〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。

互いの信念をぶつけて強敵達を撃破したアグニとスカイ。

この三つ巴の戦いは壮絶を極めていた。

その中で、友奈は千景と対峙。彼女の抱える怨嗟を理解しようとする。
しかし、完全なる拒絶…そして、想像を絶する千景の怨嗟を前に友奈も覚悟を決める。

大切な人の家族を救うため、そして何よりも…彼女自身の未来のために。


第70話 救済の拳と怨嗟の鎌。

 

〜友奈VS千景side〜

 

千景「結城友奈…貴女だけはここで…ッ!。」

 

本来の勇者装束ではなく、自らが開発した<擬似勇者外装>参式「彼岸花」を纏う千景の猛攻は凄まじく、友奈は身体の所々に傷を負っていた。

 

千景「さぞ、滑稽でしょうねッ!?。勇者の力を剥奪された私がかつての力欲しさに<擬似勇者外装>なんてものを開発して本物の勇者である貴女と対峙している事にッ!。」

 

 

友奈「千景さん…何を…ッ!?。」

 

 

千景「出し惜しみしないでさっさと使いなさいよ…貴女も使うことができるんでしょ?。人の力で咲かせた「意志の華」を。」

 

 

友奈「…「満開」の事ですか?。使いませんよ、私は貴女を倒す為に戦ってるんじゃないッ!。貴女が抱いている恨みを知る為に戦ってるんですッ!。」

 

 

千景「図々しいのよ…人の中に土足で入り込んでッ!!。」

 

鎌と拳。激しくぶつかり合い、火花を散らす。

互いの頬からは血が流れ出し、戦いの壮絶さを物語らせる。

 

 

千景「…貴女はどうしてそこまで「同じ」なの…あの人と…高嶋さんとどうしてそこまで同じなのッ!?。貴女も私を否定するの?。高嶋さんッ!!。」

 

友奈の姿に、唯一自分が信じられる友「高嶋友奈」の姿を重ねてみる千景。

裏切られた気がする…そう感じてしまう千景は声を荒げる。

その様子に、友奈は千景の精神状態を懸念する。

 

友奈(…強すぎる怨嗟が千景さんの精神をすり減らしてる…さっきから、おかしな事ばかり話してるし…長引かせたら大変なことに…ッ!。)

 

 

千景「…フフ…フフフ…そう…そうなのね…裏切るんだ…信じてたのに…貴女だけは離れないと信じてたのに…ねェ…高嶋さん?。」

 

 

友奈「違います千景さんッ!。私は高嶋さんじゃないッ!。高嶋さんは貴女を裏切ったりなんてしないッ!。」

 

 

千景「黙れッ!。あの人の事を何も分からない癖に…貴女さえ居なければ…私は高嶋さんに裏切られることも無かったッ!。結城友奈ぁッ!お前が高嶋さんを奪ったッ!!。」

 

地面を蹴って飛び出し、鎌を2本発現。

容赦無く振りながら、防御態勢を取る友奈を追い詰めていく。

 

 

千景「殺してあげるわ…二度とその顔を見せないで頂戴。」

 

 

友奈「ち…千景さん…今の貴女は恨みに囚われて…ああッ!?。」

 

切り飛ばされた友奈は、胸元から血が噴き出す。

精霊バリアが作動しない…そうか、「対策」されている。

 

この戦いの中で、友奈は改めて勇者システムが千景に掌握されていることを思い知る。

 

 

千景「恨みに囚われてる?。フフ…そうよ?。私は「恨み」の部分の郡千景よ?。私の周りはいつもそう…明るい星のような人がたくさんいる…そして私はいつもその闇…その影…誰も私を必要としない…愛してくれない…この憎悪が晴れることは無かったわ。乃木さんを認めて死んだあの日でさえも…小さな幸せは沈みゆく私の魂と共に闇に沈んだ。結局はそうだったのよ…私は…孤独だ。」

 

 

友奈「違います千景さん、まだ間に合いますッ!。貴女はまだ陽に当たる場所に戻れますッ!。もう一度やり直せばいい、「今」からッ!!。」

 

友奈の必死な訴えに、つい笑い声を放つ千景。

甲高い、彼女の笑い声がその場にこだまする。そして笑い終えた瞬間…表情が一変する。

 

千景「…五月蝿いのよさっきから。どうせ貴女も同じよ…私に希望を持たせて裏切るんでしょ?。わかってるのよ…だから私は…孤独でいい。」

 

 

友奈「ッ…!!。」

 

 

千景「気に病む必要はないわ。裏切りには慣れている…そう、何も苦しくはない…ただやはり…高嶋さんへの未練を断ち切る為に貴女を殺すわ。じゃないと私、もっとおかしくなりそうなの。高嶋友奈という未練を貴女で断ち切る…「同じ」結城友奈…貴女でねッ!。」

 

仕掛けてくる千景。その剣戟は凄まじく一発一発に殺意が乗っている。

友奈は防戦一方…だが、やはりその手数では身が削られていくだけだった。

 

