〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。

ツバサの窮地に駆け付けた風。

彼の抱く「劣等感」に気付いた彼女は自分にしかできない「役割」を彼に気付かせた。

見事な連携により、疑似勇者の一人「九条美夏」を退かせた2人。
収穫は無かったが、ツバサはこの勝利で自分に自信を付けた。


それから数日後、今日も一同は他の防人を探すための話し合いを行っていた…。


第65話 犬猿の仲、美森と蒼葉。

 

東郷「貴方の言っていることは危険すぎるわ!。現実味がまるで無い!。」

 

 

蒼葉「しかし、事は悠長に構えてられない。今、「海祇機関」がおとなしい内に各所を回るべきだと思う。」

 

 

いきなり、2人の言い合いから始まったこの話し合い。

議題は「防人の捜索」。

この世界においての味方を付けるべく、当初から目標としていた事。

 

雀から得られた情報では、防人は「海祇機関」に対して反抗的な姿勢を取ったという。

だが、他のメンバーの行方が分からない以上、彼女たちの身に危険が迫っているかもしれない…しかも、防人を束ねる「楠芽吹」は「海祇機関」に捕まっている可能性が高い…。

 

自分たちよりも厳しい状況にある防人達をなんとか助けるべく、こうした作戦会議を始めたのだ。

この言い合いの事の発端は…蒼葉の提案からだった。

 

……………………。

 

蒼葉「夕凪と風先輩が勝ち取った勝利で今、「海祇機関」の勢いが弱まっている。これはチャンスだ、いつも以上に捜索範囲を広げて情報を得よう。」

 

……………………。

 

この提案に一番反対したのは、東郷だった。

この世界は殆どが大赦繋がりとなる。事実上の支配状態にある今なら、自分たちの行動について補足されるのは必須…そうなれば、疑似勇者を送り込んでくる可能性が非常に高い。

加えて、アンダーグ帝国の件もある…これを機に、今は連戦続きの状態から療養を徹底するべきだ…。

これが、東郷の考えだった。

 

 

東郷「防人達の安否はもちろん、気になるけどやはりここはみんなの体力を万全にした状態の方がいいに決まってるわ!。」

 

 

蒼葉「それも分かる…だが、ここで動かなければ時間だけが経過していく。その時間で防人達に何かあるかもしれないだろう?。」

 

 

東郷「ッ…それでも、みんなを危険な目に遭わせるわけには…ッ!。」

 

 

風「う~わッ…また見事な言い合いっぷりねェ…もはや名物だわこれ。」

 

 

あげは「ねェ…なんで美森っちと蒼葉はあんなに仲が悪いの?。」

 

 

友奈「えっと…出会いが最悪だったんだよね…。」

 

 

ツバサ「そ…そうなんですか…?。」

 

 

樹「一度怒った東郷先輩を鎮めるのはなかなか…。」

 

 

夏凛「させておきなさい、話が進まないなら思う存分争わせればいいだけよ。」

 

 

ソラ「そ…それでいいんでしょうか…?。」

 

 

東郷「もういいわッ!。」

 

 

突然、机を叩いて立ち上がる東郷。

全員の視線が向く。

 

 

東郷「貴方の考えで動きましょう!。その代わり、私一人で行きますッ!。それで文句ないでしょう!?。」

 

 

蒼葉「…何を怒っている?。」

 

 

東郷「ッ…貴方のそういう所が気に喰わないのよッ!。それじゃ!。」

 

 

勢いよく扉を開けて退出する東郷。

友奈が追いかけようとしたが、鷹夜がそれを止めた。

 

 

鷹夜「やめとけ、ここは適任な奴が居るだろ。」

 

 

友奈「え…誰?。」

 

 

鷹夜「どうすんだ、蒼葉。あいつ、本当に一人でやる気だぞ?。」

 

 

鷹夜の言葉に、頭を掻きむしりながら蒼葉は困った表情をする。

 

 

