〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。


数々の思いと哀しみ、そして信念を感じた「もう一つの世界線。」

この世界での経験は、自分たちが成長するきっかけにもなった。

託された思い、そして繋がるバトン。

それを胸に、一同は千景率いる「海祇機関」が支配する「勇者世界」へと帰還するのであった。


<第2部:怨嗟の勇者編>
第61話 支配された勇者世界。


 

~大赦「海祇機関」~

 

 

千景「…ふふ…壮観ね…努力が実を結ぶというのはこういう事かしら。」

 

 

テーブルの上に並べられたのは複数の端末。

そう…これこそ、風の言っていた「量産型の<疑似勇者外装>。」

 

 

これまで、「菱崎焔華」として過ごしてきたノウハウの結晶…300年の時を得て、実現した「自分だけの部隊」。

 

最初は、この世界に復讐さえできればそれでよかった。

しかし、怨嗟の強すぎる彼女はいつしか、「自分が敬れる世界」を目指すようになってしまった。

育った環境が、彼女の中の承認欲求を強くしてしまったのだ…勇者になっても、一時は慕われる立場となったが、結果が出せなかったら、結局は元に戻ってしまった。

 

死の間際、自分は愛されていたことに気付くも、それは仲間内だけの事…。

色濃く残ったのは、「愛」を覚える前の怨嗟のみ…。

そう、「今」の郡千景は「怨嗟の権化」ともいえる存在だった。

 

この狂気に満ちた計画は復讐を超えて、自分だけの「理想郷」を創り上げることに変わってしまったのだ。

 

この力さえあれば、誰も逆らえない…そして、思い知ることになる…踏みつけられた人間が抱く、「憎しみ」の恐怖を…。

 

そして、「海祇機関」に集まった<量産型疑似勇者外装>の適合候補者は全て、千景のような凄惨な過去を持つ者達ばかり…。

 

いわば、世界に対しての憎しみを持った人間たちだ。

彼女の計画にはもちろん、賛同の意を示す。だって、誰にも認められずに蔑まされ続けてきた人間たちの集まりなのだから。

 

「踏みつけられ続けた人間たちの復讐」。

 

彼女はそれを掲げ、僅かこの短期間で「大赦」を牛耳るほどにまで勢力を伸ばしたのだ。

 

今の彼女に、大赦は従うしかない…この時を止めた世界でも、彼女の「計画」は進められていた。

 

 

千景「烈火…過去にあなた達が来てくれたお陰よ。私は全てを思い出した…また「家族」に戻れる?。冗談じゃないわ…もう、そういうのはゴメンよ。私は自分以外誰も信じない…信じて裏切られるのなら最初から…信じなきゃいい。」

 

 

千景は立ち上がり、モニターに目を映す。

そこには、この世界に辿り着いた一同が映っていた。

 

 

千景「フフフ…やはり、ここに来たわね。という事は、<量産型擬似勇者外装>の事を聞いたのね…そう、全てはここに貴方達を招き入れる為。そして…。」

 

千景は自分の端末を見る。

「彼岸花」の刻印が刻まれた画面へと映る。

 

千景「私はもう一度、勇者に戻る…いえ…勇者を超越する存在……それになることが出来れば、今度こそ私は…愛されることになる。」

 

 

「千景様。」

 

1人の少年が入ってくる。

 

須藤慎也。

千景が勧誘した、<量産型擬似勇者外装>の適合者である少年…。

彼は、境遇が千景と似ていた。彼女がそれを救い出し、それ以降ずっと慕っている。

 

 

千景「ああ…貴方。ちょうどいいわ、<量産型擬似勇者外装>のテストをしたい。そうね…相手は彼でいいわ。」

 

 

映像に映るのは…烈火。

疎ましく思っていたから、千景はテストがてらに彼の始末を依頼する。

 

 

千景「私のことを「姉」と呼んでしつこく付き纏ってくるの。彼はプロトタイプの<擬似勇者外装>の適合者よ。これに打ち勝てば、その外装の利便性を証明出来る。お金が少し掛かるのよ、大赦に誇示すればその資金も下りてくるでしょう。」

 

 

慎也「承知いたしました。しかし千景様、そんなことをせずとも資金繰りは簡単なのでは?。実質、大赦の実権は貴女様が掌握しているはず。」

 

 

千景「形式上はね。でも、ある程度は立てておかないと…大赦の老人共が五月蝿いんだもの…一応、連携はしているつもりよ?。お願いできるかしら…彼の持つ<擬似勇者外装>を奪ってきて欲しいの。」

 

 

慎也「仰せのままに。では…。」

 

 

部屋を後にする慎也。千景は目を閉じる。

 

 

千景(使えるものは全て使うまで…さて烈火。私の私兵を相手にどれだけ立ち回れるかしら?。)

 

 

…………………。

 

 

