〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
海祇機関の真の目的…それは、並行世界への扉を開くことだった。
菱咲焔華…いや、郡千景はこの世界に対して復讐を始める。
そう…愛してくれなかったこの世界に。
勇者を道具として使っているこの世界に。
そんな現実を突きつけられた勇者部の者は何を思い、行動するのか…。
それは、ソラシド市でも同様の現象が起きていた。
互いの世界の空に浮かぶ互いの世界の光景。
二つの世界に、選択の時が来た…。
〜大橋、慰霊碑〜
風「ここまで来たら…流石に大丈夫でしょ…。」
冷や汗を掻きながら、風は変身を解く。
まだ治っていないのだろう、明らかに痛みで顔を歪ませていた。
樹は風に駆け寄り、心配する。
樹「無理しちゃダメだよ、お姉ちゃんッ!。」
風「あはは…こういう時ぐらいは無茶しないと部長としての面目が立たないでしょ…部員を守るのが部長の役目なんだから…いっ…!。」
烈火は、何も言わずに海の方向を見る。
蒼葉「烈火…。」
友奈「大丈夫…?。その…お姉さんの事…。」
烈火「…わかんねぇな。元々、そこまで仲が良かったわけじゃねェ。でも、嫌いでも無かった。それが何だ…俺の姉貴は初代勇者だって事か?。訳わかんねェよ、全く…。」
珍しく、元気が無い烈火。
いつも、物思いに耽る事のない彼が見せたこの表情。
一同は、何も言えなかった。だが…。
烈火「もういいや、とりあえず…姉貴ぶん殴ってこんな馬鹿な事をやめさせるか!。」
夏凛「あんた…無理しないで…。」
烈火「しんみりモードはもう終わったよ、もういつもの俺だ。頭ん中整理してたらもう吹っ切れたよ。心配すんな、いつも適当な菱咲烈火さんそのものさ。」
烈火は風と樹を見る。
烈火(あんな風に俺と姉貴の仲が良かったら少しは気付いてたのかな…馬鹿野郎が…壮大な考えでみんなに迷惑かけやがって…!。)
友奈「1人で背負い込まないでね?。」
烈火「おう、大丈夫だっ!。どっちみち助けてもらわねェと俺、何にも出来ねェからな!!。」
蒼葉「その前向きさに助けられるよ。それよりも先輩…よく、俺達の窮地がわかったな?。」
風「…実は、病院に大赦を名乗る人達がズカズカと入って来てるのが分かってね。神官じゃない時点で嫌な予感がしてたのよ。もしかしたらって、私の勘がそう言ってね。」
東郷「!?。…見て、空が歪んで…何あれ…!?。」
驚く東郷。
続いて見た一同も空の異変に言葉を失う。
烈火「なんだありゃ!?。空の中に…街がある…!?。」
蒼葉(…並行世界…あの場所は一体…!?。)
…………。
その一方、ソラシド市では…。
「劇団」との戦いで、重傷を負ったましろ。
未だに意識が戻らず、予断を許さない状況だった。
もう数日は目を覚ましていない、一時は危ないとまで言われていた。
ソラは何日も眠れていない。そんな中、鷹夜は徐ろに空を見る。
そして、勇者部の面々と同じ反応をする。
鷹夜「おい…空が変だぞッッ!?。何なんだこれはッ!?。」
フレア「次元境界線の歪みか!。愚かな、誰かがこれを引き起こしている…!!。」
映る港町…大橋……それを見た園子は、手に持っていた飲み物を落とす。
園子「…四国…私のいた、世界……。」
洸「何だって…!?。」
ソラ「あれが園子さんの世界!?。一体、何が……。」
街もパニックとなっており、サイレンが鳴り響く。
あげは「これ……ヤバいやつなんじゃ…。」
ツバサ「…はい、きっと…よくない事が起ころうとしてます…。」
園子「…みんな…!!。」
変身した園子は、空に飛ぼうとする。
しかし、洸が園子の手を掴んで制止する。
園子「離して洸ッ!!。きっと、向こうも同じことになってるはずッ!!。」
洸「心配なのは分かるけどなッ!?。落ち着けって、必ず戻れる保証もねェだろッ!!。次元境界線を越える事は簡単じゃねェんだぞッ!?。お前自身が無事じゃねぇかもしれねェ!!。確実に越える方法を探さねェと、行かせる訳にはいかねェ!!。頼む、俺の言うことを聞いてくれッッ!!。」
