〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

51 / 146
前回のあらすじ。

アルビオンに辿り着いた一同。

もう1人のあげはの思いを聞き、この世界の「闇」の部分について理解した一同。

だが、その最中に「劇団」のシャロが現れる。

鬼気迫るその表情に、違和感を感じる一同。

彼女は生き残るために、最後の戦いを仕掛ける……。


第48話 哀しみのシャロ。

シャロ「キュアアグニィィィィ!!。」

 

大型のパペット「木人」を操るシャロ。

その目は何かに必死になった目…一同は彼女のその違和感に気付く。

 

 

ソラ(彼女に何が…!?。)

 

 

鷹夜「ちっ…!!。」

 

 

横っ飛びで避けた鷹夜は、キュアアグニに変身。

木人の拳を受け止める。

しかし、その重さに徐々に押しつぶされていく。

 

 

アグニ(ぐぐ…ッ…なんてパワー…だッ…!?。)

 

 

歯を食いしばりながら耐えるアグニ。

それを救おうと、ソラ達がミラージュペンを構える。

 

しかし……。

 

 

アグニ「いいッ!。コイツは俺が狙いだ、だから俺が相手するッッ!!。」

 

 

ソラ「しかし…ッ…!。」

 

 

アグニ「いいんだッ!。俺にやらせてくれッ!!。」

 

 

アグニの必死な声に、ソラ達は従うしかなかった。

そんなシャロは他に目をくれず、アグニのみに狙いを絞る。

 

 

シャロ「キュアアグニッ!!。貴方を殺せば私は…ッ!。」

 

 

アグニ(…なんだこの目…?。)

 

 

猛攻を繰り広げるシャロに対応しながら、アグニはその瞳の奥にある「何か」に目を付けた。

 

それは……。

 

アグニ(…怯えている…?。)

 

 

怯えだった。

 

 

シャロ「オーバーパペットッッ!!。」

 

 

シャロの呼びかけに、巨大な腕を振り翳す木人。

その連携に、アグニは徐々にダメージを受けていって。

 

 

アグニ「ぐはッ……!?。」

 

 

勢いよく吹き飛ばされては建物を貫通していく。

 

全身を襲う痛みに、顔を歪めるアグニ。

しかし、それを待つ事なく追撃が来る。

 

咄嗟に炎の壁を作って木人の拳を焼き払い、その射程圏から脱出。

操るシャロに向かっていく。

 

その真意を聞きたい…。

 

単に敵として迎撃するのではなく、アグニはシャロに問い掛けたかった。

だからこそ、全員の手を止めたのだ。

 

 

アグニ(1対1なら話が出来る…コイツの真意を聞かねェと…殴れねェ!。)

 

 

シャロ「うおおおおッッ!!。」

 

 

叫び声を上げながら、右手を振り上げると不可視の糸がアグニを切り裂く。

 

 

アグニ「ちぃ…ッ!?。」

 

 

鮮血が舞いながら、アグニは拳を固める。

だが、息継ぐ暇も無く木人の攻撃が迫って来た。

流石に、2対1では劣勢状態に立たされるアグニ。

木人の攻撃を避けては、その脇を通ってシャロの糸が襲い掛かる。

 

 

アグニ「クソ…これじゃ、話が出来やしねェ…ッ!。」

 

 

シャロ「「処分」は嫌…私…死にたくない…ッ!。」

 

 

アグニ「…死ぬ…?。何を……。」

 

 

友奈「…あの子…泣いてる…。」

 

 

東郷「えっ……?。」

 

 

あげは「うん…わかるよ。あの子…タカ坊を倒さないと…殺されちゃうんだ。」

 

 

ソラ「なんて酷いことを…まさか、アデルが…ッ!?。」

 

 

洸「クソ…「劇団」め…失敗を繰り返す奴は要らねェってか!?。」

 

 

樹「だ…だったら逃げれば…!。」

 

 

洸「いや、出来ねェんだろ。「劇団」はアデルが筆頭で、ナイアルがその参謀みてぇなものだ。勧誘を受けた奴らは「管理」されちまってる。だからだろ…シャロがあんなに必死になるのは…。」

 

 

洸(クソ…奴は敵なんだ…同情の余地なんて無ェ…でも何故だ…何故、こうも心が痛ェんだよ…!。)

 

 

「劇団」への憎しみが強い洸。

もちろん、故郷を滅ぼした時にシャロもいた。

 

許せない敵…許してはいけない敵…。

 

しかし、シャロが流している涙を見て、洸は自分の気持ちに迷いが生じる。

そんな洸を見た園子がそっと、彼の手を握って来て。

 

 