鷹夜「ここが、お前達の世界か…。」

 

 

辺りを見渡す鷹夜。街並みを見て、少し感じることがある。それは…。

 

 

鷹夜(西暦時代からあまり変わっていない…300年経ってる…んだよな…?。)

 

 

西暦時代の風景とさほど変わらないことに、少し驚きを感じる。

それもそのはず、その日から文明レベルが止まっているのだ。

300年経とうが、滅んだ外の世界から新たな進歩は得られない。

それにこれは、天の神との約束でもある。

これ以上の文明の進歩は、神の領域に近付く恐れがある…そうなればまた、あの惨状が始まるかもしれない。

だから敢えて、このレベルに留まらせるのが互いのためでもあるのだ。

 

 

園子「へーいタカ坊…西暦時代と変わらねェな…って思ったね〜?。」

 

 

鷹夜「うおッ!?。何だよお前ッ!。エスパーかッ!?。」

 

 

園子「顔にそう書いてある。」

 

 

鷹夜「へ、マジかッ!?。」

 

 

洸「んなわけねェだろ、アホかお前は。園子のペースに乗せられんなよ?。」

 

 

鷹夜「うっ……。」

 

 

ソラ「ここも、星が止まってるんですね…海が動いていない。」

 

 

水に触れることができても、水面すら発生しない。

文字通り、生物以外は全て停止していた。

その至るどころに、ましろが放った黒い蔦が伸びていて。

 

 

樹「なんだかすごく久しぶりに帰ってきた感じがする…。」

 

 

風「まぁね…でも、私たちが居ない間に随分と好き勝手やってくれたみたいね。ほら。」

 

 

指差す方向。そこは大赦の社であるが、既に「海祇機関」の名へと変えられていた。

街の至るどころにその名前が伝わっており、支配下に置かれていることが一目瞭然だった。

 

 

烈火「…本気で大赦を乗っ取りやがったのか…!。」

 

 

あげは「武力で誇示されたらそりゃ従うしかないでしょ。その大赦ってのに戦闘力があれば話は別だけど…。」

 

 

夏凛「まさか…防人のみんなまでやられたというの…?。」

 

 

東郷「それはまだわからない…もしかしたら、反旗を翻すために潜伏している可能性だってある。夏凛ちゃん、その防人の人達と合流するのはどうかしら?。敵が共通ならば、共闘も出来るはずよ。」

 

 

夏凛は少し、考え込む。

 

 

夏凛「楠達がどこに居るか分からないけど…この事態をどうにかするためには彼女たちの力は必要不可欠ね。可能な限り、探してみるしかない…。」

 

 

ツバサ「心当たりはあるんですか?。」

 

 

夏凛「なんとなくね。ま、そこに居るとは思えないけど…彼女たちの拠点なら場所はわかる。」

 

 

視線の先。

そこには巨大な塔があった。

 

 

夏凛「ゴールドタワー。防人たちが拠点として使っていた施設よ。」

 

 

烈火「そこに行けば…。」

 

 

烈火が動こうとしたその時、「殺気」を感じ取る。

瞬間的に、後退した烈火。その場所には激しく陥没する。

 

 

烈火「ちッ…誰だッ!?。」

 

 

「凄まじい反応速度だ。不意打ちが通用しないなんて。」

 

 

灰色の<疑似勇者外装>を纏った少年が姿を現す。

それを見た烈火は、睨みを利かして。

 

 

慎也「僕は須藤慎也という。「海祇機関」の疑似勇者部隊の一人…君が菱崎烈火だな?。」

 

 

身に纏っているその姿…防人に似ているがどこか違う。

蒼葉は確信した。あれが<量産型疑似勇者外装>だという事に。

 

 

蒼葉「…完成度が高いな…もう一つの世界線で得た技術も加わっている…。」

 

 

慎也「鋭い観察眼だ。その通り、千景様は「海祇機関」を部隊化するためにあの世界を回っていた…全てはこの瞬間の為に。」

 

 

蒼葉「お前たち、その力は神の領域に踏み込もうとしているんだぞ。もし、それが天の神の怒りに触れてみろ…またあの悪夢が起きるかもしれない。先人たちの思いを全て無駄にする気か?。」

 

 

慎也「仮に起きたとしても…神を殺せばいい話だろう?。僕たちにはその力がある…もう、神に怯える必要もない。」

 

 

武器を構える慎也。得物は「ハンマー」…地面を抉り取ったその一撃は得物によるものだった。

 

 

烈火「勘違いしてんじゃねェぞ!?。人の時代に変わったのは、神と共存するためだッ!。お前らが引き起こそうとしてるのはその調和を崩す行為なんだぞッ!!。」

 

 

変身して突撃する烈火。メイスとハンマーが激しくぶつかり合う。

競り合いで押し勝とうとするが、慎也のハンマーは一歩も引かない。

 

