〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
過去の大戦にて、怨嗟渦巻く大穴に落ちた洸と園子。
絶体絶命の中、2人はこの世界の三ノ輪 銀の魂に導かれて脱出。
難を逃れ、ずっと一緒に行動している洸に思いの内を打ち明けた。
場所は移り、高天原の監獄施設。
そこに転移してきたあげはと東郷、夏凛は身柄を拘束され不審人物として隔離されていた。
外で起きている状況を知らない3人は、監獄内にいるとある人物の策で脱獄する事を決意する。
〜高天原・監獄施設〜
この世界に来てから5日目、あげはと東郷、夏凛は防人部隊に捕まりここに収容されていた。
この監獄は、主に国家転覆を画策するテロリスト、高天原が信仰する教えから反する異端者、そして3人のような並行世界からの渡航者。
実質、この世界を統治している高天原にとって不安要素は全て排除したい。
「世界樹」の守護システムが弱体化している事実も、民衆には明かされていない上に、先日のましろの件もある。
この世界は今まさに、混沌とした状況。
そういった、自分たちに不利益となる要素は問答無用で排除に動く過激な行動が目立っていた。
そして、捕まった3人は同じ部屋に収容され今後について考え込んでいた。
東郷「…状況は芳しくないわね。勇者システムも取り上げられたし…。」
あげは「あたしも、ミラージュペンを取られたから何も出来ないのが悔しいね。それに、ここに入れるだけ入れて進展が何も無い。」
夏凛「とりあえず入れてるだけでしょ。私たちは並行世界からの渡航者。バタバタしてる様子も窺えるし、多分ややこしい事になってるのは間違いないわ。」
あげは「こんなところにいつまでもいるわけにはいかないんだけどな…参ったな…。」
途方に暮れる3人。
その時、向かいの部屋にいる者から声を掛けられる。
「あんた達、ここから出たい?。」
不意に掛けられたその言葉。
当然、警戒はする。しかし…東郷と夏凛はどこか聞き覚えのある声だった。
夏凛「当たり前でしょ、そういうあんたこそどうなのよ?。」
「…あんまり、その声は聞きたくないんだけどな…あっち側のあんたってわかってるんだけど…どうしてもね…だって…三好夏凛は私の「怨敵」だから。」
光に照らされ、その声の主が明らかになる。
東郷「ま…まさか…樹ちゃん!?。」
成長した樹、髪はロングヘアになっていたが明らかに違うのは…その目付き。
おっとりとした樹とは真逆の、荒々しさが全面に出ていた樹。
その見た目もあり、口調もやや荒っぽい感じだった。
樹(if)「その様子だと、向こう側の私は性格が真逆なのかな。やっぱり、あんたは向こう側でも同じだね。東郷さん?。」
あげは「ちょっと…どういう事!?。知り合いッ!?。」
樹(if)「知り合いといえば知り合いだけど、そうでないと言われればそうでもない。あんまり気にしない方がいいよ、ややこしくなるから。」
夏凛(グレた樹…こっち側ではそんな感じなの!?。意外だ…それに…。)
夏凛「あんた…私が怨敵って言ってたけど…。」
樹(if)「そうだよ?。それはこっち側の話だけどね…姉さんを殺された。三好夏凛に。」
東郷「え…ッ!?。」
樹(if)「別に卑劣な手で殺された訳じゃない。正々堂々と戦って、姉は負けた。どっちかが死ぬまで戦うつもりだったけど…たった1人の家族だ。理由がどうであれ、恨むのは当然でしょ。そんなことより、取引をしようじゃないか。」
あげは「取引…?。」
樹(if)「そ。あんた達は変身アイテムを取り戻した上でここから出たいんでしょ?。私もそう、人類組織「ヤマザクラ」に所属しているレジスタンスだ。少しドジ踏んで捕まったんだけどね…だから、ここは私が悪役になる。看守を脅して変身アイテムを保管している部屋に案内させる。まぁ大体の目星はついてるけど、その方が楽だからね。」
脅す…。
普段の樹からは絶対に出ないその言葉。
しかし、こっち側の樹はやることに容赦がなさそうな狂犬のような目をしている。
