〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
怨嗟に囚われた初代勇者・郡千景は全力で向き合ってくれた一同によりその心に光を取り戻した。
もう一度、一から始めよう…彼女は生きる選択をし、もう一度人生をやり直すことにした。
時は一同が大赦本殿に突撃した時間軸…ソラシド市でも小規模ながら戦いが起きていた。
蔓延する闇に引き寄せられ、この世界に「DM」が出現していたのだ。
迎え撃つのはこの世界にやってきた防人の2人…弥勒夕海子と山伏しずく。
ましろの祖母であるヨヨの元に身を寄せる2人はこの世界を守っていたのだった…。
第82話 激動のソラシド市。
〜ソラシド市・虹ヶ丘邸〜
星が停止し、勇者世界と同じく時間が動かないこの世界は勇者世界以上に闇が蔓延していた。
一同が「可能性世界」へと旅立ってからしばらくの月日が経ったのだろう…ましろが放った闇の蔦はスクスクと育ち、さらに禍々しい気を放つ。
住民の殆どが違う土地へと移動している…この異常事態に世界中は混乱していた。
星が動かないのだ、当然環境だって変化しない。
ある国では永遠とも思えるほどの冬…そして、ある国でも永遠に近い夏といった、異常事態。
生態系にも影響が出始める…そうなれば今度こそ、世界は終焉へと向かっていく。
しかし、この事態をなんとか出来る者が存在しない…プリキュアの存在を知る者はごく僅かだ。世界からしたら彼女達の存在は認知されていない。
地球最後の日と称され、連日テレビでも放映されている。
そんな中、怪物報道も後を絶たなかった。
突如、空から訪れる異形の存在により一つの国が壊滅的被害を受けた。
そう…この世界はまさに「可能性世界」が辿った「終末戦争」にも似た歴史を辿ろうとしているのだ。
そしてここ、ソラシド市も例外ではない。
一同が勇者世界で千景との決戦に赴いている時間軸…「可能性世界」に現れた「DM」が姿を現していた。
そう…現在、この世界を震撼させている怪物報道の正体は「DM」だったのだ。
そしてそれを迎え撃つのは、リオンによってここに連れて来られた防人の2人「弥勒夕海子」と「山伏しずく」の2人だ。
ここ、虹ヶ丘邸の上空に現れた異形の相手をしている真っ最中だった。
夕海子「ぐっ…なんですの、この化け物共は…ッ!。」
構えた銃剣から弾丸を放ち続け、蝙蝠型のDM…「ディメンション・モンスターTYPE-B(バット)」を迎撃する夕海子。
シズク「バーテックスとは違うみてェだなッ!。手応えがありそうだけど、めんどくせェ動きをしやがるッ!。」
山伏しずくのもう1人の人格である「シズク」が主に戦闘を担当している。
その荒々しい動きでDM-Bを翻弄するが、知能が高い敵に決定打を与えられずに歯痒い思いをしていた。
夕海子「シズクさん、ヨヨさんは退避しましたのッ!?。」
シズク「あの婆さんなら退避済みだぜ!?。地元の警察ってのもなかなかいい動きをするもんだなッ!!。」
夕海子「それは何よりッ!。しかし、リオンさんも酷いものですわ…勇者世界に用があると言って、私たちを置いていったんですものッ!。」
シズク「ハッ!。どのみちこんな化け物が来るならオレ達が残らねェと婆さんが危ねェだろうがッ!。」
空中に飛び出したシズクは、銃剣で格闘戦を仕掛ける。
飛行機能を駆使し、距離を取ろうとするDM-Bを追いかける。
そこを、地上にいる夕海子が狙撃し、挟み撃ちといった作戦を実行する。
その連携が功を奏したのか、DM-Bは地面に叩き落とされる。
シズク「今だッ!!。」
トリガーを引き、連続射撃を行う2人。
万が一が無いように徹底的な掃射で蜂の巣にしていく。
完膚無きまでに撃ち尽くされたDM-Bは塵のように消えていく。
夕海子「終わりましたわね…。」
一息付いた2人。シズクは元の人格に戻り、変身も解かれた。
