〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
「海祇機関」リーダー・郡千景と戦闘を繰り広げたプリキュア達。
その結果は、撃退とまではいかないが何とかその窮地を乗り切った。
しかし、敵は増えていく一方…空の異常は相変わらずだ。
そんな中、勇者という繋がりで他人事とは思えない園子は悩む。
この世界で知り合った友達の為に…そして、元いた世界の友達の為に…
千景の襲来から、翌日……。
この異常事態に、ソラシド市全体で避難勧告が出されている。
きっと、避難しても今はない。
人々はそう感じつつも、何かに縋りたいのか素直に従う。
誰だって、こんな異常を見て平常心を保てる訳がない。
救いなのは、混乱しなかった事。
それでも、街を捨てきれない人は残る事を決意している。
ソラ達もまた、この事態をどうにかしようと思考を巡らせる。
スカイランドに行って、方法を詮索するか?。
いや、ましろの祖母で、スカイランドの天才科学者であるヨヨでもこの状況が理解出来ていない。
そんな偉人でも、八方塞がりなのだ…だから、いくら思考を巡らせても好転できる術が全く思い浮かばない。
やはり、鍵となるのはこの事態を引き起こした張本人である千景。
この混乱に乗じて、「劇団」が仕掛けてくる可能性もある。
手を組んでいるのだ、彼らの謎の目的も進んでしまうかも知れない。
一同はそう思いつつも、絶望はしないと決めていた。
折れてしまうと、そこで終わってしまうから……そう思って。
そんな中、園子は悩み続けていた。
初代勇者が自分達の前に立ちはだかってきた…それも、自分の祖先との交流があった人物だ。
敵対したくない…だが、その選択を取るとみんなの安全が脅かされる。
珍しく、彼女は悩む。
どの答えが、適切なのか…ずっと考え続けていた。
ソラ「園子さん…元気がありませんね…。」
あげは「無理も無いよ、だって自分の世界との関わりなんだから…責任も少し、感じているのでしょう?。」
ツバサ「で…でも、あの人が背負う事じゃ…!。」
あげは「分かってるよ、少年。だから、今は悩ませてあげたほうがいいと思うよ。あたし達が何か言ったところで、混乱させたくないしね?。」
鷹夜「…そうだな…。」
庭の椅子に座り、景色を見ていた園子をそっと見守る一同。
しかし、洸は普通に接する。
洸「なーにしんみりしてんだお前。らしくねェぞ?。」
園子「あっ…洸〜…そうだね〜…考える事が多くて…。」
向かい側に座る洸。
いつもなら、明かりがたくさんついていて綺麗な景色の夜景だがこんな異常時で、ましてや避難勧告が出ているのだ。
明かりはごく僅かで、真っ暗なその景色は不安をさらに掻き立ててしまう。
フレアは洸の頭の上で丸くなって寝ている。
洸「…この間の勇者の事か…。」
核心を突いたように、洸はそう言う。
園子「まぁね?。それもあるけどやっぱり…向こうが心配っていうのが正直かな?。それに…あの人、私のご先祖様の仲間だった人なんだ。」
洸「…ご先祖?。」
園子「うん、家の書庫にね?ご先祖様の手記があるの。そこに書いてあった…限りなく大事な仲間で、友達だ。でも、守れなかった…っと。」
洸「…お前は、どうしたいんだ?。」
園子「わかんないかな。何とかして、こんな事をやめさせたいよ?。出来るなら、戦いたくない。だけど、その選択を選んでしまうと…ソーちゃん達もそうだし、向こうの友達も巻き込んでしまう。それに、こんな事を引き起こした張本人だ…私のご先祖様はね、とても強かった人。どんな絶望を前にしても、信念だけは決して曲げなかった。仲間がどんどん倒れていく中、最期の1人になっても…終わりの無い戦いだと分かったとしても…未来に託して、バトンを繋げた人。私は…その人のようにならないといけないのかも知れない…だから、悩んでるんだ〜?。遠い祖先の友達が、こんな事をしてしまってる。だから、子孫である私がその役目を引き継がないといけないのかなって。」
洸「そっか…お前なりに、考えてんだな?。てっきり、いつものほほんとしてるから意外だったよ。」
園子「ん〜?。ちょっと、酷いね〜?。それ、私じゃなかったら叩かれてるよ〜?。」
洸「はは、違いねェな?。けど…思ったわ。お前、そのご先祖のようになる必要はねェよ。」
