〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
たった一人の姉を救う為、高嶋友奈の力を授かった烈火。
新たな力を得た烈火は、この戦いの意味に全力を尽くすと決意した。
勇者と疑似勇者、その両方の力を持つ烈火はこれから先の戦いに備え、準備を整える。
激戦から束の間の休息…それはある一報によって急展開を迎えることとなる…。
洸「よし、これで俺も動けるようになった!!。」
怪我が完治した洸は、屈伸しながら太陽の下で身体を伸ばす。
その傍らには園子が居て、晴れて結ばれた2人は共に一同の元へと向かう。
園子「よかった~…後遺症も何もないって、お医者さんが言ってたね~?。」
洸「…あの程度で後遺症なんて出るかよ、ただの外傷だ全く。」
園子「それでも、心配だったんだよ~?。」
洸「お…おう…悪かったな…。」
いつもなら鋭く返すところを何故か、遠慮してしまう。
改めて思うと、かなり意識してしまう。結ばれたから余計なのか、少し扱いに困ってしまうのだ。
次第に照れてくる洸の目線は明後日の方向を見ていて、話題を切り替えようとする。
洸「そ…そういえば、烈火の奴がもう退院したんだってな!?。この間のデカい戦いに出てたらしいぜ!?。」
園子(むぅ…話題を切り替えてきた…ま、仕方ないか~…洸は照屋さんだからね~。)
園子「みたいだね~?。れっかん、無茶ばっかするから少し心配だね~?。」
洸「…なあ園子。東郷と蒼葉の行方、まだわからねェのか?。」
そう…数日たった今でも、2人の行方は分からず仕舞いだった。
特に、大赦は現在「海祇機関」から実行支配を受けているようなもの。
この世界において、情報の集まりやすい大赦が頼れない現状、2人に関する手掛かりは自分たちで探すしかないのだ。
園子は僅かな伝手を使って調べてもらっていたが、連絡がない以上は進展がない…そう思って、端末を見る。
園子「…神隠しに遭っているのなら恐らくだけど、この世界には居ない…そうなると、捜索の範囲は違ってくるよね。私がそーちゃん達の世界に飛ばされた時と同じ状況かもしれない。心配だな~…。」
頭上に移る「ソラシド市」を見る園子。
少し前までの自分と同じ状況に陥っていると考えると、この心配の気持ちが分かってくる。
それでも、信じて待つのが正解かもしれない…少なくとも、向こうは自分たちの居場所を理解している。
ここに戻ろうとしているのなら、なおさら待つ方が合理的だ。
だがそれでも、心配になってくる…あの犬猿の仲の2人だ。上手くやれてるとは到底思えない。
園子「わっしーも強情だからね〜…あおの事大っ嫌いだからきっと喧嘩三昧だと思うな〜?。」
洸「そうか?。俺はそうは思わねぇけどな?。」
洸の発言に、珍しく園子はフリーズした。
え…本当に言ってる?。いつも喧嘩ばっかしてたじゃん。
そんな思いが頭の中でずっとループされる。
洸「ああいう奴らは逆境に立たされた時に意見が合うもんなんだよ。なんだかんだで、お互いのことよく知ってるしな。」
園子「え〜…そうかなぁ〜?。」
洸「よく知ってるから喧嘩出来るんだろ?。本当に仲が悪いなら話したりしねぇよ。大丈夫さ、首尾よくやって帰ってくる。俺はそう思う。」
園子「へ〜…なら、私達も仲良くみんなのところに行こッ?。」
不意打ちのように、手を繋いでくる園子。
洸は思わず顔が赤くなる。
園子「えへへ〜…みんなもう知ってるからそんなに照れなくていいよ♪。さ、レッツゴー!。」
洸「お、おい…!!。」
……………………………。
鷹夜「…おい、どこまでついてくる…?。」
近くのコンビニに向かう鷹夜。背後に気配を感じ、よく見ると雀がついて来ていた。
雀「あ…バレた。」
鷹夜「バレたじゃねぇよ、コンビニに行くだけだって言ってんだろうが…ったく…。」
雀「でもタカ、脇腹に怪我してるよね?。」
鷹夜「肋骨が少し折れてるだけだ、まぁ…安静にしろとは言われてるけど…。」
じーっと、鷹夜を見る雀。
沈黙が続く中、鷹夜はどんどん苛立ちを募らせる。
鷹夜「だぁーッ!。何がしてェんだお前ッ!。あいてて…!。」
雀「えっとね…私の端末に連絡が入ってたの。見て欲しくて…。」
鷹夜「連絡ぅ?。なんだお前、そんな事でついて来てたのか?。最初から言えよ全く…。」
自分の端末を見せる雀に近寄る鷹夜。
そこに表示されていたメッセージを見て驚いた。
