〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

60 / 146
前回のあらすじ。

「外」にやって来た一同。

そこで見つけたビデオカメラに、もう1人のソラが映り込んでいた。

ようやくその足取りを見つけた一同。

そして、一同はもう1人のソラがいたとされる「兵庫」へと辿り着いたのだった。


第57話 約束の地へ。

 

崩壊した日本列島。

東の方向に突き進み、一同はとうとう目的地の「兵庫」へと足を運んでいた。

 

都会だったのだろう…大きなビルの残骸もそのままで、3年間も人の手が加わっていない海は水が透き通り、海底には数多の人工物が沈んでいた。

雑草が生い茂り、完全に人間社会から隔絶された世界…皮肉だが人間が居なくなればこうも自然環境は改善されるのだろう。

 

地球という星は、人の手によって汚されている。

元々そこにあった自然も生活圏拡大のために消滅し、そこに生きる生態系にも変化が訪れる。

元は、彼らの住処でありながらも奪われ、そして害として駆除される。

 

人という生き物は勝手だ。生態系の頂点に君臨している以上、この星は人間の支配から逃れられない。

そして、人は進化していく。身につけた技術と共に、神の領域にまで踏み込めるほど優秀だからだ。

 

だからなのだろう…天の神が怒り、バーテックスという先兵を送り込んで人間世界を壊滅にまで追い込んだのは。

だが、神の考える事は誰も理解出来ない。これが、粛清というならばやはり神も勝手なのかもしれない。

 

人と神…決して相容れない存在とはこの事なのかもしれない。

 

そんな環境を目の当たりにした一同は、その気持ちを噛み締めながらも周辺の調査を始める。

あわよくば、生存者がいるかもしれない…。

僅かながらの、小さな希望を抱きながらも人間の痕跡を探していく。

 

 

ウイング「…ダメですね。やはり、人の気配は全くしません。」

 

 

空を飛びながら、捜索するウイング。

バーテックスに見つからないよう、低空飛行で探していた。

 

 

若葉「…やはり、本州にいた人達は全滅してしまったのか…?。」

 

 

杏「えっと…まだわかりません。根気よく探していきましょう?。」

 

 

引き続き、捜索するメンバー。

アグニはただ、海の方向を見つめていた。

 

 

烈火「なんだよお前、黄昏てんのか?。カッコつけやがって。」

 

 

アグニ「んなわけねェだろ。いや…ただ、信じられねェだけさ。」

 

 

烈火「何が?。」

 

 

アグニ「俺たちの世界では、こういった惨状は無かったからな。人類史で最も愚かな事をしたのは戦争だけだ。」

 

 

烈火「…ま、こっちも似たようなものだぜ?。実際、俺も最近まではこんな歴史があったなんて知りもしなかったからな。」

 

 

アグニ「なんだと…?。」

 

 

烈火「俺たちの世界はまるで鳥籠だ。「四国」という鳥籠の中で人が平和に暮らしてる。実際、こんな化け物がいたなんて教育もされてねェからな。ただ、壁の外には「未知のウイルス」が横行している。だから、四国から出るなって。それだけさ。」

 

 

アグニ「何の疑問も抱かなかったのかよ?。」

 

 

烈火「俺はそこまで「外」に関して、興味が無かったからな。自由に過ごせりゃそれでいいって思ったさ。ま、壁が消えてからはパーっと見てみたい気持ちはちっとはあったけどな。」

 

 

アグニ「…終末戦争…神と人が決別した日…か…。」

 

 

烈火「人間にブチギレた神様の起こした戦争…ま…気持ちはわかるけどな。ただ…あの日に何万人も死んだんだ。俺らの時代では風化しちまったが、3年後のこの世界では奴らに関して憎悪を抱いてる奴の方が多い。生き残りが居たとしても、どのみち争いの姿勢は変わらねェだろうさ。」

 

 

アグニ「…つくづく、喜べねェな。」

 

 

烈火「まぁな。」

 

 

2人で海を見つめていると、スレイヤーが声をかける。

 

 

スレイヤー「おい馬鹿2人!。サボってねェで少しは手伝えよッ!。」

 

 

