〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
兵庫へとやって来た一同。
そこで、新聞記者の残した手帳を見つけその全貌を理解した。
もう1人のソラが指し示す「諏訪」。
そこに、この度の終着点がある。
過去と未来の戦士達はその「約束の地」を目指す。
兵庫を立ち、さらに東に進む一行。
道中、様々な場所に立ち寄った。
特に酷かったのは大阪。
「梅田」と呼ばれたかつての大都市の繁華街。
その地下で、大量の人骨があった。
落ちていた日記には、ここで起きた惨状がしっかりと記録されていた。
結局は、ここの人達は殺し合いを始めたのだ。
最初は助け合い、この窮地を乗り切るつもりだった。しかし、一向に改善しないストレスと、化物への恐怖に精神が摩耗していったのだろう。
……人は、愚かな選択をした。
その日記はとある姉妹の綴った日記。
最期は…死んだ妹と共に化け物に喰われたのだろう。
その惨状と人間の醜さを見た千景は特に、感じたものがあった。
彼女の過去は凄惨なものだ。誰にも認められず、家系が原因でいじめにもあった。
だから、承認欲求が人一倍強い。特に、勇者になってからはこれまで蔑んでいた者までもが手のひらを返して彼女を称えた。
その事実に一番、怒りを現したのは未来での家族である烈火。
血の繋がりはないが、目の前にいるのは未来での姉。
姉が憎悪を忘れきれない理由がそこにあると確信した烈火は、この戦いに自分の存在を認めてもらいたい彼女の行動に、心を痛める。
そんな過去があったのか…正直、理解できなかったし話すら聞かなかった。世界を憎む理由が…身勝手な人間達によるもの…最期は、小さな幸せを感じたまま逝けたのかもしれない…だが、その怨嗟は晴れてはいなかった。
それが、「今」の千景だった。
「家族」と自分…。
姉がこの世で一番嫌っているものがそれなのかもしれない。
だとしても、烈火は放っておかなかった。そして、この旅で姉に対する考えが変わった瞬間でもあった。
必ず、あいつの心を救ってやる…そしてもう一度「家族」に戻って一からやり直す。
いつも適度な考えで行動する烈火に、目的が生まれた瞬間だった。
…………………。
現在地は、「名古屋」。
目的の「諏訪」後少し、この旅の終着点が見えた。
魂消滅まで残りあと「2日」。
それまでに何としても、現代に戻らなければならない。
こうしている間にも、向こうでは仲間達が自分達の肉体を守るために「DM」の猛攻を食い止めているのだ。
そして、持ち帰る…もう1人のソラが生涯をかけて手に入れた「希望」を。
そんな気持ちを抱きながら、名古屋の繁華街を調査する一行が目にしたのは、とんでもない光景だった。
烈火「な…なんじゃこりゃ…ッッ!?。」
目に広がるその光景はまさに「地獄」。
そう、バーテックスの「卵」が大量にそこにあったのだ。
中で蠢く星屑。今にも生まれそうな勢いでこちらを見据える。
文明を淘汰し、そこに自分達の生存圏を獲得したのだろう…いや、侵略と言った方が正しい。
その惨状に最も、感情を露わにしたのは意外にも…球子だった。
球子「コイツらが…コイツらが居たから…ッッ!!。」
感極まった球子は、感情のままに「切り札」を発動。
「切り札」とは、初代勇者が持つ文字通りの力。
精霊を宿し、その力を身に纏う。だが、その代償は大きく長時間の使用は身体的ダメージの反動が大きく時には命に関わることもある。
だから極力使わないようにしているが、有事の際には使用しなくてはならない諸刃の剣。
だが、球子は感情のままにそれを発動。
精霊「輪入道」を憑依させて巨大化した旋刃盤・神屋楯比売(カムヤタテヒメ)を乱暴に振り回して星屑の卵を破壊。
それに危機を感じた星屑達が一斉に孵化してその場に現れる。
若葉「クソ…目を覚ましたか!。全員、迎撃体制を取れッッ!。」
我に帰り、事の重大さを理解した球子。
しかし、一同は責めることはしなかった。
球子「ご…ごめん…つい…!。」
