〜ひろプリ×勇者であるシリーズ〜世界の壁を超えた出会い 作:やままん
後、もう一歩だった…。
友奈が差し伸べた手を受け取る直前…もう少しだった。
目の前にいるのはましろであってましろではない存在…。
"闇の大樹の意志"によって支配されたましろ。
闇そのものに囚われたましろを救い出せるのか…そしてそれは…。
ましろを取り戻す最後のチャンスを意味していた…。
プリズム「私は"闇の大樹の意志"。光と闇の人格は封印した…この身体は渡さない。」
"闇の大樹の意志"。
2人の友奈の目の前にいるプリズムはそう名乗る。
これまでのような、反転した人格とは全く違う存在…。
直感で分かる。
「どうにかなるものではない」…と。
友奈「…闇の大樹の意志…!?。」
友奈(if)「あの大きな樹がましろさんの身体を奪ったんだ…。」
友奈「そんな…!。」
友奈(if)「…聞かせて。何故、彼女に固執するの?。闇の力が何故…ましろさんを求めるの?。」
プリズム「決まっている…一度、深い闇に陥った者である彼女が好都合だからだ。」
ましろの声に入り混じる不気味な声…それは聞くだけでも不快感を与えるものでもあった。
だが、どこか彼女の面影も残しているようで。
プリズム「虹ヶ丘ましろが闇に沈んでいた期間を考えると、その身体は限りなく闇に近い…故に、私の意思を憑依させるなど造作もない。それに「器」としても成熟されている…これほどにまで良い「器」は久方ぶりだ。」
友奈(if)(…私と反対の立場だ…私の場合は世界樹の生体コア…ましろさんは…闇の大樹に囚われている…どこまで、彼女を苦しめるつもりなの…。)
友奈「どっちのましろちゃんも「一人のましろちゃん」だ!。返して!!。」
突っ込む友奈。しかし、プリズムの目の前で静止する。
まるで、「見えない何か」に妨げられたように、金縛りにあったかのように身体が動かない。
その時、もう一人の友奈が声を上げる。
友奈(if)「離れて…!。」
友奈「え…きゃあああッッ!!。」
目を開いただけで放たれた衝撃波。
勢いよく地面を転がる友奈は土埃の中に消えていく。
友奈「…ぅ…今の…は…。」
身体が軋むほどの痛み。
だが、身体を起こすことが出来ない。
友奈(…闇の力に身体を押さえつけられている…そんな感覚だ…!。)
眼前に迫るプリズムの手に、エネルギーが籠る。
放たれる直後、蒼い閃光がプリズムの手を弾いた。
その正体はキュアスカイ。
キュアバタフライ・キュアウイング・キュアマジェスティ…そして、キュアアグニもやってきた。
烈火「大丈夫か友奈!!。」
慌てた様子で駆け寄る烈火。友奈の手を持って立ち上がらせる。
友奈「烈火…君…ッ…!。」
烈火「休んでろ、他のみんなは突然現れた「DM」の対処で忙しい…やっぱ、あいつの仕業だったか…!。」
友奈(if)「彼女は今、闇の大樹の意志によって身体を支配されてる!。気を付けて、今まで以上に危険だよ!。」
スカイ「分かりました!。不届きものめ、ましろさんから出ていきなさい!。」
プリズム「プリキュア…この世界の守護者。お前たちの頑張りも意味を成さない。こうして、私の意思が他者を乗っ取れるまでに成長している…まもなく、世界中に「闇の種」がばら撒かれることだ。」
アグニ「それもさせねェし、ましろを返してもらう事も諦めてねェッ!。」
プリズム「全ては無意味だ。この身体は依り代として私が有効活用する。誰にも渡しはしない…。」
そう言って、プリズムは宙に浮くと共に漆黒の蔦を放つも、「心の光の力」を手にしたバタフライのシールドがそれを無効化させた。
バタフライ「させない!。ましろんの身体を使って、悪事を働くなんて許せないね!!。」
プリズム(…心の光の力…厄介だな。相反する力はお互いに相性が悪い…。)
ウイング「はあああ!!。」
ウイングとマジェスティが突撃。
2人の打撃は眼前で止まった。
先ほどの友奈と同じく、「見えない何か」に阻まれる。
プリズム「無駄だ。濃い闇のエネルギーがお前たちの動きを阻害する…諦めたらどうだ、抵抗は無意味…流れに沿って進むしか残されていない。」
マジェスティ「諦めてなるものですか!。ましろの身体を返しなさい、闇の意志よ!!。」
光り輝くマジェスティのその打撃は周辺の闇のエネルギーを消散させた。
意外そうな顔をするプリズム…だが、その答えはすぐに分かった。
プリズム(なるほど…「運命の子」と呼ばれる彼女自身の力か…。)
バックステップを取って後退するプリズム。
それを追うようにスカイとアグニが突撃してくる。
アグニ「うおおおおッッ!。」
