〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。


千景と友奈。二人の戦いはまさに光と闇を体現するかのような激戦となった。

勝者は千景。彼女の怨嗟を止められなかった友奈は窮地に陥る。
だがそのピンチを救ったのはこの世界で英霊となった「高嶋友奈」。

そして、彼女の力を受け取った烈火が千景を追い払う。

戦闘後、昏睡状態となっていた烈火と高嶋友奈との間でかわされた話の全貌を聞くことに。

全ては千景を止めて救う為…二人の利害は一致していた。


第71話 <完全勇者外装>。

 

<疑似勇者外装>「ガーベラ」を解いた烈火。

急いできたのだろう、患者服のままだった。

 

痛々しい包帯の数と、激しい動きをしたことで開いた傷からは少量の血液が滲み出ていた。そして、電池が切れたように気を失って倒れてしまう。慌てて友奈が受け止めた。

 

戦闘を終えた一同は全員、その場に集まる。そして、光が大きくなった瞬間に一同の目にも高嶋友奈の幻影が視認できるようになっていた。

 

 

-うん、これでみんなは私の姿が見えるようになったね?-

 

 

友奈(if)「貴女が…高嶋友奈…。」

 

 

-魂だけの状態だけどね?。貴女がもう一人の友奈ちゃん…お会いできて光栄だよ-

 

 

友奈「ねェ聞かせて高嶋さん…烈火君をここに連れてきた理由…それに…烈火君に貴女の力を渡したことも。」

 

 

-そうだね…話は少し遡るよ?-

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

時は数日前…。

慎也に敗北した烈火の意識はとある空間にて彷徨っていた。

 

見渡す限りは永遠とも言える樹海…音も何もない静寂な空間…。

身体の感覚はある…だが、まるで死んでしまったかのような諦めがあった。

 

なんとなく、空間を泳ぐように彷徨っていたその時…2人は出会った。

 

 

友奈(高嶋)「あれ…君は確か…烈火君だったね?。」

 

 

烈火「お前は…。」

 

出会ってから間もなく、2人は大きな木の根に座りながらこの空間を眺めていた。

色々、話した…もう一人のソラを巡るあの旅の別れから、自分たちに降りかかった困難の事。そして…暴走してしまった千景の事を。

 

千景に関しては事の顛末がなんとなく分かっていた烈火だが、それでもやはり、胸が締め付けられる思いだった。

 

 

友奈(高嶋)「そっかぁ…勇者世界に戻ってきたんだね。ぐんちゃんを止めるために。」

 

 

烈火「ああ、まあ結果は見ての通りさ。姉貴に届く前に俺は…そのナイト様に負けちまった訳。」

 

 

友奈(高嶋)「悔しかった?。」

 

 

烈火「まあな。何とかなるって気持ちでいつも戦ってたからな…初めてデカい壁にぶち当たった気がする。」

 

力なく笑う烈火。だが、やはりその悔しさは拳に現れていた。

しかし、そこはやはり…烈火だった。

 

烈火「たった一回の負けぐらいでイモ引けるかよ。こうしてる間にも、みんなはあいつらと戦ってるかも知れねェ。だが、今俺が立ち向かった所で勝機がまるで見出せねェ…考えなしに行くと今度こそ…マジで敗北しちまう。心が折れてな。」

 

 

友奈(高嶋)「…強いんだね、君は。普通なら立ち直れないかもしれないのに…。」

 

 

烈火「弱いさ、俺は。」

 

初めて、人前で弱音を吐く烈火。

意外そうにも、彼女は話を聞く。

 

烈火「俺はいつもがむしゃらになってるだけだ。その結果がたまたま良かっただけ…本当の俺は、たった一人の家族すらロクに救えねェダメな奴だ。挙句の果てに、届く前にこうしてこんな場所を彷徨ってる。心配かけたくねェ奴にいつも心配をかけている…どうしようもねェ、ろくでなしさ。」

 

 

友奈(高嶋)「それって…友奈ちゃんの事?。」

 

 

烈火「ああ。きっとあいつは、俺が目を覚ますまで自分が姉貴と向き合おうとしてるだろうな。元々、人の為に動ける奴だ…どんなに傷付こうが立ち向かっていく。全く…無茶が服を着て歩いてるような奴だ。」

 

 

友奈(高嶋)「あの子はそういう子だよ?。「同じ」だから分かる…誰かが傷付くくらいなら自分がって。だから平気で命だって賭けちゃう…でも、貴方はあの子のそういうところを見たくないんだよね?。」

 

 

烈火「ああ。あいつは十分頑張ったんだ。だから今度は…あいつを守らなきゃならねェ。みんなで…そして、一緒に肩を並べて戦える俺が。」

 

 

それを聞いた友奈(高嶋)は、目を閉じて考え込む。

折れていない烈火の心…そして、まだ燃えている意志の炎。

それを感じ取り、彼の中に潜む「意志の華」を見ようとする。

 

