〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
「海祇機関」を抜け、「劇団」の団員となった蓮。
彼はNo. VI<殺陣>の肩書きを持つ団員となり、夏凛と芽吹に襲い掛かる。
純粋な殺し合いを望む蓮の攻撃はこれまで以上に苛烈で、団員相応の実力者へと進化していた。
対する夏凛と芽吹はこの狂人を相手にどこまで奮闘するのか…。
蓮「さぁ…掛かってきなよ?。俺はもう、勝つ為の卑劣な手はもう使わない。」
余裕があるのか、両手を広げて歩み寄る蓮。
片手には日本刀。その無防備な様子だと振り抜く速度は余裕で勝るだろう。
先手を取ったのは…芽吹だった。
芽吹「お前は此処で倒しておかなければ後々が厄介になるッ!。」
二挺の銃剣から放たれる弾丸は、蓮の心臓を捉えていた。
しかし……。
蓮「狙いは悪くない。」
目にも止まらぬ抜刀速度で弾丸は斬り弾かれる。
「劇団」と同盟関係にある「海祇機関」の擬似勇者たちは、蓮に続こうとする。だが…。
蓮「邪魔するな、雑魚どもが。」
飛び交う鮮血。
そう…蓮はかつての仲間を容赦無く斬り伏せた。
無数の血溜まりが蓮の背後に広がっていく。
それを見た夏凛は怒りが込み上げて来る。
夏凛(満開)「何してんのよあんたはッ!。そいつらは仲間なんでしょッ!?。なんで殺したのッ!?。」
蓮「仲間?。ああ…そっか、「劇団」と「海祇機関」は同盟関係なんだっけ?。忘れてたな…まぁいいか。千景さんはどうせ、「こっち」の事は信用してないだろうし…。」
芽吹「すっかり、「劇団」の一員なのね。苦楽を共にした仲間の事なんてもう忘れたのかしら?。」
蓮「苦楽?。はははッ!何をいうかと思えば…そいつらと俺は違う。どんな過去を抱えてここに来たかは知らないが、俺はこいつらのように被害妄想が膨らんだ理想主義とは違う。ただ純粋に戦いを楽しみたいだけ…叶うなら、バーテックスともやり合いたいくらいだ。」
夏凛(満開)「狂ってる…あんた…死ぬのが怖くないのッ!?。」
蓮「死んだらそこまでだろう?。何を恐れる必要がある?。」
芽吹「無駄よ三好さん。コイツに何を問うても、戦う事以外に興味は示さない狂人なのよ。現役時代からコイツの所業は知ってるからね。」
蓮「へぇ……これは光栄だ。かの防人の隊長様から覚えられていたとは…。」
芽吹「…剣道の大会で四国一となった実力者…でも、そのスタイルは「徹底的に」。自分より格上しか興味を示さない…見てくれでは、勇猛果敢かつ向上心の強い有望な選手だったけど、残虐性の強さから剣道界を追放処分になったと聞いている。コイツは対戦相手を病院送りにするまで叩きのめすのよ…選手生命すら断たざるを得ない程、痛めつけてね。」
蓮「…酷いな…弱い奴が悪いんだ。叩きのめされたくなければ強くなればいい。腰を抜かして命乞いなんて、弱い奴がする事だ。世の中は力さ…力が無いからこんな被害妄想者の集団が出来上がってしまう。まぁ…それはそれで楽しませてもらったよ。おかげで…擬似勇者外装という力まで手にしたんだ。それが今は…。」
一瞬で夏凛の背後を取る蓮。
殺気を感じた夏凛は迎撃体制を取る。
蓮「もっと上の力を手に入れるきっかけにもなってる。ははは、素晴らしい世の中になったものだ!。おかげで世界観が変わっていくッ!。俺は楽しみなんだよ、世界がどう動いていくか…今なら「スカイランドの剣士」にも喰らい付けるかもしれないッ!。」