怒涛の連撃を放ち、プリズムはその全てをいなすように捌いていく。
しかし、背後に回り込んだスカイがその隙をついた。
スカイ「はああああッ!。」
背中に一撃を入れたスカイ。
プリズムは効いたのか、小さく声を出してはよろけ始める。
友奈「効いた…!?。」
プリズム「…流石だ。今のは予想外だった…だが…浅い。」
体勢を立て直したプリズムは、両手を広げる。
するとその刹那、周辺に闇のエネルギーが膨張しては取り囲む4人を吹き飛ばした。
四方八方に飛ばされた5人はそのダメージ故に倒れ込んでしまう。
烈火「クソ…あいつ…ッ!。」
メイスを片手に、突っ込もうとする烈火。
しかし、アグニが声を上げて静止する。
アグニ「烈火ァァァァッ!!。コイツは…俺達がやるッ!。頼む、やらせてくれッ!。」
烈火「ッ…でもよ…ッ!。」
スカイ「お願い…しますッ…!。私達がやらなきゃいけないんです…ッ!。」
ウイング「あの日、取れなかった手を…ッ!。」
バタフライ「今度は離さないように…ちゃんと手を取って…ッ!。」
マジェスティ「みんなで帰るの…ッ!!。」
立ち上がるプリキュア達。
その気迫と決意に、烈火は言葉を発せない。
ようやく、この時が来た…そしてそれは、最後のチャンスを意味する。
ここで逃せばもう取り戻せない…闇の大樹の意思に支配されているましろを取り戻すには、完全に身体を取られる前に成し遂げなければならない。
友奈が紡いだバトンを、落とすわけには行かない…。
反転人格ですら、友奈は手を差し伸べた。
それに応えようとしたのだ…だから、手を伸ばせば届くんだ。
長かったましろとの戦いもここで終わらせてみんなで帰る…そしてまた、一緒に戦うんだ。世界中を取り巻く闇と。
限界を突破して極限になるまで、絶対に諦めない。
その強い意志が4人を奮い立たせる。
だが、闇の大樹の意思は想定以上に強すぎる…奴をましろから引き剥がすには今ある以上の力を発揮しなければならない。
心の闇が主なエネルギー源…しかし、それに対抗できる唯一の力はバタフライが持つ「心の光の力」。
他の3人は持たない…だが、それでも前へと踏み出して。
ウイング「ましろさんはまだ生きているッ!。お前なんかに奪われてたまるかッ!。」
低空飛行で接近するウイングは、プリズムと激しく打ち合う。
瞬きすらしないプリズム…恐ろしいその力の差に追い詰められるも、バタフライがそれをサポートする。
バタフライ「もうあの子ばかりに苦しい思いはさせないッ!。あんたを追い払って見せるッ!。」
心の光が、バタフライを包み込む。
超常的な力で弾き飛ばそうとするが、互いにぶつかり合っては相殺される。
アグニ「バーニングフォームッ!。」
スマホの画面をタッチし、”バーニングフォーム”を発動させたアグニ。
燃え上がる闘志に呼応した炎の一撃を繰り出していく。
アグニBF「ましろォオオオオッッ!!。」
……………………。
ましろ(…この声…は…?。)
深層意識の空間…何もない真っ暗な空間。
そこに閉じ込められたかのように、座り込んでいたましろの耳に僅かながらみんなの声が届いていた。
自分を呼びながら、必死に戦うその声…だけど、か細い程度にしか聞こえない。
でもわかる…自分を助けようと、死力を尽くしていることが。
ましろ(…みんなが…私を呼んでいる…行かなきゃ…。)
ーどうやって、戻るの?。貴女の意識は一度「死んでいる」ー
ましろ(その声は…反転した「私」?。)
ーそう…どうやら、私も闇の大樹の意思に飲み込まれちゃったみたい。貴女のせいだよ…貴女が私の邪魔をするから…ー
ましろ(…ごめん。でもね…やっぱり、ダメだよ。)
ー何が…?ー
ましろ(…貴女は私が辛いと思っていた感情。優しいってことがどれほどの苦しみを生み出していたかなんて、まともに考えもしなかった…だからこそ、貴女が生まれたんだよね?。貴女は私で、私は貴女…「虹ヶ丘ましろ」は貴女と私がいるからこそ成り立つ存在…。)
ーそう。良い子の貴女も、悪い子の私も同じ「虹ヶ丘ましろ」だよ。でも、貴女は消えなければいけなかった…だってあの時、アデルに殺されたんだものー
ましろ(…そうだね。覚えてるよ、たくさんの剣に刺されて意識が薄れていくのが…でも、私は生きている。それは…貴女がいてくれたからだよ。)
ー…何それ、そういう所が苦しみを生み出してしまうんでしょ?ー
ましろ(わかってる。けど、苦しみの感情である貴女がいてくれたから…私は生きていられた。ありがとう、今度は私が貴女を助けなくちゃね?。)