 

友奈(高嶋)「うん…君にもある。まだ種だけど、しっかりとそこにあるよ。「意志の華」が。」

 

 

烈火「意志の華?。」

 

 

友奈(高嶋)「みんな気付いていないだけで全員が持ってるんだ?。それを咲かせることが出来るのはほんのわずか…神樹様が最期にみんなに残してくれた…恵みだよ。」

 

 

烈火の手を取る友奈(高嶋)。

淡い光が手を包み込む。

 

 

烈火「なんだこれ…。」

 

 

友奈(高嶋)「君には、守りたいものがたくさんある。でもそれはきっと、全てを成し遂げる事はできないと思う。どこまで行っても、君は人間…小さくてちっぽけな存在。だから、簡単に零れてしまう。」

 

 

友奈(高嶋)「でもね、それは君が君でいるための根っこ…君という小さな木を力強く立たせるための根っこ。」

 

その瞬間、烈火の手の中に一輪の花が咲いてくる。

 

桜の花…小さいがとても美しい花。

 

 

友奈(高嶋)「君は勇者じゃないから「意志の華」を開花させることは難しいと思う。でも、君のその意志はとても強くて…きっと、未来を勝ち取る為に必要なもの。君は…どんな未来を望む?。」

 

その質問に、目を閉じる烈火。

 

そんなもの…最初から決まっている。考える必要もない…。

 

 

烈火「…みんなが自由で過ごせる未来…そこにはみんなが居て、そして…姉貴が居る。誰か一人でも欠けちまったらその未来を目指すことが出来ねェ。あんたらが命を燃やして繋いだこの未来を、今を生きる俺達が守る。そして…全員が何の不自由もねェ自由な未来を俺は…望む。」

 

その答えを聞いた友奈(高嶋)。

ニッコリと笑みを浮かべ、満足した表情で。

 

友奈(高嶋)「…やっぱり、君は「自由」が大好きなんだね?。」

 

 

烈火「当ったり前ェだろ?。退屈なほど、幸せなことはねェ。一人が自由になったって何の意味もねェじゃんか?。やっぱ、全員が自由を満喫出来なきゃ幸せなんて訪れねェだろ?。」

 

 

友奈(高嶋)「…その道が例え、どんなに険しくても?。」

 

 

烈火「ああ。」

 

 

友奈(高嶋)「…その道に犠牲が出るかもしれないよ?。」

 

 

烈火「させねェよ。絶対にな。」

 

 

友奈(高嶋)「…分かるな…友奈ちゃんが君を想う気持ち。君は「友奈たらし」だね?。」

 

 

烈火「はあ?。なんじゃそりゃ?。」

 

 

友奈(高嶋)「ううん、こっちの話。それを聞けて良かった。なら、私から一つ頼みがあるの。」

 

 

ニッコリとした表情が一変。真剣な眼差しとなる。

 

 

友奈(高嶋)「ぐんちゃんを救って。君のその道にあの子がいるのなら…怨嗟から解放してあげて欲しい。そして…「今」を生きて今度こそ、手に入れられなかった幸せをあの子に…与えてほしい。」

 

 

烈火「…分かってるよ。その為に俺は…今を戦える。もう一度「家族」に戻る為に…俺は姉貴を救いたい。」

 

 

友奈(高嶋)「ありがとう?。なら、ここからは「取引」だよ。きっと、今の君の力じゃぐんちゃんには届かない。あの子の抱える怨嗟は大きすぎる…それを受け入れる器も大事だ。でも、衝突は免れない…君の声と思いを届かせるために私も力を貸す…だから、君に託すよ。私の「勇者の力」を。」

 

淡い光が一気に輝くと、それは烈火の端末の中に入り込んだ。

 

 

友奈(高嶋)「偽物の勇者は今…本物に近い勇者になった。さしずめ<完全勇者外装>といった所かな?、私の力は今、君のものとなった。でもね…それを行使するにはリスクがある。」

 

 

烈火「リスク…?。」

 

 

友奈(高嶋)「うん。そこが「取引」なんだ。どこまでいっても君が勇者になれない事実は事実のまま。勇者じゃない人間が勇者の力を使うんだ…当然、君の身体にも影響がある。普通に使う分には問題ないけど…私の「切り札」である「酒呑童子」…それを使えば君は…身体の機能が一つ「無くなって」しまう。」

 

 

身体の機能が一つ「無くなる」…。

 

それを聞いた烈火は、「満開」の代償である「散華」を思い出した。

だがあれは神の力を行使するために支払う代価…今、話を聞いているのは支払う代価ではない。

 

 

友奈(高嶋)「出来れば使わせたくはないけど…ぐんちゃんを止めるためにはきっと…。」

 

 

烈火「なんだ、そんなことか。構いやしねェよ。姉貴に届くならくれてやるさ。俺の身体の機能くらい。」

 

 

