〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
シン・バーテックスの異空間に囚われた東郷と蒼葉。
完全な孤立無援の中、2人は応戦するもかみ合わない連携で窮地に陥る。
その時、最悪なタイミングで現れてシン・バーテックスの1体「シン・ライブラ」。
その力と能力により東郷は一時離脱。彼女を守るために踏ん張る蒼葉もダメージ量が生命の危機に発展するレベルで傷を負う。
目を覚ました東郷、その胸に秘めるのは「意志の華」。
そして、友奈に続いて開花した。
「巨大戦艦」…反撃の時が今、始まった。
東郷(満開)「これより殲滅戦を開始するッ!。目標、前方のシン・バーテックス!。状況…開始ッ!。」
腕を組みながら、どこからか出した鉢巻きを額に付ける東郷。
移動式の台座には傷だらけの蒼葉を搭乗させ、シン・ライブラと空中に飛び上がる。
飛び交う怨嗟の星屑を、遠隔操作式攻撃端末で迎撃しながら移動式砲台を前面に展開。
シン・ライブラに向けて「艦砲射撃」さながらの大火力砲撃を放つ。
直撃を受けて黒煙が舞う…だが、シン・ライブラは分銅を回転させては怨嗟の星屑を放ってくる。
直撃を受けそうなるも、特大級の精霊バリアが展開。
なんとか防ぎ切ったがゲージが「3」ほど、減少した。
東郷(満開)「…容量が3も減った…それほどの威力というわけね…。」
蒼葉「…この力…結城と同じ…。」
東郷(満開)「傷に触るわ、話さない方がいい。」
蒼葉「…すまない…少し、休ませてもらう…。」
東郷の精霊「青坊主」は蒼葉に治癒を施す。
応急処置だが、なんとかダメージを緩和出来ていた…だが、予断を許さない。
東郷(満開)(…謝るべきは私よ。でも今は…!。)
意識を手放した蒼葉を見るも、すぐにシン・ライブラと対峙する。
空中戦…まさに、それだった。
東郷(満開)「ここから必ず、2人で生還するわ。全砲門、一斉射撃ッ!!。」
号令と共に、展開される砲台。
東郷(満開)「てーーーーッ!!。」
轟音を上げながら放たれる一撃。
シン・ライブラの放つ一撃と拮抗する。
互いに譲れないこの一撃…だが、東郷の放つ一撃が押し切っていく。
押し合いに負けて遂に、直撃したシン・ライブラ。
黒煙をあげながらも半壊状態に追い込んだ。
東郷(満開)「まだ耐えるか…ッ!。」
怨嗟の星屑が、壁となってシン・ライブラを護衛する。
その瞬間、とんでもない速度でシン・ライブラは自己再生をし始めた。
東郷(満開)「なッ…再生能力ッ!?。」
四方八方に展開した怨嗟の星屑は、再生の邪魔を入れまいと特攻してくる。
東郷(満開)「さすがにこの数を受けきったら結界の容量が「0」になるッ!!。」
急速旋回し、何発かは防ぐもさすがに捌き切れない。
遠隔操作攻撃端末で落としていくも、やはり数発は貰ってしまった。
東郷(満開)「艦隊戦において、僅かな判断ミスは轟沈を招く…これくらいの被弾は気にしてられない…!。」
空中を移動しながら、怨嗟の星屑の壁を見る東郷。
やはり、先ほどの一撃の傷はどんどん癒えてきていた。
東郷(満開)「一撃で落とす勢いで攻撃しなきゃダメね…手数では向こうが上…でも、火力なら…!!。」
移動式砲台で拡散攻撃を放つ東郷。
使っていない砲台は狙撃銃の如く、壁の合間をすり抜けてシン・ライブラの再生を妨害する。
徐々に壁が薄れていく…その瞬間を逃さない。
東郷(満開)「射撃…今ッ!!。」
3本の移動式砲台を収束展開。
「意志の華」で開花した「満開」はこれまでにない「満開」の機能を持ち合わせていた。
東郷(満開)「白銀砲…発射ッ!!。」
「白銀砲」と名付けられたその一撃は極大のレーザーとなる。
周辺の空気を捻じ曲げるほどの「主砲」はまさに圧巻。
怨嗟の星屑の肉の壁など、全く意味を成さない。
一瞬にして、再生を上回る火力を叩きだしたその威力はシン・ライブラの「御霊」ごと焼却…巨大な爆発と共に消滅した。
東郷(満開)「…目標の撃沈を確認…状況終了。」
後は、この空間から出るだけ…疑似空間だろう、勝手に消滅するはずだ…。
そう、思っていたが…。
東郷(満開)「なッ…元の空間に戻らないッ!?。」
無数に蠢く怨嗟の星屑たちは消えない。それどころか、この空間も維持されたままだ。
東郷(満開)「まさかここ…異空間というよりも…一つの世界…!?。」
満開状態を維持したまま、東郷は移動しながら辺りを見渡す。
不思議と、怨嗟の星屑達は襲ってこない。
東郷(満開)「…不気味ね…さっきはあれほど執拗に攻撃をしてきたくせに、こんなにおとなしいなんて…私たちには気づいてるはず…。」