園子「…正直にね、洸。辛いよね…あの子、生きたいためにタカ坊を殺そうとしてるんだもの。ねェ洸…あの子だって、「被害者」なんじゃないかな?。」

 

 

洸「…被害者…?。」

 

 

園子「…うん。だからかな…私、余計と許せないんだ。「劇団」っていう組織…いや…アデルが。」

 

 

握る園子の手が,強くなる。

 

普段はそんな感情に駆られる事のない彼女が珍しく、怒りに打ち震える。

それは、他人の命を弄ぶアデルに対して。

 

 

そんな中、シャロはアグニの首目掛けて束ねた糸を突きつける。

 

間一髪で、受け止めたアグニ。

その炎で糸を焼き払う。

 

 

アグニ「おいお前ッ!。殺されるってなんだッ!?。「処分」ってなんだッ!?。」

 

 

シャロ「…アデルに言われた…次、失敗したら…「処分」されるって…私は生きたい…私が生きるために貴方を殺す…貴方を殺せば…アデルは許してくれる…だから…ッ!。」

 

 

アグニ「待てよ!。アデルがお前を殺すのかッ!?。」

 

 

シャロ「「舞台」について来れない役者は要らない…アデルはそうやって簡単に切り捨てる…昔はもっといた…でも…役に立たない人から「処分」される…「処分」されたら…名前すら残らない…生きていた事実だって全部…消されるんだ…ッ!。」

 

 

生きていた事実を消す…。

 

それは、死よりも酷い事。

誰の記憶にも残らない…元々「居なかった」存在として抹消される。

 

「処分」とはそう言った、存在すらも否定する最悪の死そのものだった。

 

だからこそ、シャロは怯える。

 

シャロは元々、孤児だった。

降り頻る雪の中、唯一の特技であった人形作りで生計を立てていた。

しかし、誰も買わない。

次第に飢えと寒さで死が近づいて来る毎日…親もいない、身寄りもいない…こんな性格だ、誰も構わない。

いつしか、その街の中でシャロは厄介払いとされていた。

時には人身売買を生業とする悪人に連れ去られそうになることもあった。

優しくしてくれた人もいた…しかし、その人達は下心があって近付いて来ていたのだ。

銀髪の長髪…見窄らしい見た目とは裏腹に顔の整った美少女。

その見た目からか、身体目的で近づいて来る者も少なくはなかった。

 

もう、何も信じられない。

 

人間不信に陥ったシャロに転機が訪れる。

 

それは、「劇団」の勧誘だった。

もう死んでいく身…何もかもがどうでも良くなっていた。

だからこそ、その勧誘に敢えて乗った。

 

だが、「劇団」の勧誘は予想を遥かに上回るもの…。

 

これまでになかった光景…自分を蔑んでいた者達への復讐。

 

シャロは「心」を捨てていた。

誰も助けてくれなかった世界へ、何の慈悲も持ち合わせていない。

 

恐怖…喜び…哀しみ…その全てが欠落している…はずだった。

 

しかし…実際に「処分」されていく団員達を見て、いつしか「恐怖心」を植えられていたのだ。

 

そして、今度は自分の番…。

 

あんな目に遭うのは嫌だ…やっと手にした生への欲…またあの頃に戻るくらいなら…生きた証を消されるくらいなら……。

 

 

ーー他が死ねばいい。ーー

 

 

思い出した怯え中、シャロは他者を踏みつけてまで生きる道を選んだのだ。

そんな、必死な彼女の姿を見てアグニは怒りに打ち震える。

 

それは…アデルに対する怒り。

 

感情が欠落したはずのシャロが見せている涙。

 

その意味に、アグニは諸悪の根源に対して怒りを覚える。

その瞬間、全身に滾る力が溢れ出しては、それが炎となって具現化した。

 

今までに無いくらいの火力…。

それは、仲間を切り捨てる「劇団」に対して…アデルに対して。

 

シャロの次はましろかもしれない…。

 

そう思うと、アグニの炎がさらに強くなる。

 

 

アグニ「…ふざけんなよ…仲間だろうが…それを…存在すら消すだと…おいッ!!。」

 

 

アグニはシャロに向かって走り出す。

 

驚いたシャロは木人をけしかけるも、片手で拳を受け止めてはその炎で燃やし尽くす。

 

追い詰められたと感じたシャロは、死への恐怖によって体が震え出す。

 

しかし、アグニはシャロに手を出さなかった。

 

 

アグニ「負けるんじゃねェッ!!。アデルがそんな奴なら俺は…あいつをぶっ飛ばすッ!。生きたいならアイツの支配から逃げろッ!!。」

 

 

シャロ「…無理……だって…!。」

 

 

