〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。

ソラシド市を起点に広がった闇。
それは、全ての世界に影響を及ぼすほどにまで拡大していた。

守るのはシャララと夕海子としずくの3人。
彼女達は希望達が辿り着くまでの間、無尽蔵にも近い闇と対峙することにした。

その一方で、勇者世界…。
激戦の末、療養に入っていた一同と千景。
前に進むことを決めた千景に不穏な影が迫っていた…。


第83話 拭いきれない闇、千景の苦悩。

〜勇者世界・大赦施設〜

 

「海祇機関」との激闘。

それは、互いの信念を賭けた戦いへと発展していた。

 

千景に思いが届き、彼女はかつての仲間達に見送られながら第二の人生を送る事に。

そんな千景の瞳には光が宿り、少しずつでもいいから笑顔で過ごそうと考えていた。

 

300年もの間に抱いていた怨嗟から解放された彼女がこれからを生きるのは苦労が生じるだろう。

しかしそれでも今は…自分を必要としてくれる存在がいる。そして…家族がいる。

 

そう思うと、千景は何も恐れを抱かなかった。

 

千景「……星が止まってても、朝は感じるのね。」

 

カーテンを開け、千景は外を見る。

そして、自分の手を見る。

 

千景「…前を向いて生きる…か…私、出来るかな…笑う事も不器用だし…それに…。」

 

世界が私を許さないかもしれない。

 

千景はそう考えてしまう。だが……。

 

烈火「姉ちゃん、飯だってよ。」

 

部屋にやってきた烈火が千景を呼ぶ。

久方ぶりに菱咲家に帰って来た2人は部屋の惨状を見てゾッとしていた。

しかし、風が手伝ってくれたお陰で部屋は元通りになり綺麗な形を取り戻した。

 

そして、朝食は風が作ってくれていた。

 

千景「ええ、今行くわ…。」

 

……………………。

 

千景「!!!。美味しい…。」

 

味噌汁を飲んだ千景は目を見開き、その味に驚く。

 

風「そりゃ、美味しいに決まってるわよ!。だって、女子力の塊である私が作ったんだものッ!。」

 

 

烈火「女子力って関係あんのかよ?。あちち…まぁでも…美味ェのは確かだな。」

 

 

風「…それよりあんた、「持ってかれた」聴力と視力…大丈夫なの?。」

 

「酒呑童子」の影響で烈火は五感の一部を持っていかれていた。

しかし、烈火は何も気にする事なく味噌汁を啜る。

 

烈火「つっても、片方ずつだし…それほど大したもんじゃねぇさ。特に気にしてもいねェ。」

 

 

千景「…そう…。」

 

 

烈火「だから暗いって姉ちゃん!。これから、楽しくなるんだからよ…明るく過ごせよな?。」

 

 

千景「え…ええ…頑張るわ…。」

 

 

樹「あはは、烈火さんはもう少しおとなしい方がいいかと…。」

 

 

烈火「そうか?。うーん…ま、これが俺だし別にいいや!。」

 

 

風「全く…。」

 

風は少しずつ食事をする千景に目を向ける。

 

風「どう、その後の様子は。」

 

 

千景「…特に問題はないわ。「海祇機関」は解体したし…実権も大赦に返還した。疑似勇者達の処遇は大赦預かりとなったし…私自身は名を抹消された。居ないことになってるの…元々、私の名前は300年前に抹消されている。だからこれでいいの。」

 

 

風「そう…あんたがそれでいいなら何も言わないわ。どうやら、それに勝るものを見つけたみたいね?。」

 

がっつくように、朝食を食べる烈火を見ながら、風は千景の様子を見てうれしそうに言う。

 

千景「…ええ。ずっと、得られなかった家族…焔華として過ごしていた日常は私のもの…それに気付かせてくれてありがとうと言いたいわ。今はまだ、ぎこちないけど…。」

 

これまでにない表情をしながら…。

千景の表情はとても儚いが、どこか希望に満ちた表情をしていた。

 

千景「少しずつ、笑えるようになりたい。」

 

 

樹「うん、とてもいい表情ですよ千景さん!。」

 

それから、帰り支度を済ませて犬吠埼姉妹は帰宅した。

見送った2人は仲良さそうに帰っていく2人を見て、うらやましささえ感じる。

すれ違った時間のほうが長いともいえるくらい、2人は成長してから互いのやり取りがなかった。

こうならなかったらきっと、まだすれ違ったままかもしれない。

苦しいこともたくさんあった。普通の姉弟とは違って余計な遠回りもたくさんしたと思う。

だが、その時間も決して無駄ではないと言いたい…お互いに胸の内を吐露しあい、ようやく普通の家族のように戻れた2人。

これからだ…すれ違った時間を少しずつでも埋めていきたい…千景と烈火はそう思う。

 

