〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。

立ちはだかる2人の疑似勇者は過去に哀しみを抱えた者達。

夢を絶たれ、その矛先を残った4人に向けるが夢を諦めず、光ある道に向かって突き進む4人の力の前に敗北。その場を切り抜けるのだった。

「本殿」最上階手前までやってきた一同。

しかし、最後に立ちはだかるのは須藤慎也。

彼は千景を守るためだけに戦いを挑むのであった…。


第78話 哀しみの果てに。

 

本殿の最上階…。

 

大雨が降りしきる中、千景は空を見上げていた。

 

下層で繰り広げられる戦闘…そして、自分を止めるために恐らくだがここに来る烈火達。

 

自分を起点とする怨嗟の柱は、空の向こう側に広がる「ソラシド市」に伸びている。

この改革の影響が全世界に影響を及ぼすものだとしても、千景は何も感じなかった。

 

雨に打たれながら、そんな風に感じていると慎也がそこにやってくる。

 

慎也「千景様。東上蓮は「劇団」へと鞍替えをしたそうです。それに加え…。」

 

 

千景「報告は結構よ、すでに状況は把握している。彼らがここに来るのも時間の問題ね。」

 

 

慎也「千景様…。」

 

 

千景「こうなれば、私は彼らと真正面から対峙するわ。気持ちでぶつかってくるのなら、それに応えて圧勝させてもらう。私はもう、後戻りは許されないのよ。貴方は今の内よ、降りるなら降りなさい。今なら、咎めはしない…ここからは私の「私闘」なのだから。」

 

 

慎也「いえ、千景様。僕は地獄の底まで貴女様にお仕え致します。今しばらくお待ちを…ここに向かっている蛮族共を殲滅して差し上げます。」

 

一礼を済ませ、慎也は下層に向かっていく。

その背中を見た千景は何も言わずに彼の申し出を黙認する。

 

千景(私に仲間は要らない…今も、これからも…そして未来も…要らない。)

 

…………………………。

 

…本殿内を突き進む一同。

その先に最上階へと進める階段を見つける。

 

だが、その階段から慎也が下りてきて。

 

慎也「蛮族め、ここで止まってもらう。」

 

得物のハンマーを向けて交戦状態に入る。

正直、このメンバーなら畳みかければ突破は容易かもしれない。

ただ、たった一人でも食い止めに来た彼を数で押し切ってしまう考えにはなれなかった。

 

烈火「たった一人でも俺達を食い止める…か…そこまでして、この改革とやらを成し遂げたいのかよ?。」

 

 

慎也「いや…千景様をお守りするためだ。僕はあの人を守る為だけに戦いに来た。それだけさ。」

 

 

その並みならぬ決意に一人、反応を示した。

 

アグニ「…なら、俺がここに残るさ。お前たちは先に行け。」

 

 

スカイ「でも…!。」

 

 

アグニ「今の千景を相手にするには、少しでも多い方がいい。それに…コイツがなんで、そこまでして千景の為に命を燃やせるか…それが知りてぇんだ。」

 

 

バタフライ「…任せてもいいんだね、タカ坊?。」

 

 

アグニ「ああ、行きな?。きっと、千景も覚悟を決めて待ってるはずだ。烈火、ここからはお前の意地に掛かってる。頼んだぜ?。」

 

 

烈火「おうよ、任せとけ!。」

 

 

友奈「鷹夜君、よろしくねッ!?。」

 

アグニを残し、烈火と友奈、スカイとバタフライ、園子とスレイヤーは千景の待つ「最上階」を目指す。

意外にも、慎也は追いかけずにアグニを見据える。

 

アグニ「意外だな、止まれというわりには邪魔はしねぇんだ?。」

 

 

慎也「君が残るなら、この間のリベンジも兼ねて戦える…そう思っただけさ。それに…どのみち、何人かは千景様の元に向かうだろうし、逆に千景様が勝利すればいい話…僕は少しでも君たちの主戦力が割ければそれで構わないさ。」