烈火「あいよッ!。さて…うるせェ奴がいるから俺は行くぞ?。鷹夜も早く来いよ?。んなとこ見てても何にもねェぞ〜?。」

 

 

アグニ「ああ、すぐに行く。」

 

 

アグニは自分の掌を見る。

 

 

アグニ(こんな寂しい世界になってるなんてな…アイツらの世界、今からが大変なんじゃないか?。)

 

 

その時、友奈が声を上げた。

手には、何やら手帳を持って全員を呼ぶ。

 

 

友奈「お〜いッ!。すごいもの見つけたよ〜!?。」

 

 

烈火「おまッ!。その手帳は…ッ!。」

 

 

友奈「うん、私達の時代でも見た…あの手帳だよ。」

 

 

自分たちの世界で知った「プリキュア」の存在。

その手帳が、この時代でも見つかった。

 

あの時は300年もの間、放置されていたものだから風化が進んでいた。

しかし、この手帳は3年前のもの…つまり、読めなかった部分までもが的確に記載されていたのだ。

 

そして、友奈がそれを広げて全員がその文面を見る。

こう、書かれていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーー。

 

2015年 7月30日。

 

天災の日がやって来た。

私は、ジャーナリストとしてこれを後世に残したい。恐らく、生き残れないだろうから…もし、この先遠い未来でこれを見つけた者が居れば持ち帰って欲しい。

天から、災厄が降り立った。それは天変地異や異常気象などといった類のものではない。

…一言で言えば、「化け物」。こんなものが、現実に存在していたのか…私は、受け入れられないでいた。真実を追う仕事をしているのにだ。それほど、この事態は頭の中で整理がつかないのだ。

人々が喰われていく。長年、築いて来た文明が蹂躙されていく。

僅か、数時間で街の人達は肉塊へと姿を変えていく。目の前には説明し難い惨状が広がっていて、畏怖している暇もなかった。

逃げ場などどこにも無い。ライフラインも全て停止、仮に生き残れたとしても限りある資源の中ではその先にあるものは「死」以外、逃れられない。人は醜い生き物だ、自分が生き残るためには略奪も辞さない。弱い者から淘汰されていく。

だから私は最後まで記録を残すことにした。最後まで、自分の役目を全うし、後世に伝えていく…これが今、私に出来る最善の事だ。

そう思っていた…だが私は「奇跡」を目の当たりにしたのだ。

 

伝説の戦士「プリキュア」。

 

その奇跡は、そう名乗った。

彼女はたった1人で迫り来る化け物の群れを倒していく。しかし、徐々に傷を負っていき、圧倒的物量差によって倒れるのも時間の問題かと思われた。しかし、彼女はこう言った。

 

「四国に行きなさい、そこには…「勇者」がいる。」

 

…何のことかさっぱり分からなかった。だが、助かりたい人々は彼女の言う通り、四国に向かって移動し始める。

 

私はそれでも、この場から移動しないこととした。

一時の間に起きたこの「奇跡」を、記録しないわけにはいかない。

彼女が命を賭して、人々を救うならば私は最期まで「伝える」事をやめない。

この命が消えたとしても、後世に伝わるのであればそれで構わない。そう思って。

 

………それから、数時間後…彼女は…「討ち勝った」。

信じられない…あれほどの物量差をたった1人で巻き返したのだ。しかし、彼女は満身創痍…私は持てる知識の限り、彼女を治療した。

 

治療を終えた後、彼女は回復を待たずに立ち上がる。私の覚悟を、汲んでくれたのか「逃げろ」とは言わなかった。

そして、こう伝えて欲しいと懇願された。

 

「もし…私を追って、誰かがここに来た時…こう伝えてください。私は見つけました。「怨嗟の病」を治す方法を…しかし、私には時間が無い。だから、この地へと来て欲しい。そこに、全てを解決する「光」がある。」

 

ーー「諏訪」へーー

 

そう言い残して、彼女は去っていった。どれほどの時が経つかも分からない、誰も来ないかもしれない。しかし、私は託されたのだ。

彼女を追って、これを見つけた者は向かって欲しい。

 

約束の地「諏訪」へと………。

 