世界が違えば、こんなにも変わるのか…。
その意外性に、2人は思わず言葉を失う。
あげは「でもどうやって…配膳の時間でも狙うつもり?。」
樹(if)「その通り。この部屋を出るには締め落として鍵を奪えばどうとでもなる。ここの看守はそう言った警戒心が無いんだよ。万が一、脱獄されたとしてもここには防人部隊がいる。あいつらに捕まって戻されることがわかってるからね。」
夏凛「…なるほど、じゃあ私達がその防人部隊と戦えってこと?。」
樹(if)「そ。これでWin-Winの関係でしょ?。どちらもリスクを犯すんだ。私も働く分、あんた達もそれ相応の働きで返す。そこから先はサービスだ、特別に「ヤマザクラ」まで案内してあげるよ。そこに行けばあんた達はやりやすいだろうからね。」
東郷「…わかったわ、その策に乗りましょう。でも樹ちゃん、人を殺めては行けないわ。それは約束して頂戴。」
樹(if)「…それは努力するよ、保証はしないけどね。じゃあ、契約成立だ。1時間後…私が行動に移すときまで、互いの会話を行わないようにする。いいね?。ミスったら多分…極刑だよ。」
そして、1時間後。
樹は行動に出る。
まず、配膳でやってきた看守が扉を開けた瞬間に裏手に回り込み、締め落とす。
その手際は良く、音もなく一瞬で気を失った。
そして、慣れた手付きで鍵のみを取り自分の手錠を外して向かいの夏凛達に投げ渡す。
夏凛(これ…普段からやってるな…。)
過激な樹の行動を見て、3人は牢から出る。
先に進む樹。看守の1人が気付いて騒ごうとしたが、飛びついて口元を塞ぐ。
樹(if)「動くな。向こう側の勇者システムを保管してる部屋があるでしょ、案内してよ。」
看守「そんなこと…できる訳ないだろう!?。さ…防人部隊を…。」
樹(if)「だったら、ここで死ぬか。1人くらい手にかけても痛みも何もないんだよね…。」
首を縛る腕の力を強める。脅しではなく、完全に殺しにかかっていた。
命を奪われる恐怖に畏怖したのか、看守は観念する。
看守「わ…わかった…案内する…だけど、知らないぞ…ここにはあの人がいる…知られたらお前達もただでは済まない…。」
樹(if)「元より承知だよ、知られる前に脱出する。解放したら報告でもなんでもするといいよ。逃げ切れる自信があるからね。」
看守の案内の元、保管部屋に到達。
ミラージュペンと勇者システム2つを奪還。
約束通り、それらを投げ渡す。
樹(if)「はい、これで役目は終わり。次はあんた達の番だよ。しっかりと頼むからね。」
夏凛「え…ええ…にしてもあんた、随分と手慣れてるけど…。」
樹(if)「勇者システムの権限を奪われてから生身で生きていく必要があったからね。それなりのスキルは身につけてるから…。」
3人は、即座に脱出すべく変身。
出口に向かって走り出す。
脱獄を報せる警報が鳴り響くが、出口まで後少しだ。
このまま逃げ切れる……そう思っていた……出口前に見えたその人物に、樹は溜息を吐く。
樹(if)「…これ、無理かもね…強気にああは言ったけど…全く…本当にここに居たなんて…。」
三日月型の斬撃が先制攻撃として放たれる。
危機を察知したバタフライが前面に出て、シールドを形成するがあまりの威力に砕け散り、4人は吹き飛ばされた。
コツコツと、ゆっくりと歩いてくる女性。
夏凛は驚愕した…何故なら、その姿は自分と全く同じで…。
夏凛(if)「止まりなさい、脱獄者。この私を抜いていくのは無理な話よ。」
夏凛「…わ…私…!?。」
その容姿は大人の姿であり、長い髪を束ねたポニーテール。
両手には、二振りの刀が握り締められていた。
そして、放つその覇気は尋常ではなく、その威圧感だけで人を震わせるほど。
樹(if)「…コイツが言ってた奴だよ。私たちの仲間でもあった人…姉さんを殺した奴…私の怨敵…そして…「完全完成型勇者」。」
もう一つの世界線の三好夏凛。
異名「完全完成型勇者」。
高天原最強の勇者であり最強戦力。
