〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。

もう1人の樹から提案された脱獄計画。

事は順調に進み、後は出口を目指すだけだった。

しかしそこに、世界最強の勇者と謳われるこの世界の夏凛が立ちはだかる。

なんとかいなして、脱獄する計画だったがこの世界の友奈の事を知り、3人は激怒。

真正面からぶつかる決意をした3人は、この最強の勇者に敵うのか…。



第32話 譲れない信念、最強の勇者に挑め。

 

臨戦体勢を取る、3人。

 

もう1人の樹は、その陰に移動し、もう1人の夏凛はそんな3人の様子を見て一つ溜息を吐く。

 

そして、静かに双剣を構える。

 

すると、空気が一変。その場の空間が震える程の殺気を放つ。

 

 

夏凛(if)「従わないなら仕方ない、ここで死んでもらうしかないわね。」

 

 

東郷「こっちの夏凛ちゃんは聞き分けが無いわね…もちろん、あんなことを聞いて引き下がる事もここから逃げる事もいかないけど…!。」

 

 

先制攻撃で、東郷が速射を放つ。

身体の芯を捉えた正確無比なその弾丸にも関わらず、必要最低限の動きでかわすもう1人の夏凛。

 

 

バタフライがその隙をついて、拳を突き付ける。

 

振り返る事なく、拳の軌道を読んでは一本の剣を離して手首を掴む。

 

 

バタフライ「…何、後ろに目でもついてるの…?。」

 

 

夏凛(if)「こんな攻撃をもらっては、完全完成型勇者を名乗れないわ。」

 

 

合気の要領で掴んだ手首を捻ると、バタフライは身体が反転して地面に叩きつけられる。

 

 

夏凛「うおおおおおおッッ!。」

 

 

地面を蹴って突撃。

剣を構えて神速の域で振るい、互いの剣が火花を散らしながら競り合いが始まる。

 

 

夏凛(if)「向こう側の私はそんなに甘い考えを持つようになってるのね?。勿体無いわ…。」

 

 

夏凛「そんなあんたは、勇者部に入らなかった私が辿る姿を見てるみたいで吐きそうになるッッ!!。」

 

 

互いの剣が激しくぶつかり合う。しかし、もう1人の夏凛が圧倒的に違うのはその…筋力。

 

 

華奢な体躯とは裏腹に、技術とパワーのゴリ押しに夏凛は押され始める。

 

 

夏凛(くっ…競り合いに負ければ斬り裂かれる…!。)

 

 

バタフライ「夏凛ッッ!。」

 

 

押し切られる前に、バタフライが介入。

 

 

もう1人の夏凛の集中力を遮断させる。

 

 

夏凛(if)「邪魔を…!!。」

 

 

体勢を崩したもう1人の夏凛が剣を振り上げた直後、その刀身に弾丸が当たる。

 

その隙にバタフライが手のひらに小型の蝶形シールドを形成。

 

掌底による一撃をお見舞いした。

 

 

バタフライ「ナイス、美森っち!!。」

 

 

東郷「妙な呼び方を…まぁ、いいです。一度体勢を立て直しましょう。やはり、一筋縄ではいかない。」

 

 

並び立つ3人。

先ほどの一撃は大したダメージが入っておらず、汚れを払うかのようにその場に立つ。

 

 

夏凛「もう1人の自分だけど、化け物ね…3人がかりでも掠りやしない。」

 

 

バタフライ「でも、あたし達…いいチームじゃん。知り合ってまもないけど、これだけやれてるな上等だよ。」

 

 

東郷「しかし、状況はあまり芳しくないですよ?。このまま長引けば、彼女以外の勢力が介入してしまいます。それにまだ…力を出し切っていない。」

 

 

夏凛「そこが癪に障るのよ…あいつ、手を抜いてる…本気を出せば簡単に殺せるって言いたいわけ…?。」

 

 

夏凛(if)「作戦会議はもう終わったの?。」

 

 

肩を鳴らしながら歩き、一瞬のうちに背後を取られる。

 

 

夏凛「!!?。」

 

 

夏凛(if)「…遅い…!。」

 

 

飛ぶ斬撃を放ち、夏凛を吹き飛ばす。

 

 

東郷「夏凛ちゃん!?。きゃっ…!!。」

 

 

夏凛(if)「止まって見える…!。」

 

 

バタフライ「何コイツ…速すぎでしょ!?。」

 

 

夏凛(if)「あの地獄を制するのは速度だったからね。トコトン、鍛え抜いたのよ。」

 

 

バタフライの真横に現れ、反応が遅れたバタフライは空高くに斬り上げられる。

 

 

夏凛「くっ………!!。」

 

 

肩から血を流しながら、突撃する夏凛。

 

 

しかし、もう1人の夏凛は瞬きする事なくその攻撃をいなしていく。

 

 

圧倒的な力の差を前に、状況は悪化していくばかりだ。

 

