〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。

「劇団」の団員となった蓮の狂気に、芽吹と夏凛は窮地に陥った。
その窮地を救ったのは「スカイランドの剣士」こと、リオン・ドラグネス。

夏凛は本殿に突撃した仲間に、この戦いの行く末を託すことに。

場所は本殿1階。

千景の元へと急ぐ一同。
そこに疑似勇者が立ちふさがる。

美夏と零…彼女達は夢を絶たれた者。

彼女たちは存在を賭けて、一同の妨害に移るのである…。


第77話 夢を追う者、絶たれた者。

 

~大赦本殿・1階~

 

夏凛と芽吹が蓮と激闘を繰り広げている最中、残りのメンバーは広い本殿を駆け抜けていた。

 

スカイ「園子さんッ!。この本殿はどこまでの広さがあるんですかッ!?。」

 

 

園子「正直、分かんないかなッ!?。私でも大赦の全貌までは理解できてないから…!。」

 

 

スレイヤー「クソ、千景はどこに行った!?。」

 

先を進む一同。

その時、跳弾による狙撃が行く手を阻む。

 

ウイング(この跳弾…まさか…!。)

 

風(やっぱり、追いかけて来たわね…!。)

 

足を止める一同。

陰から零と美夏がやってくる。

 

零「悪いけど、千景様の所にはいかせないってッ!。」

 

 

美夏「ここで退場してもらう。今度は、命を取るわ。」

 

 

アグニ「ちッ…疑似勇者の幹部たちかッ!。」

 

 

零「キュアスレイヤー、この間は恐れを成したけど今日はそうはいかないよッ!?。」

 

 

スレイヤー「はっ…卑怯な手を使って園子を嵌めた癖にッ!。」

 

 

風「…時間はかけられないわね。あんた達、先を急ぎなさい。ここは私が…。」

 

 

ウイング「いえ、僕も残ります。全員がたどり着けるなんて思わないですし…ここで時間が取られるよりはマシです。」

 

 

樹「お姉ちゃんが残るなら私もッ!。友奈さん達に託しますッ!。」

 

3人が意気込む中、雀も弱々しく挙手する。

 

雀「あの~…私もここに残ります…はい…。」

 

 

烈火「お前ら…分かった!。先は任せろッ!。」

 

 

アグニ「雀。ここまで付いてきただけでもすげェよ、お前の力で3人を守ってやってくれ。お前が居れば、全員が生き残れる。俺が保証するさ。」

 

 

雀「タカ…うん、わかった!。」

 

 

友奈「風先輩、樹ちゃん、ツバサ君、雀ちゃん!。ここは任せますッ!。」

 

千景の元へと急ぐ一同。

しかし、2人の妨害が入る。

 

零「何を勝手に行こうとしてるのさ!?。」

 

 

美夏「背中ががら空きよ。」

 

攻撃を繰り出す2人。

しかし、雀の絶対防御がそれを許さない。

 

風「さすがね!。あんたが居るだけで全然違うわッ!。」

 

 

雀「そんなにハードルを上げないでぇぇぇ!?。」

 

 

美夏「取り逃がした…まあいい、この先には須藤が居る。」

 

 

零「こいつらを倒して追いかければいい話でしょッ!。」

 

 

風「舐められたものね。雀、あんたが私に付きなさいッ!。」

 

 

雀「願っても無いことですぅぅぅうッ!。」

 

 

樹「ツバサ君、私たちはあの人を!!。」

 

 

ウイング「分かりました!。」

 

風と雀は零を、ウイングと樹は美夏を相手取ることに。

そして双方は一斉に仕掛け、構図通りの対面となる。

 

〜ウイング&樹side〜

 

一度、美夏と交戦経験のあるウイングは彼女の銃の腕前を学習していた。

的確な跳弾による狙撃。狙うは…機動力の落ちる足。

樹を背に乗せ、美夏の銃撃を避けていくウイング。

 

ウイング「樹さん、彼女の跳弾は正確無比ですッ!。恐らく、僕を狙って来る筈…懐に飛び込みさえすれば…ッ!。」

 

