〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
割れた赤い空から現れたのはかつて、この世界を蹂躙した「ディメンション・モンスター」。
その圧倒的な生物的頂点に立つ存在は、天の神と結託してこの世界を人間から奪うつもりだった存在とも言える。
その姿はまさに悪魔…そう、この世界では神と悪魔が協力して人類を蹂躙していたのだった。
そんな規格外の敵は、残ったプリキュアと勇者達が押さえ込む。
その一方で、世界樹に突入したメンバーはこの世界の友奈の元に急ぐのだった……。
「神婚の儀」開始まで、残り8時間……。
外では「ディメンション・モンスター」の出現により、阿鼻叫喚と化す戦場。
過去の大戦を経験した者は、二度と会う事の無いと思っていた天敵の再来に絶望し、逃げ出す者も居た。
その原因は、闇の深度を増したましろが起こした「赤い空」の現象から来ているものだった。
そう、この展開も「劇団」が望んでいた事になるのだろう。
だから、この場に現れないしこの絶望的状況を何処かで傍観しているのかもしれない。
全ては彼らの思い描いた「展開」。
そして、その予想だにしなかった強敵の出現により、高天原は計画を早める可能性だってある。
それは何より、この世界の友奈を救い出す為に動いているヤマザクラとプリキュア、勇者達の焦りを加速させるものでもある。
どちらに転んでも、状況は最悪だ。
しかし、それでも戦士達は突き進む。
この世界の友奈の救出と…このもう一つの世界線に訪れた闇を打ち祓う為に……。
…………………。
〜世界樹・豊穣の間〜
風「何よここ…まるで、別の世界そのものじゃない…!。」
世界樹の内部はまるで違う世界のように広く、それは複雑な地形となっていた。
この「豊穣の間」と呼ばれる空間は、かつてこの場所に根を張っていた「神樹」が人類に分け与える恩恵を生み出していた場所…現在は、この世界の友奈の寵愛が満ち溢れている空間とも言える。
不思議と、気持ちが落ち着いてくる…まるで、包み込まれるかのように。
烈火「外の化け物騒動がまるで嘘みてェに思える…でもこれは、偽物の平穏だ。」
友奈「うん…この世界の私が生み出している幻想…だよね。」
アグニ「友奈、お前は大丈夫なのか?。その…同じ存在なんだろ?。だったら、持ってるその力も同じなはずだ。」
友奈「うん…大丈夫。ちょっと前の私だったらきっと大丈夫とは言えなかったかもしれないけど、今は…私もちゃんと「人」だから。」
夏凛「…友奈……。」
「最後まで、人として戦う…か…変わらないわね、貴女は。」
その声に、警戒の色を示す。
夏凛は覚悟していた。
こんな大きな作戦なんだ…「出てこない」はずが無いと。
ゆっくりと歩み寄るのは、すでに変身を済ませているもう一人の夏凛。
今度会う時は「本気」で来る…その言葉通り、前に対峙した時とは全く違うオーラを纏っていて。
夏凛「来てやったわよ。あんたの…望み通りにね。」
風「…やけに毒が抜けた夏凛だこと。だからこそ、この気迫なんだけどね…!。」
夏凛(if)「退く気は無い…どっちもね。ここからは互いの命のやり取りよ。この先に進むのなら、私の屍を超えていけ…それが出来なければ、この世界の友奈は救えない。」
友奈「外の状況を見て!もう、私達が戦ってる場合じゃないんだよ!?。」
夏凛「無駄よ、コイツは私だから…一番、よく知ってる。こういう時の私は…意固地だって事…!。」
風「やれやれ…躾甲斐がありそうね〜。友奈と烈火、鷹夜は先に行って。もう、時間を掛けられないし…この先、何があるかわからないからみんなで行きたかったけど…コイツを夏凛一人に任せるわけにはいかないでしょ。それに…こっちの私を殺した本人だ。ちゃんと向き合わないといけないからさ…こっちの樹との約束だし。」
夏凛(if)「行かせないと言っている…!!。」
目にも止まらぬ速さで接近。しかし、夏凛がその剣圧を受け止める。