しずく「…行動パターンがわかりづらいって、シズクがぼやいてる。」
夕海子「当然ですわ。私達はバーテックスとしか戦った事がありませんもの。あんな予測の取り辛い化け物は想定に入っていないんですもの、仕方ありませんわ。」
しずく「あ…見て。」
空に指を指すしずく。
それは勇者世界から伸びていた怨嗟の柱だった。
しかしそれは、徐々に消えていく。
夕海子「もしかして…向こうの世界で決着が付きましたのッ!?。」
しずく「多分。それも、良い方だと。」
夕海子「リオンさんが向こうに向かったのですもの…恐らく、勇者達が帰ってきたのでしょう。」
しずく「じゃあ…今度はこっちに来てくれるの?。」
夕海子「恐らくッ!。しかし…こっちはもっと混沌としていますわ…来たところで、また苦労をさせてしまうかもしれません…。」
街中に伸びる漆黒の蔦は成長し続け、それは根深く地面に突き刺さっている。
停止した星の影響は正直、この世界の方が深刻だ。
それは、次元の壁に穴をあけてまでその世界の住人である「DM」が雪崩れ込む事態にもつながっている。
それに加え、「劇団」が現在はここに在中している。
今こそ、仕掛けてはこないがきっと何かの準備をしているのだろう…敵の数の多さに不安が過ぎる。
しずく「でも、私たち2人だけじゃ限界がある。」
夕海子「わかってますわ。だからこそ、リオンさんが向こう側に行ったのでしょう…こちら側に来ていただくように。」
〜「劇場」〜
アデル「お目覚めですか…。」
マジェスティとの戦闘以降、精神状態に支障が出ていたましろは眠りについていた。
充分な療養期間を得たのだろう…ましろはゆっくりと眉を開ける。
ましろ「…随分と長い夢を見てた気がする。」
アデル「ほう…夢…ですか?。」
ましろ「うん。とても大きな戦いでね…星そのものが崩壊する夢。そして…私とソラちゃん達は相打ちとなるんだ。そんな夢。」
それを聞いたアデルは仮面の下で険しい表情をする。
アデル(…星の崩壊…なるほど…しかし、ここで<破滅の姫君>を失うわけにはいかない…これは何か手を打たなければいけませんね。)
ましろ「多分、ここに来るよ…ソラちゃん達は。」
アデル「でしょうね。向こう側では、千景さんは怨嗟から解放されてしまった。もう、彼女を頼ることは出来ないでしょう。」
ナイアル「フン…元々、これも想定の内だったのだろう?。アデル。」
アデル「ええ。あのままいけば、千景さんは崩壊していたことでしょう。それを防ぐためには怨嗟から解放しなければいけない。そして、それは最も彼らが取る手段…その答えに辿り着くのも容易でしょう。だから、想定は出来ていましたよ。贅沢を言うともう少し、頑張って欲しかったのですが…仕方ありません、新しい「劇団員」が彼女の組織に弓を引きましたからね。」
蓮「それって俺のこと?。酷いなぁ…楽しめと言ったのはあんたでしょうに。」
アデル「責めているつもりはありませんよ?。どのみち、見限るつもりではありましたから…お互いにね?。」
不敵な笑みを浮かべるアデル。
ましろはゆっくりと歩み寄る。
ましろ「自分に正直な事はいい事だよ。私はそれで苦しんだからね。」
蓮「へぇ…話がわかる上にこんなに可愛い子に言われるのは悪くは無いな。」
ましろ「フフ、楽しいのはここからだよ…そうだよねぇ…!?。」
両手を広げると、禍々しい闇のエネルギーを放つましろ。
そのエネルギーは瞬く間に世界に広がっていく。
アリス「これは…。」
ましろ「闇を加速させたんだよ…初代勇者はもう期待出来ないんだよね?。なら、私がこの闇を加速させてあげる!。」
……………………。
世界中に伸びた漆黒の蔦が動き始める。
地響きを起こしながら、蔦がさらに地面に減り込んでいく。
夕海子「な…なんですのッ!?。」
しずく「黒い蔦が…どんどん動いてる…?。」
加速する闇。