千景「説得は不要よ、生きたければ私を殺しなさい。貴女に殺されるならまだいいわ。」

 

 

友奈「しませんッ!。絶対にッ!。」

 

連撃の合間を見切り、左足で鎌を蹴り上げた友奈は掌底を放って千景を吹き飛ばす。

 

千景「が…ッ!?。」

 

 

友奈「千景さん、「今」の貴女には家族がちゃんと居ますッ!。向き合ってくれる人がちゃんと居ますッ!。」

 

 

千景「烈火の事?。フン、彼とはもう「家族」でもなんでもない…偽りの姉弟…全てを思い出した今、私と烈火はもう赤の他人なのよ!。」

 

 

友奈「そんな事ないッ!。血の繋がりはなくても…転生して今に蘇ったとしても…そこまで一緒に過ごした時間は本物なはずッ!。今はすれ違ってるけど、姉弟として過ごした時間に嘘はないッ!。」

 

友奈の猛攻に、今度は千景が防戦一方となる。

歯を食いしばりながら、友奈の訴えを全て拒絶する。

 

千景「偽善を…そうやって私を惑わそうとしてもッ!!。」

 

 

友奈「私はッ!。せっかく今に生き返ったなら今度は明るい未来に進んで欲しいだけなんです、千景さんッ!。今の貴女は後ろばっかり振り返って前を見てない…前を見てくださいッ!その先に貴女の求めてたものが必ずありますからッ!!。」

 

 

千景「うるさい…うるさいうるさいうるさいうるさい…うるさぁあああいッッ!。」

 

激昂した千景は、分身体を作り出して友奈に突撃させる。

質量のあるそれは、友奈を容赦無く切り裂いていく。

 

友奈「ぐっ…ぁ…ッ!?。」

 

 

千景「何が救いだ…何が明るい未来だ…そんなもの、求めれば求めるほど溢れていった私の気持ちがお前に理解出来るのかぁああッ!?。」

 

 

友奈「それを理解する為に私は貴女に手を伸ばしますッ!!。」

 

血と血で交わる2人の気持ち。

決して相容れない思いのぶつかり合いがそこにあり、互いに譲れないところまで来ている。

 

 

千景「結城友奈ァァァァッッ!!。」

 

 

友奈「千景さぁあああんッッ!!。」

 

光と闇。

例えるならそうだろうか、救済の拳と怨嗟の鎌がぶつかり合うその戦場は壮絶だった。

 

他の戦いには目をくれない2人だけのぶつかり合い。

命を燃やしながら、叫びながら戦う2人の少女。

一進一退の攻防を繰り広げながら、ただただぶつかり合う。

今は世界のことなんてどうでもいい…ただ、千景という報われなかった勇者を救いたい。

 

友奈はたったそれだけの思いをぶつける。

しかし、千景も負けじと拒絶の姿勢を取り続ける。

 

今更戻れないこの道…抱えて蘇ったこの恨みと共に生きる為に。

そして今度こそ…愛される人になる為に。

 

日陰にずっと生きてきた千景がずっと手を伸ばして求めていた「栄光」がすぐそこにある。

間違った方法でもいい、自分を愛してくれるならなんでもいい。

もうすぐだ、この改革が成功すれば今度こそ自分は…若葉や友奈(高嶋)のような星のような輝きを放てる人間になれる。

憧れた人間と同じ舞台に立てる…。

この好機を絶対に逃さない…邪魔する者は全て排除する。

 

目の前にある「栄光」に貪欲になった千景は怨嗟を纏いながら、その一撃は友奈に競り勝った。

 

致命の一撃には届かなくても、友奈の「思い」を砕いた感触はあった。

 

吹き飛ばされて地面に叩きつけられた友奈。

切り裂かれた傷からは夥しく血が流れてくる。

 

 

友奈「けふっ…はっ…はっ……ゴフッ…!!。」

 

 

千景「…滑稽ね。全力で来ないから死ぬことになる…「満開」を使っていればこんなことにはならなかったと思うわ。「対策」されていたとしても、貴女の力だったら私を倒すことなんて簡単なはずよ。」

 

刃を倒れる友奈に向ける千景。

 

友奈「ち…かげ…さん…わたしは…あなたを…たすけ…。」

 

 

千景「…そのしつこさに免じて、貴女の気持ちは受け取っておくわ。だけどそれを理解することは決して無い…貴女の思いも全て…私には届かない。」

 

振り上げる鎌。千景は…武者震いする。

 

千景(嗚呼…高嶋さんをこの手で殺すことになるなんて…不思議と悲しくはない…私は完全に壊れてしまったわね…でも…何故かしら…私を愛してくれた人をこの手で殺すことに…高揚感を抱いている…。)

 

それは、「恨み」から「狂気」に昇華した瞬間だった。

 

無情にも、友奈の胸目掛けて振り下ろされる鎌。

だがその時…。

 

 

-ダメ!「ぐんちゃん」!!-

 

 

千景「!!!。」

 

千景の脳裏に響いたその一言で止まる鎌。

まさに、友奈の胸を貫く寸前だった。

 

