〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。


「満開」を発現させた友奈は「劇団」メンバーの一人、ギガスを撃破した。


敵の幹部を倒したが問題はそこではなかった。


「鎮魂の儀」。

死者の魂を天に送る為の儀式はこの世界では重要視されていた。
儀式が遂行されれば本当の意味で「死」を受け入れる。

時間が無い中、今日も烈火の捜索は続けられていた…。


第45話 君ありて、幸福。

~世界樹・跡~

 

 

風「…ダメね。瓦礫という瓦礫はほとんど撤去されたわ。」

 

 

だだっ広いその地には殆ど何もなく、世界樹の外壁を構成していた人工物は殆ど撤去状態。

霊的エネルギーの部分は消滅した為、事実上の撤去作業は完了ともいえる。その跡地には痕跡という痕跡は何もなく、烈火の武器であるメイスの欠片すらも見つからなかった。

正直、作業中にいくつかの遺体は発見されている。

しかし、その中には烈火の遺体が無いためこの事実もまた、彼の生存に対する謎も生んでいたのだ。

それでも、現状から察するに判断せざるを得ないだろう。

 

彼の「死」。

その判断はほぼ、ヤマザクラと高天原の間では浸透していた。

 

 

須美(if)「…残念ながら、時間が迫りつつあるわ。「鎮魂の儀」の準備をしなくてはならない。」

 

 

須美のその判断に、一同は言葉が全く出ない。

 

 

須美(if)「…わかってほしい。彼の「死」を認めたくないのも分かる…けど、怨嗟に飲み込まれて闇と化してしまっては、彼の尊厳を踏みにじることになるの。」

 

 

風「…死者はあるべきところに…という事か…。」

 

 

蒼葉「……バカ野郎が…。」

 

 

帰って来ない親友に、感情をずっと抑えていた蒼葉は思わずそう零してしまう。

 

 

樹「蒼葉さん…。」

 

 

樹(if)「仕方ないよ。この世界の理だ…受け入れるんだね。」

 

 

樹「そんな…。」

 

 

樹(if)「彼はこの世界と一人の女の子を救った勇者だ。だから、丁重に送ってあげなきゃいけない。それが、私たちの責任だ。」

 

 

園子「…れっかん…本当に…死んじゃったの…?。」

 

 

友奈「…だったら…お願いします…彼を…送ってあげてください…ッ!。」

 

 

その場にいられなかった友奈は思わず走り去ってしまう。

それを見たソラが、慌てて追いかけて行った。

 

 

~世界樹跡・海岸~

 

 

ソラ「友奈さん。」

 

 

追いかけてきたソラは、座り込む友奈の隣に座る。

 

 

友奈「…何故かな…悲しいはずなのに、不思議と涙が出ないんだよね…いっぱい、泣いちゃったからかな?。」

 

 

ソラ「…かも…しれませんね。」

 

 

ソラも隣に座る。

そして、何も話さない空気が数分、続いたところで友奈が口を開いた。

 

 

友奈「烈火君ってさ…いっつも、学校ではサボっていたんだよ?。」

 

 

短い間の思い出を語る友奈。

ソラはそれを真剣に聞く。

 

 

友奈「いっつも蒼葉君と一緒にさ、屋上で喋ってて…何回、呼びに行ったのか覚えてないくらいに。」

 

 

ソラ「それは…ロクでもありませんね?。」

 

 

友奈「でしょ?。それに、うどんを食べないの。あそこに住んでる人はみんな大好きなのに「飽きたからいらねェ」って言って、違うものを絶対に食べるんだ。そうだね…カツ丼が大好きだからそればっかり食べてたよ。」

 

 

友奈は続ける。

 

 

友奈「勇者部に入れたのは無理矢理なんだけどね?。サボり癖が直ればいいなって。風先輩が無理矢理、入部届けにサインさせてさ?。」

 

 

ソラ「部活はちゃんとしていたんですか?。」

 

 

友奈「これが意外にもね、毎日来てくれたよ?。まあ…東郷さんが目を光らせていたからかな?。活動は真面目にやってた方だね。」

 

 

思い出を語っていく中、友奈の声が震えていく。

ソラはそれを止める事なく、ずっと話を聞く。

 

 

友奈「…部活なんて嫌だって言いながら…ずっと、手伝ってくれてね…だから……。」

 

 

ソラ「友奈さん…!。」

 

 

ソラは友奈を抱きしめる。

 

 

ソラ「ごめんなさいッ!。私があの時…動けていた私があの時に手を掴んでいれば…!。」

 

 

友奈「ソラちゃん……。」

 