蒼葉「…どこの世界でも、あの人は頑固だな。仕方ない…俺も言い過ぎた、行ってくる。」

 

 

鷹夜に促され、東郷を追いかける蒼葉。

全員が少し、心配になる。

 

 

園子「ああなったらわっしーを説得するのに時間がかかるよ~?。」

 

 

鷹夜「う~ん…蒼葉は東郷に思い入れがあるからな…まあ、もう一人の東郷だけど…。」

 

 

友奈(if)「自分を拾ってくれた姉のようなものだからね…恩義があるから特に…だね。」

 

 

樹(蒼葉さんが見ているのはもう一人の東郷先輩…だから、東郷先輩を気にするんだ…。)

 

 

……………………。

 

東郷「…ついてこないでください。」

 

 

少し距離を置いて、歩く蒼葉に気付く東郷。

振りむくことなく、威嚇のように声を低くする。

 

 

蒼葉「何故、敬語なんだ?。」

 

 

東郷「ッ…いちいち突っかかってこないでッ!。」

 

 

蒼葉「お前が俺を嫌っているのは理解している。だから、関係を良好にしたいとも思わない。だが…それでも今は背中を預け合う仲間だろう?。謝罪の機会くらいはちゃんと設けさせてくれ。」

 

 

東郷「何を謝ると言うのッ!?。どうせ、みんなに促されて仕方なく付いてきただけでしょう!?。」

 

 

蒼葉はその言葉に、何も答えない。その態度が、東郷の怒りを助長させた。

 

 

東郷「私が貴方を嫌うのはね、何も最初の出会いだからじゃない。」

 

 

蒼葉「…えッ…?。」

 

 

東郷「底を見せてくれないからよ。それって、私たちを信頼していないのと同じじゃない?。」

 

 

蒼葉「そんなことは…。」

 

 

東郷「貴方はそう…烈火君にすら、自分の底を見せない。何を考えているのかが分からない…大事なことはずっと隠してて、本音を話さない。それどころか、ずっと私に対して気を使ってるッ!。貴方がもう一人の私に対して恩義があるのは承知している…でも、私とあの人を重ねて見るのはやめてほしいのッ!。」

 

 

怒りの真相を話し始めた東郷。それに対して、蒼葉が言葉を発そうとしたその時…。

 

 

蒼葉「!!!。東郷、後ろだッ!!。」

 

 

東郷「…えッ…?。」

 

 

後ろを振り向いた途端、開いたゲートに吸い込まれた東郷。蒼葉はそれを追いかけて一緒に入ってしまう。

その場に残されたのは…東郷のリボンだけだった。

 

……………………。

 

 

東郷「…ぅッ…。」

 

 

どれだけ意識を失っていたかが分からない。だが、目の前に広がるのは…先ほどの光景ではなかった。

 

 

東郷「こ…ここは…ッ!?。」

 

 

広がる無限の灼熱地獄。忘れるはずもないあの空間…何故だ、もうあの空間は存在しないはずなのに…。

思考が止まる中、蒼葉も目を覚ました。

 

 

蒼葉「…ここはどこだ…ッ…なッ…コイツら…ッ!!。」

 

 

大口を開けて突撃してくる黒い星屑…「怨嗟の星屑」の攻撃から、東郷を抱えて横に飛んで回避する。

 

 

東郷「ッ…まさかここ…コイツらの空間!?。」

 

 

蒼葉「…そのようだな…来るぞ!。」

 

 

変身して、迎撃する二人。

しかし、東郷は一人で対応する。

 

 

蒼葉「おいッ!。ここは連携で行くぞッ!!。」

 

 

東郷「貴方と連携なんて出来るものですかッ!!。」

 

 

蒼葉「くッ…意固地な…ッ!。」

 

 

強引に東郷の隣に立って連携攻撃をする蒼葉。

お互いの射撃がかみ合わないのか、互いの銃撃が弾き合ってしまう。

 

 

蒼葉「ッ…合わせろッ!!。」

 

 

東郷「そっちこそ…ッ!。」

 

 

