〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
鷹夜と慎也は互いの信念をかけて激突した。
戦いに敗れた慎也は千景への思いを吐露し、彼女を救って欲しいと鷹夜に望みを託すことに。
その思いを受け取った鷹夜は先に進んだ一同の元はと急ぐのだった。
そして場所は本殿最上階。
そこで、千景は一同が来るのを待っていた。
存在を賭けた最後の戦いを仕掛ける為に…。
〜大赦本殿・最上階〜
アグニと慎也が激闘を繰り広げている中、仲間達に思いを託された烈火と友奈、スカイとバタフライ、園子とスレイヤーは千景の元へと辿り着く。
息を切らしながら突き進み、そこに彼女は待っていた。
烈火「姉貴…。」
次第に強くなる雨。千景は<擬似勇者外装>に身を包む事なく、雨に打たれながら一同を見つめる。
千景「…来たのね。随分と遅かったじゃない。」
友奈「千景さんッ!。私たちは…!。」
千景「…ちょうど、こんな雨だったわ。」
園子「…えっ…?。」
千景「私が死んだ日。みんなに認められたくて、乃木さんが羨ましくて…そして、妬ましくて。彼女さえ居なくなれば私しか見なくなる…そうすれば、私は万人から愛される存在になれるんだとそう思って…でもそれは間違いだった。」
バタフライ「あんた……。」
千景「私はすでに手にしていたのよ。ほんのちっぽけだけど、喉から手が出るほどにまで欲しかった「幸せ」を。でも…それを忘れてしまうくらい、強い恨みを持って私は蘇ってしまった。」
スレイヤー「……………。」
千景「最早、語ることなんてないんじゃない?。今度こそ本当の幸せを手にする。そして…この世界の怨嗟は全て私が…受け止めて見せる。」
並ならぬ決心。
千景は<擬似勇者外装>を纏う。
雷鳴轟く中、千景はゆっくりと鎌を振り上げた。
何かに気付いたスカイは、焦った表情で全員にこう言い放つ。
スカイ「大きいのが来ますッ!。みんな避けてくださいッ!。」
その刹那。
巨大な三日月型の斬撃が一直線に向かって突き進む。
触れるもの全てを切り裂くその斬撃はとても恐ろしく、間一髪で避けた一同だが後方で雲を切り裂いてそのまま消滅した。
千景「…分断させてもらうわ。」
指を鳴らす千景。その瞬間、樹海化のような現象があたり一面に広がっていく。
……………………。
園子「…ぅ……?。」
目を覚ました園子。そこは先程いた最上階ではなく、荒れ果てた大地…そう、西暦時代の外の世界だった。
隣には同じくスレイヤーが横たわり、園子は身体を揺さぶって彼を起こす。
すると、眼前には千景が居た。
千景「ここは私の記憶の中の世界…流石にあの数だと不公平でしょ。だから、分断させてもらった…他の者も違う場所で私と戦ってるんじゃないかしら?。」
園子「…ちょうど良かったよ…それだったら、ゆっくり話せそうだし…。」
槍を構える園子。
スレイヤーも拳を握り締める。
スレイヤー「…あんたの覚悟はわかった。だが…その身で全ての怨嗟を受けるということは、全ての世界の恨みがあんたに集まることを意味してるんだぞ!?。それは…自分の身だって…!。」
千景「構わないわ。私は怨嗟の権化よ…ならば、私一人で全て背負えばいい。そして最後まで生きて…成し遂げられなかったことを成し遂げるわ。その邪魔はさせない…!!。」
飛び出す千景。
園子の槍と激しくぶつかり合う。
園子「もういいんだよ!?。貴女だって、未来を生きる権利があるんだからッ!。その道を一緒に進もうよッ!!。」
千景「いいえ、私は私だけの道を突き進むッ!。仲間なんて要らない…私はずっと、一人でいいッ!。」
凄まじい剣戟の嵐に、園子は耐えきれないのか徐々に追い込まれる。
すかさずスレイヤーが割って入り、園子の窮地を救う。
スレイヤー「お前のしでかしたことは許されることじゃねェけどなッ!だけど、お前自身が未来を見捨ててどうすんだよッ!。まだ手に入れてねェのにその選択肢を切り捨ててんじゃねェッ!!。」
千景「私の未来は私が選ぶッ!!。」
その猛攻撃に押され気味のスレイヤーは強化形態「フォース」を発動。
スレイヤーFとして戦う。
スレイヤーF「俺達はお前を倒しに来たんじゃねェッ!。烈火のために…そして、お前の未来のためにここに来たんだッ!。」
次元の力を駆使して千景の攻撃を弾く。そこに園子が突撃しては、無力化させようと立ち回る。
