〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
仲間を信じる心…当初は任務のために勇者部の面々と接していた蒼葉。
しかし、共に困難を乗り越えるたびにその心は仲間へと変わっていった。
仲間を助けるため、心のままに選択をした蒼葉は<擬似勇者外装>の適合者へと覚醒。シン・アリエスを撃破した。
話は変わり、一同が目指す「高天原」の対抗組織である「ヤマザクラ」。
それは、この世界で「人」として生きる選択を選んだ人類の集まりである。
この世界は、神と同等の力を持ち、高次元生命体へと進化する事を望む人類と、平凡を望む人類が対峙する世界であり、両者は睨み合う状態となっていた。
もう一つの世界線。
それは、勇者世界とプリキュア世界の「可能性」が入り混じった世界。
もし、あの時…あの選択をしていたら…。
世界がそういった、判断で出来た枝葉の世界。
だから、この世界では元の世界とは真逆のパターンが存在する。
同じ人物が全く違う性格をしていたり、この世に居なかったり…。
並行世界…パラレルワールドとはそういった要素が無限に広がっている。
そしてここ、「もう一つの世界線」では人類同士の歪み合いが起きていた。
神に勝利した世界…。
人は神を超え、その先の高次元生命体へと昇華出来る。
全知全能に打ち勝った事で、人類はその先のステージへの階段を登り始めていた。
神に等しき…いや、その上を行ったとされる者を「神人類」とし、人類進化の可能性を求める…それが、「高天原」。
元々、信仰組織でもあった為、その思想は世界中に拡散。事実上、この世界の覇権を握っているとまで言われている。
そして、度重なる死闘の末、その身体が神に近しき存在となったこの世界の結城友奈は、人類守護システム「世界樹」の中枢コアとして、神格化されている。
その寵愛の元で暮らす人々の生活は安寧とされ、高天原の思想に賛同する人類が大多数を占めている。
しかし、その中でも反抗するものだってもちろんいる。
それが、人類組織「ヤマザクラ」。
彼らは、神に打ち勝ったとしてもその領域に行くわけにはいかない…人は人として生涯を全うし、その幸せの中で終わるべきだと提唱している。
この組織は、かつての大戦で勝利の功績を上げた「勇者」の数名が立ち上げ、神に成り代わろうとする高天原を止めるために活動している。
ただし、勇者システムの権限は高天原が握っている。
無情にも、離反した勇者達はそのシステムを剥奪されて変身能力すら失ってしまう。
それでも、抵抗は止まない。
そう、全ては「世界樹」の生体コアにされている友奈を……。
ー救う為ー
…………………。
蒼葉「…………。」
焚き火の番をする蒼葉は、その炎を見ながらずっと考え込んでいた。
蒼葉(世界樹の守護システムが明らかに弱くなっていた…シン・バーテックスの侵入を許すとは…もう、時間が無いかもしれない…。)
<擬似勇者外装>の端末を握り締めながら、蒼葉は表情を崩さない。
その時、眠っていた樹が目を覚ます。
樹「…蒼葉さん…?。」
蒼葉「ああ、すまない。冷えたか?。薪をくべて火力を上げてやる。」
樹「いえ…そう言うわけでは…その、大丈夫ですか?。こっちに来てからずっと、浮かない顔をしてるから…。」
蒼葉「……そうか…気付かれていたみたいだな。俺もまだまだだ。」
薪を投げ入れ、火力が上がる。
蒼葉「…この世界のことは前に話したな?。もう、隠しても仕方ない。本当の俺の身分は人類組織「ヤマザクラ」の諜報員だ。」
樹「ヤマザクラって…今、私たちが目指している?。」
蒼葉「ああ、俺が受けた任務はお前達の世界に行って、「外」の情報を持ち帰ること…この世界から消えたプリキュアの痕跡を探す為だ。」
樹「プリキュアを?。」
蒼葉「ああ。ヤマザクラは旧勇者が設立した人類組織…その大元は「勇者部」のメンバーだった。」
樹「それって…こっちの世界の私たちの事ですよね?。でも、こっちのお姉ちゃんは死んじゃってて…。」
