が手の内を見せたくないのはわかったわ、もう諦める事にする。だけど…。」
鋭い目付きで、蒼葉を見る。
東郷「貴方が原因で全員に危害が加わるようなことがあれば…私は鬼になるわ。その時は痛めつけてでも聞かせてもらう、貴方の「正体」を。」
蒼葉はその言葉に、返答をしない。
東郷もそれ以上は踏み込まないのか、追求せずに先を進む一同に続く。
蒼葉は一同の背中を見て、そっと呟くように。
蒼葉「…安心しろ、俺は…「味方」だ。だが今は…全てを話すわけにはいかない。この世界にあるはずなんだ…「可能性世界」が歩んでしまった「分岐点」が。そして…。」
蒼葉は友奈を見る。
蒼葉「「こっち側」の結城友奈…「あっち側」の結城友奈と同じ末路を辿らせるわけには行かない。それは紛れもなく…「あの人」の願いだからな。俺はそれを…叶えてみせる。」
誰にも聞こえない声で胸の内に秘めている決意を口にし、一同に続く。
そして、調査圏内の地点「兵庫」にたどり着く一同。
そこでも、初代勇者の「軌跡」を見る。
戦闘の痕跡…明らかに兵器ではないもの。
道路に刻まれた刀傷に、拳を打ちつけたようなクレーター。
激しい戦闘だったのだろう、港町にも関わらずに荒れている。
焼けこげた船がそれをさらに物語っていた。
だがそれと同時に、興味深いものがあった。
当時の戦闘を記録した文面…新聞記者なのか、事細かくに文字が記載された手帳を烈火が拾い上げる。
烈火「おい、初代勇者がこっちにきた時は生き残りがいたのか?。」
夏凛「そんな事はないはずよ、だって初代勇者が誕生したのは…本州を含めた世界が滅んだ後の話だったはず…仮に生き残りが居たとしても、その人を連れてその「諏訪」という場所には行かないはずよ?。」
聞かされた歴史と矛盾する手帳の文面。
読み上げていくとそこに書かれていた「最後の文面」に戦闘を行っていた者の正体が記載されていた。そこに書かれていたのは…。
烈火「…伝説の戦士…?。」
プリキュア…と。
…………end。
焔華からの依頼で大橋を超えて「外」の世界にたどり着いた一同。
その数々で、当時の出来事を体感しつつも初代勇者の痕跡も旅路の中で垣間見る。
そして、最終調査地点へとやってきた一同が拾った手帳には「勇者」ではない者の戦士の名前が書かれていた。
伝説の戦士、プリキュア。
勇者御記にも文献にもない戦士の名前がそこにはあった…。
次回
第15話 並行世界の痕跡、プリキュアという名の戦士。