 

ソラ「私は…ヒーロー失格です……。」

 

 

友奈「…ううん…でも…これが正解だったのかもしれない。烈火君もきっと…そう思ってる…。」

 

 

2人は、澄み渡る青い空を見上げながら、そう思う。

そして、「鎮魂の儀」が開始される時間が迫って来た。

世界樹の跡地には、簡易的に作り上げられた祭壇と慰霊碑が置かれており、高天原とヤマザクラの犠牲者の名前が書かれていた。

 

その中には、高天原の指導者「乃木園子」の名前も彫ってあった。

 

 

園子「…こっち側の私は…守護と野心の間で揺れ動いてたんだね。」

 

 

洸「園子…。」

 

 

園子「もしかしたら、それも私の可能性だったって事だよね。元の世界で大赦がそうなってしまってたら…私もそうなってたかもしれない。」

 

 

洸「…それでも、お前はお前だろ?。」

 

 

園子「…うん…!。」

 

 

須美(if)「…それでは、今回の戦いで巫女「結城友奈」を救い、人類同士の戦いに終止符を打った功労者…菱咲烈火氏の名を彫って、鎮魂の儀を開始とする。」

 

 

その宣言を聞いた、神官クラスの人間達が慰霊碑に向かっていく。

 

 

友奈(…これが…お別れ……なんだね……気持ち…伝えられなかったな…。)

 

 

身体を震わせる友奈の手を、もう1人の友奈がしっかりと握った。

意外そうに、驚く友奈。

しかし、もう1人の友奈は真剣な眼差しで慰霊碑を見つめる。

 

烈火の名を彫ろうと、1人の神官が慰霊碑に触れた瞬間。

 

 

「儀式中に申し訳無いわね。でも…させないわ。」

 

 

少女の声と共に、その場が騒ぎ立つ。

 

 

須美(if)「誰ですか!?。神聖な儀の邪魔をする者は!?。」

 

 

「そちらのしきたりなんて知らないわ。私は私の目的がある。」

 

 

静かに降り立つ少女。

 

 

郡千景。

その本人だった。

 

 

友奈「ち…千景さん!?。」

 

 

千景「私はまだ、彼から擬似勇者外装を回収していない。勝手に成仏はさせないわ。」

 

 

鎌を向け、敵意を露わにする千景。

 

 

あげは「待ちなって!。烈火はここにはいない!。生きているかすらわからない状況なんだよ!。」

 

 

千景「分かっているわ。だからこそ、この儀式を止める必要がある。だって、儀式が始まれば仮に生きていたとしても実体は消えてしまうのでしょう?。」

 

 

芽吹(if)「ええ、そうよ。この儀式は魂を怨嗟に飲み込まれないようにするための儀式…生死不明者は儀式の対象となるのがこの世界のしきたりよ。」

 

 

千景「そう…へえ…この慰霊碑…特殊な鉱石で出来ているわね。これを壊せば、儀式は出来ない…。」

 

 

友奈「させない!!。」

 

 

変身した友奈は、慰霊碑の前に立つ。

 

 

友奈「烈火君だって覚悟を決めたんだ!。もし、死んじゃってたらその魂をちゃんと送ってあげなきゃいけない!!。」

 

 

千景「…貴女は烈火に会いたいのでしょう?。なら、この儀式に関しては反対なはず…利害は一致していると思うのだけれど?。」

 

 

友奈「もちろん会いたいよ!。でも…私個人の気持ちで彼を振り回したくない!。だから、私も覚悟を決めるんだ!。ちゃんとお別れすることを!!。」

 

 

友奈のその言葉に、変身した一同全員が慰霊碑の前に立つ。

 

 

アグニ「俺はあいつに信じられたからな。だから、あいつの意思を背負っていくさ。お前の目的のためにあいつの生き様を穢してたまるか!!。」

 

 

千景「くだらない。なら、貴方達を沈めてこの慰霊碑を破壊させてもらうわ!。」

 

 

飛び出した千景。

その攻撃を、受け止めたのは風とバタフライ。

 

 

風「短かったとはいえ、れっきとした部員だったからね…!。」

 

 

バタフライ「お別れは辛いよ?。けど、あたし達が後ろを振り向いていると、彼に心配をかけてしまう!。」

 

 

攻撃を弾き、千景は後退するも無数の分身を発現させて個々が突撃。

本体は、友奈とスカイ、アグニと交戦する。

 

 

アグニ「ちッ…烈火はお前の計画の一部じゃねェんだぞ!。」

 

 

