〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。

ましろの心を取り戻すまであと一歩だった。

しかし、根付いた闇の華がそれを阻んでしまう。

だが分かったことがあった…ましろの主人格はまだ死んではいなかった事に。

その事を胸に、そして悔しさバネにして一同は前に進む。

その一方で、ましろの覚醒によって怨嗟の星屑が雪崩れ込んできた。

それは、世界樹の守護プログラムにより最悪の事態は免れたが取りこぼした怨嗟の星屑は各地に飛散してしまう。

別の地点に落とされた洸と園子は、ちょうどその地点に出会してしまい…。


第30話 貴方と一緒なら……。

 

〜もう一つの世界線・秘境区域〜

 

 

自然が支配するその地点は人の手が加わっておらず、未開の地として認識されていた。

 

人類が最も踏み入れない地に、運悪く洸と園子は落とされてしまった。

 

 

そして、同時系列…闇の深度が深まったことにより次の段階へと移行してしまったましろ。

 

 

その影響で、勇者世界から雪崩れ込んできた怨嗟の星屑は各地にばらけ、活動を開始する。

 

 

洸と園子は今まさに、その異形達と戦闘を繰り広げていた。

 

 

園子「はぁあああッッ!!。」

 

 

槍の一閃により、確実に退治していく園子。

 

 

洸もまた、キュアスレイヤーに変身して徒手空拳で対応。二人は引き離されないように背中合わせに敵を見据える。

 

 

スレイヤー「クソ、こんなところに飛ばされて運が悪い上にコイツらまで流れてきやがってッ!。厄日にも程があんだろ…!。」

 

 

園子「洸、疲れたら休んでていいよ〜?。私まだ、動けるからッ!。」

 

 

スレイヤー「バカ言え、いくらお前でもこの数は流石にヤベェだろ!!。」

 

 

スレイヤーは、園子の背中の傷を見る。

 

血で滲んでおり、それは少しずつだが広まっていた。

 

 

スレイヤー(背中に攻撃を受けて傷を負ってやがる…止血しねぇとまずいだろ…時間をかけてたら園子がヤベェ…クソ、「ドラゴンバスター」さえ使えれば…!。)

 

 

転移に残る全ての力を使い果たしたフレアは休眠状態に入り、彼の力を借りて次元の門を開くことができないスレイヤー。

 

 

一撃必殺の切り札が封じられた今、戦況はまさにジリ貧状態。

 

 

園子がなんとか奮闘しているが、それも時間の問題だ。

 

 

足を引っ張っていることに責任を感じたのか、スレイヤーは疲労困憊に至るも戦闘を続行する。

 

 

園子「この感覚、思い出すよ〜…バーテックスとの戦いはいつも極限状態だからね〜。」

 

 

スレイヤー「はぁ!?。いつもこんなギリギリな状況で戦ってたのか!?。」

 

 

園子「うん、孤軍奮闘なんて日常茶飯事…無限に近い星屑に加えて完成体バーテックスまで押し寄せてくるからね…だから、土俵っちゃ土俵なんよ。こんな時はバラけちゃダメだし、一気に勝負をつけようと焦っちゃダメ。幸い、私達しか狙ってないから案外楽なんよね。」

 

 

スレイヤー「だけど、お前…怪我を…!。」

 

 

園子「おっかしいな〜…精霊バリアが作動しないんだよね…バリアがあればあんな攻撃程度で怪我なんて負わないんだけど…。」

 

 

園子(うん、やっぱりこの場所に問題がありそうだ…何故かな、精霊が「怖がってる」気がする。)

 

 

冷静に分析していると、怨嗟の星屑が大量に雪崩れ込んでくる。

 

 

咄嗟に避ける二人。大群は地面に激突する。

 

 

するとその瞬間、轟音を上げて地盤が崩れ始める。

 

 

園子「あ…あれれ…!?。」

 

 

下が全く見えないほどにまで広がっている奈落に、園子は引き摺り込まれるように落ちる。

 

 

スレイヤー「園子ォオオオオッッ!!。」

 

 

手を伸ばし、後を追うスレイヤー。

 

 

二人は深い深い奈落の底に、その身を落としていく。

 

 

………………。

 

 

ーーこ…ッッ!!ーー

 

 

うーん…眠いなぁ…まだ寝ていたいよ〜…。

 

 

ーーそ……こ…ッッ!!ーー

 

 

起こさないで〜、まだ起きたくない〜…。

 

 

ーーその……こッ…!!ーー

 

 

ん…この声…まさか、洸…?。

 

 

ーー園子ッッ!!ーー

 

 

園子「はっ……!!。」

 

 

洸の呼び声に、目を覚ます園子。

2人は変身が解けており、一気に現実に戻される。

 

 

園子「ここ…は…あぐっ…!?。」

 

 

背中に激痛が走る。落下の衝撃で傷が広がり、洸が自分の上着を包帯がわりにして患部をしっかりと固定していた。

 