千景「ぐん…?。そう呼ぶのは…まさか…ッ…!?。」

 

目の焦点が合わずに、戸惑い出す千景。

ガタガタと震え出す千景に、友奈は何が起きているか分かっていない。

 

 

ーその「線」を超えちゃダメだよ!本当に「戻れ」なくなるッ!ー

 

 

千景「ああ…ああ…やめて…来ないで…こっちに来ないで…ああ…ッ!。」

 

 

友奈「千景…さん……?。」

 

鎌を落として後ずさる千景。頭を抑えて怯えながら声を震わせる。

 

 

ー「狂気」に侵されちゃダメッ!。自分を保って、ぐんちゃんッ!ー

 

 

千景「来るな…来るな…なんで…私を…裏切った癖にッッ!!。」

 

 

ーごめんねぐんちゃん、1人にしちゃって…でも…友奈ちゃんの言う通りだよ…せっかく生き返ったんなら「今」を生きてみて…きっと、ぐんちゃんが欲しかったものが手に入るはずだからー

 

 

千景「要らないッ!。私はこの恨みを晴らして手に入れるッ!。もう、誰も私を裏切らないように…愛してもらう為にッ!。」

 

怨嗟の気を纏う千景。

今度のそれは、今までとは非にならないほど膨大で。

 

 

友奈(もしかして…目の前に高嶋さんがいるの…千景さんがあんなに怯えて…それに…。)

 

友奈は自分の傷を見ると、少しずつだが回復していっていた。

そして、朧げながらその幻影が見える。

自分の目の前で、両手を広げて千景を制する高嶋友奈の姿が。

 

 

千景「なんで…なんで貴女まで邪魔をするの…認めてくれないの…私…今度こそ頑張りたいんだよ…?。なのに…なのに…。」

 

血涙を流し、目が赤く染まる千景。

怨嗟の大きさが街全体に広がる。

それはとても冷たくて…それを見ていたスカイとアグニはこの感覚を知っている。これは……。

 

ましろが闇に堕ちた時と…同じだ。

 

千景「なんで私を見てくれないッ!?認めてくれないッ!?。高嶋友奈ァァァァッッ!!。」

 

…千景は、完全に「狂気」に身を委ねてしまった。

 

最後に信じていたものに認めてもらえなかった…今度は間違いなく「本人」に。

そんな歪んだ思いが全てに駆け巡る。

 

振り翳された鎌は今度は友奈(高嶋)の幻影に振り翳された。

千景は彼女を殺す気で振り翳す。

認めてくれないなら…消えてくれ。

そんな思いで。

 

友奈「た…高嶋さんッ!!。」

 

迫り来る千景の狂気に、その幻影は微笑を浮かべる。そして…。

 

ー大丈夫だよ?。ぐんちゃんを止めてくれる人をここに…「連れて来た」からー

 

鎌が届く寸前、その鎌は刃ごと折られて弾かれる。

あまりの衝撃に、千景の両腕の骨が砕けて痛みで絶叫する。

 

 

千景「は…は……れ…烈火ァァァァ…ッ!。」

 

 

烈火「…………。」

 

真剣な眼差しで、振り抜いたメイスを千景に突き付けた烈火。

鎌の刃は地面に突き刺さって静寂が響き渡る。

 

スキアヘッド(…頃合い…か。)

 

状況を見届けたスキアヘッドは撤退。ランボーグも消滅した。

 

夏凛「ぐっ…あいつ…撤退した…!?。」

 

 

烈火「…姉貴。」

 

 

千景「黙れッ!。私はお前の姉じゃないッ!。」

 

 

烈火「…帰れ。次会う時は…お互いに決着をつける時だ。お前の恨みが勝つか…俺たちの思いが勝つか…そん時だ…ッ!。」

 

 

千景「ぐぅううう…ッ!!。」

 

 

慎也「撤退しましょう、千景様!!。」

 

擬似勇者達に諭され、千景はその場から撤退。

その場は激戦の跡が残るだけとなった。

 

 

友奈「…高嶋さんが…烈火君を連れてきてくれたの…?。」

 

 

ーうん、彼の目覚めが遅かったのはね…私と「お話」してたから。それに…ー

 

烈火の<擬似勇者外装>の形状が少しだけだが変化していた。特にその手甲「天ノ逆手」は…高嶋友奈のものだった。

 

 

ー私の勇者の力を…彼にあげたの。ぐんちゃんを止める為に…ー

 

 

……………………end。

 




友奈の説得は届かず、千景は「恨み」を「狂気」に昇華させて一線を越えようとしていた。

だがその時、高嶋友奈の幻影がそれを遮り、さらに彼女の勇者の力を手にした烈火の登場により千景を撤退させた。

その経緯とは慎也に敗北して意識を失っていた烈火は、眠りの中で高嶋友奈と邂逅していたという。
そして、千景を止めたい高嶋友奈は烈火に力を与えると共に「ある取引」を交わしたのだった。

次回
第71話 <完全勇者外装>。
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