〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
焔華の依頼により、「外」の探索に出た勇者一同。
西暦時代から時を止めたその世界は、とても静寂で当時の惨状がそのまま保存されていた。
動物も何もいない世界…ただ、植物だけは力強く生きており、まるで地球原初の姿とも連想できるほど神秘的だった。
その中で、「初代勇者」に関する痕跡が訪れた地域で拡散されており、先祖の偉大性を再確認した一同。
しかし、拾った手帳に気になる名称が…。
「プリキュア」。
この名称は一体、何を指すのか…。
~「外」の世界・「兵庫」地域~
烈火「伝説の戦士…プリキュア?。なんだそれ?。」
この手帳の落とし主は新聞記者なのか…明確に纏められた文字の中にその名称が記載されていた。
聞いた事の無い名前…まさか、当時は勇者とは違う戦士がいたのか?。
あの天災で人類を救うために命を賭した者がいるのなら、伝承として語られていたはず。
しかし、教養の中でも聞いたことが無ければ大赦が保管する「勇者御記」の中にもその名前が入った書物は見たことが無い。
全員が、驚きと謎を示す一方、蒼葉だけは顔色を変えていた。
蒼葉(プリキュアだと!?。間違いない…西暦時代のあの天災の日にこの世界は一度、「並行世界と繋がった」ことになる!!。だとすれば…「もう一つの世界線」の真理はやはり、この世界からの「可能性」が生み出した世界線なのかもしれない…!。)
考えこむ蒼葉。
樹が心配そうに顔を覗く。
樹「あの…大丈夫ですか?。気分、悪くしちゃいました?。」
蒼葉「いや…大丈夫だ、知らないことをたくさん知れて、情報が処理しきれていないだけだよ。」
樹「ならいいんですけど…無理はしないでくださいね?。蒼葉さん、生身の人ですから…。」
蒼葉「ありがとう、何かあればお言葉に甘えるさ。」
友奈「…でも、もしそうなら何で…この戦士の事は知らされていなかったんだろう…勇者と同じで命を懸けて人を助けてくれたなら、伝承として伝えられても良かったと思うんだ。だって、勇者が誕生する前にバーテックスから守ってくれたなら…。」
蒼葉「落ち着け結城。恐らくだがこの地域の人…いや、この手帳の持ち主は四国入り出来なかったのかもしれない。この手帳がそれを物語っている。そしてその戦士ももしかしたら…。」
烈火「聞けば聞くほどそのバーテックスって奴らはヤバかったという事か…。」
烈火は目の前の惨状を見て、当時の様子を思い浮かべる。
バーテックス…いや、その眷属である「星屑」とは戦った。
あの無限に湧いてくる様子は今思えば、とても恐ろしかった。
それが、日本中…いや、全世界に突如として現れたのだ。
どんなに恐ろしかったことだろうか、それが人類を蹂躙し、目の前で捕食されているのだ。
当時、空を見ることに恐怖心を抱く精神疾患の事を聞いたことがある。
「天空恐怖症」という、今は全く発症事例の無い精神病。
名前から察するに、無限にも近いあの化け物が空を覆っていたと考えると力の無い人たちはどんなに怖かった事だろうか。
イメージだが、烈火はその様子を想像していた。
すると、自然と拳に力が入る。
そんな烈火を見た友奈と夏凛が心配そうに。
友奈「どうしたの、烈火君?。」
夏凛「ボーっとして、らしくないわよ?。」
烈火「ああ、当時の事をちょっと考えてな?。ほら、ここに来る前にいろいろと見ただろ?。ひでェもんだなって。」
夏凛「へェ…あんたでもそんなこと考えるんだ?。」
烈火「どういう意味だよッ!?。」
夏凛「ごめんごめん、でも思うよね?。「あの時、自分がここにいて勇者だったら…全部は無理でも誰かは助けられたんじゃないか」って。」
夏凛は自分の手の平を見る。
夏凛「きっと、そのプリキュアって戦士も同じだったと思う。全部は無理でも誰かを助けたくて命を懸けたんだと思う。でもその結果、無理だったとしても最期まで力の無い人を助けるために戦えたなら…。」
―後悔は無いと思う―
