〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い   作:やままん

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前回のあらすじ。


自身の無力さを痛感した樹は、行方を眩ました東郷と蒼葉を探すために闇の力に手を染めてしまった。

止められなかった風は後悔と哀しみの底に落ち、再起が難しい状態に。

精神的支柱を失った勇者部で動けるのは烈火と友奈と夏凛、そして園子のみ。

消えた樹の事とこの世界の事…問題が解決するどころか、深まるばかりだった。





第88話 ぶつかり合う思い。

樹が消えてから数時間後。

 

2人の行方を捜しに来た友奈と園子、鷹夜とソラはその場に崩れて泣いていた風を見つける。

 

何があったのか理解できない4人…だが、風はまるで心がポッキリと折られたかのように無力となっていた。

 

こんな一面は見たことが無い…それに、樹の姿が無い…。

 

とりあえず、4人は風を連れて鷹夜の家に向かうことにした。

 

 

~鷹夜の自宅~

 

園子「これ、飲んで?。フーミン先輩…。」

 

ココアを淹れて渡す園子。

だが、風は全く口にしない。

 

相当泣いていたんだろう、目を真っ赤に腫らしながら呆然と目を伏せ続ける。

 

ソラ「…風さん、樹さんは…?。」

 

踏み込んでいいのか…とりあえず、ソラは聞くことにした。

 

風は目を伏せたまま、声色を低くして反応を示す。

 

風「…樹は…行ってしまった…。」

 

 

友奈「行ってしまったって…どこに!?。」

 

 

風「分からない…東郷と蒼葉を探すんだって…「闇の種」に手を出してしまって…!。」

 

声を絞り出して、泣き始める風。

状況から察するに、その原因が分かった気がした。

 

「劇団」が絡んでいる…それに、「闇の種」。

 

ソラと鷹夜は、あの時の事を思い出した。

 

ましろが闇に堕ちた時の事…忘れもしない、あの瞬間の事。

 

鷹夜「じゃあ、樹は「劇団」に連れていかれたのか!?。」

 

 

風「…ううん…自分の意思でどこかに行っちゃった。…樹は力を求めていた…自分の無力さに絶望して…たった一人で悩み続けて…なんで気付いてあげられなかったんだろう…樹の苦しみを…思いをなんで…!。」

 

 

園子「もういいよフーミン先輩!。」

 

声を絞って説明する風を止めた園子。

このままだと心が壊れてしまう…そんな気がした。

 

それ以降は、このことについて聞くのをやめることにした。

目の前で妹が闇の力に手を染めてしまったのだ。

ましてや、その悩みに一番気付かなければならなかった自分が気づけなかったこと。

 

これが何より悔しくて…そして、悲しかった。

 

ただただ、泣くことしか出来ない。

そんな風の状況を見てから、4人はこれ以上の言及はよすことにした。

 

それから少し落ち着いたのか…風はソファーの上で眠ってしまった。

 

布団をかけてやる友奈。

その表情はとても悲痛で。

 

その時、インターホンが鳴り響いた。

 

鷹夜「…誰だ。他のみんなではなさそうだけど…。」

 

呼び鈴に応える鷹夜。

そこに居たのは、見知らぬ少年だった。

 

鷹夜「どちら様で?。」

 

容姿からして、この地の場所の者ではない…だが、ソラは一瞬にしてどこの人間かがはっきりと分かっていた。

 

ソラ「まさかその服装は…スカイランドの辺境の人ですか…!?。」

 

呼び鈴を鳴らした正体は「トーヤ・タイフーン」。

 

スカイランド人でリオンの弟子…そして「風の剣士」の異名を持つプリキュア「キュアスラッシュ」の変身者でもある少年。

 

トーヤは鷹夜を見た後、自身の名を名乗り始めた。

 

トーヤ「トーヤ・タイフーンだ。プリキュアと勇者…お目に掛かれて光栄だ。」

 

 

鷹夜「スカイランドの人…ここに何の用だ?。」

 

 

トーヤ「いや、挨拶をしたくてな。俺の事は師匠から聞いているか?。リオン・ドラグネスの元で手解きを受けている剣士見習いだ。そして…「風の剣士」であるプリキュア…キュアスラッシュに変身出来るプリキュアでもある。」

 

 

ソラ「貴方が…それに、キュアスラッシュ…新たなプリキュアってことですか…!。」

 

 

鷹夜「そっか。立ち話もなんだ、上がってくれよ。茶ぐらいは出すぜ?。」

 

 

トーヤ「お言葉に甘えよう。失礼する。」

 

そう言って、上がり込むトーヤ。

その場にいた友奈達も突然の訪問者に少し驚くが、トーヤの振る舞いに次第に緊張を解いていく。

 

ソラ「…リオンさんからお話は少しだけ聞いています。待ってください、今お呼び…。」

 

 

トーヤ「いや、構わない。師匠とはさっき、挨拶を済ませてきた。お前たちの他の仲間にもだ。あとはお前たちだけだったので、居場所を聞いてやってきた次第という事になる。」