鷹夜「なっ…行方を眩ました防人について…だとッ!?。送信者は誰だッ!?。」
雀「シーっ!。声が大きいよ…「海祇機関」の人が見てたらどうすんの?。」
鷹夜「お…わ…悪ぃ…送信者は…なんだ…「匿名」?。」
雀「…うん。気味が悪くてさ…それに、私に送って来たということは私が防人だって知っての事だよね?。だから、タカに見てもらおうかなって。守ってもらわなきゃ、怖いんだもん。」
鷹夜「お前なぁ…俺はお前のボディガードじゃねェっての…にしても、お前の言う通りだ。送り主はお前の事を知ってる奴だ。何か心当たりはねェか?。」
雀「な…ないよそんなの。分かってたら最初からタカに相談してないもん。わからないからしてるの。」
鷹夜「…次はぜってぇ守らねェからな?。」
雀「えぇッ!?。ダ…ダメだよッ!。」
鷹夜「嘘だよ。これ…みんなに見せた方がいいんじゃねェか?。」
雀「…ううん、ダメ。ほら…。」
メッセージの文面をスクロールして見せる雀。
ー情報提供は貴女だけとします、他言無用でお願いします。大赦がマークしている可能性がありますので…今夜、ゴールドタワー前にてお待ちしておりますー
っと、書かれていた。
鷹夜「…会いに来いってことか…しかも、お前1人でだ。」
雀「い…嫌だよッ!。もし罠だったらどうすんのッ!?。私、殺されちゃうッ!。」
鷹夜「いちいち大袈裟なんだよお前…罠だったら逃げてくりゃ良い話だろ?。」
雀「簡単に言うけどね、人って簡単に死ぬのッ!。だから、守ってもらわなきゃいけないのッ!。ねェタカ、ついて来てよ!?。」
鷹夜「行く気満々じゃねェかお前…ったく…なんで俺なんだよ…他の奴の方が適任だろ?。ほら、俺怪我人だしさ。」
雀「…タカに守ってもらいたいの。安心出来るの、タカだし…。」
鷹夜「はぁああ…面倒臭ェ奴だなお前…分かったよ、行きゃ良いんだろ行きゃッ!。」
半ば、ヤケクソ気味になる鷹夜。その答えを聞いた雀は目を輝かせる。
雀「やったッ!。これで安心出来るッ!!。」
鷹夜「…こいつに良いように使われてる気がするの…俺だけか?。」
そして、約束の夜…。
なんとか言い訳をして、外に出て来た鷹夜。当然、ソラ達に問い詰められたが…。
………………。
ソラ「よ…夜風に当たりたいって…安静にしとけと言われたんでしょうッ!?。」
………………。
鷹夜「…お前のせいだかんな?。後でソラに小言言われるの確定しちまったじゃねェか…。」
雀「ごめんね、でも…。」
鷹夜「良いからさっさと済ませて帰るぞ。罠だったら変身して即逃げるッ!。いいな、万全なのはお前だからしっかりしてくれよ?。」
雀「わ…分かったよ…。」
ゴールドタワーに向かって歩く2人。街灯に照らされながら夜道をひたすら歩く。
雀「ねぇタカ。一つ、聞いて良い?。」
鷹夜「なんだ?。」
雀「どうして…あんなに強く戦えるの?。死んじゃうかもしれないんだよ?。怖く…ないの?。」
鷹夜「なんだいきなり…何を言うかと思えば…。」
進みながら、鷹夜は雀の質問に答えることにした。
鷹夜「俺は死にたくねェから全力で戦ってるだけだ。それに…育ててもらった「おっさん」の教えがある。ま…その「おっさん」はお世辞にも良い人とは言えねェけどな。でも…俺の目標なんだよ。泥臭くても、あんな生き様をしたいって…そう思ってる。」
雀「そのおじさんは…あの空の上の世界でどうしてるの?。」
鷹夜「…もうこの世に居ねぇよ。路地裏で無様に死んじまったさ。お似合いの最後だったろうな、死に顔は笑ってやがった。」
雀「ご…ごめんっ!。余計なこと聞いちゃった…!。」
鷹夜「良いよ別に。気にすることもねェし…まぁなんだ…そのおっさんの教えがあるから俺は「仁義」を大切にしてる。どんなに貶されても、どんなに馬鹿にされたとしても人として恥の無ェ人生を歩め、そうすりゃ全てが小さく見える。漢が泣く時は、大切な人が死んだ時。そして…。」
鷹夜は夜空に向けて、拳を掲げる。
その表情は決意に満ちた笑みを浮かべていて。
鷹夜「この拳、「仁義」の為に…ってな。」
雀「仁義…。」
鷹夜「人として行う正しい道って意味さ。俺が拳を振う理由はいつもそれしかねェ。人道に外れた行為を見逃すくらいなら死んだ方がマシだ。だから、俺は戦う。力があるか無ェかじゃねぇ…最後に勝つのは、心が強い奴だ。折れない意志が最後に勝つ。だから雀、お前は決して弱くねェ。臆病な奴ほど賢く生きるし…何よりも、誰かが傷付くのが一番嫌だと思える。だからこの怪しい申し出に応えることにしたんだろ?。少しでも、仲間の状況を知りたくて。」