夏凛「さぁ行って!。この世界の友奈を…頼んだわよ…!?。」
烈火「…おう、死ぬなよ…二人とも…!。」
託された友奈と烈火、アグニは先に進んでいく。
夏凛(if)「…私の剣を受け止めたか…成長したわね。まぁいい、先に進んだところで迷うだけ…最速で貴女達を沈めて3人を追うわ。そう、何も問題は無い。」
夏凛「舐めてもらっちゃ困るわね…逆境に立たされた時ほど、私達は負ける気がしないのよ…!。」
風「さすがね、勇者部の教えが染み付いてて感心したわ。さて…勝負よこっちの夏凛ッッ!。」
風は飛び出して大剣を振り翳す、しかしその太刀筋を片手で受け止める。
夏凛(if)「…私の信念はこの程度では叩っ斬れない。」
夏凛「だったら、その信念を木っ端微塵に切り刻んでやるわッッ!。」
脇に入る夏凛。
もう一人の夏凛は身体を捻らせて回避し、そのまま左足で蹴り抜く。
鳩尾に入ったその一撃は、夏凛の息を詰まらせて一瞬だけ、気が遠退く。
その瞬間を逃さないもう一人の夏凛は、確実に命を奪う為に首を狙う。
間一髪で、意識を保った夏凛は、すかさず間に刃を入れて防ぎ切るも、剣圧に負けて吹き飛ばされる。
風「ホント…嫌と言うほど強いわねあんた…!。」
大剣を振り、地面を抉りながら衝撃波を放つも難なく回避。
その切先は風の胸を捉えるが、横っ飛びでなんとか突きを回避。
しかし、脇腹を少しだけ抉り取られた。
風「ぐうっ…!?。」
夏凛(if)「…やっぱり、貴女の顔を見てるとあの時を思い出すわ…やはり、「同じ」なのね。」
風「何が…言いたいの…!?。」
夏凛(if)「私はもう戻れないのよ。道を違えたその日から、私は神の尖兵として生きる決意をした。今日はその覚悟を焼き付ける為に刃を振るいに来た。そう…私は過去と決別したい…戦士として生きていく為にッッ!!。」
風「…その為に…私達を殺して忘れようっての!?。舐めんなぁああ!!。」
振り翳された剣を大剣で受け止めた風は、すかさず足を入れて蹴り飛ばし、体勢を立て直す。
風「あんた結局、未練があるんじゃないのッッ!。何が、過去と決別したい…だ!。最強だかなんだか知らないけどね!!。孤独な戦士なんて、そんなの何も楽しく無いでしょッッ!。」
夏凛(if)「楽しい!?。何がよ…私は元々、勇者としての適性を認められてその英才教育を受けてきた人間ッッ!。あんた達温室育ちとは違うのよ!!。だから、戦士としての道を歩む他何も無いッッ!!。」
風「ぐっ…そうやって、勝手に決めつけるから他が考えられないんでしょ…人生まだまだこれからだってのに…その歳で道を閉ざしてんじゃ無いわよッッ!。」
互いにぶつかり合い、弾き飛ばされる二人。
風の後ろから、夏凛が飛びかかって刀を振り翳す。
激しくぶつかり合うその刃は、火花を散らしながら今度は夏凛と競り合う。
夏凛「…やっぱあんたは一緒だ…私もね、最初はそうだったわ!!。適性を認められた者同士、どんな奴らか見てみたら温室育ちの危機感も何も無い連中…現実を見ていない、ヒーローごっこをした集団だってね!!。」
風「あ…あんた、そんな事思ってたのッッ!?。」
夏凛「ツッコんでる場合じゃ無いでしょッッ!?。ぐっ…!?。」
夏凛(if)「だったら何故、貴女は変わった!?。何故、変われたッッ!?。」
夏凛「それはね…私を「勇者」として見てるんじゃなくて…一人の「人間」として見てくれるから…よッッ!。
競り合いに打ち勝ち、弾き飛ばす夏凛。
その隙を逃さずに、もう一度打ち込む。
夏凛「あんただってそうだったでしょう!?。気付いてないだけなのよ!!。みんながちゃんと自分を見てくれていた事にッッ!!。あんたは…勝手に自分の運命を縛り付けてるだけ…解ける紐を解いてないだけ…そこが…私との違いだって言ったでしょッッ!?。最強である為にあんたは「力」を求めた…でも私は…「絆」を貰った…だから、今の私の強さはみんなのおかげだって事ッッ!!。」