千景「いえ、一部ね。烈火の疑似勇者外装は私の計画の為に作ったもの…それさえ回収できれば儀式でもなんでもやるといいわ。」

 

 

スカイ「ッ!。それでも貴女は彼の家族ですか!?。」

 

 

千景「いいえ。私には何も…要らない。」

 

 

以前よりも増した戦闘能力。

無数の分身と共に繰り出される攻撃に、防戦一方となる。

そこへすかさず友奈が飛び出し、千景の斬撃を防ぎきる。

 

 

友奈「千景さん!。烈火君は今でも貴女の事を家族として見ています!。例え、血が繋がっていない姉弟だとしても…一緒に過ごした時間は本物のはずです!。」

 

 

千景「だからどうしたというの?。それが本物だとしても…私が数百年もの間に消化しきれなかったこの「怨み」はどこに吐けばいいの?。」

 

 

友奈を蹴り飛ばし、慰霊碑に向けて振りかざされる鎌の一撃。

地面を蹴った友奈はその刃を左肩で受け止める。

 

舞い上がる鮮血。ざっくりと突き刺さったそれは、深く入り込む。

 

 

友奈「ああああああッッッ!!。」

 

 

激痛に、思わず声を上げる友奈。

滴り落ちる血がそのダメージの大きさを物語らせる。

 

 

友奈「はぁ…はぁ…はぁ…!。」

 

 

千景「分からないわね本当に。身を挺してまで何故、その慰霊碑を守るのかしら?。」

 

 

友奈「きっと…彼も…こうしているはずだから…。」

 

 

友奈は抜けさせまいと、その刃を左手で握り締める。

余りの強さに、千景は少し驚く。

 

 

友奈「千景さん…貴女のその怨みは私たちでは理解できません…貴女の事を少しでも分かりたくて…元の世界で勇者御記を調べてみました…けど…名前すらなくて…ごめんなさい。」

 

 

千景「謝らなくてもいいわ。どのみち、わかってもらいたいなんて思わないから。いいから、そこをどきなさい。貴女が死ぬ羽目になるわよ。」

 

 

友奈「どきません。烈火君だけじゃない…この慰霊碑にはこの戦い…いや、この世界がまた一つになるまでに犠牲になってきた人たちの想いが集約されている…これを破壊したらきっと…命を賭して戦ってきた人達が行き場を見失ってしまう。」

 

 

須美(if)(…銀…そのっち…。)

 

 

友奈「だから私は…その人たちの思いを守りたいんだ…!。それが私の覚悟…烈火君に笑われない様に生きていく…私が彼に「さよなら」と言えるように…この世界を一つにした彼の頑張りに応えれるように…今度は私が…その人たちの「想い」を守っていくんだ!!。」

 

 

力強い友奈の言葉。

この世界の戦士たちは皆、言葉に耳を傾け…。

 

涙した。

 

 

千景「…感動的な言葉ね。でも、私には届かない。」

 

 

4体の分身が、友奈の脇を通っていく。

 

 

慌てて、援護に向かおうと動き出す一同。

しかし、その距離的には間に合わない。

一斉に、慰霊碑に向けて刃を翳す分身たち。

 

 

その時、一台のバイクの音が聞こえてくる。

 

 

この状況に似つかわしくない音。

 

 

そして、一つの影が目にも止まらぬ速さで分身たちの背後を取った。

 

 

「…紅迅雷…!!。」

 

 

少年の声が鳴り響く。

 

 

振りむいた分身たちは、横薙ぎ一閃をまともに受けて消滅していく。

 

 

靡くボロボロのマント。

担ぐメイス。

 

そして…赤髪の少年。

 

友奈はその姿を見て、一気に涙が溢れ出てきた。

 

 

友奈「あ…あ…あ…ッ!!。」

 

 

千景「!!!!。」

 

 

「よォ…生きてたらまた会おうって言ったろ?。」

 

 

蒼葉「……あのバカが…心配かけやがって…!。」

 

 

 

 

烈火「菱咲烈火、只今帰還…ってな!。」

 

 

 

 

……………………end。

 





「鎮魂の儀」の妨害に現れた千景。


慰霊碑の防衛に専念する一同は、千景の猛攻により破壊のピンチに陥った。


友奈の奮闘も虚しく、まさに破壊される寸前…。

その時、「彼」が帰ってきた。

彼をここまで送り届けたのは、姿を消したこの世界のプリキュアの一人であるもう一人の「聖あげは」。

そして、彼女から語られる。


……プリキュアがこの世界から姿を消したその理由を。

次回
第46話 真実、消失した伝説の戦士たち。
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