園子「…どうして…?。」
洸「どう足掻いたって、なれるわけがねェ。きっと、そのご先祖はそれが自分の立ち位置だって理解してたんだろ。だから、その信念の元で動いてた。信念ってのはな、伝染しねェんだ。自分だけが持つ気持ち。だから、その心のままに動けば良い、それが自分の信念になる。」
園子「私自身の…気持ち…?。」
洸「そうさ、俺もな…復讐の為に戦ってる。だから、あの千景って奴の気持ちはわからなくもねェ。でも…それでもやっぱり、誰かを巻き込んでまで貫く信念は信念じゃねェ。ただの迷惑だ。」
洸は頭で眠るフレアに気遣いながら、椅子の背もたれに背を預ける。
洸「力を手にすると、人間ってのは欲を張っちまうのさ。俺がそうだった、こんな力を手にしなければきっと復讐したくても出来ねェはずだ。園子、お前は何のために今を乗り越えてェんだ?。」
園子「私は……。」
園子は、この世界で知り合ったソラ達、そして四国に居る友奈達の顔を思い浮かべる。
どちらも守りたい大切な友達…二つの世界で出来た、かけがえの無い友達。
きっと、全部は守れない。それは自分がよく知っているから。
だから、悩む。
今ある自分の力が、この巨大な厄介ごとに対して大切な人たちを守り通す事が出来るのか…と。
言葉を失う園子に…。
洸「自分の気持ちには欲張りになれよ?。悩むことは人だけが持つ特権だ、悪い事じゃねェ。悩んだ先に、答えを見つけりゃいいさ。」
園子「洸は…どうするの?。」
洸「俺は、この事態にぶつかっていくさ。「劇団」の奴らがそこにいるのなら、この先の道を進む理由がある。それだけで十分だ、だから突き進む。どんな障害があってもだ。」
洸は立ち上がり、椅子を元に戻す。
洸「園子、お前はお前だ。だから、先祖の気持ちを汲まなくてもいい。きっとそれは…お前の先祖だって思ってるだろうさ。今を生きるお前が後悔のねェ選択をすりゃいい。それじゃ、おやすみ。」
寝室へと向かっていく洸。
園子はしばらく、そこに居た。
でも何故だろうか、答えは出ていないにも関わらず気持ちは少し…ほんの少しだけだが……。
…楽になった…。
そして翌朝…騒ぎは園子の端末から始まった。
園子「樹海化警報…?。なんで、ここには樹海は広がらないのに…。」
けたたましい音と共に、周囲の空から異形が姿を現す。
空を食い破って出てくる化け物…バーテックスだ。
園子「大変だ、バーテックスがここにまでッ!?。」
慌てて起きた園子は、外に駆け出して行く。
現れたバーテックスは黒い星屑…怨嗟の星屑達。
そして、それらが一挙に集まって融合し始める。
この感覚は知っている…大物が出てくる。
そこへ、ソラ達が慌ててやってくる。
ソラ「な…何ですかあれはッ!?。」
園子「バーテックスだよ、私たちの世界を一度滅ぼした怪物ッ!。ソーちゃん達は街の人をできるだけ多く逃して!?。」
鷹夜「お前はどうすんだよッ!?。」
園子「私はあの合体しようとしている大型を倒すよ〜?。大丈夫、何度も戦ってきた相手だし…私の方が適任だから…。」
勇者装束を纏い、飛び出す園子。
ソラ達は園子の言いつけ通り、変身して街へと向かう。
やがて、集まった怨嗟の星屑は合体して牡牛座のシン・バーテックス「シン・サジタリウス」へと進化する。
園子「…やっぱり、世界が繋がった影響でここにまでバーテックスが来るなんてね〜…樹海化警報も、向こうの電波を拾ってるのかな…まぁ良いや、とりあえずコイツを倒さないと…!!。」
槍を構える園子、先手を打ってきたのはシン・サジタリウス。
無数の針を放ち、ミサイルのように誘導する。
園子「おっかしいな…針はわかってたけど誘導なんて能力はついてなかったと思うんだけどな…!。」
槍を展開させて防御しながら接近。
届く距離まで近付いて、遠隔操作で分離した槍を自在に操る。
槍の直撃を受けて、シン・サジタリウスは地面に叩きつけられる。
園子(うん、このバーテックス…やっぱり、変異種かな…私がこっちに飛ばされる前に現れた黒い星屑が出てきたし…もしかして…。)
周囲を見る園子。
怨嗟の星屑は次々と、ソラシド市に襲来してくる。
戦闘の音が鳴り響く、その正体は変身したソラ達。
バーテックスとの戦いは初めての彼女達だが、今は任せるしかない。