数で攻めてくる怨嗟の星屑に対して、連携がかみ合わない2人。

数を減らすどころか、勢いを付かせてしまう。

 

 

蒼葉「いい加減にしろッ!。こんな時にまで私情を挟むなッ!。」

 

 

東郷「信頼されていないのに、どうやって合わせろとッ!?。」

 

 

こんな場所でも、言い争いを始める2人。

その時、怨嗟の星屑が集まって巨大化していく。

 

 

蒼葉「…マズイ…完成態が来るかッ!!。」

 

 

徐々に、形を形成していくその塊…そして、一気にエネルギーを放出。

「天秤座」の「シン・バーテックス」…「シン・ライブラ」が現れる。

 

シン・ライブラは高速回転し、削岩機のような無数の竜巻を発生。

それに吸い込まれる怨嗟の星屑が弾丸のような勢いで突進してくる。

 

たまらず回避する2人。だが不幸にも、位置関係がバラバラとなってしまった。

それを好機と見たのか、シン・ライブラは分銅部分を回転させて取り込んだ怨嗟の星屑を弾丸のように発射。

態勢を崩した東郷は直撃を受けて跳ね飛ばされる。

その衝撃で宙を舞う東郷。痛みを超えて、身体が砕かれる感覚に襲われる。

 

……………………。

 

音も何もない静寂な空間…その中で、東郷は横たわる自分が目に映る。

 

嗚呼…そういう事か…。

 

半ば、諦めたように目を閉じる東郷。

 

…死んでしまったのか…。

 

そんな気持ちが過る。

きっと、みんなは泣いてくれるだろう…でも、悲しませたくない人まで悲しませてしまう。

 

友奈ちゃん…。

 

脳裏に浮かぶのは、友奈の姿。

彼女からはたくさんのものを貰った。

あの元気な姿にいつも救われた。

彼女が祟りで苦しんだ時は見ていられなかった…でも、それでも友奈は最後まで「友奈」を貫こうとしていた。

それに比べて自分はなんだ…あんな場面でも、嫌いな人と言い争いをしてこんな最期を迎えてしまったのか?。

あの後、どうなったのか…なんて考えたくもない。きっと…彼も死ぬだろう。

 

……死ぬ?彼が?。

 

もし、死んでしまえば完全に…自分のせいなんじゃないか?。

 

ちゃんと連携していれば、乗り越えられたかもしれない…。

活路を見出せたかもしれない…それを、私情で崩してしまったのなら…私は人殺しだ。

少しだけ、そんな後悔をする。

闇に落ちていく自分の姿…このままずっと落ちていくんだろう…さようなら、みんな…。

 

 

-須美ッ!!-

 

 

…誰?。その名前で呼ぶのは…もう、そんな昔の名前なんて名乗ってない…知っているとしたら…したら…?。

 

 

-須美ッ!!-

 

 

もう一度、自分を呼ぶ声。今度ははっきりとわかる。

…懐かしいあの声…もう、聴けないと思っていたあの声…思わず、声が出てしまう。

 

 

-銀ッ!!-

 

 

目の前の闇が晴れる。

自分が居た場所は「金色の麦畑」。夕暮れに照らされながら、風が吹く。

目を開けると、懐かしい人がそこに居て。

 

 

銀「よッ!!。」

 

 

にこやかに、笑みを浮かべる少女。

東郷は涙が溢れそうになり、駆け寄る。しかし、銀はそれを遮った。

 

 

銀「ダメだよ、まだここに来ちゃ。」

 

 

東郷「銀…でも私、死んで…。」

 

 

銀「死んでないよ。ほら?。」

 

 

自分の中に感じる温かみ、心臓の鼓動…分かる…自分はまだ、生きていることに。

 

 

銀「ね?。だからさ、もう帰りな?。自分の居るべき場所に。」

 

 

東郷「…帰りたくないわ…ここで貴女とまた会えたんだもの…だから…ッ!!。」

 

 