この手帳をここに置いていく。だから、遠い未来でもいい…これを見つけたなら、彼女の願いを叶えてやってくれ。

それが、私に出来る最期の…「恩返し」だ。

 

ーーーーーーーーーーーー。

 

手帳の文面はここで途切れた。

 

友奈はその手帳を、若葉に託す。しかし、スカイはそれを受け取ってミラージュペンで「ある一文」のみを上からなぞって消すことにした。

 

一瞬、驚いた若葉だが彼女の意図を汲んで黙認した。

 

 

若葉「当時は、私たちも勇者として覚醒したに過ぎない…公表もされていない…彼女はわかっていたのか…近い未来に私達が「勇者」として、守護の戦いに身を投じる事を…そして、四国に逃げろと…そうか、私たちも託されていたのだな…人類の未来を。」

 

 

ひなた「はい。彼女は自分達の世界の歴史から、この世界の未来を読んでいたのですね…その結果、人類は絶滅せずに四国に集まった…。」

 

 

千景(…もう1人のソラ…人々から称賛されない道を選んだ…けど、その頑張りに比例するものは得られているの?。私なら…耐えられない。)

 

 

烈火(…姉貴……。)

 

 

ウイング「この記者さんはここで全うしたんですね…もう1人のソラさんの言葉を伝えるために、どうなるか分からない未来へと託すために。」

 

 

アグニ「ああ。ここでずっと、俺達を待っていたんだ。これを伝えるために…そして若葉、あんたはこれをどうするつもりだ?。」

 

 

若葉「…お前達の気持ちを理解していなかったらきっと公表していただろう。これは、大社へと渡さない。私達の記憶の中にこれを…記録する。」

 

若葉は手帳をその場に置く。

そして、スカイによって消されていた文面は……「怨嗟の病」に関しての事だった。

 

「プリキュア」という文面はあえて残した。それは…遠い未来、この地に調査に来た友奈達の「歴史」を捻じ曲げないために。

 

 

スカイ「…バトンは引き継がれました。向かいます…約束の地「諏訪」へと。」

 

 

若葉「偶然にも、私達の目的地と同じ場所になったな?。」

 

 

スカイ「はい。そこに全ての答えがあります…私達と貴女達の…全ての答えが。」

 

 

烈火「まさか、あの時見つけた手帳がここまで繋がっちまうとはな…。」

 

 

友奈「でも、それを見つけなかったらきっと私たちとソラちゃん達は出会えてなかったかもしれない。」

 

 

烈火(…これを見つけちまったから、姉貴の凶行も実現しちまった…この様子だと、姉貴は忘れちまってるようだけど……全てが繋がってる。俺達の「今」と。)

 

 

アグニ「なら、善は急げだ。向かおうぜ、「諏訪」に。」

 

 

若葉「ああ…!!。」

 

 

アグニ(そこに、全ての答えがある…これを見つけた時、若葉達の未来も…。)

 

 

友奈(高嶋)「どうしたの?。鷹夜さん?。」

 

 

アグニ「いんや、何にもねェ。さ、急ごう。そこにソラが「待ってる」。」

 

 

アグニ(そこで、俺達のこの旅も終わる…後は各々の未来に向かっていくだけだ。だから今、この瞬間を…。)

 

 

ー大事にしようー

 

 

迫り来るそれぞれの未来への分岐点。

 

アグニは、それを胸に秘めて目指す。

 

約束の地「諏訪」へと。

 

 

魂消滅まで後…「2日」。

 

 

………………end。

 




300年後の世界で友奈達が見つけた手帳の全貌を把握した一同。

もう1人のソラはここで死んでいなかった。

そして彼女は、「怨嗟の病」を治すための答えを見つけ出していたのだ。

後はそれを受け取り、元の世界に戻るだけ…。
しかしそれは、若葉達との別れを意味する。
そして、知っている彼女達の「顛末」。

その道中で、遭遇するバーテックスの群れ。

彼らの襲撃を突破すべく、そして「諏訪」へと向かう為に、過去と未来の戦士達が最後に「共闘」する…。

次回
第58話 時を超えた絆、最後の共闘。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。