顔も知らない、そして遠い時間の向こう側にいた志を共にしたであろう戦士を思いながら、夏凛は自分の思いを告げる。
そしてそれから、あたりを探索する一同。
「プリキュア」に関する情報はその手帳しかなく、それ以上の成果は見込めなかった。
西暦時代…人類がもっとも繁栄したであろう、その時代は天からの災害によって淘汰され、滅びを迎えた。
その痕跡が見られたことが大きな収穫にもなり、そして、木々が成長し続ける環境は人類が生存できる可能性が大きい事が分かる。
しかし、本当にそれでいいのか?。
人類はまた、同じ過ちを繰り返して天からの災害が再来するのではないか。
その根源である「天の神」は人類のそうした一面に失望し、粛清として天災を引き起こしたとされる。
天の神はまだ健在だ、「人」として生きる道を選択した今の時代の人間たちの動きを観察している。
その気になれば、またあの長い戦いが始まるかもしれない…。
焔華はあの黒い星屑達は「天の神」が関与しているバーテックスでは無いと言っていた。
だとすれば、あれは何なのか…そして今、この世界で何が起ころうとしているのか。
深まる謎の溝は埋まらず、今回は「7.30天災」に関する情報のみを持って帰る事にした。
その帰り道の道中…。
東郷「!!。9時の方向、来るわ!!。」
東郷が指を刺した方向。
そこには、大量の黒い星屑達が飛来してくる。
夏凛「こいつらまで「外」に出て来てんのッッ!?。」
蒼葉(黒い星屑…なるほどな…。)
黒い星屑を見る蒼葉。そのタイプにどうやら見覚えがあるらしい。
しかし、冷静に見極めて一同の背後に回り込む。
蒼葉「あの黒いタイプは「怨念」が渦巻いている。」
樹「お…怨念ッッ!?。」
蒼葉「負のエネルギーに侵された星屑…とでも言えば分かるか?。」
その時、一同の持つ端末から焔華の声が出る。
焔華(こちら、菱咲焔華だ。お前…あのタイプについて何故知っている?。これは大赦にしかわかっていない情報だ。)
烈火「あぁッッ!?。何だ、大赦はこの化け物の事知ってんのかよ!。」
焔華(「検体」の一体を調べてみれば、体組織の殆どがバーテックスと同様…だが、決定的に違うのはその攻撃性だ。「怨嗟の星屑」と我々は呼称している。)
友奈「怨嗟の…星屑…!?。」
焔華(「外」は死者の魂が彷徨っているとも言われている。その無念が取り憑いていると言えば分かるだろう、あれは神の制御も効かない凶暴種…そして、それが融合して現れるのが…「シン(罪)・バーテックス。」)
無数の怨嗟の星屑が融合。その形状を変化させる。
焔華(…厄介だな…「蠍座」の方か…!。)
融合して変えた形状の中から蠍座型のシン・バーテックス「シン・スコーピオン」が現れる。
全身が真っ黒になり、禍々しい模様。
三又状の尾針と巨大なハサミを携えて一同に襲い掛かる。
烈火「なんだコイツ!?。速すぎるッ!?。」
見た目に反して、スピードのあるシン・スコーピオンは尾針を振り上げ、毒液を発射。
間一髪、避ける烈火だがその箇所は溶け出し、毒が地面に広がっていく。
烈火「やっべェ!?。あんなの受けたらおじゃんだぞ!!。」
蒼葉「烈火、あの機動力に惑わされるな。尾針の一撃さえ食らわなければ死ぬことは無い。確率は5割だ。」
烈火「5割ですぐ死ぬじゃねェかッ!!。」
夏凛「あんた達!。漫才をしている場合じゃないでしょッ!?。」
夏凛は的確に相手の動作を見極め、左の刀でハサミの部分に刃を入れる。
夏凛(刃が通らない…やっぱ、硬いか!!。)
すかさず回避。構え直して相手を見据える。
蒼葉「あの機動力に備え、防御性も完璧とは…それに加えて一撃必殺の猛毒…なるほどな、確実に殺すためだけに特化しているようだ。」
東郷「これだと、銃弾も通らないわね…どうする…!?。」
蒼葉「状況は詰んじゃいない。こちらには幸い、犬吠埼がいる。」
樹「え、私ですか!?。」
蒼葉「ああ、そのワイヤーは奴にとっては切り札となる。あの機敏な動きを封じ、ついでにあの尾も封じ込める…これほど便利な武器は無い。」