 

 

鷹夜「そりゃ、わざわざどうも…でも、それが本題じゃねェんだろ?。あんた…俺達に聞きたいことがありそうだけど…。」

 

鷹夜のその質問に、トーヤは一息つく。

出されたお茶を一口、飲むと息を吸い始めた。

 

トーヤ「そうだな…俺は俺の目的を誇示しに来た。それを伝えねばならないと思い、お前たちを訪ねたんだ。俺の目的は…「虹ヶ丘ましろの抹殺」だ。」

 

虹ヶ丘ましろの抹殺。

 

それを聞いた4人は立ち上がる。

 

ソラ「な…ましろさんの抹殺ですって!?。そんなこと、許すわけにはいきません

よッ!。」

 

 

友奈「そうだよ!。どうして、ましろちゃんを殺すの!?。」

 

 

トーヤ「…奴に焼かれた村の者達の思いの為だ。」

 

 

鷹夜「ッ…!。」

 

 

トーヤ「…奴が振りまいた不幸の数はとても大きなもの。闇に支配されていたとしても、その罪は償わなければならない。俺は聞きに来たのだ…お前たちの真意を。」

 

並みならぬ決意を込めた瞳で4人を見つめるトーヤ。

 

言っていることが虚言ではない…そう感じた4人は直接、思いの丈をぶつけてきたトーヤに応えようとする。

 

鷹夜「…仲間だからだ。」

 

最初に口を開いたのは鷹夜…予想通りの答えだったのだろう、トーヤはそれを聞いて納得のいかない表情をする。

 

トーヤ「それはお前たちにとっての話だろう?。戦士としてはどう受け止めている?。虹ヶ丘ましろの犯した罪は重すぎる…2つの世界の自転を止め、生きとし生けるものを滅亡の淵に追いやっているのは事実だ。」

 

 

友奈「それは…操られてるから…!。」

 

 

トーヤ「…淘汰されたもの達にそれを理由にして許しを乞う事が出来るか?。」

 

トーヤの質問に痺れを切らしたのは…ソラだった。

 

机を叩き、声を上げる。

 

ソラ「貴方はさっきから何が言いたいのですかッ!?。」

 

その質問に、トーヤから気迫が溢れ出す。

 

トーヤ「覚悟を問いたいんだ。」

 

 

友奈「覚悟…?。」

 

 

トーヤ「この世界においての戦いで全てが決まると言ってもいい。ここは最早、「劇団」の根城といってもいい。奴らをどうにかしないとこの世界はおろか、あの天井の世界と…スカイランドにまで悪影響を及ぼす。それどころか、アンダーグ帝国まで便乗してくるかもしれない…今は、人1人を救う為の戦いではない…力ある俺達の背中には…世界の運命が掛かってるんだ…!。」

 

その「覚悟」の大きさに、4人は飲まれそうになる。

 

言っていることは嘘ではない…彼は本当に世界の命運を考えての行動を取っているのだろう。

 

だからこそ、闇に堕ちたとはいえましろの事を許すことが出来ない。

 

そしてそれは何より…師匠であるリオンが経験したことでもある。

 

犠牲者の断末魔とその無念…そして、死の間際に流した悔し涙。

 

それを見て来た者だからこそ、その願いに応えなければならない。

 

無慈悲に消され、奪われた名も知らぬ者達の無念を放っておくことは出来ない。

それを奪った者を許すわけにはいかない…彼は、リオンが掲げている剣士の本分をしっかりと理解しているのだ。

 

だからこそ、ソラ達の考えに否定的になる。

 

罪こそ、平等に与えるべきだ…特別視など許されない。

 

トーヤはその考えの元、ましろの犯した罪を裁こうというのだ。

 

だが、そんなトーヤの決意に、鷹夜は反論し始める。

 

鷹夜「それでも、俺達はましろを救うことを諦めねェ。」

 

 

トーヤ「何故だ…何故、大罪人を許そうとする!?。この状況を作り出したのは紛れもない、彼女なんだぞ!?。お前達だって、明日を奪われそうになっている!!。それなのに何故、救うことを諦めないッ!?。」

 

 

鷹夜「何度も言わせんな。あいつは仲間だ…俺たちにとって、かけがえのない大切な仲間だ。お前の考えはスゲェと思うぜ?。それが当然なのかもしれねェ。ましろのしてきたことは、自分の意思ではないとはいえ許されるものじゃねぇ。だからこそお前の言う通り、裁かれるべきなんだろう。けど…命を奪うことが裁きになんのか?。」

 

 

トーヤ「…それしかないからだ。生きることで贖罪を積んだとしても、奪われたものの魂が報われるとは限らない。」

 

 

鷹夜「それは、ましろが死んでも同じじゃねぇのか?。」

 

 

トーヤ「っ…それは…ッ!。」

 

 

鷹夜「罪と向き合うのは、あいつ自身が決めることだ。その上で死ぬことを選ぶのならそれも一つの手だろう。けど…俺達は生きてて欲しいと思っている。だからこそ、この戦いにおいてあいつを取り戻すつもりだ。世界のことなんて後から考えりゃいい。」