園子「話を聞いてッ!!。」
千景「今更、話す舌など待ちはしないわッ!!。乃木園子ッ!。乃木さん…いえ、乃木若葉との思い出は貴女の命を以って断ち切るッッ!。」
…………………………。
場面は切り替わり、スカイとバタフライは同じく千景の思い出の世界…諏訪の地で激闘を繰り広げていた。
スカイ「未来を生きる権利は誰にだってありますッ!今、一番苦しんでるのは…ッ!。」
バタフライ「あんた自身でしょッ!!。」
スカイとバタフライはコンビネーションで千景を攻めていく。だが、それも通じさせないほど今の千景の力は強くなっていた。
千景「…プリキュア…やはり、貴女たちは殲滅よりも救済を望むのね…。」
スカイ「はい…目の前で苦しんでる人を放ってはおけませんから…。」
バタフライ「今のあんたは…哀しい目をしている。怨嗟に塗れた感情なんて何も感じない…ただただ、哀しい感情しか伝わって来ない…あんた、本当は止めて欲しいんでしょ…自分が抑えられなくなって…。」
その一言に、千景は無言で鎌を振るう。
バタフライの頬が軽く切れ、血が流れ落ちる。
千景「…それ以上は無粋よ。貴女たちも覚悟を待ってここに来たのなら、その覚悟を貫きなさい…余計な同情や感情なんて必要ない…目の前にいるのは、今両方の世界に闇をもたらしている存在…貴女たちの敵なのよ。」
スカイ「敵だからといって、倒す必要はあるんですか…?。」
千景「その考えが…甘いのよ…ッ!。」
振るわれた鎌を、スカイは白羽取で受け止める。
歯を食いしばり、押し返そうにも千景の力の方が上だった。
スカイ「…それでも…一緒に生きる未来を選択する事だって出来ます…千景さん…今の貴女なら…受け入れられるはず…ッ!。」
千景「勝手に決めつけないで…ッ!。」
力を抜くと、スカイはバランスを崩す。
その隙を逃さなかった千景は顎を刈り上げた。
千景「私は自分の生きる道を見定めたッ!。これはせめてもの贖罪よ、世界にばら撒かれた怨嗟の気は全て私に集めるッ!。その上で私が全ての世界を統べるッ!。」
バタフライ「ダメだよそんなのはッ!。全世界にばら撒かれた怨嗟をその身で受けるなんて無理に決まってるッ!。そんなことをすればあんたの精神はどうなるのよッ!。」
千景「耐えて見せるわ…その先にある未来こそが私の希望…今度こそ私は…。」
ー勇者になるー
両方の千景が放つその一撃。
それは、彼女の覚悟と信念が乗った一撃。
そしてそれは…4人の戦闘力を一気に奪うものだった。
…………………。
千景「…貴女達が気持ちでぶつかってくるのなら、私も気持ちで返すまで…何度だって言うわ…。」
目の前で倒れる園子とスレイヤー…そして、違う思い出の世界でスカイとバタフライが…戦闘不能となった。
吐き捨てるように、そして倒れる4人に言う。
千景「貴女達の思いは…私には届かない。」
…………………。
現実世界…大赦本殿最上階。
戦えるものは最早、烈火と友奈のみしか残されていなかった。
圧倒的な千景の力…覚悟を決めた彼女は今まで以上に強力で。
全力でぶつかり合う3人。
勇者世界における人と人の戦いは壮絶を極める。
友奈「はぁああああッ!!。」
乱打で千景の鎌を捌きながら、激しいラッシュでひたすら攻める友奈。
その合間が烈火のメイスが炸裂する。
吹き飛ばされた千景は分身のように消え、2人の背後をとっては鎌の柄で突き飛ばす。
こうした攻防が繰り広げられており、3人は息を切らして血を流しながら、互いに見据える。
烈火「クソ…流石に強ェな姉貴…!。」
千景「貴方達もね…どうやら、私の思い出の世界で他の4人は地に伏せたようだわ。」
友奈「そのちゃんに洸君…ソラちゃん…あげはさん…ッ!!。」
千景「安心しなさい、殺してはいないわ。最早、殺す意味もない…貴方達の心さえ折れれば二度と立ち上がって来ないでしょう?。」
髪を掻き上げ、血を拭いながら千景は赤く染まった瞳で2人を見つめる。
烈火「折れねェんだよ…俺達の意志はな…ッ!。」
地面を蹴って飛び出す烈火。
信念を乗せた一撃を千景にぶつけるも、塞がれてしまう。
千景「…私の唯一の誤算は…貴方という「弟」を持った事よ…ッ!。」
競り合いの中、烈火を蹴り飛ばしては地面を転がる所を追撃で鎌を振り上げるもメイスでそれを防ぐ。