 

互いに向かい合い、沈黙がこだまする。

雷鳴が轟いた瞬間、2人は同時に仕掛ける。

 

拳と槌。

激しくぶつかり合い、その衝撃はこの区画の柱を曲げるほどであった。

 

アグニ「はッ!。最後まで千景のナイトで居る気かお前ッ!。」

 

 

慎也「ああ、そうだッ!。」

 

互いの攻撃が交差し、打撃の音が鳴り響く。

勝負はまさに互角。身を削りながらも魂を燃やしていく。

 

アグニ「こないだより、良い顔をしてるッ!。そっちの方が戦い甲斐があるッ!。」

 

 

慎也「過去の事なんて最早、どうだっていいッ!。ただ僕は、千景様の目指す世界を共に目指したいだけッ!。」

 

競り合いの中、僅かながらに慎也が圧し始めた。

バックステップを取ってハンマーの間合いから距離を取るアグニ。

しかし、さおれでも距離を詰めて追いかけてくる。

 

アグニ(千景への思いがコイツの力になってやがるのか…やり方はこっちと同じ、信念同士のぶつかり合いってかッ!。)

 

 

慎也「はああああッ!。」

 

空気を切り裂くほどの横薙ぎの振り。

それはアグニの横腹を捉える。

 

アグニ「そいつは…もらえねぇなッ!。」

 

受け止めるアグニ。しかし、あまりのパワーに受けきれなかった余力は受け、吹き飛ばされてしまう。

 

アグニ「ぐうッ!?。」

 

壁に突き刺さり、視界が埃で薄れる。

そして、その合間からハンマーを構えた慎也が突撃してきた。

 

慎也「もらったッ!。」

 

上段構えで振りかざされるハンマーはアグニの頭頂部を狙っていた。

だが、受けるわけにはいかない…両足の裏から炎を噴射させて慎也の顔面に火炎放射を放った。

たまらず、回避行動に移る慎也。その脇を逃さないアグニは態勢を強引に立て直してはその流れのまま右足によるキックを放って蹴り飛ばす。

 

慎也「がはッ…流石だ…あそこから巻き返すか…。」

 

 

アグニ「はぁ…はぁ…へッ、お前のハンマーを貰うわけにはいかねェからな。」

 

再び、対面に立って睨み合う2人。

手を出す前に、アグニが口を開く。

 

アグニ「聞け、千景の怨嗟はこの世界だけの問題じゃねェ…奴自身にも制御出来てねェんだッ!。空の上に映ってる世界は俺達の世界だ!。あいつの怨嗟は闇を育てる…仮にここで俺達が負けてお前らの改革が成功したとしても、今度は濃くなった闇の勢力が攻めて来やがるんだッ!。それに加えて、天の神が人類にまた粛清をおこなうかも知れねェ、そこまで危険な状態なんだぞ!。わかってんのかッ!?。」

 

 

慎也「…君の言いたいことはわかる…だが、千景様の苦しみを理解しているのか?。怨嗟怨嗟と、君たちは千景様の事を災厄を振り撒く存在みたいに言うけど…あの人の抱えている「哀しみ」に向き合おうと思っているのか?。あの人は笑わない…いつも、哀しみに暮れた目をしている…その怨嗟に一番苦しんでいるのは…千景様なんだ…!。」

 

 

アグニ「それは…!。」

 

 

慎也「僕は千景様に救ってもらった…例え、それが利用価値を見出しただけにしか過ぎないにしても、ここいる疑似勇者達はみんな、世の中から排他的に扱われた者達だ…どんな形であれ、千景様に救ってもらったことは事実ッ!。だから僕はあの人を守ると決めているッ!。あの哀しみから解放するために…この命、いくらでも使ってもらって構わないッ!。」

 

慎也は<量産型疑似勇者外装>のリミッターを解除。

勇者システムの「満開」に似た「疑似満開」状態となる。

 