蒼葉「そうだ、先輩は獅子奮迅の奮闘の末に敗北し、この世から去ってしまった。勇者システムの権限は高天原が握っている。だから、その加護を打ち消すことも可能なんだ。システムの剥奪が進行されれば、勇者はその能力を失う。」
樹「…ちょっと、待ってください…じゃあ、ヤマザクラの勇者はみんな…。」
蒼葉「ああ…勇者としての力を失っている。潰されるのも時間の問題だ。だから、プリキュアを探しているんだ。かつての戦友達を…しかし、向こうに行ってもその痕跡は見つからなかった。」
蒼葉は歯を食いしばる。
蒼葉「俺は幼少期に親を亡くしている。あの惨い天災によって…そんな俺を拾ってくれた人がいるんだ。その人はヤマザクラのリーダーで…元勇者だ。」
樹「えッ…それってもしかして…。」
蒼葉「ああ、東郷美森…今はその名を捨てて旧名の「鷲尾須美」として名を戻している。本当の名前である東郷美森は死んだ…あの人はそう言って、人類組織を背負う選択をした。全ては結城を救うために。」
蒼葉は続ける。
蒼葉「俺は育ててもらった恩がある。あの人は姉のようなものだ。だから、その望みを叶えて恩を返したいと思っている。しかし現実は何も進展が無い…せめて、こっち側のプリキュアの痕跡さえ掴めていれば希望はあった。先日のシン・バーテックスの侵攻を見て確信した…世界樹の中枢コアとなっている結城に限界が来ている…あのままだと、本当に「人」に戻れなくなる…それどころか、またあの惨い天災と同じ災厄がやってくるかもしれない。お前達の世界で起きている「星の停止」と同じようなことが…。」
蒼葉は心のうちに秘めていた思いを全て吐き出した。
恩を返したい…その一心であの時、世界を渡る選択をした。
しかし、進展が無い事に焦りが勝っていた。冷静な判断をしたくてもその答えが導き出せない。このままでは…と考え込んでしまう。
その時、蒼葉は我に帰った。
蒼葉「すまない、お前達の世界の方がより大変な事になっているのにな。必ず、打開策を探す。そうすれば、お前達を元の世界に…。」
樹「手伝いますよッ!!。」
樹は大きな声をあげる。
蒼葉は目を見開く。
樹「私達があの場から逃げてこられたのは、蒼葉さんがこっちに連れて来てくれたからです!。チャンスをくれたんですよ、なのにこの世界の現状が良く無い事を知って、自分たちの世界が助かりたいからって無碍には出来ませんッ!。」
蒼葉「犬吠埼…。」
樹「それに、こっち側の友奈さんが大変な事になってるのなら助けたいですッ!。どの世界でもあの人は同じなんだなって思いました。全部一人で抱え込んで…利用されてもそれを恨んだりしない…自分にその役目があるのなら本気で命を捨てられる人だって…私たちの友奈さんもそうだった。でもやっと…やっとあの人は自分の幸せに目を向ける事を決めてくれたんです。だったら、こっち側の友奈さんだって救い出して…こんな大変な役目から解放してあげたいです。」
蒼葉「…しかし、お前達をこちらの事情に巻き込むわけにはいかない。向こう側の勇者だとしても、お前達は関わるべきじゃない…!。」
樹「…巻き込ませてくださいよ…だって、貴方は私達を助けてくれたじゃないですか…自分たちの世界のことも気になります、でもそれよりも…今目の前で分かっている事を解決したいんです。それに、蒼葉さんが探していた「答え」は今、ここにあるじゃないですか。」
樹は自分と風、そしてツバサに目を向ける。
樹「お姉ちゃんも居ますし、ツバサさんだって居ます。貴方は…その人に恩を返すことが出来ます。私達が居れば…貴方はちゃんと約束を果たせるんです。だから、巻き込ませてください…関わらせてください。」
蒼葉「……いいのか、本当に…?。」
「我が妹がこれだけ声を張って話すのは珍しいことよ〜?。だから、遠慮なんてしないの。」
眠ったフリをして、話を聞いていた風…そして、ツバサが起き上がる。