「満開」を発動した夏凛の力に臆する事無く、刃を振るって人外の力で弾き飛ばす。
思わず、吹き飛んだ夏凛は歯を食いしばる。
すれ違うように、芽吹が突撃。二挺の銃剣を振るい、二刀流のスタイルで蓮と剣戟を繰り広げる。
以前、戦った時よりも遥かに違う力…アデルに与えられた闇の力がそれを増幅させていた。
擦り傷が焼けるように痛いのも、そのせいとなる。
芽吹「…こんな狂人に闇の力なんて…最悪ね…ッ!。」
夏凛(満開)「大丈夫!?楠!?。」
芽吹「ええ…ただ、擦り傷一つでも痛みが全然違う…気を付けて三好さん。コイツはまだ…底を出していない。」
蓮「冷静な判断力だ、流石あの地獄の世界から32人の防人全員を生還させたことはある。この競り合いで俺の力を見切ったようだ。だが、それはもはや関係無い…どのみちここからは…命のやり取りだッ!。」
遂に攻勢に入ってきた蓮。
激しくぶつかり合いながら、2人は対峙する。
銃を撃つ間合いすら取れない芽吹は格闘戦で応戦するも、近接戦では多少不利な銃剣では、日本刀の間合いから優勢は取れない。
夏凛は「満開」状態のまま突撃し、新しい機能を携えた「満開」は対人戦向けの間合いとなり、二刀流で対峙する。
だがそれでも、蓮の余裕は崩せない。
2人がかりの剣戟ですら、簡単に捌かれてしまうのだ。
薄ら笑いを浮かべながら、いなしていくその様に2人は徐々に苛立ちすらも覚えていく。
斬れる場面でも、斬り込んで来ない…完全に遊ばれている。
そう思って。
蓮「ハハハハハッ!。勇者と防人2人がかりでもこれかッ!。つくづくいい力を手にしたようだ、俺はッ!。」
男性と女性ではスタミナに差が出る。
激しい斬り合いの末、先に力が弱まったのは手数で攻め続けた夏凛だった。
僅かなその隙を突かれ、脇腹を切り裂かれてしまう。
芽吹「三好さんッ!!。」
夏凛(満開)「ぐっ…だ、大丈夫よ…精霊バリアのお陰で何とか致命傷は避けられてるから…。」
夏凛(満開)(バリアのゲージが「3」も減ってる…たったあれだけでその威力だったっていうの…チッ…面倒くさい奴が相手になったものね…!。)
出血する脇腹を止血すべく、夏凛は布を千切ってはサラシのように巻く。
芽吹「…どうする、三好さん?。ここで私達が倒れたらコイツはきっと、先に行ったみんなのところに行くはず…!。」
夏凛(満開)「わかってる、だから倒れるわけにはいかないのよねッ!。こんな狂った奴が先に行ってしまえば、この戦いに支障が出るッ!。ここは死んでも通さない気持ちで行きましょう!。」
芽吹「ええ、同感よッ!。」
蓮「作戦会議は終わったかい?。なら、斬り合いの続きといこうか!。」
刀に闇を纏わせ、余裕な笑みを浮かべる蓮。
夏凛と芽吹はお互いに目配せして攻勢に入り、接近戦は夏凛が担当し、芽吹は狙撃による援護に入ることに。
だが、蓮はその連携を見越しての立ち回りで夏凛と激突しその合間に飛んでくる芽吹の弾丸を確実に避けていく。
明らかに常人離れした反応速度に、2人は苦虫を嚙み潰したような表情をする。
こんなにも厄介なのか…素のスペックが元々高い故に、勝ちに拘る姿勢を崩した蓮。
ただ、純粋に戦いを楽しむその姿勢はまさに戦闘狂。
それ故に、信念を持って戦う2人はその純粋さに翻弄されて行ってしまう。
だが、2人はこの先に居る仲間たちの戦いに支障をきたさないよう諦めない。