園子「ッ……!?。」
洸の必死な説得により、変身を解く園子。
園子「ねェ洸…どうなっちゃうのかな…これ…私…私…ッ…。」
珍しく、取り乱す園子。
洸は何も言えず、ずっと空を見つめる。
鷹夜(世界は…どうなっちまうんだ……?。)
……………。
〜大赦、海祇機関〜
千景「…第一段階は成功ね…壁を壊すのは正直、賭けだったけど。ねぇ、さっきからずっと後ろにいるけど…気付いてるわよ。」
千景は、椅子に座りながら背後に立つ者に声をかける。
影からゆっくりと現れる者…それは「劇団」のアデルだった。
アデル「これはこれは…気配を殺していたのにも関わらず、流石です。初代勇者の…郡千景さん?。」
千景「そう言う貴方は何者?。フフ、この間現れた大男と知り合いなのかもしれないけど。」
アデル「その節は失礼致しました、彼は我が「劇団」のメンバーでして…無礼を働いたならば、私の方から叱責しておきます。」
千景「いいわ、私が作った<擬似勇者外装>のデータ収集に貢献してくれたんだもの…感謝はしているわね。それで…。」
千景は、鋭い眼差しでアデルを睨む。
千景「貴方は、何の用かしら?。」
アデル「千景さん、この事態は貴女が引き起こしたのですか?。とても、面白いことをなさる。まさか…我々以外に自力で次元境界線の壁に穴を開けるなんて…。」
千景「…と言う事は、並行世界からやってきたと言うわけね。」
アデル「はい、こことはそうですね…まぁ、混沌とした世界からです。」
千景「本題を言いなさい、貴方のようなタイプは前置きが長すぎる。」
アデル「失礼致しました、では…我々と手を組みませんか?。」
協定を提案するアデル。
千景は少し、不審そうな顔をする。
千景「メリットはあるの?。」
アデル「お互いにね、我々は「舞台」を完成させることが目的…そして、貴女はこの世界に対して、復讐したい…だから、お互いにそのお手伝いと言う名目で手を組むのです。戦力の提供ですね。」
千景(…私のことを調べているか…抜け目がないわね、全く…。)
アデル「どうでしょう、敵対する意味もない…そして、お互いの計画に対して障害が出ることでしょう。…勇者とプリキュア、これらは必ず阻みに来るはず…敵は共通です。」
アデルの提案に、千景は……。
千景「……いいでしょう、貴方の提案を飲ませていただくわ。手を組みましょう、お互いに利用しあうまで。」
アデル「そうですか!。いや〜、ありがたい!。この世界は謎が多すぎて、我々では手を焼いていたのですよ。助かります、では……。」
一礼し、去っていくアデル。
千景は得体の知れないアデルに少し警戒しつつも、その提案を飲んだ。
復讐さえできれば、何でもいい。
今の彼女は「怨嗟の塊」。いわば、強すぎる恨みが形となった存在。
この世界は、腐っている。
自分たちの命を守ってくれているのが勇者だ、しかし勇者とて人間。
出来ないこともあるし、守りきれないものもある。
それを、実害が出ると責任を押し付けてくる。
そんな者達に命を賭ける価値はあるのか?。以前は「切り札」の影響で精神状態が不安定となっていた。
しかし、今なら分かる。
あれは、本音だった。
副作用でも何でもない。
大赦もそうだ、神格化してくる癖にいざとなれば頭を下げて救済を求めてくる。
使えないと判断したら、支援も断つ。
大人達は勝手だ、助かりたい一心で力ある者に擦り寄ってくる。
だから、決めたのだ。
この世界に対しての復讐を、必要とされなかったのなら…今度は自分たちがこの世界の人間達を必要としなければいい。
幼稚な考えかも知れない、しかし千景は決めた。
「菱咲焔華」として、大赦で働き、長年においてこの計画を立てて来た。
あの時は転生していたなんて、思いもしなかった。完全に「菱咲焔華」として生きていたのだから。