友奈「でも、硬すぎてダメージが通らないよ!?。」
蒼葉「奴は強力すぎる毒を持っている。だから…自滅させる方が早い。あの尾針には毒が染みついている…それも岩を溶かし、地面を毒化させるほどのな。奴を殺すには奴自身で死んでもらえばいい。犬吠埼、ワイヤーで動きを阻害しつつ、尾の制御を取れ。それを奴に叩きこむ。」
樹「そ…そんな難しいこと出来るか分かりません…。」
蒼葉「大丈夫だ、自分を信じろ。そのポイントは俺が指示を出す。そうすれば、この作戦の成功率が上がる。」
友奈「だったら私達は…!。」
夏凛「樹の援護ってわけねッ!。」
二人は駆け出しいき、樹の攻勢に邪魔が入らない様に立ち回る。
樹「わ…私…。」
蒼葉「大丈夫だ、必ず成功する。お前なら出来る。」
隣に立ち、樹をリラックスさせる蒼葉。
樹(…蒼葉さんは生身で前に立ってる…それに、みんなも私の為に…お姉ちゃんが居なくてもやらなきゃ…私が…!。)
意を決した樹は、準備に入る。
友奈と夏凛の猛攻を振り切ったシン・スコーピオンは樹に向かってハサミを振りかざす。
先手を取られ、集中力が切れる樹。しかし、蒼葉は動かない。
烈火「おいおい、俺を無視してんじゃねェよ!!。見てねェとぶん殴られるぞッ!?。」
振りかざされたハサミを、メイスで弾き飛ばして攻撃を防ぐ。
蒼葉「さすがだな、わかってたよ。」
烈火「良く言うぜ、避ける気が無かった癖によッ!。」
しかし、シン・スコーピオンは烈火の頭上に尾針を向けてくる。
東郷「油断しすぎよ、菱咲君。」
的確な狙撃により、攻撃を弾いた東郷。
烈火は体制を整える。
蒼葉「今だ、左側に隙がある!。そこから縛り上げろ!。」
左のハサミに指を向ける蒼葉。樹はそれに従ってワイヤーを放つ。
抵抗しようとするシン・スコーピオン。
しかし、友奈が強烈な打撃を加えて阻害する。
左側から瞬く間に、ワイヤーを巡らせて腕を動かし制御する樹。
シン・スコーピオンの節々に絡んでいくワイヤーは、機動力を阻害していき、奪っていく。
続いて、尾の拘束へと切り替えていく樹。
シン・スコーピオンもやられまいと、毒液を空に放って霧状に噴射。
危機を感じた烈火が、メイスによるスイングで風を起こすも全てが打ち払えない。
東郷「…これしかないッ!。」
狙撃銃による、ピンポイント射撃で朽ちたビルの脆い部分を撃ち抜く。
東郷「友奈ちゃん!。崩れた建物を掴んで盾にして!!。」
友奈「分かった!!。」
意図を察した友奈は、落ちてくる大きな破片を掴み、持ち上げて一同の頭上に移動。
毒の霧は瓦礫によって防がれ、一同は毒の脅威を回避した。
烈火「あっぶねェ!!。」
蒼葉「チェックメイトだ、そのまま尾をコントロールして奴の背中に刺せッ!!。」
樹「ああああああああああ!!!!。」
全体重を乗せ、尾に絡ませたワイヤーを手繰り寄せる。
そして、尾は見事にシン・スコーピオンの背中に突き刺さった。
悶え苦しむシン・スコーピオン。
溶解性のある毒性が徐々に浸透し、溶かしながらシン・スコーピオンは絶命。
蒼葉が指示を下した箇所は「御霊」の位置であり、文字通り「自分の毒」で自滅する形になった。
樹「はぁ…はぁ…やりました…私、やれました!!。」
友奈「やったやった!。すごいよ樹ちゃん!!。」
蒼葉「よくやった、お前が居なければ詰んでいたところだ。」
樹「は…はいッ!。」
褒められたことに、思わず頬を赤らめる樹。
焔華(状況終了。よし、すぐに帰還しろ。第二波が来るかもしれん。)
焔華の指示に従い、四国への帰還を目指す一同。
そして、この瞬間に樹は胸に感じた。
蒼葉に対しての「胸の高鳴り」を。
………end。
「外」の調査を終えた一同。
その収穫は「並行世界」への痕跡であるが、その実態を知るのは蒼葉と焔華のみとなった。
「プリキュア」。
この単語が決定付ける「並行世界」の存在。
そして、動き出す大赦…いや…海祇機関の「計画」。
いよいよ、この世界に起こる巨大な「事件」の幕開けがすぐ近くにまで迫っていた…。
次回
第16話 崩れ行く世界の壁。