それが、この厄介な敵に対してのメンタルを保っているのだ。
出来れば、倒したい…しかし、仮にも彼は「劇団」の幹部入りをした強敵だ。
欲を張ってはこちらがやられる…本来の目的を達成できればそれでいい。
なら、やることは一つ…この狂人を足止めする事。
そう思うと、2人の立ち回りは研ぎ澄ませれていく。
芽吹「思い知らせてやるわッ!。死線を潜り抜けてきた数はこちらが上って事をッ!。」
夏凛(満開)「ええッ!。」
再び、仕掛ける夏凛と芽吹。
周囲の人間が立ち入ることすらできないその戦場に、命を燃やしていく。
蓮「いいね!。楽しくなってきたぞ!。」
夏凛(満開)「あんたの趣味に付き合ってる暇はないのよッ!。」
剣戟の合間に、蹴りを入れる夏凛。
蓮は不意を突かれたのか、その蹴りを受けてしまう。
蓮「ぐっ!。」
夏凛(満開)「ついでに受け取っておきなさいよッ!。」
閃光のような横薙ぎを放つ夏凛。
しかし、間に刀を入れてその斬撃を受け止める。
だが、それは夏凛の計算通りだった。
意図を汲んだ芽吹による狙撃。
それは、蓮の左肩を撃ち抜く。
蓮「…ちッ…!。」
夏凛(満開)「楠ッ!。」
芽吹「ええッ!。」
夏凛は自身の刀を芽吹に投げ渡す。
元々、近接戦闘が得意な彼女は二刀流の構えを取る。
芽吹「…久しぶりね。二刀流で戦うのは。」
凄まじい闘気。その踏み込みには一切の予備動作が無かった。
蓮「素晴らしい…!。」
芽吹「はあああッ!。」
速度を乗せた斬撃はもはや、稲妻。
その腕前は夏凛にも劣らない。
あまりの力に、蓮は刀を上段に打ち上げられた。
芽吹「…お前にやられた借りを返すときッ!。」
直後。
その袈裟斬りは蓮の身体を容赦なく切り裂いた。
確実な手ごたえはある。たまらず、血が噴き出る蓮。
そのまま、後ろに倒れる…かと思った。
蓮「はははははッ!。すごい…この俺が斬られたッ!。ひゃははははッ!。」
斜め一閃に斬られ、明らかに立ってはいられない傷にも関わらず蓮は高らかに笑う。
ただただ、笑う。
そして、口の端から血を流しながら蓮の瞳は血走りを見せる。
蓮「この痛みすら、楽しいとは…ククク…やっぱり、強者を相手にするのは最高だなぁッ!。」
あまりの出来事に、動きを止めた芽吹。
その狂人さに、思考が追いつかない。
その隙を見逃さない蓮は、凶刃を振りかざす。
夏凛(満開)「危ない、楠ッ!!。」
芽吹「…え…?。」
蓮「遅いよ…。」
報復と言わんばかりの繰り出された斬撃。
それは、芽吹の右腕を斬り飛ばした。
芽吹「ああああああああッッッ!!。」
体感した事の無い壮絶な痛みに声を挙げる芽吹。
斬り飛ばされた腕は無残に地面に落ちた。
あまりにも一瞬の出来事に、夏凛は思考が追いつかない。
返り血を浴びた蓮は、その様子を見てニヤリと笑みを浮かべる。
強者を一方的に叩きのめす残虐性。
その一端が分かった気がした。
降りしきる大雨の中、蓮の高笑いがこだまする。
勝てると思った…あの一撃は絶対に耐えられない。
なのに、倒れるどころかそれすらも快楽に感じている。
狂っている…完全に…こんな狂人をどう相手にすればいいの…。
何をしても、その高笑いと共に立ち上がってくる。
傷付けば傷付くほど、奴にエンジンがかかる。
アデルが勧誘した理由が分かったかもしれない…この残虐性と異常なほどまでの快楽主義。
こんな「化け物」が四国に存在していたなんて…これじゃまるで、バーテックスよりもヤバい存在なんじゃ…やはり、一番恐ろしいのは神でも悪魔でもない…「人間」だ。