 

樹「私があの銃を抑えるよッ!。」

 

一直線に飛びながら、銃声の方向を耳で感知。

その方角から軌道を予測して跳弾を間一髪で避けていく。

しかし、それでもその正確さに距離をなかなか詰められない。

背中に乗せた樹を落とすわけにはいかない…自分の花道は彼女が戦いやすいようにすること…。

「役目」を理解しているウイングは樹のワイヤーが機能する有効距離まで詰めようと避けながら接近する。

 

美夏「…先日よりも速くなってる。それに、私の銃の軌道を読んで…。」

 

 

ウイング「こんなこと、もうやめませんかッ!?。」

 

 

美夏「何を…?。」

 

 

ウイング「世界に反旗を翻すような行為をですよッ!。こんなことをしても、あなた達のその恨みは晴らせるんですかッ!?。」

 

 

美夏「…貴方に、夢はある?。」

 

その一言に、一瞬だけ戸惑いを見せるウイング。

それが災いし、跳弾を受けてしまう。

 

ウイング「ぐあっ…しまった…ッ!?。」

 

 

樹「きゃあッ!?。」

 

 

美夏「私はあったわ。でもね、それももう断たれた。事故によって、私の狙撃の腕は落ちてしまってね…周囲の期待も、冷たいものへと変わっていった。」

 

態勢を立て直そうと、ウイングは立ち上がるも周囲を見て戦慄する。

そう…東郷が出すような遠隔操作攻撃端末が6基展開され、2人を取り囲んでいた。

 

美夏「…プロへの切符も手にしていたのに…あの事故は画策されたもの…私を夢から引き摺り下ろす為に、汚い人間達が仕組んだ事故だった…ッ!!。」

 

……………………。

 

〜風&雀side〜

 

零「あんた達にはわからないよねッ!?。夢を断たれた者の気持ちが…それによって、踏み躙られた気持ちがッ!。」

 

凄まじい鞭による猛攻。なんとか雀のバリアで耐えてはいるが、風は所々に傷を負っていた。

風の武器は一撃で決める威力を叩き出せる大剣。しかし、それは手数に対しては圧倒的に不利だった。

剣を振う前に、何発か攻撃をもらってしまう。受けた傷により、本来の威力が叩き出せない。

雀に守られながら、何とかその隙を探す。

 

風「そんなの…分かるわけないでしょッ!?。知りもしないのに、否定も肯定もできるものですかッ!!。」

 

 

雀「ひぃいいいッ!!。どうするんですかぁ!?。このままじゃ…!。」

 

 

風「わかってるッ!。でも、もう少し耐えて頂戴ッ!。何とかその隙を突くからッ!。」

 

 

零「私はね…新体操の選手だった!。日々の努力で実力が向上していく実感があった…それを妬ましく思った部員達から壮絶ないじめを受けて…私の夢は断たれたッ!!。輝かしい競技で人々を楽しませたかったのにッ!!。いじめが発端で受けた怪我が私の選手生命を潰したのッ!!。」

 

 

風「っ…だからと言って…ッ!。」

 

 

零「…そのいじめた奴はこの鞭で痛めつけてやったよ…二度と逆らえないように徹底的にね…そいつの選手生命を奪ってやったッ!!。ざまあみろって感じッ!。でも…それでも、夢を失ったあの虚無が晴れることはない…復讐を成し遂げても、夢は帰って来ないッ!。」

 

雀のバリアも砕かれ始め、壁際に追い詰められる。

 

零「あんた達はいいよねッ!?。まだ夢を追えるんだもの…断たれた私たちと違ってあんた達はぁああッッ!!。」

 

鞭が大蛇のような姿となり、雀のバリアを噛み砕く。

そして、その勢いで2人に突撃。壁を突き破って吹き飛ばされていく。

 

雀「うああああッ!?。」

 

 

風「ぐうう…ッッ!?。」

 

そして、その後ろで戦っていたウイングと樹も遠隔操作攻撃端末による一斉射を受け、地面に倒れ込む。

 