ツバサ「すみません、全て聞かせてもらいました。もちろん、僕も賛成です。樹さんの言うとおり、貴方がプリキュアを探していたのなら僕たちがここにいる事に意味があります。大丈夫、必ず手を貸してくれます。ソラさんなら絶対に…!。」
風「それに、こっちの友奈もバカな事を選択したなって思ってるし…ほんと、お人好しにも程があるというか…ほっとけないでしょ…?。」
蒼葉はそんな言葉をかけてくれる3人を見て、目を閉じる。
蒼葉「……ありがとう…本当に…ありがとう…俺も約束する。この事態が終息すれば次はお前達の世界を救うために死力を尽くすと。だから、頼みたい…俺に…いや、俺達「ヤマザクラ」に…力を貸してくれ…!。」
手を差し出す蒼葉。
何も言わずに、その手を重ねる風とツバサ、そして樹。
こうしてここに、同盟が生まれた。
蒼葉は見たことのない表情を見せ、満面の笑みを浮かべる。
樹(良かった…元気になって。そうです、蒼葉さん…いつも自信がある方が貴方らしいです。だから私はそんな貴方の事が……。)
………………。
それから数日後、蒼葉の案内により一同は「ヤマザクラ」の本部へと辿り着いた。
その場所は旧四国とも呼ばれた島にあり、セキュリティが強固な要塞となっていた。
ツバサ「こ…ここが本部ですかッ!?。なんていうか…要塞じゃないですかッ!。」
蒼葉「高天原の勇者…そして、防人部隊が越えられないような設計となっているからな。」
風「へぇ…高天原側の勇者って…誰…?。」
その質問に、蒼葉は表情が曇る。
蒼葉「……三好夏凛…こっち側の先輩を倒した…張本人だ。」
樹「!!!。」
風「……そっかぁ、こっち側の夏凛は高天原側で…こっち側の私を倒した勇者って事ね。聞いた手前、なんかショックだな〜…。」
樹「…お姉ちゃん…。」
風「安心しなさい、それはこっち側の話で私たちの夏凛はかけがえの無い仲間よ。それは紛れもない事実、だから気にしちゃダメよ。」
樹「う…うん…分かった…。」
風(でも、やっぱりショックだな〜…と言うことは、これからこの世界で高天原を敵に回すなら避けて通れない道…違う世界の夏凛とはいえ、見知った顔と激突するのは心が痛むよね。)
風はそんな事を思いながら、気合を入れる。
風(でも、こっち側の友奈には変えられない。悪いけどこっち側の夏凛、あんたに一発喝を入れてやるわ。勇者部の絆はそんなものだったのかって…友奈を利用して神に成り代わろうとしてる奴らの犬になる気かって…待ってなさい、こっち側の私を倒したからってこの私が倒せるとは限らないところを見せてやるわ…!。)
ツバサ「あっ…門が開きましたよッ!?。」
重い扉が開き、中にいた構成員達が一斉に道を開ける。
そして、その中心に一人の女性が歩いてくる。
「思っていたよりも、早い帰還ね。蒼葉?。」
蒼葉「…お久しぶりです。」
大人の姿になったその人物…元々大人っぽかった容姿だがそこにカリスマ性も兼ね備えた、指揮官とも言える風貌へと変化していた。
風と樹は思わず驚き、声を失う。そして、ツバサは場の雰囲気に飲まれて身体が固まる。
風(…こりゃあ…さっすがね〜…。)
「ようこそ、もう一つ世界線へ…そして、「ヤマザクラ」へ。向こう側の勇者様とプリキュア様。」
微笑むその表情。その人物こそが…。
須美(if)「私は人類組織「ヤマザクラ」総帥の鷲尾須美です。いえ…「勇者部」東郷美森…と言えばよろしいでしょうか?。」
人類組織「ヤマザクラ」総帥。
東郷美森改め、鷲尾須美。
その本人だ。
…………end。
ヤマザクラ本部へと、足を運んだ蒼葉達。
そこで、ヤマザクラ総帥としての顔を持つもう一つの世界線の東郷と出会いを果たす。
勇者世界とプリキュア世界の惨状を知る彼女は、この世界の現状についても語り出す。
その時、本部に警報が鳴り響く。
高天原の侵攻か…そう思われだがそこに姿を現したのは……。
「劇団」のNo.0<破滅の姫君>虹ヶ丘ましろ……だった…。
次回
第28話 襲来、破滅の姫君・前編。