夏凛(if)「…そんな甘えに…あんな状況の中で「絆」なんて選べるかッッ!!。」
弾かれた夏凛は体勢を崩してしまう。
大技の体勢を取るもう一人の夏凛。
風は危機を感じて夏凛の元に駆け寄る。
夏凛(if)「灰燼に帰せッッ!!。」
ーーー神火斬月(じんかざんげつ)ーーー
凄まじい速度で空気を斬り、その摩擦熱により刀身が赤く染まった二振りの刀を振り抜いて強烈な斬撃を放つ。
それは、二人を容赦無く切り裂いていき地面を抉り取りながら壁を打ち抜いていく。
その場に佇む沈黙。
その一撃により、夏凛と風は身体中から血を流しながら倒れていた。
渾身の一撃…この技を耐えられた者は居ない。
放った直後に思い返したのは、あの大戦の中で共に戦ったこの世界の勇者達とプリキュア達の姿。
その全てを焼き払うかのように、思い出ごと飛ばしたその攻撃はもう一人の夏凛の覚悟を秘めていた。
動かない二人…流石に死んだだろう。その亡骸を見る事なく、踵を返そうとしたその時……。
夏凛(if)「……バカな……!!。」
風の折れた大剣が地面に突き刺さる。
あの斬撃を受け止める為に、盾になったのか……!?。
もう一人の夏凛は驚愕する。
そして、ゆっくりと立ち上がる夏凛。
見るからに満身創痍だ、立ってるのもやっとな程に。
それでも、切先を向けて鋭い眼光を向ける。
夏凛「……はぁ…はぁ……生きてる…風…?。」
風「がふっ……な…んとかね……でも…立てないわ……身体中が…悲鳴上げてる……。」
夏凛「…あれを…真っ向から受け止めた…からね……余波で…私もこのダメージ…だし…あんたは…もっと…ちょっと休んでて……私はまだ……戦える……ッッ…!!。」
夏凛(if)「…何がまだ戦えるよ…もう勝負ありよ…大人しく死んでおきなさい。それ以上の苦痛がないように…。」
夏凛「…うおおおおおおおッッ!!。」
声をあげて、気合を入れる夏凛。
髪留めを取って解き、唯一動く右手の刀に力を込める。
そして、切先を向けたまま一気に走り出す。
どう見ても、無謀な攻撃。
こんなバカな攻撃は見たことがない。
しかし何故か、もう一人の夏凛は動かないでいた。
そして、その刀に風の力が籠っていき。
夏凛「あんたに思い出させてやるッッ!。これが…「絆」の力だぁあああッッ!!。」
バーテックスとの戦いからこの戦いまでに築いてきた「絆」の一撃。
それは夏凛の「情熱」と共に、そしてもう一人の夏凛が失った「情熱」を否定する一撃。
夏凛「乾坤一擲ッッ!!。「蓮華躑躅(れんげつつじ)」ッッ!!。」
蓮華躑躅…自らのモチーフでもありその花言葉は「情熱」。
その一撃はもう一人の夏凛の左肩を貫通させて壁に突撃。巨大な陥没穴を形成させる。
夏凛(if)「があッッ…な…ぜ…何故…殺さない…確実に…心臓を貫けたでしょう……!?。」
夏凛「…死ぬ…くらいなら…もう一度、夢を見なさいよ……あの日失った「情熱」を思い出しなさいよ…私の…夢であった最強の勇者になったんなら…その力で…誰かの「絆」を守ってみせてよ…道なんていくらでも…戻れる…でしょ………。」
渾身の一撃を後に、夏凛は気を失った。
その言葉に、もう一人の夏凛は一筋の涙を流す。
夏凛(if)「…私は…わかってた…みんなが…「人」として見てくれていた事に…でも…それを認める前に…みんながバラバラになって…くっ…ねぇ…風…あんたもあの時…教えてくれたの…?。」
その手にかけた、もう一人の風の事を思い出す。
そして、死の間際に最後にこう言った……。
ーー…自分の本当の気持ちで…生きなさい…ーー
…と…。
……………end。
力と絆。
二人の夏凛は互いにぶつけ合った。
そして、失った情熱を思い出させる一撃を受けたもう一人の夏凛。
最強の勇者である彼女がこれから選ぶ道はきっと、光あるものなるだろう。
友奈と烈火、アグニは中心部に辿り着き、そして遂にもう一人の友奈と出会いを果たす……。
次回
第39話 神と人間、二人の結城友奈。