しかし、天に昇華した自分の魂が現代の勇者達に力を貸したあの時…「恨み」の部分である自分が覚醒した。
「郡千景」という人間だったこと…最後まで残ってしまっていた「怨嗟」。
それらを抱えて、現代に転生したのなら…やる事は決まっている。
愛されなかった世界への復讐を…勇者を利用して来た人間達への粛清を。
超常的な、そして絶対的な力を手にして確実に遂行する。
何が来ても、逆らえないように…。
この計画は完璧だ、並行世界へと干渉できる力は神樹を超えて、更には天の神さえも越えることができる。
バーテックス以上の脅威となれば、この世界はもはや太刀打ち出来ない。
千景はそう思って、この計画を実行した。
そして、壁を壊した先にいるのは「プリキュア」。
勇者と同じく、守護のために戦う彼女。
今度は、彼女達を引き入れよう。
自分達と同じ思いをしなくて済むように…と…。
千景(もうこの道を突き進む、私は後戻りはしない…壁を壊した今なら、私はあっちの世界にもいける…会いに行きましょう…。)
千景はゆっくりと、立ち上がる。
その手には、<擬似勇者外装>の機能を備えた端末を手にして。
千景「プリキュアに。」
……………。
それから数日後、ソラシド市では…。
アデル「海祇機関の協力を得た今、我々の「舞台」も加速していくことでしょう。」
ナイアル「当初の「主役」であるソラ・ハレワタールの闇を解放することに失敗した影響で作り直しとなっているのだ。アデル、今度こそは大丈夫なのだろうな?。」
アデル「何をおっしゃいますか、貴方がその「代役」を用意してくれていたのでしょう?。」
ナイアル「…僕は抜かりないのでね。僕の判断でそうさせてもらったまでだよ。」
アデル「いえいえ…その判断は正しい…何故なら、「彼女」の闇の華はもう…咲く寸前です…!。」
不敵な笑みを浮かべるアデル。
その視線の先は…ましろが入院している病院。
翌日、虹ヶ丘邸ではましろを除いたメンバーが揃っており、この空の異常は未だに改善されていなかった。
園子は相変わらず、元気が無い。
ましろのこともあってか、ソラも彼女に掛ける言葉無くて自分の殻に閉じこもっている。
園子には、洸が寄り添っていた。
気が合うのか、違う世界の人間同士と言う共通点もある。
その気持ちに共感できる洸は、園子の気持ちも理解していた。
園子のことは、洸に任せよう。
鷹夜はそう思っていた。
エル「えるぅ……。」
あげはに抱かれながら、園子を心配そうに見つめるエル。
いつも、相手をしてくれていたから元気のない彼女のことが心配なのだろう、エルは不安な声をあげる。
ツバサ「大丈夫ですよ、プリンセス。きっと、いつもの園子さんに戻ってくれますから…。」
そんな中、異常な空から一筋の光が走る。
何だ…と思ってみる一同はその光がこちらに向かって来ているのがわかった。
そして、その光は一同の目の前に落ちる。
眩い光に、思わず眼を閉じる。そして、現れたのは……。
「…こんにちは、そして初めまして…プリキュアの皆さん?。」
ゆっくりと歩み寄る女性。
園子は、驚愕した表情をする。
「…何度見ても、あの人にそっくりね?。それもそうか、貴女は乃木さんの子孫だもの…ねぇ、乃木園子?。」
園子「あ…貴女は……!。」
郡千景…海祇機関のリーダー…そして、この惨状を引き起こした張本人。
千景「迎えに来たわ、プリキュア。私と共に行きましょう?。」
ーーー貴女達が、勇者の辿った道を歩まないようにーーー
………end。
千景の計画が発動し、未曾有の事態に見舞われたお互いの世界。
ソラシド市と四国…この二つの世界はどうなってしまうのか…。
そして、プリキュアを引き込もうとソラ達の前に現れた千景。
貴女達が、勇者の辿った道を歩まないように…。
この言葉の意味が何を指すのかわからないが、次々と起こる出来事に不安に駆られる一同が出す答えとは…。
次回
第18話 プリキュアVS初代勇者・郡千景。