 

烈火(俺が…押し負ける…ッ!?。)

 

 

慎也「…力を誇示すれば、誰も逆らえない。それは神さえも…!!。」

 

 

強引に振り抜き、烈火はわき腹にハンマーの一撃が突き刺さる。

激しい衝撃に、思わず血を吐く烈火…内臓にダメージが入った…そう感じとる。

 

 

友奈「烈火君ッ!!。」

 

 

友奈(if)「…あの外装…防御力は完璧なんじゃなかった…?。」

 

 

蒼葉「ああ…それを貫くほどのダメージ…まずいぞ烈火…「対策」されている…!!。」

 

 

慎也「君は千景様の何なんだ?。」

 

 

横腹を抑えながら、痛みで冷や汗を掻く烈火は慎也の問いに疑問を持つ。

 

 

烈火「…家族だ…!。」

 

 

慎也「それを疎ましく思われてるのに気づかないのかい?。」

 

 

地面を蹴って接近する慎也。

ダメージのせいで僅かながら、反応が遅れる。

下から突き上げるように放たれる一撃…烈火は身体を後退させてなんとか躱すが、その隙は大きなものとなる。

 

次の一撃が来る…躱せないと踏んだ烈火は防御態勢に入る。

しかし…。

 

 

烈火「ぐああ…ッッッ!!。」

 

 

慎也「君の行動パターンは全て対策済みだ…!。千景様から君の「討伐」を命じられている!!。このまま消えてもらうよッ!?。」

 

 

メイスごと弾かれた烈火に、追撃に一撃が迫りくる。

一同は助けようと、変身アイテムを構えるが確実に間に合わない。

烈火は覚悟を決める…。

 

 

烈火「…一か八か…だぁああッッッ!!。」

 

 

トドメの大振りを、両手で受け止める烈火。

その衝撃で全身の骨が軋む。

それでも、直撃よりかはマシだと踏んだ烈火は、腕力のみでハンマーを受けきった。

初撃のダメージが大きすぎた、血を大量に吐きながらその一撃をなんとかやり過ごしたが代償は大きい。

 

 

烈火「げほッ…がはッ…クソ…めんどくせェとこに一撃入れやがって…ッ!。」

 

 

慎也「量産型といえど、勇者システムにより近くなったから君の持つプロトタイプよりかは遥かに上だよ。」

 

 

ハンマーを持ちながら、烈火に歩み寄る慎也。

メイスを手に、思考を巡らせる。

 

 

烈火(どうする…「雷霆」をぶちかますか!?。いや…今の俺のダメージだと身体が持たねェ…考えろ…このままだと…死ぬ…!。)

 

 

慎也「千景様の事を忘れるというのなら、ここで見逃す。そして、君の<疑似勇者外装>を返してもらう。それは元々、千景様のものだ。」

 

 

烈火「…はッ…無理矢理渡しといて今になって返せだなんて…虫のいい話だろ…お前こそ…姉貴に忠誠を誓ってるならこんなこと、すぐにでもやめさせろ…引き返しが利かなくなるぞッ!!?。」

 

 

烈火の訴えを聞いた慎也。すると、その雰囲気が一変する。

 

 

慎也「…君は何も分かっていない…踏みつけられた者がどれだけ惨めな思いをしてきたか…力で屈服させられてきた僕達のこの怨みは…どこにいけばいいッ!?。」

 

 

憎悪。

ただ、一言…「海祇機関」のメンバーは共通してその思いを抱いている。

世界に対しての復讐…彼らの抱く憎悪の大きさを…一同は見誤っていた。

 

その一撃は、容赦なく烈火に与えられた。

吹き飛びながら、意識を朦朧とさせる烈火…仲間たちの叫び声が聞こえる。

そして、友奈が必死に手を伸ばして自分に駆け寄ってくる。

そこで烈火の意識は…途絶えた。

 

 

この日、初めて烈火は…。

 

 

「敗北」を叩きつけられた。

 

 

…………………end。

 




時間をかけて、準備をしてきた「海祇機関」の戦闘力は凄まじく、烈火は何もできずに敗北を喫した。


友奈の奮闘もあり、なんとかその場を離脱した一同。
しかし、烈火の傷は大きくそれは生命活動にまで影響していた。

「海祇機関」の次のターゲットは乃木園子。


大赦の最高権力者である「乃木家」の子息を手に入れることで、社会的な地位を確実なものとするために千景の非情な策が一同に襲い掛かる。

防人と合流できないままこの世界においての孤立無援の状況で、園子はとうとう捕まってしまう。

洸の中で「大切な存在」と化していく彼女の窮地に、彼の怒りが爆発。

大切な人を守りたい…そう思う洸…その時、「キュアスレイヤー」の真の力が、開花する。

次回
第62話 大切な者を守り抜け、覚醒の洸。
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