夏凛はただただ、理解が追いつかないまま無意識に芽吹に駆け寄っていた。
叫ぶ彼女を支えようとする。
だが、その背後…件の「化け物」は迫っていた。
怪しく輝く眼光に、狂気の笑みを浮かべる蓮。
気付いた時には遅かった…その凶刃は夏凛の頭上を捉えている。
確実に迫る「死」。全てがスローモーションに感じてくる。
だがその直後…突風が吹き荒れた。
蓮「がはッ!!?。」
蓮は激しく吐血。何が起きたか分からない夏凛は後ろに倒れ込む蓮を見る。
夏凛(満開)「い…今のは何ッ!?。」
吹き抜けた突風の在処を探す夏凛。そして、その正体は視界に移り込んだ。
「…風は刃…音は斬撃…気づいたときにはもう遅い。」
白髪の男。軍服のような服装。エメラルドグリーンの瞳。
静かに納刀するその人物。
「狂人よ。その下卑た笑みは隙だらけだ。」
蓮「がああ…お前は…スカイランドの…剣士…!。」
夏凛(満開)「え…この人がッ!?。」
シャララから聞かされたスカイランド最強の剣士。元「青の護衛隊」隊長。
「リオン・ドラグネス」。
その本人だった。
リオン「去れ、「劇団」の剣士。貴様たちの相手は今ではない。」
蓮「…ははは…痺れるねぇ…まるで「疾風」…流石に敵わないか…いいさ、次に相対するときは見切って見せる…その「疾風」を。」
血に塗れながらも、蓮は撤退。夏凛はリオンによって一命を取り留めた。
リオン「勇者の少女、無事で何よりだ。」
夏凛(満開)「あ…それよりも、この子の腕がッ!。」
リオン「見せて見ろ。ふむ…正確なくらい、断面が綺麗だ。これなら、飛ばされた腕は再生できるだろう。だが急がねばなるまい。そこの神官、彼女を医療施設に。」
呆気に取られていた神官を呼ぶリオン。
従うしかないその気迫に恐れを成したのか、大赦の神官たちは芽吹を急いで運んでいく。
夏凛(満開)「ありがとう…その、あんた…いえ、貴方が「スカイランドの剣士」?。シャララ隊長から話を聞いて…!。」
リオン「シャララか…懐かしいな。いかにも、私がそうだが…今は後にしよう。怨嗟の気配がより濃くなってきている。それは空の上に広がっているあの世界にも影響しているだろう。」
空に映っている「ソラシド市」に目を向ける夏凛。
千景の怨嗟が一直線に伸び、そこに繋がっているようにも感じ取れる。
リオン「急がねばなるまい。先代勇者の怨嗟はこの世界だけではなく、あの世界の闇をも助長させている。アンダーグ帝国がおとなしいのも好都合だと見ているからだろう。この事件を起点に、巨大な事件へと変貌することになる。」
夏凛(満開)(頼んだわよみんな…ソラシド市に広がる闇を止めるために、千景を「怨み」から解放してあげて…!。)
後は託すだけ…雨音が激しくなる中、夏凛はその先に居る一同に願いを託す…。
…………………………end。
蓮の「残虐性」と「狂人性」に翻弄された2人は窮地に立たされる。
それを救ったのは「スカイランドの剣士」ことリオン・ドラグネス。
直後、彼が語ったのは千景の怨嗟による影響が「ソラシド市」にまで及んでいる事。
シャララが語ったこの事件との繋がりはまさにそれだった。
本殿へと突入した一同。
そこに、疑似勇者の美夏と零が立ちはだかる。
残るのはウイングと樹、風と雀。
互いの思いを賭けた一戦が始まりを迎える…。
次回
第77話 夢を追う者、絶たれた者。