 

ウイング「うぅ……。」

 

ウイングの頭に突きつけられた銃口。引き金に指を置く美夏。

 

樹「ツ…ツバサ君……。」

 

 

美夏「夢を持つ者が妬ましいこの気持ちは抑えられない。貴方に夢はある?ならそれを奪ってあげる…そうすれば、私達の気持ちも少しは理解…。」

 

 

ウイング「…間違ってる…。」

 

 

美夏「…何を……!。」

 

 

ウイング「間違ってると言ったんだッ!。夢を断たれたからといって、他の人の夢を奪っていいなんて…そんな権利、誰にも無いッ!。」

 

それを聞いた美夏は歯を食いしばり、引き金を引こうとしたがウイングは銃身を強く握りしめる。その力は強く、圧倒的有利な位置にいる美夏がトリガーを引けないほど。

 

ウイング「…一度奪われたくらいで全てを失ったかのように…貴女にはまだ、夢を追える時間があるじゃ無いですかッ!!。確かに、その行いは許されるものではない…貴女の怒りも理解はできる…けどッ!。」

 

力で銃を跳ね除け、立ち上がったウイングはアグニに学んだ通りの拳の打ち込みで美夏を殴り飛ばした。

 

ウイング「夢を「諦めて」しまっているのは貴女自身だッ!。道はまだあるのに、それを見ていないッ!!。挫折することなんてたくさんある、諦めたくなることも…でも、壁があるからこそ夢に向かって羽ばたけるんだッ!。」

 

 

樹「その通りです…ッ!。」

 

ワイヤーで美夏の銃を拘束し、無力化した樹。

トリガーを引こうにも、複雑に絡んだワイヤーが邪魔をして照準が定まらない。

 

樹「その銃の腕前なら何度だって戻れますよッ!。それを復讐のために使っちゃいけない…貴女は「夢」を武器にして他の人の夢を奪っているだけなんですッ!!。」

 

 

美夏「!!!。」

 

……………………。

 

雀「いたた…ひっ…!?。」

 

雀を先に潰そうと、零は鞭をしならせて雀に襲い掛かる。

盾を構えるも、鞭の軌道には勝てずに何度も打ち付けられる。

 

 

雀「あぐっ…あぁ…ぐああ…ッッ!?。」

 

 

零「痛いよね!?苦しいよね!?。私もそうやって、踏み躙られたッ!。あんたなら分かるでしょ、弱い人間がいくら頑張ったって無意味なことがッ!?。そして、悔しいでしょッッ!?。こうやって私は夢を潰されたのッ!!。あんたも潰れなさいよッ!。ゴミのようにねッ!?。」

 

感じたことのない痛みに、雀は心が折れそうになる。大粒の涙が落ちる、それは悔しさではない…この苦しみから逃げたい思い。死にたくない、そして仲間はずれにされたくない…その思いから強い人間に寄生するように過ごしてきた人生。本当ならここで泣いて終わっていただろう…だが、雀は…変わったのだ。

 

雀「ひぐっ…痛いよぉ…こんなのやだよぉ…でも…でも…ッ!。」

 

全身が血に滲み、大泣きしながら雀は立ち上がった、

 

 

零「…何、立ってんのよ…這いつくばってなさいよ…。」

 

 

雀「怖くても…痛くても…こんなの、タカとメブに比べたら…なんてことないんだッッ!!。」

 

涙でぐしゃぐしゃになった顔のまま、立ち上がった雀の叫びはその場にこだました。

 

雀「人一倍に痛い思いをしても…みんなを生かしたメブ…そして、ボロボロになっても…譲れないものの為に必ず勝ってきたタカ…言ってくれたんだ…タカが…私はすごい奴だって…私がいれば誰も死なないって…言ってくれたんだ…ッ!。」

 

 

零「なら、あんたが先に死ねばいい。そうすれば、そのタカとかいう奴が言った言葉は嘘になる…!。」

 

 