だが、それはあまりにも無謀な手…当然、リスクが無いわけではない。

かつての「満開」と同じく、身体機能の供物が必要…しかもそれは、発動した時点で支払うことになる。

 

慎也が捧げた供物は「左目の視力」。

だが意にも介さない慎也は強化されたハンマーを地面に叩きつける。

するとそれは巨大な波上の衝撃波となり、受けたアグニは直接ハンマーを受けた時と同じダメージが身体を襲った。

 

アグニ「ぐはぁッ…!!。」

 

続け様に振るわれる一撃。打ちあがったアグニは空中で避けることが出来ない状態からガードの選択肢を取る。

炎の壁と共に両腕をクロスさせるアグニ。

振るわれたハンマーは炎の壁など全く意味を成さずに突き抜け、ガード態勢のアグニを地面に叩きつけた。

受け身が取れなかったアグニは肺の中の空気が一気に吐き出され、軽い酸欠状態に。

その衝撃で意識が朦朧とする。

その隙を逃さまいと、慎也は追撃を掛けようとする…しかし…。

 

慎也(疑似満開)「ごほッ…がはッ…!?。」

 

突然、大量の血を吐く慎也。

あまりの力に身体が付いてこれなかったのだろう、内臓を傷つけ体の各所は軋むような痛みによって悲鳴を挙げていた。

力なく、地面に落ちる慎也。

瞳が血に染まりながらも、ゆっくりと立ち上がる。

その反動で動きが止まったおかげでアグニも意識を保たせ、呼吸が元に戻った。

 

アグニ「げほッ…ちッ…危なかった…だが…!。」

 

荒い息使いで得物を握り締めてフラフラと近寄る慎也。

明らかに、身体のダメージは向こうが上回っていた。そんな様子を見て、アグニは…。

 

アグニ「バカ野郎ッ!。お前、死んじまうぞッ!?。」

 

制止の声をが放つ。だが、聞く耳を持たないのか慎也はそれでも戦闘の手を止めようとしない。

 

慎也(疑似満開)「僕は…どうなっても…いい…千景様さえ、笑えるようになったら…死んでも後悔はない…!。」

 

 

アグニ「…死んでも後悔がないだと…ふざけたことを言ってんじゃねェぞお前ッ!。」

 

怒声を挙げるアグニは<バーニングフォーム>を発動。

真っ赤な炎の翼を生やし、その速度で慎也を殴り飛ばす。

 

アグニBF「死んだら何もかもが終わりなんだよッ!。自分の命を軽く見てる奴が…哀しみを背負った奴を助けられるかッ!!。」

 

怒りのままに容赦なく打撃の連打を浴びせるアグニは、語りかけながら慎也をひたすら殴る。

 

アグニBF「本当にそいつを救いたいなら、自分の命を天秤にかけるんじゃねェよッ!。そんなことしたって何の意味も無ェッ!。感謝だろうがなんだろうが…命を懸ける場面はもっとあるだろッ!。」

 

 

慎也(疑似満開)「がはッ…だけど…ッ!。」

 

負けじと、慎也も反撃する。

避けないアグニは真正面から受け止め、思わず仰け反ってしまう。

 

慎也(疑似満開)「千景様の苦しみと向き合わない…世界を救う事を優先している君たちが何も言ってもォォォッ!!。」

 

繰り出された渾身の攻撃。

それは確実に自分の身体すらも砕く力だろう。

決死のその覚悟に、アグニは冷静に見据える。

 

アグニBF「守りてェものはその手でしっかりと守りやがれッ!。守るために死を選ぶのは…間違ってるッ!!。」

 

拳に宿る炎は煌々と燃え盛る。

 

アグニBF「生きて守れッ!。全ての世界から怨みを買う前にッ!。俺達はその為にここに来たッ!。」

 

 

慎也(疑似満開)「そんな戯言を…今更信じられるかぁああああッ!!。」

 

慎也の魂を賭けた一撃がアグニにぶつかる。しかし、アグニはそれを真正面から受け止めて。

 