友奈(高嶋)「いいの?…与えといてなんだけど…それを使えばどうなるか分からないんだよ?。」

 

 

烈火「どうせこのまま行っても門前払いか犬死のどっちかだ。最悪、姉貴を失うかもしれねェ。使いどころは間違えねェさ。だからこれは…俺の「切り札」として取っておく。可能性が無ェよりかは遥かにマシさ。」

 

 

友奈(高嶋)「……分かった。アハハ、君に掛かればそんなことも些細な事なんだね?。ますます気に入っちゃったよ。なら、行こう。今頃きっと、友奈ちゃんがぐんちゃんと戦ってる。あの怨嗟を受けきるには一人じゃ重すぎるから…。」

 

 

烈火「合点!。よし、菱崎烈火の復活祭と行こうかッ!!。」

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

―…といった所かな。ほんとに強いなぁって思ったよ―

 

 

友奈「烈火君…。」

 

 

アグニ「その「切り札」の使いどころはコイツに任せるとして…それ以外は問題ねェんだな?。」

 

 

―うん。私が魂の「残量」を減らしてサポートするから…身体が馴染めばきっと、私が居なくても彼ならなんとかできるはず―

 

 

友奈「え…それって、高嶋さんが消えちゃうって事…!?。」

 

 

―そうだよ。あの時…天の神との戦いで集まった英霊たちは天に召されたけど私だけはまだここにいる。ぐんちゃんの事が気がかりで天には帰れないよ?-

 

 

スカイ「そうですか…本来なら貴女も天に帰るつもりが…。」

 

 

―…どのみち、神樹様の一部である私が消えるのも時間の問題だったし…それなら、本当の最期は大切な友達を救ってからにしたい。これが私の…最期の戦いだから―

 

 

その思いを汲み取った一同はこれ以上は何も言わなかった。

この戦いできっと、鍵となるのはこういった思い。

怨嗟に囚われた千景を救うには、思いを貫き通すしかない。

どこまで届くか分からない…だがそれでも全力でぶつかって、真正面から対峙するほうがいい。

決意は固まった、後はやるだけだ。

 

……………………。

 

烈火「…ぅ…?。」

 

病室で目を覚ます烈火。

気付いた友奈は瞳を向ける。

 

友奈「あ…気が付いた?。身体は大丈夫?。」

 

 

烈火「…まあな。その様子だと…あいつから全部聞いたんだな?。」

 

 

友奈「うん。それにしても烈火君、「切り札」を使えば身体の機能一つが無くなること…怖くないの?。」

 

 

烈火「…怖くねェと言えば噓になる。けど、恐れてる暇もねェのも事実だろ。」

 

 

友奈「でも…。」

 

 

烈火「…甘く見てたんだよ、俺。」

 

 

友奈「え…。」

 

 

烈火「全力でぶつかり合えば、どうとでもなるって思ってた。けど、現実はそうじゃなくて…滅茶苦茶デカい壁がそこにあったことに気付いた。人を救うってのは並大抵のことじゃねェ…ましてや、身内を救うんだ。もちろん、拒絶されりゃ凹んじまうだろ?。」

 

 

友奈「…うん…分かる…。」

 

 

烈火「だからよ、あいつも身を削って俺らを全力で拒否してるんなら俺も身を削ってあいつを全力で救うんだ。手を伸ばし続ければ届くんだって事を証明してやるためにな。あの意固地な姉貴の事だ、その気持ちを完全に折らねェときっと、届かねェ。」

 

烈火は身体を起こして、背伸びする。

 

烈火「だから俺も覚悟を決めた。この戦いは勝ち負けじゃねェ…俺達とあいつの未来を勝ち取る為の意地の張り合いだ。あいつか俺か…この姉弟喧嘩は意地を貫いた奴が正しい…だから負けるわけにはいかねェ。例え、身体が砕けることになっても。」

 

覚悟を決めた烈火はとても凛々しくて…そして、危なっかしくもある。

 

本当に姉弟なんだ…その意地の張っている部分が本当に似ている。

 

そう思う友奈は何故か少しだけ、笑ってしまう。

 

だったら、まだ希望はある。まだ頑張れるな…。

 

そう思い、友奈は烈火の覚悟を受け入れるのだった…。

 

 

…………………end。




高嶋友奈の力を受け取り、烈火の<疑似勇者外装>は勇者に限りなく近い<完全勇者外装>へと進化を果たした。

だが、最大の一手である「切り札」には「散華」と同じ身体機能の欠如というリスクを抱えてしまう。

勇者にはなれない少年は、姉を救う為に紛い物の勇者なりの戦いをすることを決意する。

三つ巴の戦いから数日後、両者共に疲弊が激しいのかこのところはおとなしい毎日を過ごしていた。

そんな日々を過ごしていた時、ある一報が入った。

それは…バラバラとなった防人に関する情報だった。

次回
第72話 影の守護者たち。
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