千景「烈火。」

 

 

烈火「なんだ、姉ちゃん?。」

 

 

千景「完全勇者外装…その力は強大だけど、帰ってくる反動はかなり大きいはず。だから、約束して頂戴。「切り札」はもう…使わないこと。」

 

 

烈火「「切り札」って…「酒呑童子」のことか?。」

 

 

千景「ええ。「切り札」の反動は私が一番よく知っている…システムそのものは「満開システム」に酷似しているようだけど、多が用するとあなた自身の身体が持っていかれてしまう。」

 

千景はそっと、烈火の頭に手を置く。

慣れていないのだろう、ぎこちなさは拭えないが優しさは感じ取れる。

 

千景「…家族が苦しむのは…耐えられないから…。」

 

 

烈火「姉ちゃん…はは、了解。」

 

 

千景「わかってくれてありがとう。なら、私は少し大赦に用事があるから少し出ていくわ。すぐに戻るから…。」

 

――――――――――――――――――

 

外を歩く千景。フードを深々とかぶり、人目につかないような形で歩いていた。

対人恐怖症の側面はいまだに克服できていない。

やはり、すれ違う人々の顔が気になる…あの頃と同じ、自分を蔑んだ目線に見えてしまう。

これこそが、千景の抱えるいまだに拭えない闇の側面…前に進むことを決意したとしても、植え付けられたトラウマまでは拭えない。

無意識に壁際を歩く千景。その時、周囲の時間が停止したような感覚に襲われる。

 

あたりの人間は動かない…本当に時間が止まってるようだ。

 

フードを拭い、周囲を見渡す千景。すると、左方向に殺気を感じてバックステップで距離を取る。

 

地面に何かが着弾。その部分が抉れた様に陥没した。

 

「反応速度までは変わっていないようだな。」

 

 

千景「あなたは…!!。」

 

視界の先にいたのはアンダーグ帝国のスキアヘッド…千景を見下ろすように右手を突き出していた。

 

スキアヘッド「どうやら、己が内の闇を鎮めたようだな。」

 

 

千景「…狙いは私ということね…?。」

 

 

スキアヘッド「その通りだ。もはや、隠す必要もあるまい。見ろ、空の上を。」

 

スキアヘッドに促され、警戒を解くことなく空を見る千景。

そこには、ソラシド市に聳え立った漆黒の大樹が映っていた。

 

千景「これって…!?。」

 

 

スキアヘッド「貴様がばら撒いた闇はあの世界に蔓延する闇を育てていた。無論、あそこまで成長させるほどではなかったが…その役に一役買っていたということになる。」

 

 

千景「…何が言いたいわけ…?。」

 

 

スキアヘッド「心のうちに秘めている闇…貴様にはまだ拭えない闇が存在する。カイゼリン様は貴様のその闇をお気になっておられる。どうだ、アンダーグ帝国に来ないか?。ちょうど、ミノトンを失ったことで戦力を増強したいと考えていたのだ。」

 

その答えに、千景は反論することを決め込んでいた。

 

千景「お断りするわ!。私は…未来を見つめている!。」

 

 

スキアヘッド「フン…いくら、未来を見据えても心の闇までは拭いきれない。それこそ、貴様が苦悩していることだ。違うか?。」

 

 

千景「ッ…それでも私は…!。」

 

<完全勇者外装>彼岸花を纏う千景。

手に鎌を握るが、手が震えていた。

 

千景(落ち着け私…私は…自分の未来を見つめると決めたんだ…こんな一言で揺らぐのは…!。)

 

 

スキアヘッド「手元が狂っているぞ。」

 

千景の攻撃を難なく躱すスキアヘッド。

背後に回り込み、エネルギー弾を放つ。

直撃を受け、千景は吹き飛ばされた。

 

千景「ぐぅ…!。」

 

 

スキアヘッド「激戦の影響は未だ改善せず…か。本調子ではないようだな。おとなしく従ったほうが身のためだぞ。どのみち、貴様は闇の中で生きるほうがお似合いだ。」

 

アンダーグエナジーで生成した剣で千景と競り合い、ジリジリと、千景は押し返される。

先日の戦いの傷が癒えておらず、身体の各所に痛みが生じる。

 

それに加え、スキアヘッドから告げられた自身が拭い切れていない心の闇。

わかっていた…千景はその心の闇の事。

受けてきた迫害は簡単には受け入れられないし、拭うこともできない。

現に、人前に出ることが億劫になっている。

目線が怖いのも、ずっとある。

だからこそ、その心の闇はずっと拭えないでいた。そしてそれが彼女にとっての苦悩でもある。

 

それを看破したスキアヘッドは的確にその心の闇を指摘してくる。

それが何よりも、彼女の弱点となっていた。

 