アグニBF「千景の怨嗟を晴らして一緒に歩むんだよッ!!。その先にある未来にッ!。お前たちも来いッ!。この世界が再び神の脅威に晒されることはねェんだッ!。これから歩む未来のために邪魔な闇を討ち払うんだよッ!。」

 

信念の炎が今、燃え上がる。

 

アグニBF「怨みなんてもんを抱えてもお前らの未来は明るくならねェだろうがッ!!。いい加減に始めようぜ、お前たちの未来を勝ち取るための「本当の戦い」をッ!!。プリキュア!。シャイニングブレイカァァァアッ!!。」

 

光に満ちた拳が、慎也の一撃を弾き返す。

その光を見た慎也は…心が晴れたような感覚となる。

その瞬間、限界が来たのか「疑似満開」状態を維持できなくなって解除。命を失いかねない凄まじい反動が襲い来ると思われたが、アグニのその光は慎也の身体そのものを「修復」した。

 

……………………………。

 

…戦闘を終えて、力なく横たわる慎也。

その隣で傷だらけのアグニも座り込んでいた。

 

慎也「………本当に、僕たちの未来も明るくなるのかな…。」

 

 

アグニBF「そりゃあ当たり前だ…とは言わねェぞ。どう転ぶかはお前ら次第だ。生かすも殺すも自分だろうが?。」

 

 

慎也「……全く、その通りだ。綺麗事のように、言ってくれない方が助かる。ありがとう…僕を生かしてくれて。」

 

 

アグニBF「はッ…俺は何もしてねェよ。お前だろ、最後に「生きたい」って願ったのは。」

 

そう、あの瞬間…ほんの瞬間だけだったが慎也は「生きたい」と願ったのだ。

その思いがアグニの放った光に呼応し、本来なら命と引き換えに行使した力の反動から慎也の身体を「修復」したのだ。

 

慎也「…そうか…なら僕は…精一杯生きてみるとするよ。怨みしかないこの世界で…頼みがあるんだ。この戦いで千景様の哀しみを終わらせてくれ。僕はただ…あの人に笑っていてほしいだけなんだ…。」

 

 

アグニBF「ああ、任せとけ。この先に行った奴らはその思いで戦ってる。お前のその思いを届けてやるから、安心しろ。」

 

 

慎也「…ああ…頼んだ…よ…。」

 

そう言うと、力なく眠る慎也。

その時、下層で戦っていた風達が合流する。

 

雀「タカ!。すっごいボロボロ!。大丈夫ッ!?。」

 

 

アグニBF「大した事ねェよこれぐらい、お前らの方がボロボロじゃねェか。そうだ、風先輩…コイツの事を頼む。俺は…アイツらの所に行く。」

 

 

ウイング「そんな身体でですかッ!?。」

 

 

アグニBF「ああ。コイツの思いを…届けてやんねェとな。」

 

 

風「…分かった。その代わり、全員で帰ってきなさい。これは部長命令よ。」

 

 

樹「えっとお姉ちゃん…鷹夜さん達は部員じゃ…。」

 

 

アグニBF「いや…了解いたしました、部長殿。全員で帰ってきます…千景も一緒に。」

 

 

アグニBFは先の階段を見据えて歩いていく。

 

その背中に背負ったのは…数々の思い。

そして、始まる…。

 

長きに渡る怨嗟の勇者…郡千景との最終決戦が…。

 

……………………end。

 




慎也との激闘の末、彼の思いを引き受けたアグニは先を目指す。

そして、最上階…千景はそこにいた。

静かに佇むその姿はとても落ち着いていて、怨嗟の気配などまるで感じさせない雰囲気を纏っていた。

彼女は決意していたのだ。

自分が勝てば、この世に広がった闇をその身で受けること。そしてそれは…怨嗟の権化として生きていくことを。

世界の全てを手にし、今度こそ生きている証を残す。

千景は最後の戦いを仕掛ける。

次回
第79話 郡千景は勇者であった・序。
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