東郷(満開)(早いところ、ここを出なきゃ…応急処置は済ませてあるけど、根本的な治療を受けてない…咲良君の身体が保つかどうか…。)
そう、考えていた瞬間…炎に包まれた怨嗟の星屑がぶつかってきた。
ゲージがまた一つ、減る。
東郷(満開)「なっ…どこから…ッ!?。」
攻撃の方向を見る東郷。
その攻撃の主に、驚愕した。
東郷(満開)「そんな…今さっき、倒したばかりなのに!!。」
そう…先ほど「御霊」ごと消滅させたシン・ライブラが何故かそこにいた。
再度、分銅が動き出す。
だがその瞬間を見逃さなかった東郷が砲台に指示を送り、分銅ごと弾き飛ばす。
何故か、自己再生しない…どういうことだ…?。
不思議に思いながら、観察する。
東郷(満開)(まさか…バーテックスと同じで…復活する…!?。)
辺りを見渡す東郷。
その嫌な予感は…的中していた。
東郷(満開)「…奇しくも、またこんな光景を見させられるなんてね…。」
その奥に、とてつもない数の怨嗟の星屑が集結。
それはどんどん、巨大な「完成態」を形成…これまで倒してきたシン・バーテックスの形も作り始めていた。
だが何故か…最初に戦った時よりも弱そうに見える。
先ほどのシン・ライブラもそうだ。
初戦よりも手応えがない…分銅を吹き飛ばしただけで向こうは佇むばかり。再生の速さは驚くが、戦闘能力だけはまるで弱体化していた。
蒼葉「……何となく…わかった…気がするぞ…。」
意識を取り戻した蒼葉が目を覚ます。
東郷(満開)「咲良君ッ!?。ダメよ、まだ寝てないと…ッ!。」
蒼葉「…大丈夫だ。あの応急処置で会話レベルくらいまでは回復出来た。すまない、感謝するぞ。」
あの大怪我があの程度の応急処置で会話レベルにまで回復?。
東郷はその不可解な回復力に、疑問を抱いた。
蒼葉「シン・バーテックスは、怨嗟の星屑の集合体…その概念はバーテックスと…同じだろう。」
東郷(満開)「見ればわかるわ…けど、決定的に違うところがある…。」
蒼葉「ああ、怨嗟の星屑は「天の神」が形成したバーテックスとは違う…要するに、そのイミテーションだ。」
東郷(満開)「…偽物…。」
蒼葉「初めて、シン・バーテックスと交戦した時の事を覚えているか?。その時に、烈火の姉が言っていただろう?。コイツらは、天の神との関連性が無いバーテックス…人々の怨念によって神の制御が効かなくなった凶暴種…今のお前達と同じだ。神の加護が無いと言っていい…バーテックスだ。」
東郷(満開)「神の加護!?。バーテックスにはあったというの!?。」
蒼葉「俺も推測にしか過ぎないが…もう一つの世界線で現れたバーテックスにはあった。驚異的な自己再生能力と、無限に続く復活…お前達の世界のバーテックスと同じだ。長い時間をかけてまた復活する。それはまさしくお前達とは別の「神の加護」とも言えるだろう。」
東郷(満開)「…勇者が神樹様の戦士なら…バーテックスは天の神の先兵…。」
蒼葉「ああ…コイツらはその概念から外れた個体…人々の怨念によって攻撃性は上がっているが、再生能力に関しては劣っていると言える。姿形を形成するのは簡単だろうが、戦闘能力に関してはすぐには戻せないんだろう。それでも、あの凶暴性故に目に見えるものには攻撃してくる習性がある…自分がまだ、完全に再生出来ていないとしてもだ。」
動きが止まっているシン・ライブラを蒼葉は容赦無く撃ち抜く。
「御霊」はなく、言うなれば…ハリボテの状態だった。
蒼葉「「御霊」までの再生が追いついていないのなら撃破は容易い…だが、時間をかければ奴らはその戦闘力を戻すことはできるのだろう。そして…最もやばいのがコイツだ。」
眼前に広がる超巨大なシン・バーテックスになりかけている個体を見る。
蒼葉「今すぐにあれをどうにかしたいが…今の俺たちじゃあの不完全態から反撃を受けるだけで終わってしまうだろう。現実に現れるとなるとその影響力は計り知れないが…ここにみんなを連れて来たとしても帰還方法がわからない以上、リスクしかない。例え、撃破出来たとしても帰ることが出来なければ意味はない。俺の言いたいことは…わかるな?。」
東郷(満開)「…ええ…あれを放置するしか無い…ということね。私も同意見だわ…完全態となってしまった場合、どうなるかわからないけど…それでも今ここで仕掛けて全滅するよりかはマシね。私達の敵は他にまだいる。」
蒼葉「…意見が合ったな。なら、決まりだ…幸い、奴らはあれを形成することで忙しいようだ。この隙に、元の世界に戻れるゲートを探そう。入り口があるなら出口はきっとある。」
少し、歯痒いが超巨大シン・バーテックスを放置することにした2人。