烈火「いや、いいんじゃねェのか?。おねんねのコイツらを叩き起こして潰すってのもなかなか悪くねェ!良い嫌がらせだッ!。」
アグニ「そうだな。どのみち、コイツらには苦い思い出があんだろ?。なら、こっちから仕掛けても良いはずさ!。」
烈火とアグニは、ニヤリと笑みを浮かべながら先陣を切る。
それに反応するように星屑達も一斉に仕掛けてくる。
杏「またあの人達、突っ込んじゃいましたよ!?。」
スレイヤー「バカはほっとけッ!。あいつらの心配は無用だ、勝手に潰して戻ってくるッ!。」
園子「そういうのを、信頼っていうんだよ?。私達は私達で…「いつも通り」に…ね?。」
園子(「諏訪」が近い…なら、もうすぐ…お別れだね?。ご先祖様達。)
少し寂しそうな、そんな眼差しを向けたまま園子は続いていく。
それは、若葉も理解していた。
若葉(乃木園子…私の未来の子孫…お前と共に戦えて光栄だった。だから、私は報いる…この時代にやって来て、絆を築いてくれたお前達に…!。)
地面を蹴って、飛び出す若葉。
過去と未来…一時の共闘を噛み締めながらこの戦場を駆け抜ける。
友奈「ゴールはもうすぐだよ!?。行こうッ!。」
スカイ「はいッ!!。」
友奈(高嶋)「あれ、ぐんちゃんはッ!?。」
千景の姿がどこにも無い。
辺りを見渡すと、ようやく発見した。
千景は烈火とアグニのすぐ後ろにいて彼らと共に突っ込んでいたのだ。
ウイング「なっ…無茶ですよッ!!。」
千景(彼らに手柄は取らせない…例え、未来からの増援だとしても…私は「今」を維持する為に功績を上げるんだッ!。)
獅子奮迅の立ち回りで、鏖殺していく千景。
それは同時に、狂気すら孕んでいた。
烈火(姉貴……!。)
烈火は千景に並び立つ。
烈火「おい、あんまり無茶すんなッ!。俺らは大丈夫だから…ッ!。」
千景「うるさいッ!。貴方達を助ける為じゃない、私自身の為よッ!!。」
烈火「ッ……!!。」
アグニ「おい、来るぞ烈火ッ!!。」
視線の先…星屑は突如として「何か」に喰われる。
理解出来ない事態…まさか、共食いか?。いや、違う…!。
その正体に、知る者は驚愕する。
友奈「黒い…バーテックス…!?。」
なんと、未来で出現したバーテックスの変異体である「怨嗟の星屑」がそこに現れたのだ。
スカイ「なんで…なんでコイツらがここにッ!?。」
ウイング「まさか…僕達の影響…!?。」
スレイヤー「クッ…だとしたら、過去に影響は出ねェだろうがッ!!。」
怨嗟の星屑は白い星屑を捕食。それと同時に、一行にも襲い掛かる。
三つ巴の状況に、体勢が崩れる一行。
しかし、若葉は冷静に事を運ぶ。
若葉「正体不明の敵と共に殲滅だッ!。コイツらが敵なのは変わりない!。」
友奈「そうだね!。さすが若葉さんッ!。」
怨嗟の星屑は幸い、「シン・バーテックス」へと進化せずに襲いかかってくる。
怨嗟の星屑の戦闘力を知らない千景は、追い詰められる。
その時、烈火は2体の星屑を引き摺りながら走っていた。
烈火「伏せろォオオッ!!。地獄のノックだァアアアアッッ!!。」
放り投げて紅迅雷で打ち飛ばして千景の窮地を救う烈火。
隣に立って手を伸ばす。
烈火「おい、大丈夫かッ!?。」
しかし、伸ばされた手を千景は受け取らない。
千景「…心配は無用よ。自分の身は自分で守る…ッ!。」
烈火「ッ…おい、何に焦ってやがるッ!?。今は成果の問題じゃねェだろッ!!。」
千景「私に指図しないでッ!。何なの貴方は一体ッ!。私の…私の事なんて何も知らないくせに…まるで「家族」のように…鬱陶しいのよッ!!。」
烈火「な……ッ…!?。」
千景「ぁ……ご…ごめんなさい…私…くっ…!。」
我に返った千景は、別の場所に走り抜けていく。
烈火「…鬱陶しい…か……へへ…上等だよ…!。」
傷付く事なく、逆に火が付いた烈火。
メイスを握り締めるその手から、黒い電撃が発現した。
烈火「なら俺はしつこく手を伸ばさせてもらうぞッ!。姉貴ィイイイイイイッッ!!。」
アグニ「……心配は、いらねェようだな。おっとッ!!。」
吹き飛んできた若葉を受け取るアグニ。
その眼前には、怨嗟の星屑が迫っていた。