銀「ダメ。ここに来るときは、おばあちゃんになって生涯を全うしてから。私みたいに途中で死ぬのは、最大の親不孝だよ?。」

 

 

東郷「でも…。」

 

 

銀「…大変だったね。神樹様が死んじゃってから、今度は先代の英霊様が怨嗟に囚われてる…。」

 

 

東郷「あ…。」

 

 

銀「須美たちの戦いはまだ終わってない…世界を超えて、築いた絆はきっと光をもたらす…この世界に本当の平和だって訪れるよ。だから、帰りな?。須美の帰りを待ってる人たちの為に…この戦いは「お役目」じゃない…自分たちの未来を勝ち取る為の戦い…ほら、自分の中に「華」が咲こうとしている。」

 

胸に手を当てる東郷。感じる…心の温かみを…まだ死ねないという…「意志」を。

 

銀「今度こそ咲かせるんだ……未来を勝ち取る為の「意志」という華を…ッ!。」

 

コクリと頷いた東郷は、力強い眼差しを銀に向ける。

それに安心したのか、光に包まれる東郷を見送る銀。そして、別れ際に言う。

 

 

-またね…?-

 

 

……………………。

 

……目を覚ました東郷。

戦闘音が聞こえる…飛び交う銃弾…自分の前に、誰かが居る。

 

 

東郷「!!!。」

 

 

蒼葉「はぁ…はぁ…ッ…指先の感覚が…ッ!。」

 

 

横たわる自分の前に立つのは、血だらけとなった蒼葉の姿。

まさか、自分を守るためにずっとここに居て戦っていたのか?。

あの、理論主義の彼が…効率重視で物を考える彼が…。

今、やっていることは彼の主義に反する行為。

それにまだ…生きていた…!。

 

 

東郷「咲良君…!?。」

 

 

蒼葉「ぐッ…よかった…やっと…目を覚ましたか…。」

 

 

シン・ライブラの能力で満身創痍となる蒼葉。

左目は見えていないのだろう、血で赤く染まっていた。

 

 

東郷「…何故…!?。」

 

 

蒼葉「…何故かって…決まっている…お前にまだ…何の反論もして…いない…。」

 

 

東郷「反論って…たったそれだけでッ!?。」

 

 

蒼葉「…お前に誤解…されたまま死なれても…困る…俺の…プライドが…げほッ!ゴフッ…!。」

 

 

吐血量が凄まじい…恐らく、内臓にダメージが入っている。

それでも、片膝しか付かない蒼葉の前に立つ東郷。その目は…決意に満ちていて。

 

 

東郷「…下がってて咲良君。ここは私が…。」

 

 

蒼葉「…無茶…だ…撤退するしか…。」

 

 

東郷「…貴方の考えは現実味がないのよ。コイツを倒す以外、助かる道なんてないでしょ?。今度は私の言い分がずっと正しいわよ。」

 

 

蒼葉「…一理…ある…。」

 

 

東郷「…初めて意見があったわね?。大丈夫、勝算は…ある…ッ!。」

 

 

勇者システムが眩い光を放つ。

 

そして…「開花」した。

 

 

東郷「…「満開」!!。」

 

 

人の力で開花させた「意志」の華…。

 

 

友奈に続いて、発現される。

 

 

巨大な台座に、数本の稼働式砲台…その姿、正に「巨大戦艦」。

 

 

 

東郷(満開)「これより、殲滅戦を開始する!。目標、前方のシン・バーテックス!。状況…開始ッ!。」

 

 

…………………end。

 





死の間際、生きたいという意志により心の中で眠っていた「意志の華」を開花させた東郷。

銀に見送られ、そして死地の中で自分を守り抜いた蒼葉に報いる為に怒涛の「艦砲射撃」がシン・ライブラに降り注ぐ。


圧倒的な火力と「人」の力で開花した「満開」はこれまでに付きまとってきたリスクが無い…。


この異空間においての戦いの天秤は2人に傾く…。

次回
第66話 勝鬨、無双の巨大戦艦。
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