雀「あ……。」
鷹夜「例え、罠だとしても行ける勇気がある。勇気ある行動が何かを変える…だからこれが例え、罠だったとしてもお前のその勇気には意味があるぜ?。ほら…見えて来た。ゴールドタワーだ。」
眼前には、ゴールドタワー。
夜の暗さに聳え立つその塔はどこか不気味な感じがした。
入り口付近まで歩く2人。すると、人の気配がした。
思わず身構える2人…いつでも変身できるように、背後に気を配りながら前を見据える。徐々に近付くその影…すると、それを見た雀が緊張の糸を解いた。
雀「え…ま…まさか…あやや…?。」
鷹夜「あやや?。知り合いか…?。」
「もう…1人で来てくださいと言ったのに…大赦の方達に後をつけられませんでしたか?雀さん?。」
暗闇から姿を現したのは小柄な少女。天使のような笑みを浮かべ、柔らかな口調で2人を迎える。
その名は「国土亜耶」。防人達と行動を共にしていた巫女だった。
雀「嘘…なんであややが!?。あの状況から逃げられたのッ!?。」
亜耶「芽吹先輩のおかげです。命からがら、逃げ延びる事が出来ました。でも…行く宛が無かったもので…乃木家の人たちに匿って頂いてなんとか…。」
鷹夜「じゃあ…匿名で雀にメッセージを送ったのは…。」
亜耶「はい。大赦にキャッチされないように敢えて名前を伏せてお送りしました。もちろん、端末もすぐに処分してます。先の戦いで雀さんが居たことを知り、メッセージを送らせてもらったんです。」
雀「ほ…他のみんなはッ!?。弥勒は…本当に死んじゃったのッ!?。」
亜耶「落ち着いてください。まず、芽吹先輩ですが…「海祇機関」に捕まってしまってます。そして、弥勒先輩ですが…この世界には居ません。天井…いや、空の上のあの世界にいます。」
天を指差す亜耶。そこに映るのは「ソラシド市」。
鷹夜「ソラシド市…俺たちの世界に!?。」
亜耶「はい。海上で擬似勇者達に襲撃された後、海の底に沈む前に救出されてるんです。」
鷹夜「だ…誰にだ…!?。」
亜耶「名前は分かりません。けどその人は…「スカイランドの剣士」とだけ名乗ってました。防人の方達はその人を中心に救援を受けてます。その剣士さんは本当に強いんです。擬似勇者の1人を一撃で倒してますから…。」
鷹夜(…スカイランドの剣士…ソラが前に言っていた例の隊長さんか?。いや…わざわざここまで来るか?。並行世界の存在を知っている人物…ソイツは防人達が反旗を翻すことを知っていた…?。)
亜耶「しずく先輩も同じく、あの空の上の世界に居ます。連絡を受けた時は信じられませんでしたけど…確かにあの2人でした。だからこの世界にいる防人は雀さんと芽吹先輩です。」
雀「あ…あのメブが「海祇機関」に捕まってる…どうしよう…助けないと…ッ!。」
鷹夜「亜耶と言ったな?。俺達と来い。色々聞きてェ事があるが、それよりも…お前の身が危ねぇ。そこまでの情報を持ってるんだ、「海祇機関」が狙ってくることも…。」
「残念ながら…もう聞いちゃったんだよな〜。お前達はここでゲームオーバー。さ、国土亜耶をこっちに渡してもらおうか?。」
男の声が響く。するとその瞬間、地面に刀傷が形成された。
鷹夜「クソが…泳がされたか…ッ!。」
雀「あわわわ…やばいよやばいよぉおお…!。」
蓮「俺の名前は東上蓮。千景さんに仕える擬似勇者の1人さ。お前ら全員、死刑確定だ。諦めて投降しな?。」
獲物である日本刀を向けてくる新たな擬似勇者。
この場で戦えるのは鷹夜のみ…手負のこの状況でどう対応するのか…。
鷹夜(チッ…神様…酷ェじゃねェか全く。罰当たりなこと、した覚えはねェんだけどな…。)
端末を手に、冷や汗を掻く鷹夜。そしてこの戦いはこれまでの擬似勇者とは違う雰囲気を放っている強敵に苦戦することとなる…。
…………………end。
防人達と行動を共にしていた巫女「国土亜耶」から聞かされた防人達の状況。
その隊長である楠芽吹は「海祇機関」によって捕まっていたことを知る。
一刻を争う中、亜耶の身柄を狙って新たな擬似勇者がやってくる。
これまで相手にして来た擬似勇者達とは常軌を逸するその実力に、手負の鷹夜は追い詰められていく。
ここに来るまでに語った鷹夜の言葉を胸に、雀は彼を助ける為に勇気ある行動を取る…。
次回
第73話 勇気ある一歩、難攻不落の雀。