 

 

トーヤ「無責任だろう!?。力ある者が力無き者を守るッ!。それが戦士としての役目だッ!。」

 

 

鷹夜「俺達は戦士じゃねぇ…その前に、1人の人間だ。だから、俺達は思いのままに戦う。そしてその思いこそが。」

 

そう言って、トーヤの眼前で拳を止める。

 

その拳圧はとても大きいように見えた…トーヤは思わず冷や汗を掻く。

 

鷹夜「ましろを救いたいと思う気持ちだ。その一心で俺達はここに立っている。世界を敵に回そうが俺達は…最後まであいつの味方である事をやめねェさ。」

 

拳を引いた鷹夜は、トーヤの肩に手を置く。

 

鷹夜「ここでお前と事を構えるのは違うと思う。お前はお前なりの気持ちがあって、俺達にわざわざ伝えに来たんだろう?。その仁義は嫌いじゃねぇぜ?。だから、それでいいと思う…けど、考えてみるんだな。殺すことが裁きに繋がるんなら…お前の周りはいらねぇ敵ばかりになっちまうって事を。」

 

…旅を通じて、鷹夜は気持ちが大人びて来ていた。

 

様々な事を経験した。奪われた者達の憎しみや怒り、そして憎悪を。

 

だけど、千景との戦いを通じてわかったことがある。

 

それは「悪と善は決められない」と言う事。

 

片方から見れば、それは悪行に見える…しかし、それによって救われた者はそれが善行に見えてしまう。

 

だからこそ、正解が無い。

トーヤの言っていることは自分たちにとっては悪行に近いだろう…しかし、トーヤの視点は「奪われた者達の無念」で語っている。

 

そうなれば、彼の行いもまた善行となる。

そう感じた鷹夜は、トーヤの信念に否定的な答えは出さないでいた。

 

だからこそ、衝突は避けられないものではある…しかし、彼は敵では無い。

その本質を見誤ればきっと、全てを失ってしまう。

そして、その罪の償い方は…犯した本人が決めればいい。

 

彼はそう思う。

 

鷹夜の覚悟を見たトーヤもそれ以上は野暮と感じたのか、何も言わずに半歩引いた。

 

トーヤ「…お前達は甘すぎる。この世界での戦いはきっと…今までに無い大きなものとなるはずだ。」

 

 

鷹夜「わかってるさ。けど…俺達には仲間がいる。その仲間と一緒に俺達は足掻くさ。ちっぽけな存在だったとしても、足掻く権利はみんな平等だろ?。足掻いてみてダメだったらまた考える…生きてる限り、チャンスなんていくらでも訪れるんだからな。」

 

 

トーヤ「…そうか、わかった。だが俺の気持ちは変わらない。奪われた人達の為にも、彼女を裁いて見せる。」

 

 

鷹夜「なら、俺達はアイツを救って罪と向き合わせるさ。あいつの命はやらねぇぞ?。」

 

 

トーヤ「…なら…俺が手をかけるよりも早くに自我を取り戻してやるんだな。」

 

そう言って、トーヤは家を後にした。

 

園子「…はえ〜…タカ坊、いつもの間にそんな冷静な事を言えるようになったのかな〜?。」

 

 

鷹夜「…冷静を装うのも苦労すんだぞ?。俺も怒り心頭一歩手前だったさ。けど…あいつの覚悟は嘘じゃなかった。だからこそ、それを怒りで反論するのは違うんじゃないかって思ったんだ。」

 

 

ソラ「鷹夜さん…。」

 

 

鷹夜「…選択を間違っちゃいけねぇ。ここから先は…それが問われると思う。樹の一件もある…だからこそ、俺達は…後悔しない選択を選ばなきゃならねぇ。」

 

眠る風を見る鷹夜。

 

再起はきっと、難しいかもしれない…けど、必ず向き合う日が来るはず。その時に、たっぷりと悲しめばいい…だが今は、立ち上がるべきだ。

 

そう思う鷹夜。

 

鷹夜(…そうさ。ましろだけじゃなくて、俺達の背中に背負うものはとんでもなくデカいものだ。それもちゃんと理解してる…けどやっぱり…あいつもいねぇとそれはちゃんと運びきれねぇ。だからこそ…。)

 

 

〜ましろを救うことを絶対に諦めたりはしねェさ。待ってろ、もうすぐだ…もうすぐでその手に届かせて見せるから…〜

 

…………………………end。




来訪して来たトーヤと思いをぶつけた鷹夜達。

お互いの思いは強く、それは衝突してしまうことにもなってしまったがそれでも…鷹夜は選択を間違えないように慎重に事を運ぶことを選んだ。

きっと、一緒に戦うことができるはず…そう思って。

そしてその一方で、あげはは「闇の種」によって心の闇を解放してしまった子供と出会ってしまう。

そしてその闇は…悍ましい形へと変貌するのであった。

次回
第89話 最強の保育士。
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