若葉「すまん…!!。」
アグニ「気にすんなッ!!。下がってな…バーンナックルッッ!!。」
腰を落として炎を溜め込み、一気に突き出すと同時に噴射。
怨嗟の星屑は瞬く間に消し炭へと化した。
アグニ「火力調整は出来ねェんだ、悪く思うなよ。」
若葉「た…助かった……。」
アグニ「なぁ、この戦いで俺達の同盟は終わりを迎えるかも知れねェ…「諏訪」に辿り着いたその時、俺達の道はそこで分かれちまう。だから、敢えて言うぜ?。この先の戦いでお前達全員が生き残れる事を願ってるッ!!。運命ってのは、変えられるもんなんだッ!!。」
若葉「私達の「結末」を知ってもなお、それを敢えて口にする…か。」
アグニ「まぁな、俺は正直にものが言いてェだけさ。この絆を無碍にしたくねェ。お前らと出会えた事で、俺たちの道にも「分岐」が出来た。歴史が何だ、一回くらい抗ってみるのもいいな…やっぱり、俺はお前らに「幸せ」になってもらいてェんだわ。」
若葉と友奈(高嶋)、球子に杏…そして千景とひなた。
もう1人のソラが起因で出会えたこの6人…初代勇者達のこれからの戦いに自分達が隣に立つことは出来ない。
そして、300年続くバーテックスとの戦い…彼女達も気付いている。
この「代」では終わらない事を…だがそれでも、この瞬間だけは一緒に居れるし、一緒に戦える。
この旅で得られたものは大きい…だからこそ、今後にも響いてくるし生かす事も出来る。
そう感じたアグニから、さらなる力が発現する。
瞳を閉じて開くと、背中には神々しい光輪が出現。
その火力は太陽とも言えるほど激しく…そして、光をもたらす。
アグニ「これは「力」じゃねぇ…「絆」だ。初代勇者達の未来に「光」をッッ!!。」
キュアアグニの「本質」が覚醒したその瞬間…だった。
アグニ「プリキュアッッ!。チェイン・シャイニングッッ!!。」
両手から放たれる光。それは炎とは別の力で敵を一瞬にして焼き払った。一直線に伸びるそれは、宇宙にまで届いた。
その場には光の粒子が降り注ぎ、この地に降り積もるように輝き出した。
若葉「…私達の未来のための…光…か……。」
………………………。
戦闘を終えて一行はとうとう、「諏訪」に辿り着く。
社は見事に破壊…激戦の後を物語らせる。
この地には勇者が居た。
白鳥歌野。
通信でしか、知らなかった同志。
この惨状を見る限り、彼女は…死んでしまったのだろう。
違う地方でも覚醒した勇者は居た。
しかし生き残りは四国にいる自分達。
無事でいて欲しかった…共に戦いたかった…顔を見て話したかった。
若葉は、人知れずに一筋の涙を落とす。
だがその時、自分達以外の「人の気配」を感じた。
近付いてくるその足音に、警戒の色を示す一行。
おかしい、この状態で生き残りがいるはずもない。
そう感じながらも、いざという時のための備えは怠らない。
そしてその正体は…すぐにわかった。
「…来て…くれたんですね…?。」
スカイ「あ…あ…あ…ッッ…!。」
口元を押さえて、驚くスカイ。
息が詰まりそうになる…だって…生きているとは思わなかったから。
ソラ(if)「…初めまして…異なる世界の私と…未来の勇者達。それに…「今」を生きる勇者達…。」
ずっと、探し求めていたその人…。
もう1人の…ソラだった。
魂消滅まで後…「1日」。
…………………end。
絆の力で更なる力を得たアグニ。
願うのは、初代勇者達の「幸せ」。
歴史が変わろうと、共に駆け抜けた戦友の未来に光がある事を願った。
この旅の終着点である「諏訪」に辿り着いた一行。
「諏訪」の勇者・白鳥歌野は指名を全うしたともう1人のソラから語られる。
生きていたもう1人のソラ…しかし、「祟り」の影響は彼女の命の灯火を消そうとしていた。
逃れられない運命…もう1人のソラは「怨嗟の病」を治す為の「力」をソラに託す。
そして、ひなたに「神託」が下りる。
バーテックスによる四国への大規模侵攻…歴史の歯車が動き出す。
ここからは私達の道だ。
若葉はそう言って、未来の戦士達に「これから」を託すのだった。
次回
第59話 未来へ…繋がれるバトン。