上着を捨てるシャロ。

その腕には、ピエロのタトゥーが。

 

 

シャロ「これは契約…「劇団」の団員である以前に…監視でもある……。」

 

 

アグニ「ッ…だったらその縛りから解いてやるッ!!。お前は生きたいんだろッ!?。」

 

 

シャロ「生きたいよッ!。でも…これがある限り、私は…「劇団」の<人形師>からは逃れられない…わかってた…だから…貴方を殺して…ッッ!。」

 

 

アグニ「ここで俺を殺した所でお前はその呪縛から逃れられる訳じゃねェだろッ!!。だったら、変えてみせろよッ!!。自分自身の力で、生を勝ち取りやがれッ!!。」

 

 

シャロ「それが出来たら…私は昔のような自分には…なってない…ッッ!。」

 

 

大粒の涙を流しながら、糸を無数に束ねて巨大な刃を形成。

最大攻撃なのだろう、これで決めるつもりだ。

 

アグニは避ける事なく,それを真っ向から受け止めるつもりでいた。

 

シャロのその「哀しみ」を受け止めてその先の「未来」を見せるために。

その姿こそまさに闇夜を照らす戦士…太陽神の力を持った「キュアアグニ」そのもので。

 

 

シャロ「キュアアグニィィイイイイイイッッ!!。」

 

 

振り翳される巨大な刃。

アグニはそれを両手で受け止めた。

 

噴き出す炎、少しずつ燃やしていくがその重さに押されていく。

 

 

アグニ(受け止めるんだ…これがコイツの哀しみなら…俺は…受け止める責任があるッッ!。)

 

 

額に触れ、血が流れ落ちる。

このままでは、真っ二つに裂かれるだろう。

しかし、アグニはその全てを受け止めて…弾く気持ちでいた。

 

 

心配そうに息を飲む一同。

烈火はそれを静かに見守る。

 

 

アグニ「シャロッ!!。仁義に反した野郎は俺がぶちのめしてやるッ!。だから、お前は安心していいッ!。生きる権利は誰にだってあるんだッ!!。だから…ッ!。」

 

 

ーその哀しみごと、俺の炎が燃やし尽くしてやるッ!。そして、お前の道に「光」を照らしてやるッッ!。ー

 

 

その言葉と共に、バーニングフォームへと姿を変えたアグニ。

その炎はシャロの刃を焼き払い、あたりに光をもたらす。

 

 

シャロ「あ…あ…負けた…負けちゃった…嫌だ…「処分」されちゃう…ッ!!。」

 

 

絶望に打ちひしがれ、泣き崩れるシャロ。

ピエロのタトゥーが怪しく輝く。

 

それを見て、発狂しそうになるシャロ。

しかし、アグニがそのタトゥーに触れる。

 

すると、その部分が激しく燃え始めたのだ。

だが何故か、その炎は全く熱くなくて…寧ろ、安心感を与える暖かさを感じさせた。

 

徐々に消えていくタトゥー。

それを見て、シャロの瞳に光が戻り始める。

 

 

アグニBF「…お前の人生はお前のもんだ。クソ野郎に言いようにされんな、これからは自由だ。だから…好きなように生きりゃいい。だがその前に…めちゃくちゃして回ってた事をちゃんと謝るべきだけどな?。」

 

 

ポンっと、シャロの頭に手を置くアグニ。

その瞬間、安堵からか大粒の涙が溢れて来る。

 

それは恐怖ではなく安心感…ずっと欲しかった「人の温もり」。

 

 

シャロ「うっ…ひぐっ…うあああああんッッ…!!。」

 

 

その場にこだまするシャロの泣き声。

それを見た一同も、彼女の抱えていた哀しみを理解した。

 

 

洸(…わかった気がする…俺は…コイツらが許せないんじゃない…だからこそ、ぶっ潰さなきゃならねェ…全ての人を哀しみに陥れる「劇団」を…!。)

 

 

やっと手にした「人の温もり」。

 

 

今日この日、シャロは……。

 

 

やっと、前に進めたのであった。

 

 

…………………end。

 





シャロの哀しみを全力で受け止めたアグニ。

逃れられない死の恐怖から救い出し、シャロは本当の意味で幸せを手にしたのだった。

しかし、彼女のやって来たことは到底、許されるものではない。
いくつもの世界を混乱に陥れ、時には滅ぼしてきた悪魔の集団である「劇団」の団員という烙印は消えないもの…。

それを背負い、生きていくこそが償い…。
保護もあり、しばらくは彼女をアルビオンに安置することにした一同。

そして、出会うことになる。

この世界の…もう1人のましろと。

次回
第49話 邂逅、もう1人の天使。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。