雀「嘘じゃないもんッ!!。言ってくれた…嬉しかった…こんな私でも…勇気がある奴だって……言ってくれたんだ…だから私は守る…守られて守るんだ…大好きな人が言ってくれたんだ…だから…守るんだぁあああッッ!!。」

 

拳を握り締めて、鷹夜の構えと同じパンチを繰り出す。

直撃はした…しかし、乾いた音と共に何のダメージも入っていない。

泣きじゃくりながら、徐々に拳を下げていく雀。苛立ちが隠せない零は鞭を振り翳す。だが……。

 

風「よく言ったわ、雀ッ!!。」

 

雀の勇気に元気つけられた風が瓦礫の中から現れて殴り飛ばした。

 

零「がは…ッ!?。」

 

 

風「…みんな、わかってるのよ…あんたのそういうところ。臆病だけど、勇気だけは人一倍強いところ。後は任せなさい…あんたの勇気に私の女子力は無限大まで飛躍されたッ!!。」

 

 

雀「ぐすッ…それ、関係あるんですかぁああ…?。」

 

 

風「あるわよッ!。奪われたから奪っていいなんて考える奴…私は嫌いなのよね〜…けど、他にもちゃんと道はあるでしょ、それを知らない癖に過去の哀しみを引き摺ってんじゃないわよ…だからゲンコツ一発で勘弁したげる…ッ!!。」

 

………………………。

 

ウイング「もう一度、夢に向かっていけばいいッ!!。そんなことで自分の夢を終わらせないでくださいッ!!。貴女には…!。」

 

………………………。

 

風「あんたにも…ッ!!。」

 

………………………。

 

「「光はあるッッ!!。」」

 

同時に炸裂したその拳。受けた2人は高く打ち上げられ、地面に叩きつけられた。一撃で沈められ、気を失った2人。

それを見て、思った…「気持ち…変わってくれたらいいな」…と。

 

………………………。

 

風「…そっちも、何とかなったみたいね…あいてて…全く…人なんて殴ったことないから手が痛い〜…。」

 

お互いにボロボロになりながらも4人は集まる。

 

ウイング「あはは…でも…擬似勇者の人たちの気持ちも…悲しいものです。」

 

 

樹「そう…だね。だから、終わらせないとね…この恨みの戦いを。」

 

 

雀「うん…えへへ、みんなボロボロだね?。私も痛くて最悪だけど何でかな…清々しい気持ち…もう二度とこんなのゴメンだけど。」

 

 

風「はぁ〜…乙女の身体に傷が入っちゃった…しかも、最後は熱血キャラばりの拳で語るスタイルよ〜?。化け物退治がメインだっての、こっちは。まぁ…雀の心の叫びが聞けたからよしとしますか!。鷹夜のこと、そんな風に思ってたなんてね〜?。あのぶっきらぼうなヤンキー少年の事、す…。」

 

 

雀「わーッ!わーッ!。それは言っちゃダメェエエエエッ!!。」

 

 

ウイング「え、鷹夜さんがどうかしましたか?。」

 

 

樹「お姉ちゃんにツバサ君?。そういうのを弄ぶのはいけないよ?。」

 

 

奪い、奪われる…そこにあるものは哀しみしかない。

どんな状況に置かれても、光を求めるのは皆、平等だ。

 

だから、この悲しみを背負った擬似勇者2人にも救いがあって欲しい。

 

4人はそう思うのであった………。

 

…………………end。




悲しみを背負った2人の擬似勇者の恨みを打ち砕くべく、その闇を砕いた4人。

この戦いにおける本質は「哀しみ」が引き起こしたものであったことを改めて知る。

そして、先を急ぐ一同の前に、最後の番人である須藤慎也がたちはだかる。
千景を思い、守る意志の元、彼女の為だけに戦う決意を露わにする慎也。
それに応えるのはキュアアグニ。

この先に千景がいる…それを知ったアグニは単身、慎也の相手をする為にその場を引き受けることに。
そして知りたかった…何故そこまでして千景に従うのかが…。

次回
第78話 哀しみの果てに。
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