 

園子「…ごめんね〜、洸。一張羅を台無しにしちゃって…。」

 

 

洸「構いやしねェよ。どうだ、傷の具合は…?。」

 

 

園子「うーん…あんまり、良くないかな〜…?。」

 

 

洸「そっか…クソ、詰んじまったな…外の光が入らねェくらいにまで深い底に落ちちまったようだ。変身して登る手もあるが…消耗しすぎてすぐに解けちまう…。」

 

 

園子「焦りは禁物、今は休憩ってことで身体を休めよう?。」

 

 

洸「そうだな…?。」

 

 

2人は対面に寝そべるように、その場をやり過ごす。

 

 

園子「…ねぇ…やっぱりここ、何かおかしいね〜?。」

 

 

洸「何が…?。」

 

 

園子「精霊バリアが作動しない上に、立て続けに悪い事が起きる…まるで、引き摺り込まれるように不運が私たちを襲ってくる気がして…。」

 

 

洸「そんなの、たまたまだろ?。待てよ…俺が不幸体質だからか?。もしそうなら…はぁ〜…こんな時に全部盛りはやめてくれよなぁ…。」

 

 

園子「そんなんじゃないよ…何故か、ずっと感じるんだ?。恨みや叫び…そして、黒い気配っていうのかな…。」

 

 

洸「お…おい、そんなのオカルトだろ!?。でもここ…確か…。」

 

 

この秘境区域が、人類未踏の地として認知されている理由。

 

 

それは、過去の大戦の激戦区でもあった為。

 

 

人気がないこの場所なら、勇者もプリキュアも存分に戦える。

 

 

そして、この場所を通過することで避難経路も確保できる。

 

 

過去の異形達は、人が住まう場所を中心に襲撃をかけていた。

その為、空から逃げる場合はこの場所をよく利用していたという。

 

 

それに気付いた異形は待ち構えていたかのように、この場に集結していた。

 

 

そして、この場所で失われた命は数多い…勇者の1人だって犠牲になった。

 

 

その名前は……三ノ輪 銀。

こちら側の彼女は飛行機で逃げる避難民を逃す為、たった1人で数万の異形を相手にした。

 

 

逃げ切られた事により、異形達は撤退。力尽きた彼女は誰にも救出される事なく、その生涯を終えたのだ。

 

 

その逸話を知っている洸は、園子の感じている事に少しだけだが、心当たりを持っていた。

 

 

もしかすると、ここは…大量の死者の怨嗟が渦巻いた亡霊の巣窟なのでは…と。

 

 

その怨嗟に引っ張られ、様々な不運を引き起こす。

 

 

神が普通にいる世界だ…こういった事もあり得なくはない。

 

 

そして、この場所が意味するものとは…。

 

 

洸はそう思う。

 

 

園子「…ねぇ…私達、ここから出られるのかなぁ?。」

 

 

洸「出ねェと野垂れ死にだぜ?。必ず、出てみせるさ。多分…この世界で今、とんでもねェ事が起きてる筈だ。あの化け物集団もそうだし…世界が一瞬、赤く染まった。明らかに異常だ。」

 

 

園子「フレアっちは起きないの…?。」

 

 

洸「ああ、次元の壁を突破してここに来れた時点であいつの力はだいぶ消耗しちまった。しばらくは休眠状態さ。」

 

 

園子「そっか…みんな…無事だよね…?。」

 

 

洸「ああ、絶対にな。だから、早くここから出る手段を考えよう。」

 

 

それからどれだけの時間が経ったのか分からない。

 

 

漆黒の闇の中で、2人の会話は少なくなっていく。

 

 

園子の怪我の事もある。一刻を争う事態ではないが、看過は出来ない。

 

 

その時、園子が自分の手を握ってくる。

 

 

洸「園子…どうした…?。」

 

 

園子「手…握ってて欲しいな。なんだか…寒くなってきて…。」

 

 

洸「お…おい…まさか怪我が!?。しっかりしろ!!。すぐに…!。」

 

 

園子「…もしさ?。このまま何も出来なくなって、動けなくなったとしても…洸が一緒ならそれでもいいかなって。」

 

 

洸「何言ってんだよ!?。お前、ここ一帯の影響を受けてんのか!?。」

 

 

園子「…傷付くなぁ〜…真面目な話なんだけど…でもね、聞いて欲しい。もし、洸が動けるようになって私がまだダメでも…その時は置いていって?。それまでは…一緒にいて欲しい。貴方と一緒なら…怖くないから。」

 

 

洸「んな事出来る訳ねぇだろッ!!。らしくねェぞ、弱気になりやがってッ!!。いつもみてェにヘラヘラとのんびりした事言えよッ!。」

 

 

園子「…余裕…ないかな……。」

 

 

洸「…ッ…だったら…!!。」

 

 

洸はキュアスレイヤーに変身し、園子を背に岩壁に手を掛けて登り始める。

 

 