近い将来、あれが出てくることを考えると対策を考えなければならない。だがそれは逆に、存在を知れたからこそ出来ることだって増えている証拠だ。
ことを前向きに捉え、みんなに共有しよう…。
2人はそう思う。
台座で移動しながら、辺りを見渡す2人。それらしきものは全く見つからない。
そこへ、東郷が話を切り出す。
東郷(満開)「…聞かせて?。貴方のその回復力は何なの?。普通なら、今すぐにでも命を落としてもおかしく無いほどの傷だったのよ?。私の精霊で応急処置は済ませたけど…流石にそのレベルまでの回復は想定にも入っていないわ。少なくとも、命を繋ぐ時間稼ぎ程度でしかなかった…。」
東郷の質問に、蒼葉は黙り込む。
またこれか…。
いつものように、自分のことを語ろうとしない蒼葉に怒りを露わにするどころか、呆れてくる。だが、意外にも蒼葉は語り出した。
蒼葉「…俺は…身体の機能がいくつか「散華」している。」
散華…その言葉を聞いた東郷は思わず台座を止めてしまった。
東郷(満開)「散華ですってッ!?。そんなはずは…だって貴方は勇者じゃないのよッ!?。それに、あれは「満開」の代償で…ッ!。」
蒼葉「あの人の…須美さんの「肩代わり」をしたんだ。終末戦争末期、こちら側の結城とハレワタールが天の神との最終決戦に赴いた「再世決戦」…当然、バーテックスの進軍もあった。それを止めるために須美さんは単身で防衛戦に徹していたが…流石に「満開」を使用しなければどうにもならない状況下だった。」
蒼葉「しかし、散華の影響も知っていたあの人はそれが諸刃の剣だという事も熟知していたんだ。どの機能を持っていかれるかわからない…そんな恐怖もあったんだろう。だが俺は…あの人に拾ってもらった恩義がある。だから、俺の身体の機能を供物に「満開」を使用する事を提案した。当然、怒り浸透の猛反対を食らったが…それを聞いている暇もなかった。あの人が死ぬくらいなら俺は…自分が「人」じゃなくなってもいい…だから、生かすんだと強引に「満開」を発動させた。」
東郷(満開)「…どうやって「肩代わり」なんて出来たの…?。」
蒼葉「俺の情報を予め、あの人の勇者システムに仕込んでいたんだ。「散華」の影響を俺に来させるように、遺伝子情報を細工しておけばあの人が供物を捧げる必要もない…これは、神樹との取引でもあった。勇者が死ねない構造…それは、お前もよく知っているだろう?。」
それを聞いた東郷は、歯を食いしばって蒼葉を平手打ちした。
東郷(満開)「貴方はやはり大馬鹿者よッ!。その事実を、あの人は知っているのよねッ!?。同一人物だからわかるわッ!。きっと、ずっと苦しんでるはず…貴方のその勝手な優しさが逆にあの人を苦しめてるのッ!。」
蒼葉「…そう…だろうな…。」
東郷(満開)「わかってて何故そんな馬鹿な事をしたのッ!?。恩返しでも何でもない、恩を仇で返す行為よッ!!。」
蒼葉「それでもッ!!。俺は…あの人には人間で居てもらいたかった…あの人は家族みたいなものだ…身寄りの無い俺を拾ってくれた恩人だ。だから、恩の返し方はそれしかないと思った!!。」
東郷(満開)「ッ…だからと言って…ッ!。」
蒼葉「俺はッ!…力の無い人間だ…ただの物知りというだけで…戦いの中でいつもボロボロになって帰ってくるあの人を見てられなかった…いつか死ぬんじゃないかって、そう思ったッ!。俺に力さえあれば…この力があの時にあればッ!。その隣に立ってちゃんとした恩を返せたかも知れない…だがあの時はそうするしかなかったッ!。なかったんだ…わかってくれ……あれだけの苦労をして来た人に、一生苦しむほどの苦痛が付きまとうくらいなら俺がその業を背負うッ!!。苦痛を感じても死ねない身体になったとしても、俺は構わない…その選択に後悔は無い…。」
それを聞いた東郷は悲痛な表情をする。
底を見せなかったあの姿勢は…自分の身体の事だった事に。
もうどうにかすることなんて出来ない…でも、それでもやはり許せなかった。
だがそれと同時に少し考えることもあった。
初めて感情を露わにして訴えてくる蒼葉…その必死さが…不器用な優しさが。
何でこんなにも……不器用なのだろうか………。
東郷はただただ、そう思っていた…。
………………end。
シン・バーテックスの全貌が少しずつ垣間見えた事、そして蒼葉自身の身体の事。
東郷はその事実を叩きつけられ、感情の処理が追いつかないでいた。
未だに異空間から出られない2人…その頃、現実世界では千景が大規模な動きを見せる。それと同時に、アンダーグ帝国の襲撃も重なる。
三つ巴の戦況下で、動けるメンバーが取る行動とは…。
次回
第67話 激戦、三つ巴の戦い・前編。