直後、スキアヘッドは容赦のない攻撃を繰り出してくる。

何とか受けきるも、後退しながら千景は追いつめられる。

斬られまいと、必死に受け止めるがスキアヘッドはズレたモノクルを手直しするくらいに余裕がある。

 

スキアヘッド「…貴様が見据える明るい未来とやらに興味はない。だが、カイゼリン様の命とあらば従うのみ。」

 

 

千景「…まるで傀儡ね、あなた!。」

 

 

スキアヘッド「傀儡…まさにそうだな。だが、何の問題もない。私は喜怒哀楽を持ち合わす意味も感じない。あるのは虚無。そして…真実のみだ。」

 

虚無。

何も感じないスキアヘッドの強みでもあるそれは、感情に左右されやすい人間にとっては厄介極まりないことだった。

感情を持ち合わせていないからこそ、人の心の意味を理解できない。

だが、それ以上に「真実」に対する指摘は的を射っている。

事実、千景の抱える心の闇を見事に看破している。

特に、精神的な成長をしている真っ只中の事だ。

自然と、千景は精神面で追いつめられてしまう。

 

だが、それでも千景は…強かった。

かつての仲間と約束した…彼女らの分まで生きていくと。

そして、背中を押してくれた…今度こそ、自分だけの幸せを見つけて来いと。

それが、心の闇をも凌駕する。

もう大丈夫…私は…一人じゃない…!。

 

そう強く思った直後、千景はスキアヘッドの剣を押し返し始める。

 

突然、力が増した千景にスキアヘッドは表情が変わる。

 

スキアヘッド(先ほどと力が変わった…ふむ…心の力が左右されている…か…。)

 

 

千景「私は…過去のトラウマをまだ引きずっているわ…それが、私の抱える最後の心の闇というのは理解している…きっと、時間がかかるし、もしかしたら一生拭えないかもしれない…それでも…!。」

 

鎌を強引に振り抜き、スキアヘッドを弾き飛ばす。

後ろに飛びのきながら、この力について分析し始めるスキアヘッド。

しかし、理解できない。

何故なら、虚無だからだ。

 

千景(今の私は闇や怨嗟に飲まれない力がある…それは私を思ってくれる人たちがいること…苦悩していても、それは私自身の問題…だからこそ、向き合って前を見続ける…そうよね…それがきっと、あなたの強さだったから…乃木さん…。)

 

踏み込み速度が上がった千景。

それはただひたすらに自分の未来を見据えるためだけの踏み込み。

きっと、その先に自分が進みたい未来があるはずだから…。

そう思うと、不思議と力が出る。

この時に理解した…これが友奈達の持つ力だ。

その一撃は後退したスキアヘッドに見事に直撃した。

 

千景(入った…でも…浅いか…!。)

 

超反応で皮一枚斬らせたスキアヘッド。

だが、彼にとっては意外の連続だった。

 

スキアヘッド「…わからんな。突然、踏み込みが変わった。一体、何の力が働いたというのだ。」

 

 

千景「…虚無であるあなたには二度とわからないことよ。あなたは私の心の闇を指摘した…けど、私の力が増したのも心の力よ。私を支えるのは私を助けてくれたみんな…愛してくれる家族…そして…苦楽を共にした最高の…友達たちよ…!。」

 

力強い眼差しでスキアヘッドに鎌を向ける千景。

その瞳には希望を宿していた。

こうなれば無駄と判断したのか、スキアヘッドは手を収めた。

 

スキアヘッド「心の力か…ふむ、知識の宮殿に記録しておこう。では、さらばだ。」

 

スキアヘッドは空間の穴の中に消えていく。

 

千景も外装を解除。

怪我をした部分を見ては、ため息をつく。

 

千景「…帰ったら、烈火に何か言われそうね。そうだ…今夜は少し、お料理に挑戦してみようかしら。」

 

自分の手を見て、千景は柔らかな笑みを浮かべる。

 

千景「…あの子の好きな…カツ丼を。犬吠埼さんに教えてもらって…少しずつでも覚えていこう。」

 

電話帳を開き、風に連絡を入れる千景。

 

 

きっと…必ず、彼女の未来は明るいはず。

少しずつでも…溢したものを取り戻していこう。

 

 

…………………end。

 




胸の内に秘める心の闇に苦しむ千景。

しかし、今の彼女は自分を支える仲間たちがちゃんといることに気づき、それが力となってスキアヘッドを退けた。

時は数日が経過し、リオンからソラシド市の現状を聞く一同。

動き出したましろによる闇の加速…それを聞いたソラ達も行動に移る。


その頃、ソラシド市に現れたましろと対峙していたのは…リオンの弟子である新たなプリキュアの少年だった。


次回
第84話 剣聖の弟子・キュアスラッシュ。
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