この世界で一番強いと言ってもいいほどの実力者が立ちはだかる。
東郷「…この威圧感…凄まじいものね…。」
バタフライ「これ、絶体絶命ってやつかな…!?。」
夏凛「……………。」
夏凛(if)「投降しないのなら、ここで斬り伏せる。向こう側の私だとしても、容赦はしない。貴女達は他人だ、敵対する意思があるのなら…この世界の敵だ…!。」
一気に踏み込むと、瞬間移動とも言えるほどの速度で接近。
反応が遅れた3人は咄嗟に構えるも、その距離は完全に支配されていた。
刀を振うもう1人の夏凛は、瞬時に峰の方向に刀を持ち替え、横薙ぎに振るう。
バタフライが小型のシールドを張るも、簡単に破られてしまう。
峰が届く前に手を止めたもう1人の夏凛。
バタフライ「嘘……!?。」
夏凛(if)「よかったわね、これが刃の方向なら今ので終わってたわよ。まぁ…峰打ちでも骨の一つは砕けてたでしょうね。」
言葉を失うバタフライ。
もう1人の夏凛は、圧倒的な戦闘力を見せつけてその戦意を刈り取ろうとしていた。
無駄な殺生はしないということか……。
3人は息を飲む。
夏凛(if)「勇気と無謀を履き違えた者は真っ先に死ぬ。貴女達はこの脱獄が勇気の一歩とでも思っている訳?。残念ね、それは無謀よ…今なら、殺しはしない。牢に戻りなさい、勇者システムとプリキュアの変身アイテムをそこに置いてね…後、犬吠埼樹。お前は重罪人だ、これ以上罪を重ねると、神の許しを得られないわよ。どう足掻いても、お前の死罪は免れないの、諦めなさい。」
死罪……?。
その一言に、刈り取られそうになった戦意が一気に戻る。
特に、夏凛が。
夏凛「死罪って…どういうことよ!。あんた…こっち側の風を殺したんでしょ!?。今度はこっち側の樹まで殺すつもり!?。あの姉妹を…その手で殺すつもりなのッ!?。」
夏凛(if)「余所者に語る舌なんてないわ。あの姉妹は重罪人よ。姉は反旗を翻し、「ヤマザクラ」などという反抗組織を立ち上げた…そして、その妹である犬吠埼樹は…「世界樹」の巫女である、結城友奈様を攫おうとした。」
東郷「…世界樹の巫女…!?。ゆ…友奈ちゃんが!?。」
樹(if)「落ち着いてよ、こっち側の話であんた達の友奈さんじゃないから。もう、お互いに話すこともないでしょ?。この裏切り者が…!!。」
バタフライ「ちょ…樹ちゃん!?。」
樹(if)「何が結城友奈「様」だッ!!。高天原のせいであの人はあんな身体になってしまったんだッ!!。満開システムがもたらすものを隠しておいて…勇者はお前達の生贄じゃないッ!!。友奈さんが「キュアスカイ」と協力して天の神を倒した…血を吐きながら、身体の機能を一つずつ奪われながらもあの2人が手にした平和なんだよ!!。その対価が「御姿」で、キュアスカイは行方不明…それをッッ!!。」
怒りのままに、東郷の銃を奪って発砲。しかし、もう1人の夏凛には通用しない。
バタフライ「キュアスカイって…もう1人のソラちゃんのこと!?。」
樹(if)「そうだよ…あの人と友奈さんがいたから人類は生き残れた…高天原の連中は縋ってただけだ…それをまるで自分たちの功績のように世界に語っていって…枯れた神樹様に変わる守護システムの「世界樹」を作り上げた…そして、その神樹様の化身とも言える身体にされた友奈さんを生体コアとして使って…世界の安寧の為とか言って道具のように使ってるんだろ!?。」
その言葉を聞いた東郷と夏凛は怒りが湧いてくる。
それはもちろん、バタフライもだ。
東郷「…ふざけないでよ…この世界でも友奈ちゃんは大人達に利用されたというの!?。」
バタフライ「聞き捨てならないね…あんた…!!。」
夏凛「もう吹っ切れたわ…こうなったら、あんたを倒して先に進むッッ!!。勝負よ、もう1人の私ッッ!!。」
……………end。
もう1人の夏凛はこの世界最強の勇者。
この世界の友奈のことを知った3人は、その最強に挑む。
信念を胸に、最強に打ち勝て。
次回
第32話 譲れない信念、最強の勇者に挑め。