園子「何してるの…?。」

 

 

スレイヤー「決まってんだろ…ここを出るんだ…俺たち2人でッ!。」

 

 

園子「そんなの…無理だよ…だったら、このまま私を下に…。」

 

 

スレイヤー「諦めんなッ!!。絶対に助かるッ!!。お前を置いていけるかッッ!!。静かに捕まってろ!!。」

 

 

ゆっくりと、確実に登るスレイヤー。

 

 

掛ける手から、血が滲み出す。

 

岩肌で切れているのだろう、息を切らしながらゆっくりと登っていく。

 

 

怨嗟渦巻く、亡霊の巣窟に長くいる事は良くない。

 

 

精神が壊されていき、知らずの内に引っ張られていく。

 

 

現に、園子はその影響を受けていた。

 

 

だから、弱気になっていく。そして、その怨嗟は徐々に2人に迫る。

特に、その気配を感じやすい園子に集まってくる。

 

 

スレイヤー(クソ…嫌な気配がめちゃくちゃする…連れていくつもりか!?。んな事、させるかよ…!。)

 

 

ゆっくりと、岩壁を上がるスレイヤー。ゴールは見えない、状況は絶望的だ。

 

 

それでも、スレイヤーは諦めない。

 

 

スレイヤー(力が無くて何も守れなかったあの時とは違うんだ…たった1人でもいい、救えるなら俺は…!。)

 

 

限界が近くなる、そして無情にも手をかけた岩肌が砕ける。

 

 

バランスを崩したスレイヤーは後ろに倒れ込み、園子を抱えたまま落下する。

 

 

スレイヤー(クソ…クソ…!!。)

 

 

悔しさで泣きそうになる、だがそれよりも園子を抱き抱えて落下していく。

 

 

その時、下から無数の黒い手が忍び寄る。

視認出来るほどだ、きっと尋常では無い怨嗟の塊なのだろう。

 

 

それを見た園子は、スレイヤーを突き飛ばす。

そして、何かを察したのか微笑みを向ける。

 

 

園子「もう…ダメみたい。お迎えが来たのかな…ありがとう?。一緒にいてくれて…せめて、洸だけでも出てくれたら…それで……。」

 

 

手を伸ばすスレイヤー。声が出ない、また何も守れないのか…そう思っていたその時……。

 

 

ーー大丈夫だ、2人を連れていかせはしない。ーー

 

 

どこと無く、声が聞こえる。その瞬間、赤い光が怨嗟の塊を討ち払った。

 

落下は止まり、不思議と2人は宙に浮かんでいた。

何が起きているか全くわからない…そんな状況に唖然としていると、その光が導くようにゆっくりと上に向かって突き進んでいく。

 

 

ーーもう少し頑張れ、必ず出口に連れていくから。ーー

 

 

スレイヤー「お…お前は誰だッ!?。」

 

 

ーー名乗っても、仕方ないだろ?。亡霊の事は気にしないで。ーー

 

 

優しいその声。園子はその声に聞き覚えがあった。

 

 

絶対に忘れない…その声を…。

 

 

ーー未来を生きるお前達が、過去の亡霊に連れていかれるのは見てられない。ここは、生きたいと願った人達の無念が固まっている。だから、生きている人間を引っ張りたくなるんだろう。でも…未来はお前達のものだ。だから…。ーー

 

 

行っておいで?。自分たちの未来を取り戻すために……。

 

 

不思議なその光に導かれ、2人は地上に戻る。

不思議と、園子の怪我も治っていて。

 

 

地響きと共にその穴は完全に塞がってしまう。

 

 

スレイヤー「……今のは……?。」

 

 

園子「そっか…助けてくれたんだね…違う世界でも、変わらないなぁ……。」

 

 

ーーミノさんーー

 

 

もう聞くことのできない大切な親友のその声に、園子は一筋の涙を流す。

 

 

園子「…ごめんね、洸。弱気になっちゃって…でも…あれは弱気になったから言ったんじゃないよ?。」

 

 

スレイヤー「…え…?。」

 

 

園子「本当の私の気持ち。本気…なんだから。」

 

 

意味深いその言葉を最後に、園子はいつも通りの笑顔に戻る。

 

 

ー君は、復讐の為に戦ってる。けどそれは理由でしかなくて…本当の君は誰かの為に戦える強い人。そして、誰も救えなかった自分が大嫌いなんだよね…けど…私はそんな不器用な優しさを持ってる君が……ー

 

 

好き。

 

 

…………end。

 

 





絶望的な状況から、奇跡によって難を逃れた洸と園子。

三ノ輪 銀。

死してなお、人を救った彼女に感謝しながら先に進む。

その一方、あげは・東郷・夏凛は高天原の領内へと転移。
その身柄を拘束されていた。

とある人物の機転で、脱獄を図る3人。

その時、高天原最強の勇者…もう1人の夏凛が立ちはだかる。

次回
第31話 完全完成型勇者。
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