千景「…父はロクでなし…母は天空恐怖症候群…家族の絆なんて何もなかった…寧ろ、家族のせいで私はいじめに遭い、愛を与えられないままずっと過ごしてきた…ッ!。」
烈火「ぐぅ…ッ…!?。」
千景「それがまさか、死んでから違う人間として転生して…それでも同じような境遇になったわよね…!?。」
烈火「父ちゃんと母ちゃんの事か…ッ!。ありゃあ、事故だって…ッ!。」
千景「違うわ…それは大赦務めだったあの2人の不祥事を隠蔽したかった大赦の配慮よッ!。あの2人は…神の恵みを盗もうとした…自分達だけの楽園を作るために…ッ!。」
烈火「なっ…!?。」
突き付けられた家族の現実に烈火の力が弱まり、競り合いに負けそうになる。
友奈「神の恵みを…盗む…?。」
千景「丁度、東郷美森の暴走によって壁が破壊された時期ね…あの混乱に乗じて、この閉鎖された世界から逃れようとした…まぁ…人間如きが神を出し抜くことなんて出来ない。それに気付いた天の神が粛清したけどね…敵対しているとはいえ、神の力の一端をたかが神官が掠め取っていいわけがない…天の神が神樹に配慮した結果ね。」
千景は烈火を切り裂き、刃に付いた血を払う。
咄嗟に、「天ノ逆手」でガードした烈火は右腕を傷付ける程度で済んでいた。
千景「…結局はそう…家族なんて信頼出来ない…あの時に思ったわね…残っていた弟…烈火と距離を取ろうと。それは、私の意識が覚醒する前だったけど…今なら分かる…「菱咲焔華」は「郡千景」…家族の愛を知らない、そしてそれを疎ましく思う人間だったということに。」
烈火「…それが…俺との確執だったって訳か…。」
千景「今なら言える事だけどね…あの時から私は貴方を必要としていなかった。出来ることなら、このまま勝手に縁が切れればいいとさえ思っていたわ。家族という枷はもう…要らないのだから。でも、それでも貴方は食い下がらない。ここまで言ったのよ、もう私とは家族に戻れないなんてバカでも分かるでしょう?。」
千景のその言葉に、烈火はメイスを下ろした。
友奈「ッ…なんで、そんな酷いことが言えるんですッ!?。烈火君はずっと、貴女を家族として見て…この戦いで全力でぶつかり合ってまた戻りたい思いで…ッ!。」
烈火「…いや、いい…友奈。姉貴の気持ちは理解出来た…家族は要らねェって言う理由がわかった気がした。蘇っても裏切られたんだ…そう思うのも仕方ねェ…。」
友奈「烈火君…!。」
烈火「きっと、俺のことも信頼出来ねェんだろ。そりゃそうだもんな…こんだけ突き放しとけば、俺だって要らねェってなっちまう。けどな…バカにすんなよ姉貴。」
千景「…何…?。」
烈火「確かにな!。いつも帰って来ねェ上に家事は全部俺任せだッ!。俺だってロクに出来ねェのにお陰で家は荒れ放題だッ!!。この年頃だ、姉貴の服とか直視出来ねェってのにその辺にポンポン置きやがってよッ!!。いつか文句言いてェって思ってたところだ!だから今言う事にしたッ!!。」
頭には鬼の角のような装飾品が発現。
ゆっくり歩きながらその姿を変えていく。
烈火「さっさと家に帰って家事を手伝えこの野郎ッ!!。たまには俺を休ませやがれッ!!。」
千景「何を言って…!!。」
烈火「どこまで行っても…どこまで突き放されても…疎まれても結局は「家族」だろうがッ!。話聞いて思ったけどよ、俺は父ちゃんと母ちゃんみてェな目に遭いたくねェし…俺も一緒くたにしやがって…バカにすんじゃねェよッ!!。御託はどうでもいいんだ、ただ俺は…あの家に姉貴と一緒に帰りたいだけだッ!。その上で荒れ放題の家をどうにかするぞッ!。俺だけじゃ、どうにもならねェくらいにまでやばいんだよッ!!。」
烈火は語りかけながら禁忌の精霊をその身に降霊させた。
烈火「来やがれ…「酒呑童子」ッ!!。」
高嶋友奈の「切り札」である「酒呑童子」を降霊。凄まじい力を解き放つ。メイスを大型化し、担いでは巨大化した手甲で千景を指差す。
烈火(酒呑童子)「ここからはただの姉弟喧嘩だッ!。世界の事とかは一旦そこに置いとくぞッ!!。」
……………………end。
思いと思いのぶつかり合い。
千景の覚悟は園子と洸、ソラとあげはを撃破するまでに強かった。
そして、対峙する烈火と友奈、そして千景。
烈火は禁断の精霊である「酒呑童子」をその身に降霊させて千景との「姉弟喧嘩」を仕掛ける。
意地と意地とぶつかり合い…この巨大な戦いは…「姉弟喧嘩」へと発展する。
次回
第80話 郡千景は勇者であった・破。