 

夏凛(if)「どうしてそこまで頑張る?。貴女達には関係ない事でしょ?。」

 

 

夏凛「関係無くてもッ!。」

 

 

速度を上げていくが、それを上回る速度でもう1人の夏凛はただ防御に徹する。

 

 

夏凛「あんた達のやってることが許せないからよッ!!。あんたは私なんでしょ!?。なのに、こっちの友奈が利用されてそんな事になってることに何も思わないのッ!?。」

 

 

夏凛(if)「安寧のためなら仕方ないでしょ…それで、万人が救われるなら友奈も身を捧げた意味があるということよ。」

 

 

夏凛「このッ!!。心までマシーンみたいにッッ!!。」

 

 

夏凛(if)「逆に、なんでそんなに甘い考えを持つようになったのか…貴女が私なら、勇者になる為に積んだ努力を忘れたわけじゃないでしょ。」

 

 

打ち合いの合間に蹴りを入れ、斬撃を飛ばして夏凛を斬りつけていく。

 

 

夏凛「忘れてないわ…世界を守る為に戦う…それは勇者の本懐だって今でもそう思っている…。」

 

 

夏凛(if)「だったら、言わなくても分かるでしょ。私達は勇者…世界を守る存在だ。やり方は違えども、その本懐を成す為に動いていく…友奈がコアになったのもそう、役目の為よ。」

 

 

夏凛「…役目の為だったら…人の心は要らないの!?。私たちは勇者でも1人の人間には変わりないッッ!!。生きたいと願うのもおかしい事なのッッ!?。」

 

 

夏凛(if)「勘違いしないで、勇者は神が選んだ戦士よ。人より優れた能力を得たのなら、その役目を理解しなければならない。この身を犠牲にしてでも、その本懐を成していくのが本来の役目。貴女のそれは…!。」

 

 

一瞬の速度で迫るもう1人の夏凛。

 

 

隙を突かれた夏凛は咄嗟に防御体制に入るも……。

 

 

夏凛(if)「ただの綺麗事よ…!!。」

 

 

一閃。

その一撃は精霊バリアごと斬り裂き、ゲージが3メモリほど減少。

 

 

血が舞いながら、夏凛は地面に叩きつけられる。

 

 

バタフライ「くっ…夏凛ッッ!!。」

 

 

痛みに苦しむ夏凛の首元に刃が向けられたそれを、バタフライが弾く。

 

 

バタフライ「あんたの覚悟は聞いたけどね!!。やってる事が人のやる事じゃないんだよッッ!。」

 

 

肉弾戦のラッシュで、もう1人の夏凛を攻めるもその軌道を読まれて全て避けられる。

 

 

バタフライ(くっ…強い…これ、絶対に勝てないね…けど…ッッ!!。)

 

 

ラッシュの合間に繰り出される攻撃を、バタフライは小型のシールドで防ぎながら手数で迫る。

 

速度とパワーで勝てないなら…手数で攻めていく。

 

 

バタフライ「この世界のことを理解してないから、あんた達のやってる事に否定的にはなるけどねッ!。綺麗事でもなんでもいい、自分達の幸せを見つめられない奴にはきっとわかりっこないよッッ!!。」

 

 

語りかけながら、手を緩めないバタフライにもう1人の夏凛は苛立ちすら覚える。

 

そこに、東郷の狙撃が加わっていき戦闘は苛烈さを増していく。

 

 

東郷「役目と割り切って動くのは、兵士としては優秀でしょう。しかし…人間としては未熟よ。その役目を全うする事には尊敬するわ、それでも…犠牲になってもいいなんて私たちは思っていない。」

 

 

夏凛(if)「甘えね、現実を見ていない証拠ッ!!。」

 

 

射撃の長所が死ぬ距離に接近。

東郷は小型の銃に持ち替えて攻撃の隙を作らせない。

 

 

東郷「理想でもなんでもいいわ、私達は先の未来を見つめている。たくさん利用されたわ…たくさん泣いたし、たくさん悲しんだ…辛い思いもした…でもその先にあるものを信じて生き残ってきた。それは、人を守りながらも自分たちも生きたいからよッッ!!。」

 

 

完全に取った…かに思われたが、人離れした反応速度で弾丸を回避。

それは、髪の一部を掠めていくものに過ぎなかった。

 

 

東郷(今のを避ける!?。)

 

 

夏凛(if)「どうやら、貴女達と私達の考えは真逆のようね。この世界の勇者は神の兵士よ。悪鬼魔道から人々を守り、世界の維持のために生贄となる。死ぬまで戦い続けるわ、そう覚悟したから。」

 

 

刀の柄で、東郷を吹き飛ばして斬撃の荒らしで斬り刻む。

 

叫ぶ事なく東郷はその場に倒れ込む。

 