園子「ソーちゃん達なら大丈夫だよね。早いところ、こっちを何とかすれば…!。」
駆け出す園子。シン・サジタリウスの体が発光する。
園子「…何か仕掛けてくるね…!?。」
槍を束ねてシールドを形成する園子。身体の発光が止まると同時に音速に近い、巨大な針を放つ。
そのあまりの速度に、思わず驚く園子。
ほんの少しのその動揺が、シールドの堅牢さに障害が出た。
真っ向からぶつかるそれは、シールドを打ち破って園子を打ち上げる。
精霊バリアのおかげで貫通はしなかったが、脇腹に突き刺さった針は甚大なダメージを与えた。
地面に落ちる園子。激痛に、思わず声を上げる。
園子「あぐっ…ッ…や……やっちゃった……。」
とめどなく流れる血。致命傷ではないが、動きに支障が出る。
園子(…情けないな…普段ならこんなドジ踏まないのに…アハハ、精神状態に作用されるって本当なんだね…。)
シン・サジタリウスは2射目を撃とうと、再チャージを始める。
動けない園子に迫るは、確実な死。
その光は、どこか優しく感じた。
園子(…ごめんね〜、みんな…ここでリタイアみたい。悩んで終わるくらいならせめて…笑いながら…また会えそうだね…ミノさん…。)
諦めた表情をする園子は、穏やかそうな表情で目を閉じる。
放たれた音速の針。それは、園子の身体の中心を捉えていた。
その時…。
「開け、次元の門ッッ!!。」
園子の目の前に降り立つのは、キュアスレイヤー。
巨大な剣が、針を弾く。
スレイヤー「ドラゴンブレイカーッッ!!。」
園子「こ…洸…!?。」
スレイヤー「馬鹿野郎!何やってんだお前ッ!!。死ぬところだったぞッ!?。」
園子「…アハハ、そうだね〜…。」
力無く笑う園子、しかしスレイヤーは怒りの表情をする。
スレイヤー「なんでも1人で背負い込むんじゃねェッッ!。こんなやばいの、何人かでやらねェと無事じゃすまねェのはわかってたろッ!?。」
園子「…ごめん…。」
スレイヤー「園子、昨日の続きだけどな?。俺は復讐の鬼だ。だから、「劇団」の野郎達をぶち殺せるなら何だってする…けど、それでも…俺は仲間を、友達を無碍にはしたくねェ。だから、友達の窮地は絶対に見逃したくねェ。そんなことするくらいなら、復讐なんて諦める。」
ドラゴンバスターを天に掲げ、周辺の次元が歪む。
スレイヤー「人間は1人じゃ生きていけねェ、だからお前もそうなんだ。お前はすげェ奴だよ、俺らと同じ歳でも見てる世界がまるで違う。けどな、たまには…誰かに縋ってもいいんじゃねェのか?。1人で悩むくらいなら、打ち明けて楽になりゃいい。だって俺たちは…友達だろ?。」
その一言だけ言って、スレイヤーは次元を切り裂く大剣をシン・サジタリウスに叩き込む。
一撃。その一撃はシン・サジタリウスを断ち切って、次元の彼方へと吸い込まれていった。
それから、数十分後…ソラ達も見事に怨嗟の星屑達を撃破。
2人を呼ぶ声が響く。
スレイヤーに抱えられる園子は、その元気な声に安堵の表情をする。
園子「…私、わかったかも。」
スレイヤー「何が…?。」
園子「向こうにいる友達も…こっちで出来た友達も…守りたい。こんなに大変なことになってて向こうも心配だけど…私は、こっちを放って向こうには帰れないよ。だから、向こうはみんなに任せる。みんな、頼りになるんだ〜。」
スレイヤー「そっか…悩み、吹っ切れたんじゃね?。」
園子「みたい…♩。」
ーーーーーーーーー
私は、ご先祖様みたいに勇猛果敢じゃない。
だから、選択に迷うこともあるし複数を守れるほど手際が良くないことだってある…もしかしたら、守れないかも知れない。
でも、それでも…大切にしていきたいんだ…。
そして、守りたい。この力で。
二つの世界で出来た「友達」を。
ーーーーーーーーー
………………end。
偉大な先祖を持つ園子。
千景の出現により、先祖が唯一残した後悔を精算しようと悩み、この事態に元の世界にいる仲間とこの世界で出来た友達の両方を守り切る事が出来るのか…その現実に葛藤していた。
しかし、その悩みを吹っ切って彼女は貪欲に前に進む。
二つの世界で出来た友達を守るために。
それが、今の彼女が選択したことだった。
世界の壁が壊れてから2週間、事態は急展開を迎える。そして……。
次回
<新章>
第20話 堕ちた優しき天使。