ー…もう無理だよ。私と貴女はこのまま消えていくの。闇の大樹の意思は私たちの「心の闇」を増幅させている。虹ヶ丘ましろという存在は…闇そのものへと変わっていくんだよ。姿形だけ、虹ヶ丘ましろとしてねー
ましろ(私は諦めないよ?。それを跳ね除けて…今度はちゃんと理解するんだ。「貴女」の事も…そして、今の私も。だから、もう他の誰かを傷付けていいだなんて思わないで?。私の苦しみは私自身の苦しみ…それを誰かに理解してもらいたいなんて思わない。だって、それは私が自分で選んだ事だから…たくさん苦しんで、たくさん悩んで…ちゃんと間違わないようにしたいんだ。そして…消えたくないからどっちも必死になれた。「私達」はまだ…死にたくないんだー
ー…変わってるね。もう何もかもがどうでも良くなってきた…だけど…ようやく、目を向けたんだね。優しいばかりの虹ヶ丘ましろじゃなくて…その苦しみを理解した虹ヶ丘ましろ。表と裏…私たちは今度こそ「一つ」になれるー
お互いに、手を取り合う表と裏のましろ。その瞬間、深層意識の空間に小さな光が入り込む。
優しさ故に膨大な苦しみを生み出していたましろ。
しかし、これをきっかけに知ることが出来た。
「自分自身の苦しみ」を。
そして、それを受け入れる。
受け入れた上で、優しさを忘れない…。
そう決意したましろは実態を取り戻す。そして…。
ましろ「…帰ろう…みんなの元に!。」
……………………。
プリズム「…他愛もない。」
見下ろすプリズム。
そこに倒れ込むのは…5人のプリキュア。
この世界の闇そのものが力となり、無尽蔵にも近いエネルギーを生み出す。
全く歯が立たない現状に、5人は限界を迎えていた。
気力だけで立ちあがろうとするも、先に命が尽きてしまうかもしれない。
手を出すなと言われている烈火は居ても立っても居られず、言い付けを無視して戦おうとした。
それに気付いたプリズムは、今度は烈火と友奈に目を付ける。
力を行使しようとしたその時…。
プリズム「ぐっ…あああああ!!?。」
突然、胸を抑え出しては苦悶の表情を浮かべる。
スカイ「な…にが…?。」
友奈(if)「!!!。この感覚は…ましろさんが出てこようとしてるッ!。闇の意思に対抗して、身体を取り戻そうとしてるんだッ!。」
プリズム「ぐぅ…ッ…まだ抵抗するか…ッ!?。」
冷や汗をかきながら、身体が思うように動かないプリズム。
闇のエネルギーを取り込んで押さえ込もうとする。
友奈(if)「みんなッ!!。もうこれしかない、これが最後の手段だ!!。ましろさんを呼んでッ!?。貴女達の声ならきっと届くッ!そして今度こそ…その手を掴んであげてッ!。」
もう1人の友奈の訴えに、力を振り絞って4人は立ち上がった。
バタフライ「ましろんッ!。帰っておいでッ!!。あたしが最強の保育士になるところ、ちゃんと見ててほしいんだッ!。」
ウイング「ましろさん、前に作ってくれた「ヤーキターイ」…僕は貴女と一緒に作りたいッ!。」
マジェスティ「ましろッ!。また私に絵本を読み聞かせて!?。貴女の優しい声が聞きたいのッ!。」
スカイ「ましろさんッ!。私はまだ、貴女に返せてないものがたくさんありますッ!。私はまだまだ、貴女と一緒に道を進みたいッ!。私が本当のヒーローになる姿をちゃんと見ててほしいッ!!。」
それぞれの訴えを叫ぶ4人。ましろへの思いを強く叫ぶ。
その影響もあってか、闇の大樹の意思は徐々に力を失っていく。
そして最後は……。
アグニBF「ましろ。ごめんな、あの時はまだ俺が何の役にも立てなくて…お前を守りきれなかった。」
握り拳を作り、人前では絶対に泣かなかったアグニが一筋の涙を流しながら。
アグニBF「伸ばした手を掴めなかったし、届かなかった…悔しい思いもしたし、申し訳ない気持ちにもなった。けど今なら…ちゃんとその手を掴めるから…!。」
手を伸ばすアグニ。瞳には強い決意が篭っていて。
アグニBF「…帰って来いよ?。俺達の所に。」
ーみんなの声…ちゃんと届いたよ?ー
凄まじい光が一面に広がる。
暗闇に包まれたソラシド市全体に…虹が掛かった。
そして、アグニの手を取って…彼女は帰ってきた。
プリズム「…ふわり広がる優しい光、キュアプリズム。」
優しいあの声…優しいあの微笑み。
そして…慈愛に満ちたあの眼差し。
「天使」は…帰ってきた。
…………………………end。
…あの時から欠けていた光。
かけがえのないものを失ってから長かった…プリキュア達の後悔と涙…それはようやく、覆す形で報われた。
絶対に無理だと思われていた呪縛…自分の意思でそれを克服しようともがき続けた。
そして…彼女は帰ってきた…。
次回
第92話 ーキュアプリズムー