蔦が地面に潜るたびに地響きが強くなる。
そしてそれはやがて、大きな樹へと変貌した。
夕海子「なっ……!?。」
しずく「大きな…樹…?。」
凄まじい勢いで天へと伸びていくその樹はとても禍々しくて、そして所々に咲かせた花が真っ黒に輝いた。
そう…これこそが、闇の花…ましろの闇を加速させた花だった。
そして、この樹の意味は……。
……………………。
アデル「…これで大量の闇の種を生成出来る…人の心の闇を解放させるための…ね…。」
ナイアル「ハハハハハッ!。素晴らしい、これこそまさに僕の描いていた「演出」だよッ!。」
高らかに笑うナイアル。その目は無邪気そのもので。
しかし、その奥底にはとてつもない野心を秘めていた。
ナイアル(退屈な人生からの脱却…ククク、この景色が見れたのだ…スカイランドから飛び出した甲斐があるというもの…さぁ、ここからどんな景色を見せてくれるんだ?。)
アデル「さて…我々もそろそろ動きましょうか。」
アリス「ええ、了解したわ。」
アデル「静寂の次は闇…我々のメインといきましょうか!。」
…………………。
シャララ「これは…酷いな…。」
ソラシド市の現状を見て、シャララは苦虫を噛み潰したかのような表情をする。
そこへ避難所に行ったはずのヨヨがやってきて。
ヨヨ「この世界、いえ…全ての世界はどうなるのでしょうか。」
シャララ「貴女は…。」
しずく「ヨヨさん、あんまりで歩いちゃ…。」
シャララの姿を見た夕海子としずくは警戒を高める。
しかし、ヨヨが割って入ってその空気を崩した。
ヨヨ「夕海子さん、しずくさん?。この人は味方よ。安心しなさい?。」
夕海子「これは…失礼しましたわ。」
シャララ「いや…君たちの事は聞いている。あの空の上の世界の住人だろう?。丁度、ソラ達から君たちのことを聞いたのだ。」
しずく「ソラって…プリキュアの事?。」
シャララ「ああ、そうだ。私はあの子達と連絡を取り合っててね。ソラシド市の現状を見に来たのだ。まさか、これほど酷い事になってるとは…。」
夕海子「はい。バーテックスとは違う化け物が現れ始めまして…。」
シャララ「恐らく、ここを起点に闇の勢力が押し寄せてきているのだろう。それも、あの大樹…なんて禍々しい…。」
しずく「まるで世界の最後みたい…。」
夕海子「ふ…不吉なことを言わないでくださいまし…私まで不安になりますわ。」
シャララ「だが、現状はその通りだ。そして、これをなんとかしなければ全ての世界が同じような目に遭うだろう。」
ヨヨ「ええ、その通り。その為には…。」
しずく「プリキュアと勇者に来てもらわないといけない…。」
シャララ「…ああ、その通りだ。情けない話だが…あの子達を頼らざるを得ない。あの大樹がさらに成長してしまえばそれこそ…世界の終焉だ。」
夕海子「…タイムリミットは迫っている…ということですね。」
シャララ「…ああ、その通りだ。」
空を見上げる4人。
空を突き破り、異形が地表に落ちてくる。
その状況を見て、腹を括るシャララと夕海子、そしてしずく。
変身しては、駆け抜けるようにその場に向かう。
シャララ(この世界は私たちが守り抜く…君達が来るまでの間は必ずッ!。だから、待っているぞ…希望達!。)
剣を片手に、街へと掛けていくシャララ。
そして、ソラシド市のこの異変は……一同にとって最も過酷な戦いへと繋がることになる……。
……………………end。
ましろの目覚めによって、ソラシド市を起点とした大規模な闇の拡大。
それは次元の壁すらも破り抜け、DMを誘き寄せることにも。
たった3人で守り抜く為に、そして希望達が来るまで持ち堪えるシャララと夕海子、そしてしずく。
そして数日後…「海祇機関」との激闘を終えて千景を救った一同は戦闘の傷を癒していた。
前へと進む決意をした千景…しかし、そこにスキアヘッドが現れて…。
次回
第83話 拭いきれない闇、千景の苦悩。