助けに向かおうとしたバタフライだが、その虚を突かれて肩に刺し傷を負う。

 

 

夏凛「東郷…あげは…くっ……。」

 

 

夏凛(if)「世界の維持のためにその命を散らせるならそれは本望だ。だから私はその役目から逃げた東郷と風を許さない。友奈を見捨てたも同然でしょ、対抗組織なんて立ち上げて人々の安寧を脅かす存在は悪鬼魔道と同格よ。この世界はもう…戦火に包まれることも無い。」

 

 

夏凛「ッ…ああああああッッ!!。」

 

 

気合いを入れて立ち上がる夏凛。

正直、身体はもうボロボロだ。

 

しかし、その限界を支えているのは紛れもない…信念だった。

 

 

剣を構える、その瞬間に夏凛の気迫が爆発する。

 

 

夏凛「私も…あのまま行けばきっとあんたと同じ考えだったでしょうね…馴れ合いも要らない…勇者は戦うための兵士…役目を全うして死ねればそれでいい…かつてはそう考えていたわ…でもね…!!。」

 

 

爆発的なその踏み込みは、もう1人の夏凛にも負けない速度だった。

 

 

夏凛「みんなは私のことを勇者としてではなく、1人の人間として見てくれたッ!!。人間のままでいられたのは友達になってくれたからよッッ!!。だから私は大赦の三好夏凛ではなく、勇者部の三好夏凛として戦ってきた!!。あんたは強いわ…その強さは万人を守れるほどにまで…でもね、それでも私とあんたが決定的に違うのは……「絆」の強さだ…!!。」

 

 

領域を支配する夏凛。

その攻撃は遂に届いた。

 

 

夏凛(if)「ちっ………!?。」

 

 

しかしそれは、頬に切り傷を入れた程度。

夏凛の渾身の攻撃は決定打にならなかった。

 

勢い余り、夏凛は転倒してしまう。

それも運の悪い事に…眼前に。

 

 

夏凛(…ダメ…だった…ハハ、我ながらあの強さには参ったわ…これ、終わったな……。)

 

 

清々しい顔をしながら、夏凛は覚悟を決める。

しかし、もう1人の夏凛は何もしなかった。

 

そして、何を考えているのか武器を納める。

 

 

夏凛(if)「…この私に傷を付けるとは…風と戦った時以来よ。この世界で唯一、私と渡り合えたのはあいつしかいなかったから…。」

 

 

樹(if)「夏凛……さん…。」

 

 

夏凛(if)「覚えておきなさい、樹。一度別れてしまって、突き進んだその道はね…もう戻る事は許されないのよ。あんた達は人として生きる選択をしたけど私は違う。戦士としての選択をした。風はそれをわかってて私と対峙したのよ。あの時の戦いは、お互いの意地のぶつかり合い…だから、死ぬ事に恐れなんて無かった。楽しかったわ、お互いにね。あいつに殺されるならそれもいいかなって。」

 

 

踵を返して歩くもう1人の夏凛。

 

 

夏凛(if)「行きなさい、私に傷を付けたその功績に免じて見逃してあげる。どうせ、「ヤマザクラ」に行くんでしょう?。だったら、もう1人の東郷に伝えなさい。」

 

 

夏凛(if)「ーー巫女・結城友奈の…「神婚」を始める。彼女はこの世界の新たな神…「星神」として永遠の安寧を約束する女神へと生まれ変わるーーと。」

 

 

樹(if)「神婚!?…なんてことをッッ!!。そんなことをすれば友奈さんは…!!。」

 

 

夏凛(if)「ええ、完全に人間では無くなるわね。でも、世界樹に限界が来ているの。それに、つい先日にとんでもない闇を纏ったプリキュアが現れた。その影響は計り知れない…高天原は「神婚の儀」を急ぐつもりよ。友奈を救いたいのなら、急ぎなさいとね。」

 

 

バタフライ(とんでもない闇?。まさか…ましろん!?。)

 

 

夏凛(if)「久しぶりに心が踊ったわ。もう1人の私、強くなりなさい。この私を越えるほどにまで。絆の力を信じているのなら…それを私に証明して見せて。次会った時は…容赦しないわ。」

 

 

もう1人の夏凛はそのまま去っていく。

 

 

その去り姿に、3人は言葉を発せない。

 

 

決して、相容れないお互いの信念と矜持。

 

 

それでも、共通することがある。それは……。

 

 

……勇者である…と。

 

 

………………end。

 

 





もう一つの世界線…最強の勇者であるもう1人の三好夏凛。

彼女は冷徹な戦士であり、唯一無二の強さを誇る兵士。

それでも彼女は…勇者である。

暗雲立ち込めるこの世界で巨大な戦いが起ころうとしていた。

その混乱に乗じて、「劇団」がヤマザクラ本部に現れて……。

次回
第33話 新たな力、キュアアグニ<バーニングフォーム>。
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